FNCA

中性子放射化分析 ワークショップ

MENU
image

中性子放射化分析
 +  プロジェクト紹介
 +  プロジェクトリーダー
紹介
メッセージ
 +  活動成果に関連した論文
リスト

終了・中断した研究炉利用プロジェクト

研究炉基盤技術(終了)
 + プロジェクト紹介
 + プロジェクトリーダー
   紹介
   メッセージ

Tc-99mジェネレータ(終了)
 + プロジェクト紹介

中性子散乱(中断)
 + プロジェクト紹介
 + プロジェクトリーダー
   紹介


ワークショップ


FNCA 2012 中性子放射化分析ワークショップ

FNCA 2012 中性子放射化分析プロジェクトワークショップ
概要

2012年11月27日〜11月30日
ベトナム ハノイ



 2012年度の中性子放射化分析(NAA)ワークショップは、2012年11月27日より11月30日までの4日間、ベトナム原子力研究所(VINATOM)、ベトナム放射線・原子力安全庁(VARANS) および日本の文部科学省(MEXT)の主催により、ベトナム・ハノイにおいて開催されました。

 オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ及びベトナムの12カ国が参加し、参加人数は事務局を含め計18名でした。

   

 本プロジェクトは、研究炉を用いる中性子放射化分析(NAA)技術をさまざまな分析対象物に適用し、研究面ばかりでなく、社会経済的に大きく貢献することを目指します。NAAは試料を破壊せずに内部に存在する複数の元素を一度に高感度分析できるという優れた特徴をもちます。本プロジェクトは2011年度から第4フェーズに入り、前フェーズにひきつづき、「地球化学図作成と鉱物探査」、「食品汚染モニタリング」、「海洋環境のモニタリング」の3つのサブプロジェクトに対し、NAA技術の利用促進活動を行います。

 今回のワークショップは以下の6セッションから構成され、各国から参加サブプロジェクトの進捗状況について発表がなされました。

 セッション 1: 地球化学的試料のNAAによる元素分布図の作成と鉱物探査
 セッション 2: NAA関連発表
 セッション 3: 食品試料のNAAによる汚染モニタリング
 セッション 4: 海洋堆積物のNAAによる環境モニタリング
 セッション 5: 議事録草稿作成
 セッション 6: 議事録報告

「施設訪問」

 11月29日、セッション4終了後、原子力科学技術研究所(Institute for Nuclear Science and Technology)の原子力科学コンピューターセンターや、訓練ラボ、ガンマ放射線量校正室等の施設を見学しました。

   

「オープンセミナー」

 11月30日、ワークショップ終了後、オープンセミナーが開催されました。Dr. Cao Dinh Thanhベトナム原子力研究所副所長、町末男FNCA日本コーディネーターから開会の挨拶の挨拶のあと、ワークショップ参加者の海老原充(日本)、Cao Vu (ベトナム)、John Bennett(オーストラリア)によって、中性子放射化分析(NAA)の利用について講演がなされました。

   


FNCA 2012 中性子放射化分析プロジェクトワークショップ
会議報告

2012年11月27日〜11月30日
ベトナム ハノイ



参加者:
1. ジョン・W・ベネット氏 オーストラリア(サブプロジェクトリーダー)
2. シエド・モハメド・ホサイン氏 バングラデシュ
3. ニ・バンファ氏 中国
4. テレジア・リナ・ムリャニンシ氏 インドネシア
5. 海老原 充氏 日本 (プロジェクトリーダー)
6. 松尾 基之氏 日本(サブプロジェクトリーダー)
7. 田中 剛氏 日本(サブプロジェクトリーダー)
8. イーゴリ・シラチョフ氏 カザフスタン
9. ムン・ジョンファ氏 韓国(サブプロジェクトリーダー)
10. ナザラトゥル・アシファ氏 マレーシア
11. ダムディンスレン・ガンチュムル氏 モンゴル
12. レイモンド・J・スクガング氏 フィリピン
13. アルポーン・ブサモンコン氏 タイ
14. ブ・ドン・カオ氏 ベトナム
15. トラン・クアン・ティエン氏 ベトナム
16. 町 末男氏 FNCA日本コーディネーター

