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気候変動(森林土壌炭素放出評価) ワークショップ

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ワークショップ

FNCA気候変動(森林土壌炭素放出評価)プロジェクトワークショップ

FNCA2025気候変動(森林土壌炭素放出評価)プロジェクトワークショップ
概要

2025年11月18日〜20日
日本、福島


[ワークショップ]

2025年度の気候変動(森林土壌炭素放出評価)(ECEFS)プロジェクトのワークショップは、2025年11月18日から20日にかけて、日本の文部科学省(MEXT)の主催により福島県福島市で開催されました。

参加者

バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、及びベトナムの9カ国が参加し、参加人数は事務局を含め計25名でした。

[オープンセミナー]

11月19日の午後に、オープンセミナー開催されました。
FNCA日本コーディネーターの玉田正男氏がFNCAの活動を概説し、新潟大学の永野博彦氏が、土壌の温室効果ガス動態と気象激甚化について紹介しました。次にフィリピン原子力研究所のローランド・V・ラロ氏が、土地利用の変化が土壌炭素にもたらす影響を探るについて概説しました。最後に福島国際研究教育機構の藤井一至氏が、リンゴ酸がつなぐ森林土壌の鉱物風化と炭素循環について発表しました。

オープンセミナー

[テクニカルビジット(フィールドワーク)]

11月20日、南相馬市と双葉郡浪江町にてテクニカルビジットが実施されました。ワークショップ参加者は日本原子力研究開発機構(JAEA)廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)を訪問し、福島県におけるモニタリング活動の説明を受けた後、施設を見学しました。その後、「震災遺構・浪江町立請戸小学校」を訪れ、震災当時の状況や避難の経緯について理解を深めました。

テクニカルビジット(フィールドワーク) テクニカルビジット(フィールドワーク)

 


FNCA2025気候変動(森林土壌炭素放出評価)プロジェクトワークショップ
会議報告

2025年11月18日〜20日
日本、福島


セッション1

文部科学省(MEXT)の中嶋翔梧氏(研究開発局研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付調査員)より歓迎の挨拶があり、続いて日本FNCAコーディネーターの玉田正男氏から開会の挨拶があった。

セッション2

日本プロジェクトリーダーである永井晴康氏がプロジェクトの概要(背景、目的、ビジョン、目標、全体スケジュール)を説明した。プロジェクト初年度の成果がまとめられた後、本ワークショップで議論される主なトピックが説明された。

セッション3

参加9か国より、カントリーレポートが発表された。

バングラデシュ

異なる気候条件下における森林土壌からのCO2排出量を評価するため、バングラデシュ国内の5つの森林生態系において、JAEA実験キットを用いて土壌サンプルを系統的に収集した。実験キットは高い信頼性、携帯性、操作の容易さを示し、フィールドでのサンプル収集および実験室でのサンプル処理を確実に行えることが確認された。フィールド活動では、深さ0〜20cmにおける土壌サンプリングと環境データの記録を実施し、その後、実験室においてサンプルの調製、土壌培養、乾燥、ガス採取を行った。土壌炭素データベースがバングラデシュ全体を包括的に網羅するようにするため、北西部と南西部における2か所の追加研究サイトが提案された。本研究は、バングラデシュの土壌における土壌炭素循環やCO2排出の温度感受性に関する理解を深め、森林土壌からのCO2排出の空間パターンおよび支配要因を評価するアジア規模のデータベース構築に寄与するものである。日本原子力研究開発機構(JAEA)からの支援、協力、継続的なサポートに心より感謝申し上げる。

中国

中国については、当初は全国で12か所のサイトを選定していたが、これまでにサンプリングが完了したのは6か所のサイトである。これらのサイトには、実験的に長期の窒素添加処理や土壌温暖化処理が施された土壌サンプルも含まれている。各サイトの気候・土壌・植生といった情報や実験デザインについても発表する予定である。さらに、中国北東部の温帯林において8年間実施した土壌温暖化実験に対する、樹木成長、土壌呼吸、CH4吸収、気体状窒素損失の応答結果についても報告する。土壌14Cの測定は、温暖化が土壌有機物動態に与える影響を解明する上で役立つと期待される。

インドネシア

インドネシアにおける本プロジェクトの2025年10月時点の進捗状況は以下の通りである。(1) サンプリングを行うサイトの選定と調査を実施した(ハリムン‐サラク国立公園内のGunung Bunder)ただし、MTA(物質移動合意書)などの許可に関する問題のため、サンプリングはまだ実施されていない。(2) MTAの草案は理事会に提出されており、現在改訂中である。今年11月中に承認が下りる見通しである。

