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気候変動科学
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気候変動科学プロジェクト

  1. 1. 目的と背景

     原子力技術及び同位体を用いた実験と分析を通じ、過去の気候変動の仕組みと過程を理解し、新たな知見を解明するための専門知識を共有する。

     複数の専門分野にまたがる本研究は、放射性核種、安定同位体分析、また従来の分析手法を、生態学的方法と組み合わせ、環境中に保存・記録されている様々な指標から、高解像度の気候記録を復元するデータセットを取得するためのものである。

     放射性核種と同位体の使用により、過去の気候変動の識別と時代の特定が可能であり、ひいては地球の気候システムの原動力を理解することが出来る。このために、アジア太平洋地域の主な地域の樹木の年輪、珊瑚及び湖沼に保存された記録を用いて、過去の気候情報の高解像度な復元を目指す。またこれにより、オーストラリアモンスーン、エルニーニョ・南方振動(ENSO)、インド洋ダイポール現象、太平洋十年規模震動など、気候変動の原動力及び過程を理解することに努める。

  2. 2. 気候変動の記録と関連指標

     以下の4つの例により、環境中に保存された記録(環境アーカイブ)と分析手法、またそれらから取得可能な情報について述べる。すべての場合において、様々な分析技術に加え、実地研究及びコア・試料の収集に関する適切な専門知識が必要とされる。

    1. 2.1. 湖沼堆積物

       湖沼堆積物の抽出・分析により、環境に関する様々な指標を取得することが出来る。花粉、木炭、珪藻類、安定同位体、地球化学試料(成分及び粒度の分析)などは、植生、水質、堆積作用の変化を示すことが出来る。これらの指標を組み合わせることにより、過去の気候の地域的な図式化、またさらに組み合わせれば地球規模の図式化が可能となる。堆積物コアの上層部分のPb(鉛)–210、Cs(セシウム)–137、またはPu(プルトニウム)の同位体分析、またコア全体にわたり存在する大型化石、多量の有機物、または貝殻のC(炭素)–14分析により、これらの変化の年表を作成することが出来る。

    2. 2.2. 樹木の年輪

       樹木の成長に従って、年ごとの気候の特徴が樹木の組織及び構造に埋め込まれる。気候変動(例えば、気温及び降雨量)の情報は、酸素安定同位体の特徴、セルロース、年輪の幅の情報との組み合わせで復元可能である。季節的な変化の少ない熱帯地方及び亜熱帯地方では、個々の成長輪を目視で確認することは困難である。季節的変化は、Itrax蛍光X線(XRF)コアスキャナーによる成分組成分析で確認可能であり、またC-14の加速器質量分析による年代測定で検証可能である。

    3. 2.3. 珊瑚

       珊瑚の骨格は、その成長期における付近の海水の化学的及び物理的状態の記録を示す。珊瑚の成長率が高いほど、過去における海洋循環の変化、海面温度及び海洋化学(これらは、ENSO及びインド洋ダイポール現象などの過程の変化を示すことが出来る)に関する高解像度な情報を入手できる。U(ウラン)/Th(トリウム)年代測定、C-14年代測定、安定同位体分析(特にδ18O)、ICP/MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を使用する微量元素組成分析(例:Sr(ストロンチウム)/Ca(カルシウム)比)及び続成作用を分析するSEM(走査型電子顕微鏡)/XRD(粉末X線回折法)などの技術は、組み合わせて過去の気候の復元に使用される。珊瑚のサンプルの収集には、極めて熟練したダイバー及び適切な装備の船が必要である。

    4. 2.4. 景観変化および河川流域

       石英に富む石灰質の岩相中に生成されるBe(ベリリウム)-10、C-14、Al(アルミニウム)-26およびCl(塩素)-36等の宇宙線生成核種は、岩相が受けた確率事象のタイミングと進行の速度を理解するための強力なツールとなる。(この岩相は、河川が運搬した掃流物質の中で傷がない状態で露出した岩盤の表面からなる岩相や、沖積及び崩積による谷の堆積物による岩相であって、地滑りによる土砂、広い渓谷及び海岸付近の扇状地の中にみられるものである)。こういった過程は、景観を変化させるため(例えば、岩盤の浸食、河川による浸食、流域全体にわたる堆積物の発生、貯蔵及び輸送、地滑りの頻度、沿岸の断崖の劣化)、人類による影響ならびに気候変動をより深く理解するきっかけとなる。

  3. 3. 炭素貯蔵

     炭素貯蔵は、近代の気候研究における重要な要素である。さまざまな土壌や沿岸の湿地・藻場の炭素貯蔵を正確に推定し、理解することは、二酸化炭素排出量と収支に関連する気候モデリングを正確にすることにつながる。本プロジェクトは、炭素貯蔵の時間的及び空間的側面を研究する原子力関連技術を利用してこれに取り組む。使用される原子力・同位体技術は、以下の通りである。

    (i)放射化学を使用するPb-210及びCs-137の年代測定
    (ii)加速器質量分析を使用したC-14、Be-10、Al-26及びPu同位体による年代測定
    (iii)同位体比質量分析を使用したδ13C、δ14N、δ18Oの安定同位体分析
    (iv)マルチコレクタ型誘導結合プラズマ質量分析計(MC-ICPMS)または表面電離型質量分析装置(TIMS)を使用したU(ウラン)/Th(トリウム)年代測定

     また高解像度Itrax蛍光X線(XRF)コアスキャナー、花粉分析、珪藻分析及び堆積物粒度分析等を用いて、(i)~(iv)の手法を補足する。



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