2002年8月23日 |
2002年3月に東京で開催された第3回コーディネーター会合の合意に基づき、「2002年FNCA突然変異育種・バイオ肥料合同ワークショップ」が、文部科学省(MEXT)、中国国家原子能機構(CAEA)の共催、農林水産省(MAFF)の協力により、中国農業科学院原子力応用研究所(CAAS/IAAE)を受入機関、日本原子力産業会議(JAIF)を事務局として、2002年8月20日から23日にかけて中国・北京市で開催された。
本ワークショップの参加者数は、文部科学省(MEXT)、中国国家原子能機構(CAEA)、中国農業科学院からの代表者および日本FNCAコーディネーター、各国プロジェクトリーダー、オブザーバーを含む45名であった。(参加者リストを添付)
本ワークショップでは、3件の招待講演を含む、合計10件の参加国における栄養繁殖性植物の突然変異育種技術に関する現状報告と1件の招待講演を含む合計9件のバイオ肥料に関する現状報告が発表された。参加者は、各国のカントリーレポートを発表し、討論および意見交換を行うとともに、各国が直面し、解決策を探っている諸問題についての経験を交換した。 |
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第1回バイオ肥料ワークショップには、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムからプロジェクトリーダー各1名の参加があり、日本からは6名が参加し、中国からは参加者4名および招待講演者1名が参加した。
セッション1では、8カ国からカントリーレポートが行われ、各国におけるバイオ肥料、特に根粒菌、菌根菌、根圏窒素固定菌、リン酸塩溶解菌の現状について報告された。また中国の専門家による招待講演があった。
引続き、セッション2では、日本の4名の専門家により、関連するトピックスについて発表があった。
総合討議では、2002年のトピックスの評価が行なわれ、また2003年の計画が討議された。(討議の内容は添付資料3として巻末に添付) |
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(1)トレーサー技術および他の方法による評価 |
(2)環境適応性 |
(3)作物との適合性 |
(4) 有効微生物の同定 |
(5)根粒非着生変異株の利用 |
(6)接種菌と土着菌の競合性 |
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(1)適切な微生物接種原担体 |
(2)環境適応性 |
(3)混合培養接種原 |
(4)接種原の品質管理基準 |
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引続き、FNCAプロジェクトにおけるバイオ肥料プロジェクトの進め方に関して、日本のプロジェクトリーダーおよびFNCAコーディネータより提案された「バイオ肥料を利用し、その効果を確認、展示するため
の実地試験」が受け入れられ、各国は、添付資料のとおり、圃場での実施計画案を提出した。バイオ肥料のためのマニュアルの作成が提案され、これに関して討議が行なわれた。参加国の担当分担は、以下のとおり。 |
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ベトナム |
編集責任 |
日本 |
分析方法全般 |
ベトナム |
根粒菌 |
韓国、ベトナム |
品質管理 |
マレーシア、タイ |
菌根菌 |
中国、フィリピン、インドネシア |
根圏窒素固定菌 |
韓国 |
リン酸塩溶解菌 |
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なお、本マニュアルは、プロジェクト期間中に発行される予定である。
バイオ肥料グループ・ニュースレターの第2号および第3号を、2002年11月に中国、2003年4月にタイが発行する予定である。
バイオ肥料のウェブサイトをFNCAホームページ上に作り、メーリングリストおよびカントリーレポート、招待講演、トピックスのようなワークショップの情報などを掲載する予定となっている。
また、参加国内およびアジア諸国間のネットワークを広げる目的で、メーリングリストへの参加を奨励すべきことが勧告された。
FNCAバイオ肥料ワークショップは、放射線育種ワークショップと分離して開催することが決定され、次回のバイオ肥料ワークショップは、ベトナムで開催される予定である。
バイオ肥料グループは、現代農業科学公園(北京市昌平区)および中国農業科学院原子力応用研究所(CAAS/IAAE)へのテクニカルビジットを行ない、参加者は、受け入れ機関に謝意を表した。
2003年FNCA放射線育種ワークショップをフィリピンが、またバイオ肥料ワークショップをベトナムが受け入れることが合意された。 また、2004年放射線育種ワークショップの開催地としてマレーシアが立候補し、参加者はこれに謝意を示した。
本ワークショップでは、現代農業科学公園(北京市昌平区)および国立ジーンバンク(CAAS/ ICGR)へのテクニカル・ビジットが行なわれ、参加者は、主催者と受入機関に謝意を表した。
本議事録は、ワークショップで全ての参加者で討議・了承され、2003年3月に東京で開催される第4回FNCAコーディネーター会合に報告される。 |
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<添 付>
バイオ肥料プロジェクト活動計画サマリー(和文仮訳) |
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(1) |
トレーサー技術および他の方法による評価 |
