FNCA2008 電子加速器利用ワークショップ
−天然高分子の放射線加工−
議事録(仮訳)
2008年10月27日〜31日、上海、中国
1. はじめに
電子加速器利用ワークショップ−天然高分子の放射線加工−は、文部科学省(MEXT)と中国国家原子能機構(CAEA)が共催し、国際原子力機関(IAEA)の協力のもとに、上海応用物理研究所(SINAP)と原子力安全研究協会(NSRA)が共同実施した。
今回は、本プロジェクトの第8回のワークショップで、目的は、(1)ユーザーのニーズに応える放射線加工による製品の研究開発の現状のレビュー、(2)利用者との協力を含んだ実用化のための戦略的議論、(3)参加国間で共通の目標を達成するために可能な協力と研究開発の推進、(4)2009年から2011年の実施計画の策定であった。
本ワークショップには、FNCA参加国からはバングラデシュ1名、中国5名、インドネシア1名、日本5名、マレーシア2名、フィリピン1名、タイ1名、ベトナム1名の電子加速器の利用と天然高分子の放射線加工に関わる専門家が参加した。さらに、IAEA/RCAプロジェクト主導国であるフィリピンのコーディネーター(PLCC; Project Lead Country Coordinator)1名と、RCA加盟国で非FNCA加盟国であるインド、パキスタン、スリランカから各1名の専門家が参加した。添付資料1に、参加者リストを示す。
2. オープニングセッション
このセッションでは、SINAPのWu氏が議長を務めた。初めに日本のFNCAコーディネーターである町氏が歓迎の挨拶を行い、文部科学省とFNCAを代表して、ワークショップへの参加者を心から歓迎すると述べた。また、本ワークショップ開催に伴いCAEAとSINAPの主催国としての尽力と、IAEA/RCAの協力に深謝の意を表した。続けて町氏はこのワークショップとオープンセミナーが有益かつ情報量に富んだ場となることへの期待を示し、参加者間の活発で建設的な議論を通して2009年から2011年までの具体的かつ明確な計画が策定されることを望んだ。次に、CAEAの Zhang Junxin氏が開会の辞において、すべての参加者に心からの歓迎の意を表するとともに、本ワークショップの開催が地域協力と技術交換を促進し、様々な分野での加速器の利用に貢献していると述べた。
各国の参加者による自己紹介の後、ワークショップのプログラムが示され、変更なく採択された。添付資料2に示す。
2.1 アジアにおける持続可能な発展のためのFNCAの成果ハイライト
町FNCA日本コーディネーターが、「アジアにおける持続可能な発展のためのFNCAの活動のハイライト」と題する講演を行った。講演の中で町氏は、現在11の進行中のFNCAプロジェクトと検討パネルが具体的な成果を挙げており、順調に遂行されていることを報告した。農業分野のバイオ肥料プロジェクトでは、放射線滅菌により製造されたバイオ肥料が穀物やマメの収量を上げる目的で優れた効果を示し、放射線育種プロジェクトでは、品質の高い新種のコメの開発が計画されていることが報告された。医療分野では、放射線と核医学によるがん治療プロジェクトにおいて、子宮頚ガンを治療するための新しくより効果的な方法が確立されたことも明らかにされた。治癒率は治療後の5年間で73%である。また、人材養成(HRD)はFNCA参加国にとって最も重要な課題であり、FNCAは、ANTEP(Asian Nuclear Training and Education Program)の確立を通して参加国の人材養成を支援していることが確認された。原子力発電分野においては、アジアにおける持続可能な発展のための検討パネルが実施されている。検討パネルの結論に基づき、2007年12月18日に東京で行われたFNCA大臣級会合では、原子力発電が京都議定書で導入されたクリーン開発メカニズム(CDM)の議題に盛り込まれるべきであるとの共同声明が合意されたことも報告された。
2.2 天然高分子の放射線加工に関するFNCA活動状況
日本の久米FNCAプロジェクトリーダーは、天然高分子の放射線加工に焦点をおいたFNCA電子加速器利用プロジェクト第2期の状況について紹介した。本ワークショップが3年間(2006年〜2008年)の最終年度の会合であるため、植物成長促進剤のための多糖類の放射線分解、医療および超吸水材のためのハイドロゲルの放射線架橋に関する進捗の評価が要請された。
2.3 天然高分子の放射線加工に関するIAEA/RCA活動状況
Abad氏は、高付加価値の放射線技術の開発を支援するIAEAの重要な役割について発表を行った。なかでも際立ったものは、ハイドロゲル被覆材、植物成長促進剤およびエリシター活性剤としてのオリゴ糖類、経済的潜在力の大きな新製品の開発である。環境保護への放射線技術の応用として、IAEAは排煙、廃水、汚泥処理への電子線あるいはガンマ線の利用に関連した推進・支援プロジェクトにおいて指導的役割を担っている。現在、「健康および環境のための放射線プロセスの応用」と題されたIAEA/RCA のプロジェクト(RAS/8/106)が進行中である。この地域プロジェクトには、14カ国が参加しており、健康および環境のために開発された新規材料の広範な利用を推進することを目的としている。2007年4月23日から27日にかけて、RAS8/106の全参加国とFNCAの代表者が参加したタイ・バンコクでの会合では、RCAとFNCAの可能な限りの相互協力に関する提案がなされた。この相互協力とは、それぞれのプロジェクトの活動の重複の回避と、相乗効果を目的としており、非FNCA国(インド、パキスタン、スリランカ)と、IAEA/RASプロジェクトのリード国コーディネーターがFNCAの会合に参加することによりすでに実行されている。IAEA/RCAとFNCAとの協力は、この地域における放射線プロセスのプログラムをさらに強化するであろうと期待されている。
