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放射線加工・高分子改質 ワークショップ

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ワークショップ

FNCA 2003 低エネルギー電子加速器ワークショップ



 2003年8月18日(月)から8月22日までの5日間、マレーシア・クアラルンプールLegendホテルを会場として、FNCA2003電子加速器利用ワークショップが開催されました。

第1日目は、電子加速器利用に関する上級管理者セミナーが開催され、マレーシアの産業界、大学、研究機関からの参加者およびFNCA加盟各国専門家、計87名が参加しました。竹内新也氏(文部科学省 研究開発局 原子力課 企画官(国際協力担当))が開会の辞を述べ、マレーシア原子力庁(MINT)長官 Ahmad Sobri氏から歓迎の挨拶が行われました。会場では同時併設のミニ展示があり、日本から4社、韓国から1社、マレーシアから6社の出品がありました。開会式後、町末男氏(FNCA日本コーディネーター・日本原子力産業会議)から「工業における放射線処理技術の展望」と題する基調講演がありました。 マレーシア原子力庁(MINT)のKhairul Zaman氏から「マレーシアにおける電子線加工技術」、日本プロジェクトリーダー 久米民和氏(日本原子力研究所)から「低エネルギー電子線を用いた天然高分子の放射線処理」、NHV社の柏木正之氏から「電子線照射システム」、マレーシア工大のMohamed Mahmod氏から「電子線を利用した膜の製造」、中国近代物理研のZHAN Wenlomg氏から「中国における電子線排煙処理」、韓国EB-Tech社のBumsoo HAN氏から「工業廃水の電子線処理」と題する諸講演が行われました。

 2日目は、FNCAプロジェクトの概要について町末男FNCA日本コーディネーターから「2002年度FNCA活動の進展」、久米民和プロジェクトリーダーから「電子加速器利用プロジェクトの概要」と題して説明があった。招待講演として、日本原子力研究所 吉井文男氏の「高分子材料の放射線橋かけ」、MINTのHashim Kamaruddin氏の「低エネルギー電子加速器を用いたサゴデンプンフィルムの放射線加工」が行われました。また、参加各国からフィルム試料の電子線照射を中心とした照射利用研究の現状が報告されました。

 3日目は、MINTを訪問し、低エネルギー電子加速器を用いたサゴデンプン・フィルムの橋かけと中エネルギー電子線による創傷被覆用ハイドロゲルおよびカルボキシメチルセルロース(CMC)糊状シートの橋かけのデモンストレーションを行った。また、MINTの高分子工学研究室およびパイロット施設を見学した。

 4日目は、参加各国から2003 ? 2004年の活動計画の発表の後、現行プロジェクトの中間評価を行った。さらに、プロジェクトの継続と活動計画について議論した。

 5日目(最終日)は、議事録の草案を審議し、ワークショップ議事録が採択された。最後に、久米プロジェクトリーダーが閉会の挨拶を行い、成功裡に閉会しました。


FNCA2003電子加速器利用ワークショップ ―フィルム照射システム―
議 事 録 (仮訳)
2003年8月18 - 22日、クアラルンプール、マレーシア


1.はじめに

 本ワークショップは、文部科学省の主催によりマレーシア原子力庁(MINT)と日本原子力研究所の協力のもとに、マレーシア、クアラルンプール市Legendホテルで開催された。ワークショップの主題は、アジア原子力協力フォーラム(FNCA)プロジェクト加盟各国のフィルム試料への電子加速器利用の現状を分析し、具体的な協力のプログラムを策定することであった。

 今回は、 FNCAプロジェクトの電子加速器利用の第3回ワークショップにあたる。 プロジェクトの主要目的は、低エネルギー電子線照射システムを用いる新しい技術の開発を行うことである。新技術は、様々の応用分野と優れた安全特性を持ち、応用例は公開され、各国が共有の財産として活用するものである。自己遮蔽型低エネルギー電子加速器システムは、初期投資がコバルト60施設より少なく、運転維持管理は簡単で、安全であるため、環境保全など様々な分野に応用できると期待されている。 このプロジェクトはFNCA加盟8ヶ国により組織された。

 ワークショップには各加盟国からの電子加速器利用の専門家、中国(2名)、インドネシア(2名)、韓国(2名)、マレーシア(11名)、フィリピン(2名)、タイ(2名)、ベトナム(2名)と日本から5名が出席した。

