「豊かな生活に役立つ放射線」講演会開催報告
2009年2月
2009年2月17日、講演会「豊かな生活に欠かせない放射線」を、青森県青森市の男女共同参画プラザにおいて開催しました。当日は、100名を越える聴衆の参加を得て、3名の専門家の方から、原子力における平和利用の現状や将来展望を紹介いただきました。
冒頭、櫻井繁樹文部科学省大臣官房審議官より挨拶があり、2008年7月の洞爺湖サミットにおいてなされた、二酸化炭素を排出せず、地球温暖化対策に貢献し得る原子力発電の重要性についての提言を例に挙げ、低炭素社会形成に向けて、原子力推進が重要な政策に位置づけられていること、また、核燃料サイクルの重要な施設を数多く有し、原子力研究開発の推進を支援している青森県への、感謝の言葉が述べられました。
講演会プログラム(PDFファイル/13KB)
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櫻井繁樹
文部科学省大臣官房審議官 |
<講演>
放射線はその透過能力を利用して医療や歴史的文化財の調査など、幅広い分野で役立っています。本講演会では、植物の調査に焦点を置き、水と元素で構成されている植物に放射線を通過させるとどうのように見えるか、以下のような植物の構造・働きについて、様々な画像・映像を引用しながらの紹介が行われました。
- ユリの雄蘂・雌蘂がつぼみの中で成長する様子
- 杉の木口材の内部に見られる水の分布状況
- 植物の根が土中で成長する様子
- 植物体内における水・養分の動き
参加者からは、植物の内部構造の解明を可能にする先端技術に感心したとの声が寄せられました。
突然変異育種の原理と、日本を含む世界各国で利用されている現状についての説明が行われました。日本における突然変異育種の成功例として、背の低いイネや色・形態を変異させたキク、タンパク質含有量が調整されたコメが例として挙げられました。またFNCA参加各国においては、耐病性バナナ、耐虫性ランまたイネの成分改変品種の育成が研究されており、放射線育種法は有用な育種技術としてアジア各国で推進されています。また、食品照射について、世界各国では幅広く利用されており、ガンマ線照射により化学薬品・防腐剤を使用せずに肉・魚介類を貯蔵できることなどが紹介されました。
参加者からは、突然変異育種と遺伝子組み換え技術との違いについて質問が寄せられました。
手術、抗がん剤を使用した化学療法とともに、がんの治療において中心的な役割を果たしている放射線治療について、その有効性や具体的な治療法が説明されました。現在多様な放射線治療の方法が開発されていますが、さまざまな方向から立体的にがんのある部位に集中的に放射線をあてる定位放射線治療が世界的に普及しています。また、がんの形どおりに放射線を照射することが出来る、IMRT(強度変調放射線治療)についても紹介があり、さらに、正常組織への放射線による副作用が少なく、温存療法を可能にする重粒子線治療、がんの早期診断に大変有効なPET診断についても説明が行われました。
また、近年開発途上国でがんが急増している中、FNCA放射線治療プロジェクトが作成した治療手順(プロトコル)が教育プログラムの中に組み込まれるなどして、参加国に置いてその有効性が認められていることについても紹介されました。
FNCAの概要やこれまでの成果について説明が行われました。さらに、原子力技術の活用によって、地域の社会的・経済的発展に寄与し貧困削減を目指すというFNCAの目的についても紹介されました。FNCAのプロジェクトが、原子力科学技術を通して、医療・農業・工業の分野、また環境保全の面で、参加国の生活の向上に役立っている事例が取り上げられました。
さらに、近年懸念が拡がっている地球温暖化の防止に貢献し、エネルギーの安定供給を可能にする原子力発電を、クリーン開発メカニズム(CDM)に加えるよう、FNCAが働きかけていることについても紹介されました。
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講演後の質疑応答の様子 |
講演会風景 |
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