2.4 中国における放射線加工産業の開発傾向の現状
中国アイソトープ・放射線協会のZhao Wenyan氏は中国における放射線加工の現状を紹介した。主要な先進分野は1)放射線化学物質と製品, 2)食品貯蔵、商品管理、医療用具の殺菌のための照射事業, 3)環境処理と公衆安全, 4)γ線及び電子線照射施設とサブシステムである。照射施設は急増しており、1)電子加速装置は130基以上あり合計8258 kW, 2) Co-60照射装置は120基以上、装填可能容量は1億Ci以上、実装量は4,000万Ciである。また、処理量は過去10年間で3倍増加していることも説明された。
3. 電子加速器利用のオープンセミナー
ワークショップの初日の午後に、電子加速器の利用に関するオープンセミナーが開催された。セミナーにはワークショップ参加者の他、産業界、大学、研究機関から併せて約90名の参加があった。展示会も開催され、バングラデシュ、中国、日本、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムからのポスターや製品等が一般公開された。
Jiashan郡の地域知事であるMiao Weilun氏が歓迎のあいさつを述べた。同氏は、すべての参加者に歓迎の意を表するとともに、セミナーとワークショップが成功裏に終わることを望んだ。次にSINAPの所長であるHongije Xu氏が開会の辞を述べ、同研究所を代表して天然高分子の放射線加工に関するセミナーを開催することへの悦びを表明するとともに、この様な活動が中国における天然高分子の放射線加工の工業利用推進並びに参加国同士の協力関係構築に大きく寄与するであろうとの期待を示した。
オープンセミナーでは、以下9件の発表があった。
3.1 天然高分子の放射線加工に関するFNCA活動状況
持続可能な発展のための放射線加工の動向(町末男氏・日本)
町氏より持続可能な発展と人類の福祉のための放射線加工の動向についての紹介があった。放射線プロセスのようなエネルギーや資材を節約するプロセスは、高分子の機能化・製品製造、医療器具の滅菌、食品包装、環境保護、食品照射、半導体製造のためのイオン注入に応用できることが説明された。放射線プロセスの工業利用は、高分子材料の高機能化において今後さらに成長すると推測されている。また町氏は、清浄な環境のための放射線技術は、世界共通の問題を処理するために開発されるべきであることを強調し、加えて信頼性が高く廉価で処理能力の大きい電子加速器の開発が次なる文明化のために重要な課題であることを指摘した。
3.2 SINAPにおける加速器とその利用(Dr. Deming Li・中国)
SINAPの沿革と同研究所における加速器開発の歴史について紹介があった。SINAPは中国科学院(Chinese Academy of Sciences)の90ある国立研究所のひとつであり、核技術に関する研究に特化している。1964年に、中国初の自製の1.2MeVのサイクロトロンを建設し、1998年には炭素14による年代測定用の超高感度の小型サイクロトロン質量分析器の建設に成功した。Li氏は、1999年以降、SINAPは先進光科学と加速器を利用した応用物理学の研究センターとしての新たな目標を掲げており、現在の開発には、ゴム乳濁液の加硫に用いる低エネルギーの電子カーテン型加速器、石炭燃焼排煙の脱硫・脱硝のための高出力電子加速器、5MVダイナミトロンの開発が含まれることを説明した。
3.3 日本における放射線プロセス利用の近年の成果(南波秀樹氏・日本)
この発表では、放射線プロセスの原理と特徴について説明がなされた。日本、特に日本原子力研究開発機構高崎研究所における放射線プロセスの近年の成果は、電子線及びガンマ線による架橋・グラフト・分解とイオンビームによる架橋・イオン注入に分類されることが説明された。またテレビで放映された、グラフト技術を用いた温泉水からの希少金属の捕集に関する研究の目覚しい成果も発表された。
3.4 日本における放射線利用の経済規模(久米民和氏・日本)
日本における放射線利用の経済規模についての紹介がされた。2005年における原子力・放射線利用の経済規模は8兆8530億円でGDPの1.8%を占める。そのうち、放射線利用の経済規模は4兆1120億円で46%、原子力発電の経済規模は4兆7410億円で54%を占めており、車の両輪としての役割を果たしている。日本における放射線利用は、安定して増加しており、公衆の福祉と生活水準の向上に貢献していることが強調された。
3.5 サゴでん粉ハイドロゲルの開発と実用化の概観(Dr. Kamaruddin Bin Hashim・マレーシア)
サゴでん粉ハイドロゲルの開発と実用化に至った過程について紹介がなされた。広範な研究開発活動、許認可、現地のサゴ製造企業への技術移転協定、そしてマレーシア原子力庁の研究者と企業スタッフ間の活発かつ効果的な協力によりサゴでん粉ハイドロゲルを用いたフェースマスクは実用化に至り、製品はすでにEcoBelle Hydro Miracle Maskの商標名でマレーシアの市場に流通していることが明らかにされた。
