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放射線治療

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ワークショップ

プロジェクト・リーダーからのメッセージ
加藤眞吾(医学博士)
埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科
教授

「アジア地域のがん治療の向上に貢献」

 FNCAの放射線治療プロジェクトは、1993年以降20年以上にわたって、アジア地域で罹患率が高いがんの治療成績の向上を目標に、様々な国際的な協力活動を行なってきました。私達が行ってきた活動の一端をここに紹介します。

 私達が第一に手がけたことは、子宮頸がんに対する最適な治療方法を確立することでした。子宮頸がんは主としてアジア、アフリカ、南アメリカの途上国で発生頻度が高く、その対策は各国の健康福祉上の重要な課題となっています。子宮頸がんの治療において放射線治療の果たす役割は大きく、特に進行した子宮頸がんでは、放射線治療と化学療法(抗がん剤治療)の併用療法が、現在の世界標準の治療方法となっています。私達は、アジアの子宮頸がんの患者さんにとって安全かつ効果的な治療方法を確立するために、これまでに放射線治療および化学療法についての国際的な臨床試験を行ってきました。その結果、FNCAで行った複数の臨床試験で、欧米の試験とほぼ同等の良好な治療成績が得られました。現在ではFNCAの治療プロトコールは、標準的な治療プロトコールとしてアジア各国で広く使用されています。私達は現在、子宮頸がんの治療成績の更なる向上を目指し、最新の高精度治療法である3次元画像誘導小線源治療の臨床試験を行っています。

 次に私達は、その対象疾患を上咽頭がんに広げました。上咽頭がんは鼻の奥の部分ののどに発生するがんで、特に中国〜東南アジアで発生頻度が高い病気です。がんはのどから頸部のリンパ節に転移する他に、骨や肺に転移するため難治性です。私達は2005年から上咽頭がんに対する放射線治療と化学療法についての臨床試験を行い、良好な治療成績を生み出してきました。現在も高精度の放射線治療と化学療法の最適な併用方法について臨床試験を継続しています。

 更に私達は、2013年から乳がんに対する放射線治療の臨床試験も行っています。乳がんでは乳房のがんを手術で摘出した後に、残りの乳房に放射線を当てて再発を防止します。乳がんの放射線治療では、以前から週5回(月〜金)で5週間(計25回)の治療が行われてきました。これに対して欧米で近年、短期治療(計16回、約3週間)のプロトコールが作成されました。アジアの途上国では、患者が多く、かつ放射線治療施設が少ないため、待機患者が多数発生しています。また患者にとっても回数が多い治療は、経済的・時間的な負担となっています。このため私達は、欧米で行われている短期治療のプロトコールがアジアでも安全かつ有効であることを明らかにするために臨床試験を行っています。

 放射線治療を正確に行うためには、放射線治療装置の精度管理が重要となります。FNCA放射線治療プロジェクトの医学物理士チームは、臨床試験に参加しているアジア各国の病院における放射線治療装置の精度を調査するとともに、最新の精度管理の方法について教育しました。これによってアジアの放射線治療の質的な向上がなされ、それが上述の臨床試験における治療成績の向上につながったと考えられます。

 FNCA放射線治療プロジェクトの長年にわたる活動を通して、アジア地域の多くの放射線腫瘍医および医学物理士が最新の治療技術についてのトレーニングを受け、各国で活躍しています。またFNCAの放射線治療プロジェクトの活動で得られた人的なネットワークは、アジアの放射線医療における更なる国際的な研究協力の基盤となると期待されています。
 



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