FNCA 2009 バイオ肥料プロジェクトワークショップ
議事録
2009年11月2日 - 11月5日 タイ、バンコク市
1) ワークショップの開催概要
i) |
期日: |
平成21年11月2日(月)〜5日(木) |
ii) |
場所: |
タイ、バンコク市 |
iii) |
主催: |
文部科学省(MEXT)
タイ農業局(DOA)
タイ原子力技術研究所(TINT)
|
iv) |
参加者: |
中国、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムより各1名、インドネシアより2名、日本6名、合計14名 (添付資料2 参照) |
v) |
プログラム: |
添付資料1 参照 |
2) ワークショッププログラム
開会セッション
初日の開会セッションでは、タイ原子力技術研究所(TINT)所長のSomporn Chongkum氏より開会挨拶があり、正式にワークショップが開会された。続いて、タイ農業局(DOA)農業生産・農業科学研究開発課長のManthana Milne氏より歓迎挨拶があり、全ての参加者達に厚く歓迎の意を表した。
また、各国の出席者が紹介された後、日本文部科学省(MEXT)研究開発局国際原子力協力担当調査員の田所隆司氏より、タイ側の厚い歓迎の意に対し、謝辞が述べられた。
開会セッションでは、3名より発表があり、FNCA日本コーディネーターである町末男氏より、FNCAの11プロジェクトの総括と今年度の活動計画が紹介された。タイプロジェクトリーダー(PL)のAchara Nuntagij氏からは、タイにおけるバイオ肥料研究が紹介された。さらに日本PLである横山正氏より、FNCAバイオ肥料プロジェクトの総括が行われた。
セッション1: 公開セミナー
初日には公開セミナーが行われ、各国からの参加者を含め、タイの研究機関、研究所、大学等から計31名が参加した。講演概要は添付資料3の通りである。
セッション2: 特別講演
特別講演として、DOAの3名の専門家より、タイのバイオ肥料研究に関する発表があった。
初めに土壌部微生物研究グループのSupaporn Thamsurakul氏がAM接種菌の話を行った。DOAでは年間5トン生産販売し、トウモロコシやソルガムへの化学リン肥料の供給を20-50%減らし、一部の農家はその結果、収益が57%上昇した。次にSompong Menchang氏がアゾスピリルム等を用いた水稲・トウモロコシ等のバイオ肥料の話を行い、収量が10〜30%改善されたことを報告した。最後に、Bhavana Likhananont氏がリン溶解菌の話を行った。このリン溶解菌の接種は青枯れ病等の生育を抑制することも報告された。
セッション3: カントリーレポート
計8ヶ国より、2007年〜2009年までの多機能バイオ肥料開発に関する研究概要が報告され、また、2010年〜2011年までの研究計画が紹介された。各国の発表概要は添付資料4の通りである。
セッション4: プロジェクトの計画および挑戦
以下の4つのテーマについて、議論が行われた。
I. 商業ベースでキャリアの放射線滅菌を普及させるための戦略
放射線によるキャリア滅菌に関する、施設、利点、手順、照射費用の情報をバイオ肥料生産者や大学や研究機関に知らせる。農民、バイオ肥料生産者、研究者に対しバイオ肥料普及に関する的確な情報をながす。上記項目に関しては、各国の原子力機関とFNCAが、ウェブサイトやニュースレターを用いて協力する。
II. 多機能バイオ肥料の開発と普及計画
相野公孝氏より、多機能バイオ肥料の開発に役立つ、微生物農薬開発で成功した例と、失敗した例が紹介された。参加した多くの研究者は、別々の微生物を併せて2つ以上の機能を付与することを目指しており、圃場試験の前に実験室レベルで、競合や協同作用効果を調べることを確認した。また、接種剤の調整に関して、前もって全部の種類の微生物を混ぜ合わせる、接種直前に別々の袋に入った接種剤を混ぜ合わせる等、その他考えられる手法を、各国でそれぞれ試すことを確認した。また、町氏より、接種剤とキトサンの混合を行って、効果を確認する必要があるとの提案があった。