3.6 天然高分子の放射線加工による植物成長促進剤(Dr. Nguyen Quoc Hien・ベトナム)
放射線分解によって調製されたオリゴアルギン酸塩とオリゴキトサンがもたらす、種々の植物(茶、コーヒー、ニンジン、キャベツ、コメ、サトウキビ)への成長促進効果についての発表がなされた。オリゴキトサンは、植物の成長促進効果のほかに、コメやサトウキビに対し高いエリシター活性化機能を持っていることが報告された。製品の早期実用化へ向け、経験に基づき、適切な企業との協力を確立することが期待されている。
3.7 日本における高分子の放射線架橋によるハイドロゲル創傷被覆材と超吸水材(吉井文男氏・日本)
ハイドロゲル創傷被覆材の、研究開発から、臨床試験、最終実用化に至るまでの各段階が紹介された。加えて、ペースト状セルロース誘導体の放射線架橋により得られる新たなセルロースゲルが超吸水材として開発されたことが報告され、セルロースゲルの応用の可能性が示された。
3.8 NHVコーポレーションが提供する電子加速器システムの現状(穐田啓三氏・中国)
NHVグループが提供する電子加速器システムの現状について紹介があった。NHVにより製造された電子加速器システムの利用は、ワイヤ・ケーブル(23.7%)、自動車用タイヤ(23.4%)、研究開発(20.8%)、発泡ポリエチレン(9.0%)、収縮チューブ(4.5%)、硬化・転換(7.1%)、排煙処理(2.6%)、滅菌(1.0%)、その他(8.0%)であることが報告された。
3.9 EL PONT会社の中のエネルギー/高エネルギー電子加速器と高分子プロセス
El Pont社の放射線プロセス及び加速器についての発表がなされた。無錫(中国)にあるEl Pont放射線技術会社の概要、同社の研究開発、加速器の製造能力の他、中国における加速器利用の一覧と、工業化の状況が紹介された。また同社の高エネルギー加速器と、自己遮へい型低エネルギー加速器についての報告もなされた。
4. カントリーレポート
天然高分子の放射線加工における、最近の進展、研究開発および実用化のための活動に関する、全11か国のカントリーレポートと、RCAによるレポートが発表された。参加者らは、ワークショップの主題に関する事項について、議論及び意見交換により経験を共有する機会を得た。カントリーレポートの要約は以下の通りである:
4.1. バングラデシュ
Zahirul氏は、ガンマ線照射されたアルギン酸ナトリウムの赤アマランスに対する生物学的影響について発表した。アルギン酸ナトリウムの3%水溶液をCo-60ガンマ線で12.5〜50kGy照射し、150ppmのアルギン酸ナトリウム水溶液を、18種類の赤アマランサスの種子に用いた後10日目以降6日毎に散布し、そのうち37.5kGy照射されたアルギン酸ナトリウムが最も効果があったことが報告された。また同氏は、紫外線照射による天然高分子の力学特性の向上についても言及した。アルギン酸ナトリウムフィルムの引張強度(TS)や伸び(Eb)といった機械的性質が、ポリエチレングリコール(PEG)濃度、浸漬時間、紫外線照射量の点から最適化された。その結果、引張り強度は、ポリマー濃度7.1%で調製したフィルムを5%のEGを含む浸漬液に3分間漬け20回の紫外線照射により37.9Mpaという最も高い値を示し、伸びに関しては、EG液に1分間漬け紫外線の15回照射により高い値が得られたことが報告された。
4.2. 中国
南京大学のChen Guangyin氏が、放射線分解キトサンが、幼苗期に干ばつ条件下にあった小麦の生理学的特性に及ぼす影響について発表した。研究の目的は、干ばつのストレス下にある植物の収量に、キトサンがどの程度影響を及ぼすかを測定することであった。またこの研究は、小麦種の、水不足の環境での耐性に関連する抗酸化作用へのキトサンの影響を調査することも目的とされていたことが報告された。2種の小麦品種、すなわちHanxuan No.10(干ばつに耐える品種)と、Wan No.46(干ばつに弱い品種)が放射線分解されたキトサン(50kGy・T1、200kGy・T2、500kGy・T3)で処理された。キトサンの効果は、発芽率(%)、含水率(%)、根の乾燥重量(g)、根/芽の比などの成長特性、および可溶性タンパク質含有量、クロロフィル(葉緑素)含有量、MDA(malondialdehyde)含有量、SOD(superoxide dismutase)活性、CAT(カタラーゼ酵素)活性、POD(peroxidase)活性などの生理学的・生化学的特性と関連付けられた。その結果、照射キトサンは成長促進、活性酸素除去能力の増強、および生体膜機能の保護などに影響を及ぼし得ると結論付けられた。さらに小麦苗の干ばつに対する耐性も向上し、その効果は7日間以上持続したことも報告された。
4.3 インドネシア
Gatot氏が、植物の成長促進を目的とした照射キトサンのフィールド試験(実地試験)について発表した。チリ(トウガラシ)のフィールド試験が完了し、赤チリについては、照射キトサンを用いた場合、非照射キトサンに比べて60%の収量増加が認められた。トマトについては、農家によって通常用いられている方法と比較し、フィールド試験とコスト評価を行った。その結果、照射キトサンを用いた場合、従来法に比べ2倍の利益を得られることが示された。またオリゴキトサンを食品の保存に応用するための研究開発の進行状況についても言及された。