 ワークショップの初日に電子加速器利用に関する上級管理者セミナーが開催され、マレーシアの産業界、大学、研究機関からの参加者およびFNCA加盟各国専門家、合計87名が参加した。 文部科学省原子力課竹内新也企画官が開会の辞を述べた。竹内氏は開催国マレーシアに謝意を、また、参加者に歓迎の意を表し、同時にFNCAは原子力利用の国際協力にとって重要な機構であると強調した。

 セミナーは、マレーシア科学技術環境省大臣に代り、MINT長官Dr. Ahmad Sobri Hj. Hashimが主宰して開かれた。Dr. Sobriは参加者に歓迎の辞を述べ、FNCA事業に対するマレーシア政府の援助に謝意を表した。マレーシアは、FNCAがアジア地域諸国の協力、とくに原子力科学技術協力において成功を果たした会議の一つであると評価していることを述べ、最後に、セミナーの成功を希望し、一層のFNCA支援を約束した。

 会場では同時併設のミニ展示があり、日本から4社、韓国から1社、マレーシアから6グループの出品があった。市場商品であるサゴハイドロゲル、サゴ発泡体、コーティング剤としてのパームオイルアクリル樹脂、耐熱難燃性材料、液体試料照射用の低エネルギー電子加速器などのパネル展示があった。

 FNCAワークショップはMINT副長官Dr. Nahrul Khair Alang Md. Rashidが主宰し、開催された。

 日本のFNCAコーディネーター町氏から2002年度のFNCA活動の概要報告があった。 2002年10月31日に韓国ソウルで開かれた第3回大臣級会合で「人材養成の戦略」および「アジアにおける原子力開発の継続維持」について討議された。第1主題のプロジェクトはFNCAが開始するべきであること、第2主題については高レベルの会合を準備することが勧告された。2003年3月5 ~ 7日に日本で開催された第4回コーディネーター会議では、11プロジェクト全てがほぼ計画どおりに実施されたことおよびその成果が報告された。

 電子加速器利用プロジェクトのリーダーである日本原子力研究所の久米氏はプロジェクトの概要を報告し、プロジェクトの目標は電子加速器利用の拡大および情報交換と共同研究を通じて加盟各国の利益になる実用的応用研究を実施することであると強調した。

 ワークショップでは、2つの招待講演、参加各国からの現状報告、ハイドロゲルフィルムの電子線処理のデモンストレーションなどがあり、将来計画と新しい活動目標について討議が行われた。


2. 招待講演

 日本原子力研究所の吉井氏は、「高分子材料の放射線橋かけ」と題して講演した。ポリテトラフルオロエチレン (PTFE)、 生分解性の脂肪族ポリエステルや多糖類のような分解型高分子に橋かけ構造を導入する技術について説明し、それらの応用例を報告した。トリアリルイソシアヌレートやトリメタアリルイソシアヌレートのような多官能性モノマーは、低濃度の添加により、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリカプロラクトン (PCL)、ポリ乳酸(PLA)のような生分解性の高分子の橋かけを促進する。橋かけは生分解性高分子の高温における変形を防ぐのに有効である。土壌埋設試験の結果では、照射橋かけ構造を導入した高分子でも生分解性であることが明らかになった。PTFEは溶融状態 (融点=340 ℃)で照射することにより橋かけを行うことができ、1000倍の耐磨耗性をもつ透明なフィルムを創製することができた。放射線橋かけポリカルボシラン(PCS)繊維は炭化処理により高耐熱性の炭化ケイ素に転換でき、ロケットのタービンや胴体として使用できる。

 「サゴデンプンの放射線加工」と題してMINTのDr. Kamaruddin Hashimが講演した。MINTの200 keV電子加速器を用いてサゴデンプンとポリビニルアルコールのブレンドフィルムを電子線照射した。フィルムを架橋するに際し、加速器の最適ビーム電流、電圧、照射線量、フィルムの厚み、ポリビニルアルコールの濃度効果などを吟味した。低ビーム電流においてはフィルムの厚みが、サゴハイドロゲルの橋かけ度に影響していることが分った。200 keVの電子線を用いたとき500μm厚ではビーム電流によらず橋かけは生じなかった。50から200μm厚では、ビーム電流8mAがサゴハイドロゲルの橋かけに最適であった。


3. 参加各国の報告

 電子加速器利用の現状、特にフィルム/ハイドロゲルについて参加8ケ国から報告があった。出席者は、討論、意見交換を通じて、放射線処理とフィルム/ハイドロゲルを対象とした低エネルギー電子加速器の利用について有益な情報を得ることができた。