日本

今年は、9か国の研究協力者全員に実験キットを無事配送することができた。日本では、国内外18か所の予定研究サイトのうち、国外の1か所のサイト(台湾)を含む12か所のサイトで実験を完了した。研究協力者からサンプルを受け取った後、有機炭素貯蔵量を評価するための土壌分析を開始した。日本チーム内で構築された協力体制を活用し、加速器質量分析法による土壌サンプル中の14C測定や、ガスクロマトグラフィーによるガスサンプル中のCO2濃度測定も開始した。

マレーシア

本プロジェクトの目的は、マレーシア半島の選定された複数のサイトにおいて森林土壌サンプルを収集し、森林土壌からの炭素放出量を評価することである。サンプリングは2024年9月から2025年5月にかけて、バンギ(セランゴール州)、パパン(ペラ州)、グア・ムサン(クランタン州)の3か所の低地フタバガキ林で実施された。これらのサイトは生態学的特徴が類似しているものの、降雨量や土壌質といった現地条件には違いがある。本研究は独立した国家プロジェクトではないため、サンプリング計画は進行中の他の活動・プロジェクトと調整しながら実施された。フィールドでは土壌サンプリングキットを用いてサンプルを収集したが、硬い土壌や物流上の制約により課題が生じた。特に一部のサイトは実験室から遠方に位置しており、サンプル輸送に時間を要したため、サンプルの状態を維持することが難しいケースがあった。提供されたキットを用いた土壌サンプルの調製および培養は、実験室内で支障なく実施された。今後は、生態的多様性の幅をより広く捉えるため、アクセス可能性、資金確保、関係当局の許可が得られることを前提に、丘陵フタバガキ林や二次林にもサンプリング範囲を拡大する計画である。

モンゴル

FNCA気候変動(森林土壌炭素放出評価:ECEFS)プロジェクトで実施された本研究の目的は、モンゴルにおける森林土壌炭素放出の定量化である。本プロジェクトでは、モンゴルの5か所の森林サイトで土壌サンプルを収集し、実験室で分析を行うため土壌からガスサンプルを調製した。現在、サンプルの海外輸送に向けた輸出許可取得の手続き中である。

フィリピン

フィリピンチームは、報告期間中のFNCA森林土壌炭素放出評価を支援するため、国内の複数の森林サイトで土壌サンプリングとサイト特性評価を実施した。チームはVisca(レイテ州バイバイ)、クヤンバイおよびロドリゲス(リサール州)、ならびに都市近郊に位置するパヤタスとラグロ(ケソン市)の2森林で土壌サンプリングを行った。各サイトでは、主な生態学的属性(位置、標高、森林の種類、土壌の種類、植生、土地利用の履歴)を記録し、地形、土地利用、森林状態の変化を捉えるため、事前に設定したトランスセクトに沿って土壌サンプルを収集した。これらのサイトは主に二次低地林から低山帯林、および断片化した森林を代表しており、森林土壌における土壌有機炭素(SOC)動態と、潜在的な森林土壌炭素放出のベンチマークとして選定された。
土壌サンプリングに加えて、予備調査、基本的な植生プロファイリング、地方自治体(LGU)やサイト管理者との調整、およびサンプリング地点の初期マッピングも実施した。ビサヤ諸島およびミンダナオ島の主要な森林景観(重要な流域地域を含む)へネットワークを拡大するため、カバンカラン(西ネグロス州)、タグム(北ダバオ州)、ブキドノン州の追加候補となるサイトも特定した。今回サンプリングしたサイトと提案された追加サイトは、比較的自然な状態の森林から、高度に断片化された都市部・周辺部の森林パッチに至るまで、連続的な勾配を形成している。本期間に完了したフィールド作業は、今後実施されるSOC(土壌有機炭素)、炭素排出量、および関連指標の実験室分析、サイト間比較評価、そしてフィリピンにおける森林保全・再生、気候・土地利用政策を支援するFNCA共同研究の出発点となる。