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窒素固定能とリン溶解能は15Nならびに32Pトレーサー法によって評価するのがもっとも信頼性が高い。マメ科植物の圃場試験では15N自然存在比法,
相対ウレイド法, 差し引き法などが有効。 |
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(2) |
作物に接種する微生物の環境適応性 |
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接種微生物は様々な地域の環境条件に適応しなければならない。まったく外来の菌から選抜するよりも、用いる地域の土着菌の中から接種微生物を選抜する方が、高い親和性が得られることが期待される。 |
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(3) |
作物との適合性 |
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バイオ肥料として用いる接種菌は目的とする作物と親和性を持たなければならない。いろいろな系統や品種について親和性を調べるべきである。 |
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(4) |
有効微生物の同定 |
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有効微生物の同定は表現形質の試験、または16S rRNAの配列決定により行う。 |
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(5) |
非根粒着生変異株の利用 |
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差し引き法、15N希釈法, 15N自然存在比法を用いる時に、対照植物として根粒非着生変異株を用いることが有効である。ダイズの根粒非着生変異株はすでに得られている。他のマメの根粒非着生変異株は、放射線照射法や化学薬剤法により作成することができる。 |
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(6) |
作物に接種する微生物の環境適応性 |
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接種微生物の土着株が生息しているような土壌にその有用微生物を施用する場合には、土着菌との競争を考慮し、それに打ち勝つような接種法を用いる必要がある。 |
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(1) |
適切なキャリア |
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微生物肥料を製造する際の接種担体としては次のようなものがある。
根粒菌 |
ピート、木炭、サトウキビ搾り粕、 土壌 (団粒) |
非共生的窒素固定菌 |
土壌、木炭 |
菌根菌 |
土壌、ピート、土壌+砂 |
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(2) |
滅菌方法 |
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接種担体の滅菌の最善の方法は放射線照射である。いろいろな担体について、必要な照射量を決める必要がある。経済的な観点から考えると、γ線だけでなく電子ビーム(EB)も用いると良い。
なお、接種前にあらかじめビニール袋に密封した担体をまとめて照射滅菌しておく方法は、低コストでの照射が可能であり、その担体の数量が多いほど、コストが下がることは、注目すべき点である。 |
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(3) |
混合培養接種原 |
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混合培養接種原は、農家にとって圃場での利用が容易であり、下記のような混合資材が考えられる。それぞれの製法が異なるので、各々作成してから混合するのが良い。
● |
根 粒 菌+菌根菌 |
● |
非共生的窒素固定菌+菌根菌 |
● |
根 粒 菌+溶解菌 |
● |
非共生的窒素固定菌+溶解菌 |
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(4) |
接種原の品質管理基準 |
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バイオ肥料に含まれる、保証されている目的微生物の菌数の評価は最も重要である。また、雑菌数のコントロールも必要である。
・ 製造業者によってうたわれているバイオ肥料の効果の評価には、滅菌した担体の肥料効果との比較をきちんと行うべきである。 |
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(5) |
非根粒着生変異株の利用 |
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差し引き法、15N希釈法, 15N自然存在比法を用いる時に、対照植物として根粒非着生変異株を用いることが有効である。ダイズの根粒非着生変異株はすでに得られている。他のマメの根粒非着生変異株は、放射線照射法や化学薬剤法により作成することができる。 |
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(6) |
作物に接種する微生物の環境適応性 |