III. 農民組合や肥料生産者等のエンドユーザーとどの様に連携するか
アジアにおける持続的な農業生産の発展には、各国政府のバイオ肥料の技術改良や認知に対する強い後押しが必要である。各国の政府は、国際基準に沿って、国内法律や科学的なモニタリングによりバイオ肥料の品質保証を行う役割を負っている。バイオ肥料生産者は、農業研究機関や農民の協力で普及試験を行い、エンドユーザーである農民に受け入れられる高品質のバイオ肥料を生産する責任がある。参加国の研究者は、バイオ肥料の国際基準の作成やバイオ肥料生産者の製品の普及試験等に連携関与する。
IV. FNCAバイオ肥料プロジェクトにおいて残されている主要課題
各国において、それぞれバイオ肥料が生産されているが、一番の問題となっているのはバイオ肥料の品質である。Iswandi Anas氏がリーダーシップをとり、現在のバイオ肥料マニュアルに加えて、バイオ肥料評価の国際基準マニュアルを作成することに全員が合意した。各国のプロジェクトリーダーが協力して作成を行い、各国の政府がそれを参考にバイオ肥料の品質を制御できるようにする。
|
セッション5: 2007年〜2009年までのプロジェクトレビュー、および2010年〜2011年のプロジェクト計画
横山氏よりリードスピーチがあり、2007年〜2009年までのプロジェクトレビューと2010年〜2011年のプロジェクト計画に関する議論が行われた。議論の内容は以下の通りである。
1. |
放射線照射を利用したキャリア滅菌については、いくつかのデータがあるが、キャリアの種類により適正線量は異なり、いくつかのキャリアに関しては未だ適正線量が決定されていない。そのため、オートクレーブと比較し、異なるキャリアに対する照射滅菌試験を進めることが必要である。
|
2. |
植物の生長や養分獲得を促進すると共に、植物の病気を軽減するような機能を併せ持つ、多機能バイオ肥料の開発が必要である。その場合、1種の菌株が複数の有益機能を持っている場合は問題ないが、作物への栄養供給を担う微生物と作物の病気への抵抗性を誘導する微生物を混ぜ合わせる場合等は、往々にして、個々の微生物が持つ機能が競合作用により打ち消されることが生じる。そこで、現在保有している微生物を混ぜ合わせて多機能にする場合は、そのような欠点を克服するような手法、例えば、別々の袋に保存し、接種直前に混ぜ合わせるといった工夫を行い、多機能バイオ肥料を開発する。 |
セッション6: 総合討論
本セッションでは、町氏よりFNCAバイオ肥料プロジェクトの共同ステートメントが提案され、全ての参加者により添付資料5の通り賛成された。また、ニュースレターも引き続き作成され、全ての参加国におけるバイオ肥料研究開発の現状についてをテーマとし、発行することとする。2010年度のワークショップは中国で開催される予定である。
閉会セッション
議事録が作成され、全ての参加者により承認された。これについては2010年に日本で行われる予定の、第11回コーディネーター会合で報告される予定である。
3) テクニカルビジット
3日目に行われたテクニカルビジットでは、DOA、およびTINTへの訪問視察が行われた。
1. タイ農業局(DOA)
参加者達は、初めにDOAの土壌微生物研究グループの研究室、およびDOAの接種材生産工場を見学し、現在行われている研究についての説明を受けた。また、36haの規模を持つ試験場を訪問し、PGPR1を香米に接種する様子や水田の様子を観察した。病原菌への拮抗作用と同時に養分供給効果も持ち、成長率も大変良好である。この多機能バイオ肥料候補が、拮抗微生物と植物生長促進根圏細菌(PGPR)の両方の効果を持つことが分かった。
2. タイ原子力技術研究所(TINT)
TINTのタイ照射センター(TIC)においては、プラントマネージャーのPravait Keawchoung氏より説明を受けた後、照射施設を見学した。TICでは政府組織、民間組織のための食品照射が行われている。
|
4) 添付資料
添付資料1: プログラム
添付資料2: 参加者リスト
添付資料3: 公開セミナーサマリー
添付資料4: セッションサマリー
添付資料5: FNCAバイオ肥料プロジェクトに関する共同ステートメント
|