タイ

研究チームは以下の5か所の調査サイトを選定した。1) Mae Puakコミュニティ森林、2)Ban Wiang Nueaコミュニティ森林、3)Wang Somboonコミュニティ森林、4)カオヤイ国立森林、5)Kan Tang (Khuan Jupa)国立森林である。土壌サンプルはFNCAが提供した実験キットを用いて収集された。このサンプリング装置は手作業、または鍬を用いて(土壌を圧縮しないよう軽く押し込むことで)地中に挿入することができた。土壌サンプリングは問題なくスムーズに実施された。培養実験で得られたガスおよび土壌サンプルは、予定通り詳細分析のため日本へ送付された。さらに、土壌サンプルの複製を収集し、δ13C、粒子径分布(PSD)、かさ密度、pH、電気伝導性の分析を行った。本調査の目的は、森林土壌における土壌粒子径分画に対する土壌有機炭素(SOC)プールの反応を評価することである。その結果、土壌PSDの違いがδ13Cの違いを反映していることが明らかになった。粘土・シルト分画は、より粗い分画に比べて森林バイオマス由来の炭素を効率的に保持していることが示された。深度とともにδ13C値が増加する傾向は、新しくて分解しやすいSOCと、古くて安定したSOCが混在する複合的なSOCプールの特徴を示唆している。本研究成果は、2026年2月12日〜14日に開催予定の「The Pure and Applied Chemistry International Conference 2026」にて発表される予定である。本論文はFNCA共同研究の成果である。今後の研究計画における追加調査サイトについては、研究チームとの詳細な協議を経て提示される予定である。

ベトナム

2025年、私たちはベトナム国内で選定された5か所の研究サイト(カッティエン国立公園、ビドゥプ・ヌイバ国立公園、ヌイ・チュア国立公園、ヨックドン国立公園、フォンニャ=ケバン国立公園)において、土壌とガスのサンプリング実験を問題なく実施することができた。土壌サンプルはFNCAの実験プロトコルに従って収集され、慎重に処理したうえで、年平均気温(MAT)およびMAT+10℃の2つの温度条件で培養された。ガスサンプルは、土壌培養の前と24時間後の両方で収集され、CO2濃度の測定に用いられた。すべての土壌・ガスサンプルは適切に処理・ラベル付けされ、研究チームによるさらなる実験室分析のため日本へ送付された。本実験は多様な生態・気候条件の下で成功裏に完了し、FNCA気候変動プロジェクトの次段階に向けた貴重なデータを提供した。

セッション4

日本原子力研究開発機構(JAEA)の小嵐淳氏より、プロジェクトの目標とアプローチ、各国における土壌・ガスサンプリングの状況、7か国からの土壌サンプルに関する予備分析結果、現在の進捗状況の評価、そして今後の計画について発表が行われた。続いて、分析結果と研究計画に関する議論が行われた。
現在の進捗状況は以下の通りである。

  1. 10か国の協力的なパートナーのおかげで、当プロジェクトは現在順調に進んでいる。
  2. しかし、実験キットの配送遅延およびサンプル輸入の予期せぬ遅れにより、サンプル分析が遅滞しており、第1段階の目標は当初の計画通りには達成できない状況である。
  3. 現時点で、7か国(台湾を含む)からの37の土壌サンプルがAMS分析に向けて処理中である。中国からは追加で88の土壌サンプルが到着したが、これらは深度別サンプリングによる収集であり、本プロジェクトのサンプリングプロトコルには準拠していない。
  4. 9か国からの500を超えるガスサンプルが、現在CO2分析に提供されている。
  5. インドネシア、カザフスタン、モンゴルの3か国からのサンプルについては、依然として到着を待っている状況である。
  6. 実験および測定作業は継続中であり、データ収集の完了およびその後のデータ分析には追加の時間を要する。

第1段階の目標であるプロトタイプデータベースとCO2排出モデルの開発を完了するためには、ガスサンプル分析によって得られるCO2排出率およびQ10値に関する解析データが不可欠である。また、今後数か月以内に到着予定の中国および3か国(インドネシア、カザフスタン、モンゴル)のサンプルから得られる追加データは、気候帯(緯度・標高・温度・湿度など)のデータ不足を補い、分析範囲を拡大するうえで有望である。
議論の結果、参加者は以下の点を確認した。

  1. 現在得られている分析結果およびデータベース・CO2排出モデルの開発状況は、本プロジェクト第1段階の成果物としては不十分である。
  2. 本プロジェクトの第1段階を1年間延長し、計画通りすべての土壌・ガスサンプルの分析を完了させ、その結果を次回のワークショップで議論することが望ましい。
  3. したがって、来年2月に開催予定のコーディネーター会議において、本プロジェクト第1段階の延長を提案する必要がある。

セッション5・6

参加者全員が、ワークショップの議事録を検討し、合意した。
FNCA日本アドバイザーの森本 浩一氏より閉会の挨拶があり、参加者全員の取り組みと貢献に謝意が伝えられた。

 


FNCA2025気候変動(森林土壌炭素放出評価)プロジェクトワークショップ
プログラム

2025年11月18日〜20日
日本、福島



11月18日 ワークショップ

9:30-9:45

セッション1:開会セッション

  • 歓迎挨拶:中嶋翔梧氏(文部科学省)
  • 開会挨拶:玉田正男氏(日本FNCAコーディネーター)
  • 自己紹介
  • 写真撮影
9:45-10:00

セッション2:気候変動(森林土壌炭素放出評価)プロジェクトの概要

プロジェクトの概説と目標:
永井晴康氏(日本プロジェクトリーダー)