中国
 北京に100 MWの石炭火力発電所の305,400 Nm3/hの排煙を対象に、また、杭州に200 MW石炭火力発電所の630,000 Nm3/hの排煙を対象に2つの工業規模実証プロジェクトが計画されている。清華大学では新しい排煙処理法の最適化が図られている。熱収縮チューブ、包装材、コーティング材料、ケーブル、電線、殺菌、食品照射などを目的として、民間で30‐40台の電子加速器が稼動中である。さらに、新しく5台の加速器の導入が計画されている。 排煙処理のため100 kW‐500 kWの高出力電子加速器およびその利用の研究開発が進行中である。殺菌、食品照射、半導体素子照射のために60Co線源に代わる5‐10 MVの高エネルギー電子加速器の開発が民間会社の主導で行われている。

インドネシア
 インドネシアには4台の電子加速器があり、2台は表面コーティングの放射線キュアリングと電線ケーブルの橋かけの開発研究に用いられ、2台はタイヤのプレキュアリング用として生産現場で使用されている。放射線殺菌用の1台の加速器がジョクジャカルタのBATANで建設中である。 PBSの橋かけを多官能モノマーと無機化合物の共存下で行った。電線とケーブルの橋かけを民間会社と協力して実施した。ポリエチレングリコールを用いてPEO‐カラギーナン・ハイドロゲルを調製した。

日本
 多糖類誘導体の放射線処理の研究で、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、カルボキシメチルキトサン(CM‐キトサン)が、糊状で放射線橋かけすることが明らかとなった。CMC軟ハイドロゲルは、床ずれ防止用マットとして医療・福祉分野で使われている。ゲルマットは体圧を分散させ、手術中の血液の循環を改善するため、床ずれを防止する。CM‐キトサン・ハイドロゲルは抗菌活性を持ち、また、重金属を除去する吸着剤としても有効である。カルボキシメチルキチン(CM‐キチン)とCM‐キトサン・ハイドロゲル・シートの金属吸着実験では、Cu(II)の水溶液に漬けると、CM‐キチンとCM‐キトサンは、それぞれ、161、172 mg/g(乾燥ゲル) のCu(II)を吸着した。フタレート基を持つセルロース誘導体のアルカリ水溶液をアセトンと共に練り込んだ糊状態で照射すると橋かけさせることが出来た。この橋かけゲルはクロロフォルムやピリジンのような有機溶媒を50 - 70倍吸収した。

韓国
 エチレン-1-ブテン共重合体(EBP)を低密度ポリエチレン(LDPE)とブレンドし、包装材料としての機械的性質を改良した。これを電子線照射し、引っ張り強度、破断伸び率、モジュラス、剥離強度、熱的性質など物理的物性を調べた。LDPEにEBPを添加することにより引っ張り強度や剥離強度のような機械的性質が改善された。 EBPの添加効果では、430 %の剥離強度が増加した。 LDPEに対しては10‐25 w%のEBP添加により剥離強度が増強した。 ハイドロゲル創傷被覆材の開発および臨床試験が行われている。

マレーシア
 低エネルギー(200 keV)電子加速器を用いるハイドロゲルフィルムの電子線処理プロジェクトが進行中である。フィルムの厚みは50‐150μmである。 500μm以上の厚みに対しては、最低500 keVのエネルギーが必要である。サゴデンプンハイドロゲルの製造技術は工業化を進めている最中である。
 工業廃水、特に繊維工場からの廃水の電子線処理の研究は緒についたばかりであるが、排煙の電子線処理については1.0 MeVで400 m3 を対象としたセミパイロット規模の開発研究が行われている。ディーゼル発電機の排煙処理研究は完結し、マレーシアの発電会社への導入が検討されている。

フィリピン
 カラギーナン/PVPのハイドロゲルを調製した。このハイドロゲルの火傷被覆材としての臨床試験を数ヶ所の病院で実施し、良好な結果を得た。このハイドロゲル製造のパイロット・プラントが2004年初めに稼動する予定である。カラギーナンを用いた着色線量計を開発した。
 原研高崎研の反応槽付き低エネルギー電子加速器を用いてカラギーナンの分解実験を行った。高分子量と低分子量のカラギーナンを照射すると、各種分子量のカラギーナンが得られた。植物成長促進剤としての分解カラギーナンの野外試験を3つの野菜栽培業者と共同で開始した。