序文:
 中性子放射化分析(NAA)プロジェクトは、FNCA活動の研究炉関連プロジェクトのひとつである。開会セッションで、FNCA日本コーディネーターである町氏が「FNCA活動の業績および方向」について報告し、参加者の自己紹介でこのセッションを終了した。

 ワークショップは以下の6セッションから構成された。
 セッション 1: 地球化学図の作成と鉱物探査に用いる地球化学的試料のNAA
 セッション 2: NAA関連発表
 セッション 3: 汚染モニタリングのための食品試料のNAA
 セッション 4: 環境モニタリングのための海洋堆積物のNAA
 セッション 5: 議事録草稿作成
 セッション 6: 議事録報告

 以下に示すセッション1〜4の発表と討議のサマリーは、セッション5で仕上げられたものである。11月29日には、原子力科学技術研究所(Institute for Nuclear Science and Technology)の原子力科学コンピューターセンターや、訓練ラボ、ガンマ放射線量校正室等の施設のテクニカルビジットを行った。

サマリー:

セッション 1: 分布図の作成と鉱物探査に用いる地球化学的試料のNAA

オーストラリア
 採鉱と鉱物産業に関連する地球化学試料の測定を含む広範囲の活動が実行された。これらの活動には、石炭を含む鉱業で用いられる参照試料の値付や試験に必要な一連のプロジェクト、農地土壌図作成の新しい方法の校正、オーストラリアの歴史的鉱業地域の汚染土壌にさらされた子どもの足指の爪のヒ素に関疫学研究のためのNAA利用が含まれていた。

バングラデシュ
 NAAを用いて重鉱物や希土類元素を測定するために、バングラデシュのコックスバザールの海砂を用いた地球化学調査が行われた。解析結果により、コックスバザール海岸がいくつかの重鉱物や希土類元素が豊富で、商業ベースにのることが明らかとなった。

中国
 隠れた鉱物調査のために地下から放出されるガス(geogas)および関連する試料の2つのサイトが、INAAによって分析された。その結果、通常の地質調査分析は隠れた金属層の識別に有効ではないことが示されたが、geogas微粒子の元素組成中の異常は、隠れた鉱物体の有効な指標であるように思われる。

インドネシア
 地球化学図作成研究の2年目は、バンテン州について実行した。22元素(Al、Mn、V、Ti、Sc、Cr、Fe、Co、Zn、Rb、Cs、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Yb、Lu、Hf、Ta、ThおよびU)が評価され、セラン(Serang)地区とチレゴン(Cilegon)地区について元素分布図が作成された。濃縮係数(EF)計算により人為的発生源からの濃縮の兆候はなかった。

日本
 日本における地球化学図作成サブプロジェクトのため1つの有望な適用が始められた。矢作ダムを調査地域に選んだ。このダムは約40年前に構築され,大量の沈泥堆積物で満たされており、ダムの容量維持のため管理事務所が堆積物を浚渫している。我々はこの地域の地球化学図を持っており、河川堆積物の化学組成を知っていることから、ダムの堆積物は数百ppmの希土類元素を含むと期待した。この濃縮は鉱床中ほど高くはないが、それらを経済的にするかもしれないこれらの堆積物に関連したある利点がある。まずひとつは、堆積物がすでに取り出されていてダムの岸近くに便利なように落としてあることである。これは私たちの地球化学図の最初の適用になるだろう。

カザフスタン
 カザフスタンでは、NAAと蛍光X線分析法(XRF)の手法により希土類元素含有量のために地質試料を分析する新複合分析技術の仕上げおよび計測学的証明の研究が始められ、これは特に次の数年に採掘を薦められた大きなクンディバイ(Kundybai)のTi希土類元素鉱床の埋蔵量の調査および評価のためである。アルマティの地質科学研究所の命令で、最初の研究は、金含有量のため研削さえの前処理のないNAAにより、岩(地質断面)の中の金含有硫砒鉄鉱の容積測定試料の分析が行われた。前セミパラチンスク核実験サイト内のカラジラ(Karazhyra)炭坑を例にとると、鉱物資源の備えとしての石炭灰使用の可能性について予備調査がなされたが、問題は技術的というよりむしろ生態学と思われる。