4.4 日本
吉井氏が、オリゴキトサンの農業分野への応用、および、CMC(カルボキシメチルセルロース)による和紙の改質についての発表を行った。ベトナム、インドネシア、日本におけるフィールド試験結果から、分子量10,000Daのオリゴキトサンが植物成長促進剤として効果的であることが報告された。キトサン照射のコスト評価は水溶液で4.5米ドル、固体で5.2米ドルとなったことも示された。さらに、和紙の強度向上と収縮防止を目的としたCMCゲルの和紙コーティングへの応用は、和紙の製造を継続して実施中であり、経年変化試験が進行中であることも明らかにされた。
4.5 マレーシア
Khairul氏が、植物成長促進剤およびエリシター活性剤としての照射分解キトサンを利用したフィールド試験が開始されたことを報告した。サイクルあたり1.5-2.0トンのオリゴキトサンを製造する目的で、マレーシア原子力庁の連続液体照射プラント(RAYMINTEX)を用いたパイロット規模の製造が計画されたことが述べられた。続いてオリゴキトサンを用いたイネのフィールド試験が、24ヘクタールの農場において、その農場を提供し管理している政府関連企業FELCA(M)Berhadとの協力のもとに継続して実施されていることも発表された(2008年10月17日から2009年2月)。ベトナムのHien 氏と日本の久米氏がマレーシアに招かれ、照射とフィールド試験の実施に協力した。初期の実験室試験では、オリゴキトサン処理されたイネ種子の発芽率は、水処理のみのイネ種子よりも低かったが、発芽5日目になると、オリゴキトサン処理後に発芽したイネ種子と水処理後に発芽したイネ種子はほぼ同数であったことが明らかにされた。一方で、オリゴキトサン処理されたイネの葉は、水処理のみのものより高い成長率を示し、また、オリゴキトサン処理された葉は、水処理のみの葉よりも青々と育ったことが報告された。フィールド試験は2009年3月に完了予定であるが、今後さらなる試験が実施されることが期待されている。
4.6 フィリピン
Aranilla氏が、第2期におけるPVP(ポリビニルピロリドン)-カラギーナンハイドロゲルの半実用化のための活動について報告した。製品の商品名は「スキンアップ」と名づけられた。また、これまでに新しく建設されたパイロットプラントの能力試験、ハイドロゲル製造のための品質保証/品質管理システムの確立、改良した照射装置の最大処理時における線量評価、市場の受容性調査を実施するために民間企業(Biotecos)との協力など様々な活動が実施されてきたことが報告された。また、天然高分子の放射線加工に関する現在の研究開発活動として、照射したカラギーナン断片の同定、組織培養のためのカラギーナン海藻液(照射カラギーナン及び乾燥非照射カラギーナン)の生物試験および抗酸化作用、カッパ・カラギーナンのカルボキシメチル化、土壌調節用超吸水材合成のためのカラギーナン誘導体の架橋などが挙げられた。
4.7 タイ
Phiriyatorn氏が、タイにおける天然高分子の加工に関する様々な活動について報告した。生分解性のでん粉をベースする低密度ポリエチレンをブレンドした高分子材料がガンマ線照射によって開発されたことが明らかにされた。力学特性に対するガンマ線照射の影響と、高分子ブレンドの熱酸化劣化について研究した結果、ガンマ線照射によってカルボニル基が生成することが示された。さらに、キャッサバでん粉へアクリル酸メチルを放射線グラフト共重合させることにより、ヒドロキシアミン酸基を含む金属吸着材の合成に成功し、現在その吸着剤の、様々な金属に対する吸着能力について研究が進められていることも報告された。ガンマ線による分解と分子量分画によって低分子量のキトサンを得ることができ、オリゴキトサンは植物成長速度に著しい影響力を持つ。植物はキトサンに対し、その根系の吸収能力により、分子量に応じてそれぞれ違った反応を示す。さらにポリビニルアルコール/絹フィブロイン(PVA/SF)へのガンマ線照射によって調製されたハイドロゲルは、抗体応答なく治癒効果を促進するのに有益であることも強調された。またタイ政府が電子加速器(20メガ電子ボルト、10キロワット)とCo-60(7万キュリー)線源に3億7000万バーツの予算を認めたことも報告され、これらの施設は、2010年に操業開始予定である。
4.8 ベトナム
Hien氏が、フレーク状のキトサンの放射線分解と化学分解の併用処理について発表した。放射線と過酸化水素との相乗作用は極めて大きく、液状のオリゴキトサンの調製に有効である。フィールド試験の結果により、オリゴキトサンの最適濃度はコメについては15ppm、サトウキビについては30ppmであることが判明したとの報告がなされた
4.9 インド(RCA)
Ramani氏が、2007-2008年の間に行われた天然高分子の放射線加工に関する活動について報告した。照射アルギン酸と照射キトサンのフィールド試験が実施され、今後はこれらの製品の実用化に向けての重要な段階へ入るであろうとの見解が述べられた。また、CMC/ポリアクリル酸の超吸水材の性能評価のための小規模なフィールド試行が行われ有望な結果が得られたことも明らかにされた。さらに放射線架橋されたキトサンが、六価クロムイオンを含む廃水処理において極めて有用であることが実験室規模の性能評価において実証されたことも報告された。
