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放射線治療 ワークショップ

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ワークショップ


FNCA 2021 放射線治療ワークショップ

2021年度 FNCA放射線治療プロジェクトオンラインワークショップ
概要・報告

2021年11月26日


期間:2021年11月26日(金)
開催:Zoom
主催:文部科学省(MEXT)
参加人数:45名(バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナム)

 2021年度FNCA放射線治療ワークショップが2021年11月26日にオンラインで開催されました。本ワークショップは文部科学省(MEXT)により主催されたものです。バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ及びベトナムから45名が参加しました。

1_集合写真1

2_集合写真2

開会セッション
 本プロジェクトの日本リーダーの加藤真吾氏(埼玉医科大学)が挨拶を行い、ワークショップは開会しました。
 続いて、FNCA日本コーディネーターの和田智明氏、FNCA日本アドバイザーの玉田正男氏及び文部科学省の船曳一央氏より挨拶がありました。
 和田氏が第21回FNCA コーディネーター会合にてとりまとめられた「結論と提言」より、本プロジェクトに関連する内容を紹介しました。

 本セッションの最後には、2021年8月に亡くなった、韓国の前プロジェクトリーダー、CHO Chul Koo氏への追悼を行いました。

局所進行子宮頸がんに対する3次元画像誘導小線源治療(3D-IGBT)の前向き観察研究 (CERVIX-V)
 プロトコールCervix-Vは、腫瘍がある子宮腔内での照射をより正確かつ安全に行える新しい治療法です。アプリケータ(管)を腔内に入れた状態でCTやMRIで撮影することにより、アプリケータと腫瘍、周囲臓器との位置関係を把握することができ、そのCTやMRIを専用の治療計画装置に取り込むことで、周囲臓器への照射線量を抑えつつ腫瘍に高線量を集中投与するため、患者の副作用を減らすメリットがあります。

 2018年よりCervix-Vへの患者登録が始まっています。
 本ワークショップ時点で登録されていた各国の患者数は、バングラデシュ1名、中国10名、インドネシア9名、日本7名、カザフスタン6名、韓国0名、マレーシア11名、モンゴル3名、フィリピン8名、タイ21名、ベトナム0名であり、患者総数は76名でした。

 日本より、登録患者の臨床データのまとめが報告されました。

 76名中、68名が適格とされました。予備解析として、追跡期間が6ヵ月を超える60名の患者について解析が行われました。すべての登録患者が3D-IGBTの治療を受けました。また、21名の患者については、ハイブリッド技術(組織内照射と腔内照射の併用)による治療を行いました。

 基準線量との比較では、95%の患者がその線量を満たしました。

グレード3*1の急性血液毒性が13名(22%)の患者に見られましたが、これらの毒性は管理可能なものでした。また、グレード3以上の急性非血液毒性がこれまでのところ2名(3%)の患者に見られましたが、晩期毒性については、グレード3以上は見られていません。
 2年全生存(OS)率、局所制御(LC)率及び無病生存(DFS)率はそれぞれ91%、91%、76%でした。

 Cervx-Vの目標患者登録数は100名です。2017年に書かれたプロトコールに書かれている登録期限は2022年5月ですが、臨床試験開始時期が遅れたこと、また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で患者登録を期限までに行える見通しが立ちにくいため、患者登録を2023年11月までに継続することとしました。

※1 グレード:有害事象の重症度を意味する。有害事象共通用語規準(CTCAE)では、グレード(Grade)は1〜5まである。

上咽頭がんに対する導入化学療法と同時併用化学放射線療法(CCRT)の第U相試験(NPC-III)
 プロトコールNPC-IIIは、頸部リンパ節に転移のある上咽頭がん症例に対し、導入化学療法を行った後、放射線療法と化学療法を同時併用するプロトコールです。放射線療法と化学療法を同時併用した後で、化学療法を追加するプロトコール(NPC-I)との違いは、化学療法の順番を同時併用の前に行う点にあります。

 本プロトコールへ登録されている登録患者数は120名です(バングラデシュ1名、中国9名、インドネシア12名、日本0、カザフスタン0名、韓国0名、マレーシア31名、モンゴル0名、フィリピン7 名、タイ 0 名、ベトナム60名)。患者登録は2019年に完了しています。