マレーシア
 海洋堆積物の所内標準物質ST13を20から30回分析した結果から、合計34の元素の定量値が評価された。ほとんどの元素は、5%から24%の範囲の標準偏差で、よい精度を示した。NAA研究室には、特に安全目的のために、鉱物および廃棄物処理産業からUとThのレベルを分析するよういくつかのリクエストがあった。

討議サマリー - サブプロジェクト NAA-1: 地球化学試料NAA
 プロジェクト実行にあたり参加者が直面している障害についての議論があった。出てきた重要なテーマは、ユーザーやステイクホルダーのグループとの生産的なネットワークの確立と維持についての困難さであった。ほとんどのNAAグループがわずかな人数で、組織外の潜在的ユーザーグループに接近するための地位や権威をしばしば持っていない。あるケースでは、FNCAサブプロジェクトが国内の研究優先事項に入らず、FNCAの目的を満たすための支援や資金提供を見つけることが困難であった。いくつかの国はNAAを用いる可能性のある政府組織との接触が困難であり、いくつかのケースでは過去に政府系機関のためのプロジェクトがあったもののその連携が今は失われている。他のNAA研究室はそのNAAサービスを市場に出したくなかったが、それは原子炉が毎月比較的短時間しか稼働しなかったり、原子炉運転の信頼性が低かったりで、顧客が相応の時間で結果を得る確信が得られないためである。
 宣伝用資料の有効性についての議論があった。ほとんどのグループが、NAA用の、またはNAAを含むより広い分析サービス用の使用可能なパンフレットを持っていたと思われる。さらに、多くのグループが、NAAの連絡先の詳細を含むウェブサイトを持っており、そのいくつかはNAAサービスの料金をも含んでいた。
 潜在的エンドユーザーやネットワーク加入者にNAAの利点を伝える別の方法は、オープンセミナーやワークショップ、会合を通してである。ベトナムではNAAを含むすべての原子力技術を促進するために2年ごとに国内会議があり、約200人が参加する。インドネシアでは2日間のNAA年次会合を開催しており、BATAN、政府系機関および大学から約100人が参加する。
 宣伝用資料や国内会合の広範囲な有効性にもかかわらず、概してエンドユーザーとの生産的な連携が十分には形成されていないと思われる。町氏は、FNCA地域で高級官僚にしばしば会うのでもしそうすることを要求されれば喜んでNAAネットワークの促進を支援すると参加者に伝えた。

- 3年目(2013年)の計画
 現参加者はみな次の年もNAA-1サブプロジェクトを継続するつもりである。計画の要約は以下の通り。
 オーストラリアは、3つの土壌および堆積物試料の熟練度試験を主導し続ける。NAAプロジェクト参加国のうちの2ヵ国以外すべてが熟練度試験に参加している。石炭はオーストラリアのテーマの1つのままであり、オーストラリア地球科学機構(Geoscience Australia)とのネットワークは強化される予定である。
 バングラデシュは、コックスバザールの測定結果を論文紙に公表する予定である。
 中国は、鉱物資源識別のgeogas法に続けて注目し、恐らく大学の共同研究と共に研究成果を論文紙に公表する。
 インドネシアは、このワークショップで示された計画によれば、バンテン(Banten)州で今までの作業に関する実行報告書を完成させ、州の地球化学図作成を継続する。
 日本は、研究炉の利用が可能になれば、矢作ダムの砂の希土類元素含有量の地球化学図を開発する。
 カザフスタンは、2013年の終わりまでに鉱物試料中の希土類元素量を定量するためにNAAを使用することを国家に認定させるという主要プログラムを完了させる。岩中の金の地図を作成する新規3年プロジェクトは2013年に始まる。
 マレーシアは、所内標準試料の開発を継続し、適宜、鉱物試料の地球化学的分析を行う。新しいデジタル式制御装置を据え付けるために、2013年3月から10ヵ月にわたり炉の運転が止まる予定である。

セッション 2: NAA関連発表

カントリーレポート(モンゴル)
 モンゴルでは、NAAは1964年に始められた。以来、NAAは地質/鉱物試料中の金、銅、銀、希土類元素およびウランを定量するために使用されてきた。現在、モンゴル国立大学原子力研究センターのマイクロトロン電子サイクル加速器MT-22を使用してNAAを実施している。MT-22マイクロトロンでは、中性子束は108-109n cm-2 s-1である。今後、NAAによる研究を進展させるためには中性子束を増やす必要がある。これは新規研究炉で達成されるかもしれない。土壌以外の試料分析のため、新しい方式や新しい標準試料を準備する必要がある。