タイ
 ゼラチン状キャッサバ・デンプンに少量のマレイン酸の存在下でアクリルアミドモノマーの放射線グラフト共重合を行った。少量のマレイン酸の添加によりグラフト効率が向上し、高吸水性高分子が得られた。グラフト高分子の吸水量はpHとイオン強度の影響を受けた。高吸水性高分子の空隙率、網目構造が吸水の程度に関係していることが明らかとなった。この高吸水性高分子は衛生用製品として期待されている。さらに、キトサンをベースにした複合体の創傷被覆材や生物材料としての絹タンパク質ハイドロゲルの開発が実施されている。
 ガンマ線照射により分解したキトサンは植物成長促進剤として使われ、本技術は既に民間会社に移転され、製品が市場に試供されている。
 3台の線型電子加速器がチェンマイ大学病院に設置され、医学目的に使用されている。フェムト秒(10−15 s) の相対論的電子線施設が2003年末に操業が認可される予定である。プロトタイプの10 MeV線型電子加速器が電子線加工用に導入される予定である。パルス型300 keVの電子線加速器の概念設計が完了し、2003年10月に着工の予定である。

ベトナム
 創傷被覆材と高分子吸水剤の2種類のハイドロゲルが開発された。海藻から抽出したアルギン酸、甲殻から得られるキチン/キトサンのような天然高分子を分解して、植物成長促進剤(T&D)および植物保護剤(OLICIDE)の2つの新製品を開発し、市販している。橋かけとグラフト重合技術を用いて船舶の部材、石油探査および回収用の材料、天然ゴム加工工場の廃水を処理する微生物の固定化のための材料の創製研究を行っている。電子線装置設置の推進に関しては、中エネルギー(0.5‐1.5 MeV、20‐50 mA)の電子線装置が、天然高分子分解、熱収縮材料および生分解性材料の開発に有効であると結論した。


4.デモンストレーション

 MINTのキュアトロン(Curetron、200 keV、20 mA)を用いたサゴデンプンフィルムの橋かけと中エネルギー(3.0 MeV、30 mA)電子加速器を用いた創傷被覆用ハイドロゲルの橋かけ、CMC糊状シートの橋かけのデモンストレーションを行った。

 ワークショップの参加者は、MINTの高分子加工施設、排煙実験施設、照射用電線・チューブ製造ラインが設置されている高分子工学研究室(Polymer Technology Laboratory)およびパイロット規模の施設に感銘を受けた。


5.2003‐2004年の計画
 
中国
・ 北京(Jingfeng)で工業用排煙デモ・プロジェクトと杭州(Entec)で民間主導のプロジェクトが
  進行中
・ 500 kWの高出力電子加速器の開発
・ ハイドロゲル研究開発の実施
・ 新たに電子線をエアコンディショナ用の空気清浄化に使用する開発研究
・ さらに5台以上電子加速器の設置が予定されている

インドネシア
・ グラフト重合技術を用いたカドミウムイオンの分離吸着膜とCMCおよびキトサンのハイドロゲル
  合成に関する研究開発の実施
・ 照射橋かけLDPE熱収縮材料の照射システムの設計
・ 熱安定性を改良するためのPEとPPの橋かけ
・ 天然ゴムラテックスの加硫について研究所、電子加速器メーカー、関連ゴム産業との共同
  研究
・ 建築・家具材料としてのシート、パネル用の繊維強化複合体の合成研究
・ ジョグジャカルタに試作した低エネルギー電子加速器(350 keV,10 mA)の据え付けおよび
  冷却系の改良

日本
・ セルロース誘導体ハイドロゲルの多分野への応用研究
・ 脂肪族高分子の橋かけ剤含量の低減化研究
・ CM-キチンとCM-キトサンハイドロゲルを用いる水の浄化
・ 有機溶媒を吸収するゲルの応用研究

韓国
・ タイヤコード用PVA繊維の橋かけ
・ インシュリンや抗生物質のような薬剤の徐放化に使用するハイドロゲルの開発
・ 下腿潰瘍用のハイドロゲルと臓器間の接着を防止する隔壁ゲルの開発
・ ナノ(10−9)粒子を含む放射線キュア配合剤の開発
・ KAERIにおける放射線応用研究開発センターの確立
・ 電子ビームによる繊維染色工場廃液処理の実用プラントの建設