 日本より、登録患者の追跡調査データ解析結果のまとめが以下の通り報告されました。

 登録患者の追跡期間中央値は41ヵ月です。
 症例登録後の急性毒性に関する一部の追跡データがまだ提出されていないため早急な提出が求められました。

 治療結果はNPC-I(CCRTと補助化学療法)との間でのT及びN分類※2によるステージをマッチングさせた比較とマッチングさせない比較から、局所制御(LC)は劣るが、全生存率(OS)は同等であることがわかりました。

 また、NPC-IIIの患者のステージはほとんどが3または4であるのに対し、遠隔転移(骨転移)の割合が比較的高いこと、治療前に骨シンチグラフィー検査を受けた患者は62%にとどまっていることが指摘されました。この点について評価するためのサブセット解析を実施することが推奨されました。

 NPC-IIIの主要エンドポイントは3年無憎悪生存(PFS)率です。さらに1年間の患者の追跡が必要です。すべての追跡データを揃えて最終報告書がまとめられる予定です。

※2 TNM分類:腫瘍の部位ごとに設定され、原発腫瘍の大きさ(T)、所属リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)の三要素で病期を決定するもの。

3_会場風景

乳がんに対する寡分割放射線療法の第U相試験 (術後放射線療法(PMRT)/BREAST-I)
 プロトコールBREAST-Iは、局所進行乳がんに対する乳房切除後の胸壁と鎖骨上窩への領域照射を行う治療法(HF-PMRT)と早期乳がんに対する乳房温存術後の全乳房照射(HF-WBI)において、1回の照射線量を通常よりやや増加させることにより、総線量を低下させて治療期間を約3分の2に短縮する治療法(HF-WBI)のふたつに別れます。この治療法は多くの先進諸国で乳房照射に使われ、治療効果が同等で有害事象が同等かやや少ないことがわかってきています。

 PMRTへ登録されている登録患者は222名です(国別では、バングラデシュ84名、中国13名、インドネシア0名、日本15名、カザフスタン20名、韓国0名、マレーシア0名、モンゴル26名、フィリピン18名、タイ0名、ベトナム46名)。

 プロトコール目標症例集積数が200名のところ、222名の患者が登録されています。登録時に解析されていなかった1名の患者データが2020年に新たに加えられています。

 日本より、PMRTの臨床症例データ解析結果のまとめについて報告が行われました。

 グレード2以上の急性皮膚炎が15%の患者に、グレード2の皮下急性毒性が1%の患者に見られました。グレード3以上の晩期毒性は見られませんでした。5年局所領域制御(LC)率、無憎悪生存(PFS)率、全生存(OS)率は、それぞれ96.3%、81.0%、90.9%でした。

 PMRTの患者登録は2019年に完了しており、主要エンドポイントは5年局所無再発生存率です。登録されている患者について、さらに3年間の追跡が必要です。また、総追跡期間は10年です。共同研究者には、その期間における晩期有害事象をチェックすることが求められています。

乳がんに対する寡分割放射線療法の第U相試験(全乳房照射(WBI)/BREAST-I)
 本プロトコールへ登録されている登録患者は227名(乳病巣は228)です。国別では、バングラデシュ31名、中国6名、インドネシア16名、日本134名、カザフスタン14名、韓国9名、マレーシア0名、モンゴル3名、フィリピン0名、タイ14名、ベトナム0名です。

 2013年2月から2018年10月までの間に227名の患者がWBIプロトコールに登録され、その治療を完了した患者227名(腫瘍228)についての解析が行われました。

 日本より、WBIの臨床症例データ解析結果のまとめについて報告されました。

 グレード2〜3の急性皮膚炎が13%の患者に見られ、局所領域再発は1例、遠隔転移は4例、また乳がんによる死亡が3例見られました。
 グレード3以上の晩期毒性は見られませんでした。5年局所領域制御(LC)率、無増悪生存(PFS)率、全生存(OS)率はそれぞれ98.9%、95.5%、95.9%でした。

