2017年10月24日(火)
オーストラリア原子力科学技術機構のMr Steve McIntosh(ANSTO政府・国際関係シニアマネージャー)及びProfessor Henk Heijnis(ANSTO環境研究リーダー)により、ワークショップは正式に開会された。参加者は、特に南波秀樹FNCAアドバイザーは歓迎を受けた。
初日各国参加者は、気候変動の研究に対する貢献の可能性と、すでに実施されている研究の内容について報告した。
10月25日(水)
ANSTOの研究者が下記のトピックスについて発表を行った。
1. | Monika Markowska: | 「気候研究における石筍の利用」 |
2. | Dr Quan Hua: | 「環境と気候に関する研究における放射性炭素」 |
3. | Professor David Fink: | 「気候と地形に関する研究における宇宙線生成同位体」 |
ワークショップ参加者はANSTOの研究者と対面し、質問する機会を得た。
その後、ワークプランに関する議論が行われ、プロジェクト活動において、下記のテーマを扱うこととなった。
1. | 気候アーカイブ: | 湖沼、マングローブ、珊瑚、石筍、樹木の年輪、巨大カキ |
2. | 炭素貯蔵: | 陸域土壌と沿岸システム(ブルーカーボン)における貯蔵 |
その後参加者は、これら2つのテーマに対する各国の貢献の可能性にについて検討した。
午後、ANSTOにおけるテクニカルツアーが実施された。参加者はまず加速器科学センターを訪問し、Dr Mike HotchkisとDr Toshi Fujiokaより、1MV、6MV、10MVの粒子加速器について説明を受けた。(本プロジェクトにおいては、加速器質量分析システムの利用が見込まれる。)その後、試料の処理を行うための施設に移動し、Dr. Fujiokaより、宇宙線生成同位体の加速器質量分析の準備作業について説明を受けた。続いて環境放射線測定センターを訪れ、ITRAX堆積物コアスキャニング施設を見学した。この施設は世界的にユニークなものであり、堆積物、珊瑚、石筍、氷床コア、木の年輪、鳥の羽、魚類、食肉、その他の食品試料の分析に使用される。この有益な技術により、微量元素データから高解像度の気候アーカイブを取得することが出来る。
Dr Matt Fischerにより、現在ANSTOと中国が共同で研究している北部オーストラリアのモンスーン現象に関する短い発表が行われた。Dr Fischerは、オーストラリアのノーザンテリトリーにおける石筍の研究が、どのようにFNCAプロジェクトに貢献し得るかについて述べた。
最後に参加者は低バックグラウンドガンマ線測定施設を訪れ、Prof Henk Heijinisより、環境放射線を低減するため注意深く建材を選んでこの施設が建設された旨説明を受けた。この取り組みにより、自然起源のバックグラウンド放射線の作用を25~30%削減し、また高精度かつ高純度なゲルマニウム検出システムを実現することが出来た。
10月26日(木)
3日目、ワークショップの議事録案が提示され、各国がワークプランを練り直すため、いくつかの指針が示された。参加国間の協力が促された。
参加者はワークプランを作成し、各自の研究をFNCAで定められた活動フェーズである2017年3月から2020年3月に収めるよう努めた。参加者は2020年の第一四半期までのワークプランを発表した。Prof HeijnisとDr Fischerは、すべての国別報告をワークプランに集約し、参加者の承認を求めた。数名の参加者は詳細な計画を提出する前に、所属組織や協力者に相談する時間が必要だった。ワークプランの改訂版は2017年11月15日までにProf Heijnisに提出することとされた。
ワークショップの終わりに、Dr Ali Arman Lubis により、2018年度ワークショップの開催地となる、インドネシア中部ジャワ州スマラン市のディポネゴロ大学が紹介された。大学は、中部ジャワ州の北岸にあるスマラン市の郊外に位置しており、ワークショップでは沿岸及び内陸部湖沼への訪問を予定している。ワークショップはDr Ali Arman Lubis(インドネシア原子力庁(BATAN))とディポネゴロ大学大学院資源・革新部長Dr Tri Soeprobawatiの共同開催となる。
ワークショップは16時に閉会となり、主催者はFNCA関係者とANSTOの国際チーム及びその他の協力者に対し謝意を表するとともに、参加者の安全な帰国を願った。