FNCA 2006 放射線育種ワークショップ
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添付資料3

FNCA放射線育種バナナ耐病性専門家会合
研究進捗状況報告概要


インドネシア

バナナフザリウム萎凋病抵抗性個体を選抜するための病害多発圃場(hot spot)での観察の結果、植物は同時に二つ以上の病気、すなわちバナナバンチートップウイルス(BBTV)と Sigatoka 病、あるいはフザリウム萎凋病と Sigatoka 病、あるいはフザリウム萎凋病と BBTV および Sigatoka 病に感染していることが明らかとなった。そのため、当初フザリウム萎凋病に抵抗性であると思われた 446 の突然変異体は Sigatoka 病や BBTV など他の病気の被害を受けた。しかし、引き続き、果実を着けた突然変異体について、雄花蕾先端を採取して培養によるクローニングと増殖を行った。また、 hot spot での栽培による突然変異体の観察によって、 38 個体が耐病性を示したが、その後の 3 ヶ月でそのほとんどが Sigatoka 病とフザリウム萎凋病に感染した。

マレーシア

バナナ品種改良における一つの戦略は、突然変異の誘発によって、現在、一般に消費者に受け入れられている品種の重要な遺伝子型を維持しながら、 1 つ以上の特性を変えることである。試験管内での(In-vitro)突然変異の誘発はバナナのような栄養繁殖性作物の育種に重要である。特に、この手法は、遺伝的変異をもたらす有性生殖が存在しない、種子不稔のバナナ属(Musa) の種において重要であるかもしれない。この方法を用いれば、いかなる遺伝的変異も安定的に固定され、特性評価と増殖に利用することができる。このように、試験管内の突然変異誘発技術の導入によって、従来の古典的な育種技術の有効性がさらに改善され、遺伝的変異を拡大することが可能になる。マレーシアにおいては、一般に広く販売されているバナナ品種を育種材料にして、フザリウム萎凋病抵抗性突然変異体のスクリーニングと選抜に焦点を当て、今後も研究を進めていく。

フィリピン

高度に BBTV 病が多発する圃場において、 32 の G1 突然変異系統の抵抗性評価を行った。その中で、 5 抵抗性系統の抵抗性系統 (PR 25-28, PR 23-30, PR 2-45, PR I3-30, および PR 22-28) が選抜された。これまでに得られた 9 突然変異系統を農家の畑で栽培し、自然状態で感染させて BBTV 病に対する植物体の反応を観察した。その結果、これらの中から 3 系統 (PR 1-28, PR 13-30, PR 23-30) を選抜した。一方、 4 突然変異系統について線虫 ( Radopholus similis) 抵抗性に対する評価を行い、植物体根系の被害と線虫の増殖程度を指標とした調査で、 3 突然変異系統(PR 2-45, PR 4-45, および PR 10-45)が温室条件下で線虫抵抗性であると推定された。

ベトナム

ABB ゲノムを持つバナナ属(Musa)品種の、 2,3 葉期の葉鞘を培養のための材料に用いた。葉鞘片培養は MS 基本培地に 4mg/l のベンジルアミノプリン (BAP) と 0.5mg/l のナフタレン酢酸 (NAA) を添加して、発根後 2 倍に希釈した植物ホルモン無添加の MS 培地に移植した。この照射材料に対する最適ガンマ線照射量は 10Gy あるいは 20Gy であった。照射材料に対して、4種類の人工接種法(傷を付けた後の病原菌接種(wounded)、幼苗への病原菌注射(injection inoculation)、病原菌浮遊液への根部浸漬(root dipping)および病原菌浮遊液状での水耕栽培(hydroponics culture inoculation))を試みた。また、フザリウム萎凋病の hot spot に栽培して自然感染させる試験を行った。この試験で、本病原菌に感受性の植物体は、栽培 55-65 日後に葉部の病徴が観察された。なお、本病に対する感染率は対照系統(非突然変異系統)が 32 %であるのに対して 6 %と低いことが明らかになった。