 WBIの患者登録は2018年に完了していますが、有効性評価のためにさらに2年間の患者の追跡が必要です。また、総追跡期間は10年です。共同研究者には、その期間における晩期有害事象をチェックすることが求められています。

新規臨床試験
 2019年度ワークショップでがんの骨転移と脳転移に対する緩和的放射線治療が新たな臨床試験として提案されました。プロトコール案の作成にあたり、2020年にはメンバーの所属する病院の治療の現状についてアンケート調査が実施されました。
 本セッションでは、骨転移、脳転移、それぞれに対するプロトコール案が紹介されました
 また、IAEA/RCAで新たに開始する「緩和的放射線治療」のプロジェクトについても紹介されました。

1) 骨転移に対する緩和的放射線治療
 日本より、有痛性骨転移に対する単回照射放射線治療について、前向き観察研究のコンセプトとプロトコールが紹介、提案されました。プロトコール内容については概ね同意を得ましたが、以下の点については、今後決めていくこととなりました。

 - NRS 5〜7の中程度の痛みを有する患者を含めるべきか
 - 病変数と総照射野の大きさ
 - 椎体以外の病変も対象とすべきか

 次回のワークショップまでに本研究を開始するため、必要な事務的手続きも始まります。

2) 脳転移に対する緩和的放射線治療
 タイより、「定位手術的照射(SRS)に適さない脳転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)に対する緩和的全脳放射線治療(WBRT)の延命効果:予後モデルの外部検証」というタイトルの、脳転移に対する緩和的放射線治療のプトロコール(ドラフト)が紹介されました。
 タイの病院からのモデルも含む多くのモデルの直接比較を伴う外部検証研究として、予後モデルが提案されました。目的は、個々の患者にとっての全脳放射線治療の治療効果を予測することです。

 この研究の意義は、「十分なサンプルサイズを備えた迅速な研究(合理的な欠測データを許容する後ろ向き研究)となりうること」、また、「全脳放射線治療の治療効果を予測するにあたってウェブベースのモデルを使用できること」です。サンプルサイズが当該国にとって十分な場合には、各国のための個別的モデルを作成することもできます。

 全脳放射線治療の治療効果予測因子の実現性について確認するために、各国5名ずつの患者に関するチェックリスト調査が提案されました。正式な提案と記録フォームについては、今後報告されます。

 ワークショップ参加者から以下の質問があり、後に最終決定されるチェックリストにて対処されることが確認されました。

 - どのような原発がんであってもすべての脳転移を含めることは可能か?
 - KPSではなく、ECOGのパフォーマンスステータスを使用することができるか?
 - 全能放射線治療を実施していなくても、FNCA参加国のすべての参加者がそのデータにアクセスできるか?

3) 新規RCAプロジェクト
 IAEA/RCAの新規プロジェクト「緩和的治療における放射線治療の標準化」について、プロジェクトのリード国コーディネーター、若月優氏(日本、量子科学技術研究開発機構(QST))より紹介されました。プロジェクトは2022年から開始する予定です。RCA地域の政府系機関における緩和的放射線治療の臨床マネジメントを向上させることで、同地域のがん患者のQoL(生活の質)を向上させることが全体の目標です。FNCA放射線治療プロジェクトとも密接に関連して運営されること、またFNCAプロジェクトメンバーのRCAプロジェクトへの参加が期待されています。

4_発表資料

FNCAブレイクスルー賞
 プロジェクトメンバーの水野秀之氏(日本、QST)が内閣府主催のFNCAブレイクスルー賞において「優秀賞」を受賞しました。長年にわたって線量監査における品質保証(QA)/品質管理(QC)の活動の業績が高く評価をされました。

5_トロフィー授与

将来計画
1) 2022年度ワークショップ
 2022年度のワークショップは、COVID-19の感染拡大が落ち着いていた場合、モンゴルで開催される予定です。

2) 将来的な臨床試験
 第21回FNCAコーディネーター会合において、で本プロジェクト内の臨床試験で将来的に「前立腺がん」を扱うことを検討していくことが提案された旨が説明されました。

 