セッション 3: 汚染モニタリングのための食品試料のNAA

バングラデシュ
 食品汚染プログラムでは、毒性元素の測定にNAAを用いて鶏と魚の飼料について18試料を収集し分析した。分析結果より、鶏と鶏飼料の試料のうちいくつかは非常に高レベルのCr(10.3mg/g以内)を含むことがわかった。それらの汚染飼料はなめし革の裁断廃棄物から生じたものかもしれない。

中国
 10種類の魚が市場からサンプリングされ、INAAによって分析された。14元素が測定された。その結果、Rbを除いてほとんどの元素が淡水魚より海水魚で高濃縮であることが示された。

インドネシア
 ジャカルタの5つの地元市場で6種類の魚類試料を購入し、k0-INAAおよび比較法を用いて分析した。その結果、17の必須および毒性元素を定量した。海水魚のヒ素濃度が淡水魚より高く、水銀はすべて種類の魚試料から見つかった。

日本
 部分的には日本原子力研究開発機構(JAEA)の研究炉がNAA用に利用不可能であったのと、食品プロジェクトに関係する人々のスケジュールが地震や原発事故のために都合つかなくなったために魚試料のデータは得られなかった。そのため、代わりとして茶葉および米試料のNAA分析データが報告された。茶葉および米試料の分析におけるNAAの有効性が示された。

韓国
 重金属と鉱物測定のために7種類の魚を選んだ。As、CrとHgが検知され、定量された。定量した元素の中で、7種類の魚から一日に摂取するSeの量を米国の医学院(Institute of Medicine)の推奨食事摂取量の値と比較した。

マレーシア
 クアラセランゴール地域の8種類の海水魚からCr、Hg、Se、Znが測定された。いくつかの魚のHgのレベルは、EPAの指針値と比較すると高い食事摂取量値を示し、長期的に消費すると健康上のリスクをもたらす可能性がある。

フィリピン
 フィリピンでよく消費されている3種類の魚試料をエネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて分析した。毒性元素は試料中に見つからなかった。

タイ
 INAAを用いてバンコクの商業市場から購入した10種類の魚でAs、Cd、Co、Cr、Fe、Hg、Rb、Sb、Sc、SeおよびZnを含む毒性/必須元素が分析された。毒性元素として、Asは、すべての淡水魚で推奨される標準(2 ug/ g)を超えなかったが、すべての海水魚では超えた。Hgは、2種類の淡水魚、3種類の海水魚で推奨される標準(0.5 ug/ g)を超え、Cdの量は全て検出限界以下であった。

ベトナム
 ニン・トゥアン(Ninh Thuan)州で収集された6種類の海水魚の10試料で18元素がINAAによって測定された。その結果、ヴィンハイ(Vinh Hai)地区のアジから摂取するAsの量はWHOの許容値よりも高いことが示された。

討議サマリー - サブプロジェクト NAA-2: 食品試料NAA
 前回のワークショップで、共通目標は、参加国で最も人気がある、及び/又は最も消費された魚の種類とすることが決定された。本ワークショップでは、9ヵ国が汚染モニタリング用の食品試料分析に関する成果を発表した。日本は、福島事象のため魚の分析が行われなかった。フィリピンは、自国にNAA実施のための施設がないため、魚類試料中の重金属の測定が困難であった。他の7ヵ国は、汚染モニタリングのため重金属と魚の消費による栄養状態の評価のため必須元素の両方か、あるいはそのどちらかについて測定に成功した。本フェーズの協同作業の3年目であり最終年の目標試料について議論された。参加9ヵ国すべてが、分析対象の魚の由来が判ることが望ましいということを念頭に置いて、魚試料分析を継続することに合意した。
 一方で、2年目に収集された魚の分析データは、韓国のMoon氏によって照合され、要約される予定である。その結果は2013年9月に日本で開催されるAPSORC-5会議で発表される。
参加国:バングラデシュ、中国、インドネシア、韓国、日本(未定)、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム

セッション 4: 環境モニタリングのための海洋堆積物のNAA

バングラデシュ
 海洋汚染プログラムについては、モングラ(Mongla)港近くのパシュール(Pashur)川とモングラ(Mongla)川の岸と、スンダルバナンド(Sundarbanand)地域のカロムジャル(Karomjal)から堆積物試料を収集し、分析中である。昨年の発表の継続として、ブリガンガ(Buriganga)川沈殿物汚染状況も発表した。ある重金属汚染がブリガンガ(Buriganga)堆積物で非常に高かった。

インドネシア
 バンテン(Banten)州のチウジュン(Ciujung)分水界の堆積物における河川水質や重金属(Co、As、Sb、Cr、Fe、Mn、Zn、Pb、Cu、Ni、Cd)の空間分布を調査するために研究が行われた。汚濁負荷量指標、汚染係数、地球蓄積(geoaccumulation)指標および濃縮係数に基づいた評価によると、将来的に汚染が生じる潜在的リスク(特にCdによる)があることが示されたことから、定期的なモニタリングや効力をもつ環境保護規制が必要である。

日本
 この研究の目的は、有酸素または無酸素状態と同様、過去の低酸素状態の影響を明らかにする単純な方法を開発することである。東京湾の浚渫された地区で収集したコア試料をINAAを用いて分析した。浚渫された堆積物のFeおよびMnの濃縮は表面では低かった。2011年の酸化還元状態は非常に薄い堆積物試料によって明らかにされた。

マレーシア
 サバ州トゥンク・アブドゥル・ラーマン国立公園の11の試料採取地点から採取された海底堆積物中の重金属濃度レベルを、濃縮係数や汚染度、潜在的生態リスク指標といった評価ツールを用いて評価した。トゥンク・アブドゥル・ラーマン国立公園内のほとんどの場所は、試料採取地点TAR 11を除いて、汚染度だけでなく生態リスク指標にも基づく評価値が低から中程度であった。

フィリピン
 フィリピンのボラカイ(Boracay)島から採取した堆積物コア試料の元素組成をEDXRFを用いて求めた。その結果、すべての元素が毒性濃度未満であった。

ベトナム
 フォックディン(Phuoc Dinh)およびヴィンハイ(Vinh Hai)地区で収集された29の海洋堆積物試料中の25元素濃度をINAAで分析した。分析結果に基づき、EF、Igeo、Cf、Er(i)、CdおよびRI等の環境評価のための指標値を計算した。その結果、ファンラン(Phan Rang)において汚染があることが示された。

討議サマリー - サブプロジェクト NAA-3: 海洋堆積物試料NAA
 松尾氏とHossain氏が議長となり、まとめの討議が行われた。
 議論は、前年の提案に基づいた海洋汚染の測定のため各参加国の達成度に焦点をあてることから始まった。上記の主題セッションで、6ヵ国(バングラデシュ、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、ベトナム)が分析結果を発表した。FNCA日本コーディネーターの町氏より、すべての海がほとんど汚染がないことが各国の発表から確認されたと指摘された。この場合、なぜこのサブプロジェクトを継続することが必要かという疑問が提起され、そうでなければ新しい採取場所が選択されるべきであると指摘された。この点を明確にするために、サブプロジェクトリーダーである松尾氏が、たとえ海の調査地域が汚染されていなくてもバックグラウンドデータを持つために海の汚染物質のモニタリングを続けることが必要であると述べた。さらにフィリピンのSucgang氏が、ある無機元素の存在がある有機汚染物質の指標になりえるのでこのサブプロジェクトを継続することが必要であると指摘した。NAAプロジェクトのリーダーである海老原氏が、汚濁負荷量指数計算に関する彼の見解を述べ、各汚濁負荷量指数計算によってNAAで測定できる元素を注意深く選択するよう提案した。町氏は、汚濁負荷量指数計算が正確ならば、環境当局が規制値を設定する際に役立つだろうと述べた。松尾氏は、議論がかみ合うために、すべての国が同じ汚濁指数定式を使用するように要求した。
 松尾氏は、沈降速度を測定するためにコア試料に210Pbと137Cs年代測定法を適用する際の利点と欠点について説明した。コアが1962年以前に堆積した層を持つ場合、両手法は整合する結果を示すが、そうでない場合には137Csを用いて沈降速度を評価することができず、この場合は210Pbが有効である。
 品質管理のために3つの日本の河川堆積物JSd-1、2、3を利用することを推奨する旨の再確認がなされた。これらの標準参照物質は、昨年サブプロジェクト1で研究室間比較測定に用いられた。メンバー国で3つの物質を購入・配布する可能性が議論された。
 最後に、次の5ヵ国(バングラデシュ、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン)が、サブプロジェクト3への参加に関心を示した。その中でインドネシアは国内状況により環境モニタリングのために河川堆積物を分析することで参加する予定である。ベトナムは、新試料収集用予算の不足により本サブプロジェクト継続の困難さについて説明したが、ベトナムは今まで測定した試料で同一の汚濁負荷量指数を計算することにより、本サブプロジェクトを継続することに合意した。