4.10 パキスタン(RCA)
Tariq氏が、天然高分子の放射線加工に関する様々な研究開発活動について発表した。キトサンの放射線分解については、FTIR(赤外分光分析)、XRD(X線回折)、粘度測定などが行われ、調製されたカルボキシメチル化キトサン/アクリル酸ハイドロゲルの特性が調べられた。このハイドロゲルの利用は、薬品送達及び模擬溶液からの3価クロムの回収を目標に研究されており、同様にカラギーナン/アクリル酸ハイドロゲルも調製されたことが報告された。どちらのハイドロゲルも、インシュリン放出のために利用されており、模擬胃液においては、2時間までインシュリン放出の低下が観察されたことが発表された。このハイドロゲルを模擬腸液に移した実験においては、浸漬時間と放出されたインシュリンとの間には比例関係があると認められたことも報告された。
4.11 スリランカ(RCA)
Kulatunge氏は、カラギーナン・ポリビニルピロリドン創傷被覆材など、天然高分子の応用の研究開発に関して報告を行った。研究グループは、実用化されているハイドロゲル創傷被覆材と同等の特性をもつハイドロゲル被覆材を開発し、そのPVP/カラギーナンハイドロゲルの臨床試験を行うための医療倫理クリアランスを申請したことを明らかにした。また、農業分野でも研究チームが組織され、ガンマ線照射によって調製したオリゴキトサンを開発し、それを用いたフィールド試行試験が予定されていることが発表された。スリランカ政府(科学技術省)は、同国初となる政府所有の多目的ガンマ線照射施設を計画・建設中であり、放射線加工の研究開発の成果の国内での移転が必要であることが強調された。
4.12 IAEA/RCA RAS/8/106 天然高分子の放射線加工の活動
Abad氏が、「健康と環境のための照射加工応用」と題し、IAEA/RCA のプロジェクトであるRAS/8/106における様々な研究活動について報告した。このプロジェクトには、バングラデシュ、中国、インド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、パキスタン、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナムの14か国が参加している。2008年4月にフィリピンで開催された会合において各国の進捗状況が報告された。新しく開発されている製品・利用等は以下の通りである。
- アルギン酸ナトリウムからの生分解性フィルム
- ポリプロピレンシートとジュート(麻)繊維の部分分解性のある複合材
- 電子線照射によるPbS(硫化鉛)ナノ結晶
- 多孔性ポリプロピレン繊維を熱圧着した不織布へのアセトニトリルの電子線グラフト
- 生体組織再生工学のための微生物セルロースハイドロゲル
- 骨補てん用のためのヒドロキシアパタイトと高分子との複合材
- 日本の伝統紙の特性向上のためのCMC微細ゲル
- 腹腔内ゆ着防止のためのCMキトサンハイドロゲル溶液
- キトサンゲルペーストの開発
- 農業用超吸水性高分子ゲルの開発(水分量や植物の干ばつによる負荷を低減させる土壌水分調整材、肥料の消費量コントロールなど)
- PVA/タイ絹繊維からの創傷被覆材の開発
2007年度にRAS/8/106のもとで開催された地域トレーニングコースは次の通りである。
- IAEA/RCA放射線技術の促進に関する地域トレーニングコース(RTC)、フィリピン・マニラ、2007年7月9日〜13日
- IAEA/RCA 入門者および中級者のための放射線加工に関する地域トレーニングコース、カジャン、マレーシア、2007年8月6日〜10日
- IAEA/RCA ナノテクノロジーの応用に関する地域トレーニングコース、イスラマバード、パキスタン、2007年10月29日〜11月2日
5. 討論
5.1 創傷被覆用ハイドロゲルとその他の利用
Kamaruddin氏が、本セッションの討論のリード講演を行った。FNCA参加国で実施されている、創傷被覆および他の医療目的のハイドロゲルのいくつかは既に実用化されており、韓国と中国は、それぞれCligel、BurnCaringの商標名で創傷被覆材を実用化していることが報告された。一方、フィリピンにおいては半実用化の段階であり、バングラデシュ、ベトナム、タイ、インドネシアなどの参加国では開発段階であることも言及された。
研究開発段階において参加国が直面している課題として、経験の不足、訓練のための予算の制約、研究資源・専門家・技術を最大限に活用する必要性、放射線施設の制限などが挙げられ、研究活動では実用化プロセスが考慮されるべきであると強調された。
また、製品の実用化に至るまでには、協力者間で、放射線施設を含む資本コスト、政府による資金援助、産業界からの支援、当局による規制など多くの事項を考慮しなければならず容易ではないとの見解も示された。
参加国が協力して、必要に応じた経験や技術を容易に移転できるグループを形成することにより、上記問題点は最小化されるであろうと見られているが、ハイドロゲル創傷被覆の今後の発展に注力している国は少なく、参加国は医療分野におけるハイドロゲル技術活用の新たな開発目標を見出す必要がある。
5.2 農業における超吸水材用ハイドロゲル