10:00-11:00

セッション3:気候変動(森林土壌炭素放出評価)にかかる国別報告

  1. バングラデシュ
  2. 中国
11:10-11:20 休憩
11:20-12:40

セッション3(続き)

  1. インドネシア
  2. 日本
12:40-13:40

休憩

13:40-15:10

セッション3(続き)

  1. マレーシア
  2. モンゴル
  3. フィリピン
15:10-15:20 休憩
15:20-16:20

セッション3(続き)

  1. タイ
  2. ベトナム
16:20-17:30

セッション4:研究計画について討議

発表:小嵐淳氏(JAEA)
討議


11月19日

9:00-10:30

セッション5:議事録作成

10:30-10:45 休憩
10:45-12:10

セッション6:ワークショップのまとめ

閉会挨拶:森本浩一氏(日本FNCAアドバイザー)


オープンセミナー「気候変動」

14:00-14:10

開会挨拶:中嶋翔梧氏(文部科学省)

14:10-14:40

アジア原子力協力フォーラム(FNCA)の活動
玉田正男氏(日本FNCAコーディネーター)

14:40-15:10

土壌の温室効果ガス動態と気象激甚化
永野博彦氏(新潟大学 助教)

15:10-15:40

土地利用の変化が土壌炭素にもたらす影響を探る
ローランド・V・ラロ氏(フィリピン原子力研究所 主任研究官)

15:40-16:10

リンゴ酸がつなぐ森林土壌の鉱物風化と炭素循環
藤井一至氏(福島国際研究教育機構 ユニットリーダー)


11月20日 テクニカルビジット

10:00-11:30

JAEA 廃炉環境国際共同研究センター 環境放射線センター

13:00-14:00

震災遺構 浪江町立請戸小学校

 




FNCA2025気候変動(森林土壌炭素放出評価)プロジェクトワークショップ
参加者リスト

2025年11月18日〜20日
日本、福島


バングラデシュ

Dr.Md. Golam Rasul
Chief Geologist and Director
Institute of Nuclear Minerals (INM)
Bangladesh Atomic Energy Commission

Mr. DAS Sudeb Chandra
Scientific Officer
Institute of Nuclear Minerals (INM)
Bangladesh Atomic Energy Commission

中国

Prof. Yunting Fang
Professor/Deputy Director
Institute of Applied Ecology
Chinese Academy of Sciences

Dr. Haiyan Qian
Associate professor
East China University of Technology

インドネシア

Dr. Rasi Prasetio
Researcher, Organization for Nuclear Energy (ORTN)
National Research and Innovation Agency (BRIN)

日本

永井 晴康
日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所
原子力基礎工学研究センター 副センター長

梁 乃申
国立環境研究所
地球システム領域 シニア研究員

市井 和仁
千葉大学
環境リモートセンシング研究センター 教授

小嵐 淳
日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所
原子力基礎工学研究センター 研究主席

永野 博彦
新潟大学
自然科学系 農学系列 助教

藤井 一至
福島国際研究教育機構
研究開発部門 土壌ホメオスタシス研究ユニット
ユニットリーダー

玉田 正男
FNCA日本コーディネーター

和田 智明
FNCA日本アドバイザー

森本 浩一
FNCA日本アドバイザー

中嶋 翔梧
文部科学省

安藤 麻里子
日本原子力研究開発機構 研究主幹

中西 貴宏
日本原子力研究開発機構 研究主幹

猪越 千明
原子力安全研究協会

石川 佳歩
原子力安全研究協会

マレーシア

Ms. Nooradilah Binti Abdullah
Research Officer
Malaysian Nuclear Agency

モンゴル

Ph.D candidate Byambaa Ganbat
Soil researcher
Institute of Geography and geoecology
Mongolian academy of sciences

フィリピン

Mr. Roland V. Rallos
Senior Science Research Specialist
Philippine Nuclear Research Institute (PNRI)

タイ

Mr. Wutthikrai Kulsawat
Researcher (Nuclear Scientist)
Nuclear Research and Development Center
Thailand Institute of Nuclear Technology (TINT)

Ms.Phatchada Nochit
Researcher (Nuclear Scientist)
Nuclear Research and Development Center
Thailand Institute of Nuclear Technology (TINT)

ベトナム

Mr. Phan Quang Trung
Deputy Head of Department
Department of Nuclear and Isotopic Techniques
Dalat Nuclear Research Institute
Vietnam Atomic Energy Institute

 

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