2012ワークショップの討論とまとめ

海老原氏は、NAAプロジェクトの次フェーズに関して考え始めるべきとの発言からセッションを開始した。
現フェーズはもう1年間あり、次フェーズのアイディアを発展させ、プロジェクトの成功を実証する時間がある。
町氏は、この会合から生じたいくつかの推奨アクションを提示し、さらなる議論を招いた。ポイントと議論は以下の通り。

ポイント1:本会合参加者は、政府のニーズを満たす特定の研究に着手する目的で、NAA測定のエンドユーザーで最も適切な組織によるネットワーク構築に参加国が最善の努力をすべきである点で合意した。
  参加者は組織に戻ってその可能性を考慮し、最優先事項であるネットワーク構築の促進のために町氏から各国のコーディネーターに支援を要請して貰いたい旨の連絡をとる。
Bennett氏は、FNCA参加国の中の潜在的エンドユーザー組織を明らかにし、かつネットワーク設立のための価値に応じて優先順位をつけるためのアンケートの作成を提案した。翌3月の次回コーディネーター会合前にこの情報が町氏に送信できれば、これらのネットワーク設立を開始するために会合を利用できる。

ポイント2:本会合で、鉱物探査、環境保護分野でのNAA適用の最高の成功事例を印刷・公開することが合意された。この冊子は、NAA適用の利点に関する情報を提供するために潜在的エンドユーザーに配布される(編集:海老原氏、寄稿者:オーストラリア、日本、韓国など)。
  海老原氏は、過去に国際原子力機関(IAEA)によって作成されたような小冊子の例に言及した。本小冊子は、科学的な専門家よりむしろ潜在的エンドユーザーや意思決定者向けにすることが示唆された。海老原氏が編集者、Bennett氏は共同編集者となることに合意した。 Bennett氏は貢献としてテンプレートを準備することを提案した。それぞれの事例研究では、社会経済的利益の供述が含まれる。事例研究の著者は、出版物で名前が明記される。
成功例は「事例研究」として提示され、現在の活動に限定されるものではないという提案がなされた。
メンバー国は編集者による検討のため、抄録に貢献する。
小冊子を印刷物だけでなく、オンラインで利用可能にする場合の費用を調査する。

ポイント3:本会合で、NAA測定によりいくつかの国で魚の汚染が観察されていることを認識し、魚の汚染と海洋海底堆積物のNAA測定によってモニター可能な海水の汚染の間の相関性を研究することを考慮することが合意された(進行中の2つのサブプロジェクト間のクロスリンクの提供による)。
  野生の魚のソースは必ずしも識別できないことが認識されたものの、養魚場を潜在的な目標と見なすことができる。Hossain氏は、このパラグラフを修正することに合意した。

ポイント4:本会合で、AsやHgのようなNAAによる魚汚染物質測定の結果は、食品安全当局に伝えられ、さらなる研究のためにこれら当局との可能な共同作業が計画され実行されるべきであることが合意された。
  各国が食品安全モニタリングのそれぞれ独自のシステムを持つが、必要に応じて当局に報告し、潜在的毒性元素のレベルを計り評価することは重要である。

ポイント5:本会合は、鉱物資源の需要が社会経済的開発の状況の中で急速に増しているので、希土類元素を含む鉱物資源調査のためのNAAの適用がさらに強化されるべきことを認識した。