2021年度 FNCA放射線治療プロジェクトオンラインワークショップ
議事録

2021年11月26日


(1) 2021年度FNCA放射線治療プロジェクトオンラインワークショップが2021年11月26日に開催された。本ワークショップは、文部科学省主催、原子力安全研究協会の協力の下に開催された。FNCA参加国であるバングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ及びベトナムの11カ国からの代表者が本ワークショップに参加した。

開会セッション
(2) 放射線治療プロジェクトのプロジェクトリーダーである加藤真吾氏の挨拶でワークショップは開会した。

(3) 文部科学省の船曳一央氏、FNCA日本コーディネーターの和田智明氏、FNCA日本アドバイザーの玉田正男氏がそれぞれ挨拶した。

(4) 和田氏が、2021年6月30日開催の第21回FNCAコーディネーター会合でまとめられた「結論と提言」より、本プロジェクト関連部分を紹介した。

(5) 新たに参加したメンバーが紹介された。

(6) ワークショップのアジェンダが確認された。

(7) 加藤氏は、韓国の前プロジェクトリーダーで2021年8月に逝去したCHO Chul Koo氏に対し追悼メッセージを捧げた。ワークショップの参加者はCHO氏のために黙祷した。

セッション1: 局所進行子宮頸がんに対する3次元画像誘導小線源治療(3D-IGBT)の前向き観察研究(CERVIX-V)
(8) (国研)量子科学技術研究開発機構(QST)量子医学・医療部門放射線医学研究所重粒子線治療研究部骨盤部腫瘍臨床研究グループ医長である小此木範之氏が、Cervix-Vの臨床データ解析の要約を発表した。

(9) Cervix-Vには計76名の患者が登録され、68名が適格であった。予備解析として、追跡期間が6ヵ月を超える60名の患者の解析が行われた。

(10) すべての患者が3D-IGBTの治療を受けた。21名に対しては、ハイブリッド(組織内照射と腔内照射の併用)テクニックによる治療が行われた。

(11) 基準線量との比較では、95%の患者がその線量を満たした。
 -グレード3の急性血液毒性が13名(22%)の患者に見られた。これらの毒性は管理可能なものであった。
 -グレード3以上の急性非血液毒性がこれまでのところ2名(3%)の患者で見られた。
 -グレード3以上の晩期毒性はこれまでのところ見られていない。
 -2年全生存(OS)率、局所制御(LC)率及び無病生存(DFS)率は、それぞれ91%、91%、76%であった。

(12) 本研究の目標患者登録数は100名であり、当初の登録期限は2022年5月に設定されている。プロトコールのドラフトは2017年に作成されたが、臨床試験が開始されたのは2018年であった。それに加えて、Covid-19の影響で将来の登録を予測するのが困難になっている。登録期間の延長が提案され、合意された。患者の登録は2023年11月まで続けられることとなる。

セッション2: 上咽頭がんに対する導入化学療法と同時併用化学放射線療法(CCRT)の第II相試験(NPC-III)
(13) 筑波大学放射線腫瘍学助教である牧島弘和氏が、NPC-IIIの臨床データ解析の要約を発表した。要約は以下のとおりである。

 -患者登録は2019年に完了した。
 -現在NPC-IIIに登録されている患者の総数は120名である。
 -追跡期間の中央値は41ヵ月である。
 -NPC-IIIの登録は完了しているが、欠落しているデータがいくつかある。
 -NPC-I(CCRTと補助化学療法)との間でのT及びN分類によるステージをマッチングさせた比較とマッチングさせない比較から、局所制御(LC)は劣るが、全生存率(OS)は同等であることがわかった。

(14) 遠隔転移(骨転移)の割合は比較的高い一方、NPC-IIIの患者のステージはほとんどが3または4であり、治療前に骨シンチグラフィー検査を受けた患者は62%にとどまっていた。この点について評価するため、サブセット解析を実施することが推奨された。

(15) 本臨床試験の主要エンドポイントは3年無増悪生存(PFS)率である。さらに1年間の患者の追跡が必要である。すべての追跡データが問題なく提出されれば、最終報告書としてまとめられる。