添付資料4

FNCA放射線育種バナナ耐病性専門家会合
バナナ耐病性サブプロジェクト中間報告


1. 育種母材の選定
* 適切であったかどうか
< フザリウム萎凋病抵抗性 >
インドネシア : 品種名「 Berangan 」 ( ゲノム構成: AAA), フザリウム菌レース 4 感受性
マレーシア : 品種名「 Berangan 」 ( 同上: AAA), フザリウム菌レース 4 感受性
ベトナム : 品種名「 Tay 」 ( 同上: ABB), フザリウム菌レース 1 感受性
< バナナバンチートップ病(BBTV) 抵抗性 ( 補足的に線虫抵抗性と Sigatoka 病抵抗性 ) >
フィリピン : 品種名「 Lakatan 」 ( 同上: AA/AAA) BBTV 、フザリウム菌、 Sigatoka 病感受性
2. 培養技術の決定
* クローンの組織培養、選抜された突然変異クローンの単離と増殖など
- 外植片(培養に用いた器官)と培地
インドネシア : 雄花蕾 分裂組織に対して MS 基本培地 +3 mg/l ベンジルアミノプリン(BAP) +0.5 mg/l インドール酢酸(IAA)
マレーシア : 茎頂
懸濁細胞(単細胞にして培地中に浮遊させたもの)  MS 基本培地 + 5mg/l BAP
ベトナム : 葉鞘片 / MS 基本培地 + 4mg/l BAP + 0.5 mg/l ナフタレン酢酸(NAA)
フィリピン : 増殖中の培養シュート / MS 基本培地 + 5 mg/l BAP
3. 放射線照射方法
* 適正線量、放射線感受性など
a) 放射線感受性調査試験 / 植物数 / 照射線量
インドネシア : 0-80 Gy, 10 茎頂 /dose
マレーシア : 0-100Gy, 100 分裂組織 , 5 反復
ベトナム : 0, 10, 20, 30, 40, 50Gy; 10 茎頂 /dose
フィリピン : 0, 5, 10, 20, 25, 30, 40, 60, 80, 100Gy; 50 細胞塊(clumps) /dose
b) 照射線量(Radiation dose)
インドネシア : 50 %致死(LD 50): 40 Gy, 100 %致死(LD 100): 80 Gy
最適照射線量(Optimum dose): 10-20Gy
マレーシア : LD 50 : 50 Gy, LD 100 : 80 Gy
最適照射線量: 20, 30, 40 Gy
ベトナム : LD 50 : 30 Gy, LD 100 : 60 Gy
最適照射線量: 20 Gy
フィリピン : LD 50 : 20-25 Gy, LD 100 : 80 Gy
最適照射線量: 20 および 25 Gy
線量率(Dose rate):今後の検討
4. 耐病性の突然変異クローンの選抜
* スクリーニング方法の構築
5. 選抜した突然変異体の圃場における試験と評価
* 圃場試験でのデータや突然変異体の能力
[ インドネシア ]
温室内スクリーニング : ‘hot spot' で採取した土壌をプラスチックのポットに入れ、1ポット1個体で培地から取り出して 10 日後の植物をポットに移植し、3ヶ月間育てる。
圃場スクリーニング : 温室内スクリーニングで生き残った植物を hot spot に移植;移植個体数: 489
[ マレーシア ]
スクリーニング :
  • 浸漬法:病原菌胞子懸濁液 (10 6 胞子 /ml) 中に 1-2 時間浸漬。
  • ダブルトレー法(Double tray method):培地から取り出して4週間馴化した植物体を滅菌した砂培地に移植し、そのトレーを一回り大きなトレーに入れ大きなトレーにフザリウム菌胞子懸濁液を注ぎ込む。
  • 4-8 週間、個体ごとにポリバックで馴化した植物をフザリウム菌を培養したコアダスト(coir dust :ココヤシの実の外皮繊維を粉砕したもの)のトレーで 2 週間栽培し、その 4-6 週間後に感染の有無を評価。
    圃場スクリーニング : 上記のスクリーニング法で生存した植物を hot spot に移植する。ここで抵抗性の植物はさらに増殖し、 3 世代にわたって、 hot spot に移植して評価を行う。
    [ ベトナム ]
    温室内スクリーニング :
    a) 水耕栽培(胞子懸濁液) ; 1 週間処理
    b) 浸漬法 : 胞子懸濁液 (10 5 胞子 /ml) 中で、 24 時間、根を浸漬する。
    処理植物数:1回に 500 個体を容器中で同時に処理する。
    hot spot での圃場スクリーニング :
  • ‘hot spot' の状態 : 感受性の対照品種の個体が 50 % 以上感染する状態
  • 人工接種でテストする植物の最大数は 5,000 個体
  • 評価のパラメーター : 1) 葉の黄化(yellowing) / 偽稈の褐変(browning of the pseudostem)
  • ELISA 検定 : ELISA 検定によるウイルスの検出 (indexing) ;
    必須項目 : BBTV
    選択項目 : キュウリモザイクウイルス(CMV) および バナナブラクトモザイクウイルス(BBrMV)
    [ フィリピン ]
    温室内スクリーニング :
    培養植物をプラスチックポットに入れ、ウイルスを保毒したバナナアブラムシを 10 匹/ 1 植物に接種吸汁させる。接種後 1-9 ヶ月間にわたって、適宜、発病の有無を評価する。 BBTV の病徴のない植物については ELISA 検定を行う。