吉井氏が、農業分野で利用されている超吸水性ハイドロゲルの研究における現状報告を行った。実用化されているSky Gel(Mebiol社製)は、化学架橋されたポリアクリル酸で、乾燥ゲル1gあたり100mlの水を吸いその効果は2〜3年持続すると説明した一方で価格の高さについても言及し、放射線架橋されたカルボキシメチルセルロース、またはでん粉をグラフトしたポリアクリル酸が提案された。でん粉をグラフトしたポリアクリル酸の製造に関するベトナムの経験は成功を収め、また、土壌調整材としても有効であることが明らかにされた。しかし、経済的に実行可能なものにするために、以下のような事項を考慮しなければならない。
- ハイドロゲル中に高濃度に存在するアクリル酸モノマー
- 乾燥に要する高コスト(特に産業レベルで製造される際)
- 持続期間のさらなる研究、また現存する実用化された超吸水性ハイドロゲルとの比較
放射線架橋またはグラフトされた超吸水性ゲルは、とくに乾燥地帯の土壌の調整材として大きな潜在力をもっている。
5.3 植物成長促進剤
Hien氏が、成長促進剤としての照射天然高分子の利用における、進捗、現状、課題について発表した。この分野での進歩としては、放射線のみの単独法または線量を低減するための放射線法と化学的手法(過酸化水素を用いる)との混合手法によるオリゴ糖類の製造が含まれる。多糖類の種類に応じて過酸化水素の濃度を選択することは、分解の効果を促進し、如いてはより経済的にオリゴ糖類を得る方法へとつながるとの見解が述べられた。さらにパイロット規模の製造が、ベトナム、インドネシア、マレーシアで実施されてきたことも言及された。様々な種類の植物、じゃがいもなどの野菜、茶、コーヒー、コメ、サトウキビ、チリ(トウガラシ)などのフィールド試験が実施され、いくつかの国では大規模試験が行われたことも報告された。ベトナムとインドネシアでは、経済試算がなされ、照射多糖類を使用した場合に利益が大きくなることが明らかにされた。各国はそれぞれ独自に製品の実用化促進へ向けた体制をもっており、これまでの取り組みを成功へとつなげるために、あらゆる努力がなされるべきであることが強調された。
最近実施された活動として、インドネシアのBATANで500リットル/バッチのオリゴキトサンを試験的に製造し、フィールド試験用に試料と実験手順が参加国へ送付されたことが報告された。また、マレーシアでは、連続液体照射プラント(RAYMINTEX)を用いた、オリゴキトサンのパイロット規模の製造が実施されたことも紹介された。ベトナムとマレーシアでは、種子、苗、種子/苗の処理を行い収穫量のもっともあがる処理方法を見出すべく、イネの大規模フィールド試験が実施されており、結果は4ヶ月後にわかる予定であることも報告された。ベトナムではサトウキビの大規模フィールド試験が、BATANからの照射キトサンと比較用のVINAGANMAで製造されたキトサン(過酸化水素との相乗作用を含む)とを用いて実施されており、このフィールド試験の結果は1年後に明らかになる予定である。
また、直面している課題として、原材料の大規模な製造、手順の確立と品質保証、市場への宣伝と実用化、大規模製造のセットアップなどが挙げられた。
キトサンを植物成長促進剤やエリシター活性剤として実用化するためには、照射された試料や各国でなされたフィールド試験が重要な情報となるため、以下の事項が必要とされる。
- BATAN(バッチ照射)とマレーシア(連続照射)でそれぞれ照射されたキトサンの分子量と分子量分布の比較
- BATANの試料を用いた、各国間のフィールド試験(収率)の比較
民間企業との協力も強調された。これは、a)小規模な実験の実施及び製品を有益とみなす企業の探求、b)あらゆるメディアを利用した情報の普及、c)より多くの利用者をひきつけるための(マレーシアの例にあるような)大規模フィールド試験実施へ向けた政府への働きかけによって可能になるであろうとの見解が述べられた。
またアルギン酸の方が、キトサンよりも植物成長促進作用があることが明らかになった一方で、キトサンはアルギン酸よりもエリシター活性効果にすぐれていることも報告された。さらに両者の混合は、高い濃度では凝集するため可能ではないことも言及された。
5.3.1 インドシア原子力庁におけるオリゴキトサン製造の大規模実証試験
Gatot氏が、2008年8月4日から8日にかけてBATANで行われた、ガンマ線照射によるオリゴキトサンの大規模製造実証試験について報告した。この試験を補助するため、3名の専門家(べトナム・Hien氏、日本・吉井氏、マレーシア・Kamarudin氏)が参加した。オリゴキトサンの大規模製造の各段階は以下のとおりである。
- キトサンの標準化
- 分子量 100-200kDa
- 脱アセチル化度 65-75%
- 混合過程(内容物を加える順序)
- キトサン
- 酪酸
- NaOH(少しずつ)
- 脱ミネラル水
- 空気圧ポンプによる照射タンクへの移送
- 照射
- 照射 30kGy
- 時間 75時間
- ((12),(24),(30),(35)の線量において約2リットルの試料を取り出し粘度測定)
- 仕上げ過程
- 保存過程
- 包装
議論:
次の点が議論された。
- 手順書にpHを5-6に調整するよう記述すべきである
- バクテリアやかびの増殖を防ぐために、キトサン溶液に抗菌剤(例えば銀のナノ微粒子)加えることの重要性
- 強い悪臭を防ぐため、キトサンの希釈は酢酸よりも酪酸で行うほうがよい
- 低分子量のキトサンを得るために、液体照射と固体照射のどちらが適しているか