マレーシア
・ 創傷被覆材としてのサゴデンプンハイドロゲルの橋かけ
・ 化粧品用材料としてのサゴデンプンハイドロゲルの橋かけ
・ 生分解性の発泡体とフィルムに応用するためのサゴデンプンハイドロゲルの橋かけ
・ 水溶性のキチンおよびキトサンの開発
・ 織物工業廃水の電子線処理
・ ナノ粒子を含む放射線キュアリング・コーティング剤の開発
・ 中密度繊維ボードの表面処理

フィリピン
・ 傷、火傷、床ずれ被覆材用カラギーナン‐PVPハイドロゲルのパイロット規模の生産
・ 分解カラギーナンの植物成長促進剤としての野外試験
・ 分解カラギーナンの果実コーティング材としての適用
・ カラギーナン誘導体の調製と橋かけ

タイ
・ CM‐キャッサバデンプンを衛生用品や農業分野に応用することを目的とした放射線橋かけ
・ MEXT原子力交流制度により原研高崎研にて低エネルギー電子加速器を用いたキチン、
  キトサン分解の研究
・ 300 keV、1 mA(平均)パルス電子加速器の開発
・ 10 MeV、1 kWの線型加速器の運転認可を得る
・ 3 MeV、5 mAの電子加速器の企画立案

ベトナム
・ 電子線施設とその利用に関するIAEA TCプロジェクトの設定と実施
・ IAEA、ベトナム原子力委員会、第三者機関による中エネルギー電子加速器設置の推進
・ 創傷被覆材、高吸水性材料、廃水処理のための固定化物質の実用化を目指した研究開発


6.現行プロジェクトの中間評価

 プロジェクトの目的は、(1)液体、固体(フィルム)、ガス試料に対する低エネルギー電子加速器を用いる照射システムの開発、(2)その用途の開発と例示、に基づいて現行プロジェクトの予備評価を実施した。

 最終評価は2004年に開催するワークショップで実施される。

 ワークショップでは、各所属機関および各国はFNCAプロジェクトに対する謝意を表明した。幾つかの国ではこのプロジェクトが契機となって、電子加速器利用の国内委員会が設立された。このプロジェクトは各国原子力委員会の上層部の注目を集めた。電子加速器を持たないベトナム、タイ、フィリピンは装置の導入と近い将来の実用化を目指して努力した。これらの国の研究者は原研高崎研の低エネルギー加速器を用いて応用研究を実施した。

 ワークショップは、液体試料についての250 keV、ハイドロゲルフィルムについての200 keVの低エネルギー電子加速器を用いた照射技術のデモンストレーションが行われた。 液体試料の電子線加工のデモンストレーションは2002年12月に原研高崎研で開催された第2回ワークショップで、また、ハイドロゲルフィルムの電子線加工のデモンストレーションは、2003年8月18‐22日にマレーシアのMINTで開催された第3回ワークショップで実施された。

 参加国の多くが天然高分子の電子線加工と工業廃水の電子線処理についてのプロジェクトの続行を希望した。

 ワークショップは、公開セミナーの開催を企業や公共機関の関係者に照射技術を紹介する重要な活動であると高く評価した。公開セミナーはFNCAワークショップの活動の一部として今後も継続すべきである。


7.これからの活動
 
 ワークショップは、電子加速器利用に関するFNCAプログラムの活動の一つとして、天然高分子のプロジェクトを継続すべきであるとの合意に達した。しかし、応用対象を明確にすべきであり、2004年に開催される次回ワークショップで具体的提案を持ち寄ることとした。

 新規提案に際し、放射線技術の費用対効果の分析に留意するよう求められた。さらに、勧告は、次期プロジェクトは消費者に直結した市場性のあるもので無ければならない、としている。

 多くの参加者は工業廃水処理のプロジェクトに関心を示した。しかし、廃水の種類を特定すること、予備実験で必要照射線量を決めること、放射線処理を経済的に引き合うものにするため通常の処理法との組み合わせを検討することなどの必要性が指摘された。

 次回ワークショップについて討議され、2004年9月中国で開催されることになった。主題テーマは排煙の電子線処理となる。各参加国はそれぞれの国における排煙の電子線処理に関する潜在的需要の予備調査をするよう要請された。

 次回ワークショップでは天然高分子加工と廃水処理についての新しい電子線の特定利用プロジェクトが討議され、2005年から始まる3ヵ年計画が策定される。

 ワークショップ参加者は、主催者および主宰研究所に対し深甚の謝意を表明した。

Forum for Nuclear Cooperation in Asia