    系統数 : 6,000 以上の植物体のスクリーニングを行い、 BBTV の病徴のない 114 個体を選抜した。
    圃場スクリーニング :
    ELISA 検定で陰性と断定された抵抗性個体は組織培養によって増殖し、より高い強度で発病する圃場において、抵抗性を調査する。 この圃場による評価は、試験圃場あるいは農家の畑において 3 世代にわたって行う予定。
    系統数 : 32 系統 (1 世代目 ) および 10 系統 (2 世代目 ).
    1 系統あたりの供試植物数: 30 個体。すべての突然変異系統は組織培養によって維持されている。
  • 6. 成果の報告(レポートなど) Internal report, seminar and conferences, publication in journals, public patent
    Indonesia :
    1. Ishak and Ita Dwimahyani (2005) Evaluation of banana mutant lines growth and tolerance to Fusarium f.sp cubense (FOC), Stigma Vol. XIII (1) pp:26-29
    2. Ishak, Sasanti, W. and Yulidar (2004) Cloning and propagation of banana mutant line for selection purposes (Technical report 2004, CAIRT)
    3. Ishak, Sasanti, W. Yulidar (2005) Cloning and propagation of banana mutant lines for selection purposes (Technical report 2005, CAIRT)
    7. プロジェクトのその他の成果や波及効果等 組織培養上の新しい知見の発見
    培養から植物体作出までの期間の比較結果
    分裂細胞 ( 茎頂 ) を用いた組織培養 : 6 ヶ月
    細胞懸濁培養 : 12 ヶ月
    注:細胞の懸濁培養の方がキメラの出現が少ないという利点はある反面、植物体を作出するまでに約 2 倍の時間がかかることを明らかにできた。
    8. 本プロジェクトに関する意見(問題点、考え方、特記事項、要望等) 効果的な hot spot を見つけることの難しさとそのための予算の捻出
    注:真の「 hot spot 」は常に約 50 %以上、目的とする病気が感受性品種に発病する試験圃場を意味する。この圃場を好ましい状態で維持するためには、常に、病原菌を圃場で増殖する措置が必要である。また、このような圃場は、必ず、他の圃場と隔離されていなければ、他の畑にまで病気が蔓延するという危険性をはらんでいる。そのためには、適切な措置と、圃場の隔離が必要不可欠であり、この管理のためには研究資金が必要である。
    研究費の不足 ( インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム )I
    バナナ研究の国家プロジェクトの終了 ( マレーシア )
    9. 他の研究機関との共同研究 マレーシア : マレーシア大学(University of Malaya)、バナナ会社
    インドネシア : アンダラス大学(Andalas University)、バナナ会社
    ベトナム : 野菜果樹研究所(Vegetable and Fruit Research Institute)、バナナ会社
    フィリピン : PNRI, IAEA, PCARRD, バナナ農家
    10. エンドユーザー(育成品種が利用される対象農家あるいは企業) マレーシア : 一般農家 ( 圃場面積 1 ha 前後 ) および共同プランテーションやバナナ会社(圃場面積 40 ha 以上 )
    インドネシア : 伝統的農業を営む農家 ( 栽培面積 0.5 - 2 ha)
    ベトナム : 小規模農家 ( 栽培面積 1 ha 未満 )
    フィリピン : 小規模農家 ( 栽培面積 5 ha 未満 )

    添付資料5

    FNCA放射線育種バナナ耐病性専門家会合
    FNCAバナナ耐病性サブプロジェクト三ヵ年計画


    2006 年 7 月 28 日現在

      2005 年度 2006 年度 2007 年度 2008 年度
    サブプロジェクト 3
    “ バナナの耐病性 ”
    (2004 年〜 )
  • 開花雄花蕾または他の体外培養体等からのカルス胚体の誘導

  • 育種材料の照射
  • <BBTV>
  • 圃場試験評価(第 1,2 世代)
    <フザリウム>
  • 病害多発地帯の圃場選抜 ( 第 4 四半期 )

    *中間報告

     

  • <BBTV (その他) >
  • 温室内および圃場選抜(第 3 世代)(第 4 四半期)
    <フザリウム>
  • 温室内および病害多発地帯での圃場選抜(第 3 四半期)

  • <BBTV (その他) >
  • 複数場所での圃場試験  (Multi-location field trials) および特性評価
    <フザリウム >
  • 特性評価

    *最終報告

     


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