ポイント6:本会合は、FNCAがカザフスタンとモンゴルにその鉱物資源調査のためにNAAを適用する点において支援を提供することを考慮するかもしれないと合意した。両国は大きな鉱物資源を持つが、どちらもNAAが真価を発揮するための技術開発を行うに十分なNAAの専門知識がない。FNCAとの共同作業を通じて2ヵ国へのIAEA TCプロジェクトを立ち上げることができるかもしれない。
  モンゴルは今後数年で新規研究炉を建設すると思われるが、フィリピンは原子炉をまだ持っていない。モンゴルとフィリピンに対しては、データ整理に関しては自国で行われているが、FNCAがNAA実施において、特に照射と試料計数において協力するよい機会を提供することを確認した。協力オファーは、鉱物資源のためにのみではなく両国のニーズに応じて、それらの国々へ直接送られるべきである。
特に、モンゴルの場合は、協力が強く促される。TCプロジェクトは、特に鉱物資源開発に焦点をおいて、成功のよい機会となりうる。実際、対象となるすべてのFNCA参加国はTCプロジェクトを申請するよう推奨される。

 結びの発言で、海老原氏は、たとえしっかりした提案が2013年の終わりまで必要ないとしても2013年3月のコーディネーター会合で見解を表明できるように、このプロジェクトの継続(あるいは閉鎖)の理由に関して考えるよう参加国に要請した。

閉会挨拶
 町氏は、本ワークショップ主催に対してCao氏(VINATOM副所長)に心からの感謝の意を表明し、会合と続く議論に全員の貢献を高く評価した。また、社会と持続可能性向上のためにNAAの貢献を増加させる余地がまだあると示唆し、今後数年間により具体的な結果と共同作業による貢献の増加を望むとした。さらにワークショップの間に参加者間でより多くの接触が必要であるとした。Cao氏が挨拶を述べ、ワークショップは閉会した。


FNCA 2012 中性子放射化分析プロジェクトワークショップ
プログラム

2012年11月27日〜11月30日
ベトナム ハノイ



共 催: ベトナム原子力研究所(VINATOM)
ベトナム放射線・原子力安全庁(VARANS)
文部科学省(MEXT)
実施機関: 公益財団法人原子力安全研究協会
開催日程: 2012年11月27日〜30日
開催地: ベトナム・ハノイ、VINATOM本部

11月27日(火)
09:20 受付
 
09:30 - 09:40
開会セッション
開会挨拶
  Dr. Cao Dinh Thanh(ベトナム原子力研究所(VINATOM))
  齊藤毅氏(文部科学省(MEXT))
  町末男氏(FNCA日本コーディネーター)
09:40 - 09:50 自己紹介
集合写真撮影
09:50 - 10:10 FNCA活動の業績および方向
10:10 - 10:20 休憩
 
 
 
10:20 - 10:50
10:50 - 11:20
11:20 - 11:50
11:50 - 12:20
アジェンダ確認
NAA-1: 分布図の作成と鉱物探査に用いる地球化学的試料のNAA
議長:韓国
  オーストラリア
  バングラデシュ
  中国
  インドネシア
12:20 - 13:20 昼食
 
 
13:20 - 13:50
13:50 - 14:20
14:20 - 14:50
NAA-1: (続き)
議長:インドネシア
 日本
 カザフスタン
 マレーシア
14:50 - 15:20 休憩
15:20 - 17:20 まとめ、議論:オーストラリア、日本
 
11月28日(水)
 
 
09:00 - 09:30
NAA-2: NAA関連発表
議長:バングラデシュ
  カントリーレポート:モンゴル
 
 
09:30 - 09:50
09:50 - 10:10
10:10 - 10:30
NAA-3: 汚染モニタリングに用いる食品試料のNAA
議長:カザフスタン
  バングラデシュ
  中国
  韓国
10:30 - 11:00 休憩
 
 
11:00 - 11:30
11:30 - 12:00
NAA-3: (続き)
議長:フィリピン
  インドネシア
  日本
12:00 - 13:00 昼食
 
 
13:00 - 13:30
13:30 - 14:00
14:00 - 14:30
14:30 - 15:00
NAA-3: (続き)
議長:中国
  マレーシア
  フィリピン
  タイ
  ベトナム
15:00 - 15:30 休憩
15:30 - 17:00 まとめ、議論:韓国、タイ
 
11月29日(木)
 