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接種微生物の土着株が生息しているような土壌にその有用微生物を施用する場合には、土着菌との競争を考慮し、それに打ち勝つような接種法を用いる必要がある。 |
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農家、国民、政府に作物の生長、収量に対するバイオ肥料の接種効果を認識してもらうために、2002年から2005年までの圃場実地試験が計画された。バイオ肥料における有効微生物の選択にあたり、土壌や気候状況、宿主作物の遺伝子型のような環境的要因が、接種原の効果に大きな影響を与えるため、圃場における実証試験は必要であり、その実施が求められている。 |
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<中国> |
主要作物 |
イネ、冬コムギ |
バイオ肥料 |
A-15(根圏窒素固定菌)
BS(A-15の遺伝子組換え体) |
場所・規模 |
2ヶ所(中国北部、中国南東部) 各々1 ha |
実施 |
実施
2002年9月(コムギ)
2003年4月(イネ) |
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<インドネシア> |
主要作物 |
トウモロコシトウモロコシ |
バイオ肥料 |
Azospillumの混合接種原 |
目的 |
最適接種原の選択 |
場所・規模 |
Smatra、Lampung
Province
0.3 ha |
実施 |
2002年10月 |
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<日本> |
主要作物 |
大豆 |
バイオ肥料 |
根粒菌(Bradyrhizobium
japonicum) |
目的 |
根粒菌接種法と窒素施肥の改良による大豆の生長および種子生産に対する促進効果の評価 |
場所・規模 |
新潟県内2~3ヶ所 小規模
(10〜20m2で各々3~4回繰り返す) |
実施 |
2002年〜2003年 |
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<韓国> |
主要作物 |
トウガラシ、ハクサイなど |
バイオ肥料 |
リン溶解菌 |
目的 |
持続的農業と環境保全のため |
場所・規模 |
Suwon
、研究所の年次計画 |
実施 |
2003年〜 |
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<マレーシア> |
主要作物 |
油ヤシ、イネ |
バイオ肥料 |
・ |
菌根菌(油ヤシ・園芸作物) |
・ |
Azospirillum(油ヤシ・イネ) |
・ |
有機物分解菌(様々な作物から堆肥を生産) |
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目的 |
・ |
菌根菌(油ヤシ・園芸作物の苗木の生産販売) |
・ |
Azospirillum(実験用接種原) |
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場所・規模 |
実験地、温室、研究室
圃場:小規模(農業研究所試験圃場) |
実施 |
2002: 肥料の開発(菌根菌・有機物分解菌)
2003: 研究室・温室実験(菌根菌・有機物分解菌)
2004年:アイソトープ照射を含む小規模圃場試験(菌根菌)
2005年: 別の作物を使った実地試験の継続 (菌根菌・Azospirillum) |
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<フィリピン> |
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A. 国家規格化試験
主要作物 |
イネ、トウモロコシ |
イネ、トウモロコシ |
Bos
179 、BSs 202(根圏窒素固定菌) |
場所・規模 |
フィリピン各所(少なくとも3ヶ所)
各場所それぞれ0.5〜1.0 ha |
目的 |
・ |
BIO-Nのイネ、トウモロコシの生長、収量に
対する効果の評価のため |
・ |
国家試験の規格化のため |
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実施 |
2002年9月(イネ)
2003年5月(トウモロコシ) |
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B. 接種原品質の改良 |
2002年11月、放射線処理によるキャリアの滅菌(土壌・木炭) |
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<タイ> |
バイオ肥料の圃場実地試験計画(2003年) |
1. |
マメ科植物に対する根粒菌、(AMF)Anbuscular菌根菌の有効株の選択 |
2. |
接種原作成法 担体滅菌法(可能ならば放射線照射を用いる) |
3. |
2ヶ所
(肥沃土壌および非肥沃土壌)での根粒菌、菌根菌の良質株の混合接種の圃場試験の展示 |
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<ベトナム> |
主要作物 |
大豆、ピーナツ、トマト、イネ |
バイオ肥料 |
窒素固定菌+リン酸塩溶解菌接種原 |
目的 |
新しい混合接種原の実地試験 |
場所・規模 |
Hanoi、Sonla、Baegiary、Nghean
・小規模:1試験につき100m2 → 400m2
・大規模:1実地試験につき1ha → 4ha |
実施 |
2003年 |
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