5.3.2 照射分解キトサンの畜産飼料への応用
Wu氏が、豚や魚の飼料に添加した照射分解キトサンの成長効果について発表した。濃度50ppmのキトサンが生産量を上げ、生化学的指標を向上させるのに有効であることが明らかになった一方で、豚の免疫作用や生化学的指標(SOD等)を向上させるには、300ppmのキトサンが必要であることが報告された。これらの結果はいずれも、照射分解キトサンが飼料への添加物として利用できることを示唆しているとの見解が述べられた。
上記発表に対して以下の点が指摘された。
- 水産物や畜産物の飼料へのキトサンの役割は、魚や動物の免疫システムを向上することにある。
- この目的のためのキトサンは、分子量は50kDa以下で、非水溶性である(低分子量キトサンと考えられる)。
- 低分子量キトサンの濃度は、魚や鶏については50ppm前後で、豚や牛については200-400ppmの高濃度のキトサンが必要である。
- 低分子量のキトサンを作成する上で放射線法が他の従来法(酸、酵素)に優る利点は、固体キトサンから低分子量のキトサンを作成できるのは放射線法のみであるということである。
- 中国では将来的に、水産・畜産用飼料の生産量を、現在の毎年10トンから、毎年500トンに増産することを計画している。
6. テクニカルビジット(施設等見学)
ワークショップ参加者は、水産企業、上海シンクロトロン放射光施設、EL Pont放射線技術会社を訪問した。水産企業では、魚や亀の免疫システム向上のため、飼料に照射キトサンが利用されていることを学んだ。次に上海シンクロトロン放射光施設を見学し、実施されている様々な研究について説明を受けた。最後に、El Pont放射線技術会社を見学し、同社の研究開発活動や、加速器製造会社としての機能について学んだ。
7. FNCAガイドライン−放射線加工によるハイドロゲルとオリゴ糖類の開発−
工藤氏より、ガイドラインの草稿が配付され、アウトラインが説明された。草稿に対する各国のプロジェクトリーダーからのコメントが発表され、審議の結果以下の点が確認された。
- ガイドラインの完成締切りは2009年3月である
- 各国は、訂正などがある場合には2008年11月末までに、工藤氏に送ること
- 誤解を招かないように、コスト評価の箇所には注釈をつけること
- 発行は、FNCAウェブサイトからPDFファイルをアップロードすることにより可能とすること
- ガイドラインは第1版の後は、以後各国プロジェクトリーダーによりアップデートできるようにすること
- ガイドラインの第1版は、JAEA-Techシリーズとして印刷物でも発行することを考慮すること
8. 2006-2008年のFNCAプロジェクト活動の評価
久米氏が、FNCA参加国のプロジェクトリーダーから提出された評価の要約の草稿を発表した。これは、植物成長促進のための多糖類の放射線分解、医療や超吸水材のための架橋ハイドロゲルなどの主要な成果を含んでおり、初めに本プロジェクトから端を発した、アルギン酸、キトサン、カラギーナンなどの天然高分子の放射線加工に関する経験、データ、技術情報をFNCA参加国メンバーと共有することができたことを評価した。さらに、本プロジェクトからプロシーディングス、技術論文、ガイドラインなどという形式での出版物と、多糖類ハイドロゲルに関する1件の特許が生み出されたことへも言及した。技術や知識の移転という点では、オープンセミナーや展示が、エンドユーザーへの技術の促進へつながる重要な活動であることも強調された。これらはワークショップごとに開かれ、産業界、大学、研究機関などから毎回100名近くの参加者が集まっていることが報告された。さらにフィリピン、タイ、ベトナム、マレーシアへの専門家派遣は、それぞれの参加国における個別計画について詳細な議論を補う上で効果的であったと評価した。植物エリシターとしての照射分解キトサンの製造デモンストレーションが、インドネシア原子力庁(BATAN)において実施され、照射物は植物成長のフィールド試験用に、バングラデシュ、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、スリランカ(RCA)、パキスタン(RCA)の各国へ配付された。また専門家2名が、植物成長促進剤、エリシター活性剤としての照射キトサンの技術移転のためにマレーシアに招かれたことや、連続式液体用ガンマ線照射装置(1.5-2トン毎サイクル)を用いて製造されたオリゴキトサンが、24haのイネのフィールド試験に用いられたことも報告された。
参加国の大半は、本プロジェクトが継続されることへの展望を抱いており、製品の経済的継続性を決定し、さらにエンドユーザーへの技術移転を図るため、継続して努力がなされるべきであることが強調された。加えて、BATANで照射されたキトサンのフィールド試験も継続されるべきであるとの見解が述べられた。
他の分野への波及効果やエンドユーザーへの利益、さらにプロジェクトへの意見が発表された。
審議中に出されたコメント/意見は以下の通りである:
- FNCAとIAEA/RCAの協力が評価に含まれるべきである
- 訂正やコメントは11月末までに久米氏まで提出すること
- FNCAとIAEA/RCA間で協力の合意があることから、FNCA加盟国でないIAEA/RCA国の活動のハイライトも評価に盛り込まれるべきである
- 評価レポートはIAEAにも提出されるべきである