 
09:00 - 09:30
09:30 - 10:00
NAA-4: 環境モニタリングに用いる海洋堆積物のNAA
議長:マレーシア
  バングラデシュ
  インドネシア
10:00 - 10:30 休憩

10:30 - 11:00
11:00 - 11:30
11:30 - 12:00
議長:ベトナム
  日本
  マレーシア
  フィリピン
12:00 - 13:00 昼食
 
 
13:00 - 13:30
13:30 - 15:00
NAA-4: (続き)
議長:タイ
  ベトナム
まとめ、議論:日本、バングラデシュ
15:00 - 17:00 テクニカルビジット
 
11月30日(金)
09:00 - 10:30 NAA-5: 議事録草稿
議長:日本
10:30 - 11:00 休憩
11:00 - 11:30 NAA-6: 議事録の報告
11:30 - 12:00 閉会挨拶
  町末男氏(FNCA日本コーディネーター)
  Dr. Cao Dinh Thanh(ベトナム原子力研究所(VINATOM))
12:00 - 13:00 昼食
 
13:30 - 13:40
オープンセミナー
1. 開会挨拶
  Dr. Cao Dinh Thanh(ベトナム原子力研究所(VINATOM))
  町末男氏(FNCA日本コーディネーター)
13:40 - 15:20 2. 概要
(1) ベトナムにおける原子力利用の展望(Dr. Cao Dinh Thanh)
(2) 日常生活への原子力技術利用および持続可能な発展(町末男氏)
15:20 - 15:40 休憩
15:40 - 18:00 3. 中性子放射化分析(NAA)利用
(1) NAAの利点および成功例(海老原充氏)
(2) ベトナムにおけるNAA利用の成功例(Mr. Cao Dong Vu)
(3) 資源探査分析ツールとしてのNAA( Dr. John W. Bennett )
(4) 環境汚染・保全モニタリングのためのNAAの役割(松尾基之氏)


FNCA 2012 中性子放射化分析プロジェクトワークショップ
参加者リスト

2012年11月27日〜11月30日
ベトナム ハノイ


オーストラリア

Dr. John William Bennett
オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)
中性子放射化グループリーダー

バングラデシュ

Dr. Syed Mohammod Hosain
バングラデシュ原子力委員会(BAEC)
原子力研究所(シャバール)(AERE)
原子力科学技術研究所(INST)
上席研究員

中国

Prof. Ni Bangfa
中国原子能科学研究院(CIAE)
核物理部教授

インドネシア

Ms. Theresia Rina Mulyaningsih
インドネシア原子力庁 (BATAN)
原子力産業材料技術センター研究員

日本

Dr. 町 末男
FNCA日本コーディネーター

Mr. 齊藤 毅
文部科学省(MEXT) 研究開発局原子力課
(併)研究開発戦略官付原子力国際協力室調査員

Dr. 海老原 充
首都大学東京(TMU) 大学院理工学研究科
教授

Prof. 松尾 基之
東京大学大学院総合文化研究科
教授

Prof. 田中 剛
名古屋大学年代測定総合研究センター
名誉教授

Ms. 猪越 千明
(公財)原子力安全研究協会(NSRA) 国際研究部

カザフスタン

Dr. Igor Silachyov
カザフスタン国立原子力センター(NNC)核物理研究所
主任研究員

韓国

Mr. Jong-Hwa Moon
韓国原子力研究所(KAERI)主任研究員

マレーシア

Ms. Nazaratul Ashifa ABDULLAH SALIM
マレーシア原子力庁(Nuclear Malaysia)
研究員

モンゴル

Mr. Damdinsuren GANTUMUR
モンゴル国立大学 原子力研究センター
研究員

フィリピン

Mr. Raymond J. SUCGANG
フィリピン原子力研究所(PNRI)
上級科学研究専門家

タイ

Ms. Arporn Busamongkol
タイ原子力技術研究所(TINT)
上級原子力研究員

ベトナム

Mr. Cao Dong Vu
ベトナム原子力研究所(VAEI)
ダラト原子力研究所(NRI) 分析技術センター副センター長

Mr. Tran Quang Thien
ベトナム原子力研究所(VAEI)
ダラト原子力研究所(NRI) 分析技術センター研究員



Forum for Nuclear Cooperation in Asia