セッション3: 乳がんに対する寡分割放射線療法の第II相試験(術後放射線療法(PMRT)/BREAST-I)
(16) 東京女子医科大学放射線腫瘍学講座教授・基幹分野長である唐澤久美子氏が、PMRT/BREAST-Iの臨床データ解析の要約を発表した。要約は以下のとおりである。

 -目標症例集積数が200例のところ、222例の症例が登録され、解析された。
 -グレード2以上の急性皮膚炎が15%の患者に見られ、グレード2の皮下急性毒性が1%の患者に見られた。
 -グレード3以上の晩期毒性は見られなかった。
 -5年の局所領域制御率、無増悪生存率及び全生存率は、それぞれ96.3%、81.0%、90.9%である。

(17) 本プロトコールへの患者の登録は2019年に完了した。プロトコールの主要エンドポイントは5年の無局所再発生存率である。参加者にはさらに3年間の患者の追跡することが求められた。また、総追跡期間は10年である。共同研究者には、その期間における晩期有害事象に注意していくこと続けることが求められている。

セッション4: 乳がんに対する寡分割放射線療法の第II相試験(全乳房照射(WBI)/ BREAST-I)
(18) 唐澤氏は、WBI / BREAST-Iの臨床データ解析の要約を紹介した。要約は以下のとおりである。

 -2013年2月から2018年10月までの期間に227名の患者がHF-WBIプロトコールに登録された。
 -治療を完了した227名の患者(腫瘍228) について解析が行われた。
 -グレード2〜3の急性皮膚炎が13%の患者に見られた。
 -局所領域再発が1例、遠隔転移が4例、乳がんによる死亡が3例見られた。
 -グレード3以上の晩期毒性は見られなかった。
 -5年の局所領域制御率、無増悪生存率及び全生存率は、それぞれ98.9%、95.5%、95.9%である。

(19) 本プロトコールへの患者の登録は2018年に完了した。総追跡期間は10年である。共同研究者には、その期間における晩期有害事象に注意していくこと続けることが求められている。

セッション5: 新たな臨床試験
1) 骨転移に対する緩和的放射線治療
(20) 牧島氏は、有痛性骨転移に対する単回照射放射線治療の新たな前向き観察研究(Bone-1)のコンセプトとプロトコールを提案した。本プロトコールの採用はFNCAメンバーに大筋で合意されたが、以下のように、最終決定すべき点いくつかある。

 -NRS 5〜7の中程度の痛みを有する患者を含めるべきかどうか。
 -病変数と総照射野の大きさ。
 -椎体以外の病変を含めるべきかどうか。

これら3点については今後さらに議論を行って最終決定することとし、2022年の次回ワークショップまでに本研究を開始するために、事務的手続きを始めることも目指す。

2) 脳転移に対する緩和的放射線治療
(21) Mahidol 大学Siriraj病院医学部放射線科放射線腫瘍学担当の講師、Kullathorn Thephamongkhol氏が、「定位手術的照射(SRS)に適さない脳転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)に対する緩和的全脳放射線治療(WBRT)の延命効果:予後モデルの外部検証」というタイトルの、脳転移に対する緩和的放射線治療に関するプロトコールのドラフトを紹介した。

(22) Thephamongkhol氏は、 タイにおける自身の病院からのモデルを含む多くのモデルの直接比較を伴う外部検証研究として、予後モデルを提案した。目的は、個々の患者にとっての全脳放射線治療の治療効果を予測することにある。本研究の意義は以下のとおりである。

まず、それは、十分なサンプルサイズを備えた迅速な研究(合理的な欠測データを許容する後ろ向き研究)となりうる。
第二に、全脳放射線治療の治療効果を予測するにあたりウェブベースのモデルを使用できる。また、サンプルサイズが当該国にとって十分な場合には、各国のための個別的モデルを作成することもできる。

(23) Thephamongkhol氏は、全脳放射線治療の治療効果予測因子の実現性について確認するために、まず各国5名ずつの患者に関するチェックリスト調査を提案した。正式な提案と記録フォームについては、今後報告される。

(24) ワークショップ参加者から以下の質問が出された。

 -どのような原発がんであっても、すべての脳転移を含めることは可能か?
 -KPSではなくECOGのパフォーマンスステータスを使用することができるか?
 -全脳放射線治療を実施していなくても、FNCA参加国のすべての参加者がそのデータにアクセスできるか?