- 労力を低減し重複をさけるため、情報交換や経験の共有を通して、FNCAメンバー間での協力がより効果的に強化されるべきである
- 技術移転は費用がかかるが、各国において完全になされるべきである
- 最終報告は、2009年3月のコーディネーター会合にあわせて準備されるべきである
- 最終報告には、各国の生産物の開発/実用化の現状を示した表が添付されるべきである
9. 第3期の実施計画
冒頭スピーチではKhairul氏が1)農業利用のための天然高分子の放射線分解、2)医療と美容分野への天然高分子の放射線架橋の応用についての進捗状況について発表した。また、氏は2009年から2011年にかけて実施予定である農業利用と環境保全のための高分子素材の放射線加工に関するRCAプログラムについても紹介した。
このセッションでは町氏が議長を務め、本プロジェクトの第3期に実施されるべき活動を提示した。その主な活動は以下の通りである。
1) キトサン、アルギン酸、カラギーナンの放射線分解物の下記への特化
(1) |
植物成長促進剤 |
(2) |
エリシター 耐病性、害虫への耐性
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(3) |
水産物および動物の生産 |
具体的な成果と活動:
(1) |
マレーシアが、イネの発芽率、成長促進、エリシター活性化に関する大規模フィールド試験を実施した。 |
(2) |
BATANにおける大規模実証実験により提供されたオリゴキトサンを用いたフィールド試験が参加国によって実施されるべきである。
- 植物と場所はそれぞれの国で選定されるべきである。
- オリゴキトサンの最適濃度は、20-50ppmの範囲で、ポット試験により各国で決定されるべきである。
- フィールド試験のための手順書はFNCAの専門家により既に提供されている。
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(3) |
中国は今後も水産業や、豚、鶏、あひる等の畜産業へのオリゴキトサンの実用化へむけて専念すると推測される。 |
(4) |
キトサンの照射に関し、固相とするか液相とするか、また放射線源を電子線とするかガンマ線とするかは、照射コストと生産物の性能の観点から比較されるべきである。 |
(5) |
オリゴキトサンの新しい利用を明確にするために、農業分野との協力が一層強化されるべきである。 |
2) 超吸水材(SWA)を目的とした放射線架橋した天然高分子ハイドロゲルの利用
この活動には、インド、日本、パキスタン、タイ、ベトナムが参加する。その他の国は、それぞれ自国の関連する行政機関や専門家と相談のうえ参加するか否かを決めてよいが、参加の意思は、日本のプロジェクトリーダーと、RCAの担当者にできるだけ早く連絡すること。
具体的な成果と活動:
(1) |
ベトナムは、キャッサバでん粉へのアクリル酸の放射線グラフトをパイロットプラントで行うなど、先駆的研究を行っている。開発されたSWA(アクリル酸カリウム/でん粉)は、1gあたり200-300gの水を吸収する。ベトナムは、市場促進の30トンのSWAを製造した。 |
(2) |
残存するモノマーを減少させ、SWAの乾燥ペレットを作製するためのハイドロゲルの効果的な破砕方法開発へ向け、今後さらなる研究開発が必要である。(日本、ベトナム) |
(3) |
アクリル酸カリウム/でん粉系のSWAの土壌での持続期間は1年である。コストの観点から、使用できる期間の延長を研究することが求められるであろう。 |
(4) |
PVA-でん粉などの他の高分子系も研究されるべきである。 |
(5) |
インドが開発したCMC/ポリアクリル酸がフィールド試験にとりあげられる。
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(6) |
それぞれの国で小規模フィールド試験またはポット試験が実施される必要がある。 |
(7) |
潜在的エンドユーザーとの緊密な協力が重要である。 |
3) 健康のためのハイドロゲルの利用
具体的な成果と活動:
(1) |
商用化に至った経験と情報は、他の国での実用化(新しい利用を含む)を強化するために共有されることが期待される。 |
(2) |
銀のナノ微粒子を加えることによる効果が研究される(フィリピン、マレーシア、韓国、ベトナム、インド)。
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(3) |
ハイドロゲル創傷被覆材プロジェクトを支援するために、予算状況に応じて、スリランカに専門家派遣を行う。 |
2009年3月に韓国で開催される農業利用と環境保全のための高分子素材の放射線加工のIAEA/RCA策定会議にFNCAの代表者が参加することが求められた。
2009年3月に開催される第10回コーディネーター会合において天然高分子の放射線加工のプロジェクトの継続が承認された場合、次回のワークショップはインドネシアかタイで開催することが提案された。
参加者は、主催者及び運営機関に対し深甚の謝意を表明した。
添付資料1 2008年FNCA電子加速器利用ワークショップ参加者リスト
添付資料2 2008年FNCA電子加速器利用ワークショップ−天然高分子の放射線加工−プログラム
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