これらの問題は、後に調査に向けて最終決定されるチェックリストにおいて対処されることとする。

3) 新たなRCAプロジェクト
(25) (国研)QST量子医学・医療部門QST病院診療診断部長である若月優氏が、新たなIAEA/RCAプロジェクト「緩和的治療における放射線治療の標準化」に関するプレゼンテーションを行った。

(26) プロジェクトは2022年から開始する。全体的な目標は、アジア太平洋地域協力協定(RCA)に参加する政府与党における緩和的放射線治療の臨床管理を改善することによって、RCA地域のがん患者の生活の質(QoL)を改善することにある。
本プロジェクトは、このFNCA放射線治療プロジェクトと密接に関連することになると予想される。FNCAメンバーは、RCAプロジェクトへの参加も奨励される。

FNCAブレークスルー賞
(27) QST量子医学・医療部門QST病院放射線品質管理室主幹研究員である水野秀之博士が、日本の内閣府(CAO)が実施するFNCAブレークスルー賞において優秀研究者賞を受賞した。放射線治療のための線量監査に関する同博士の長期にわたる品質保証/品質管理活動が高く評価された。

セッション6: 将来計画
1) 2022年度ワークショップ
(28) Covid-19の感染拡大が落ち着いた場合には、2022年度ワークショップはモンゴルで開催することとした。

2) 将来の臨床試験
(29) 加藤氏が、前立腺がんに対する放射線治療を新たな臨床試験として検討する可能性が第21回FNCAコーディネーター会合で示唆されたことをプロジェクトメンバーに再度報告した。本提案に伴い、プロジェクトメンバーは、新たな臨床試験に関する自らの意見を送付するよう奨励された。

 


2021年度FNCA放射線治療プロジェクトオンラインワークショップ
プログラム

2021年11月26日


日時: 11月26日(金)15:00-17:00
開催形態: オンライン会合
進行: 加藤眞吾氏(日本)

(日本時間)

15:00-15:15
開会セッション (10 min)
開会挨拶
挨拶
アジェンダ確認
集合写真(スクリーンショット)
加藤真吾氏 (日本プロジェクトリーダー)
MEXT / FNCAコーディネーター/ FNCA アドバイザー
15:15-15:25 セッション1, 局所進行子宮頸がんに対する3次元画像誘導小線源治療(3D-IGBT)の前向き観察研究 (Cervix-V) (10 min)
臨床データのまとめ 小此木範之氏(日本)
15:25-15:35 セッション 2, 上咽頭がんに対する導入化学療法と同時併用化学放射線療法(CCRT)の第U相試験 (NPC-III) (10 min)
臨床データのまとめ 牧島弘和氏(日本)
15:35-15:45 セッション 3, 乳がんに対する寡分割放射線療法の第U相試験 (術後放射線療法) (PMRT / BREAST-I) (10 min)
臨床データのまとめ 唐澤久美子氏(日本)
15:45-15:55 セッション 4, 乳がんに対する寡分割放射線療法の第U相試験(全乳房照射) (WBI / BREAST-I) (10 min)
臨床データのまとめ 唐澤久美子氏(日本)
15:55-16:45 セッション 5, 新規臨床試験 (50 min)
1) 骨転移に対する緩和的放射線療法
- プロトコール紹介
- Q & A / ディスカッション
牧島弘和氏(日本)
2) 脳転移に対する緩和的放射線療法
- プロトコール紹介
- Q & A / ディスカッション
Kullathorn Thephamongkhol氏(タイ)
3) 骨転移に対する緩和的放射線療法に関するRCA新規プロジェクトの紹介
- プロトコール紹介
- Q & A / ディスカッション
若月 優氏(日本)
16:45-17:00 セッション 6, 特別企画 –FNCA参加国におけるCovid-19禍での放射線治療の状況- (15 min)
-今後の活動についてョンの概要
-2022年度ワークショップ
 

 

2021年度放射線治療プロジェクトオンラインワークショップ
参加者リスト

2021年11月26日


バングラデシュ

Dr A.F.M. Kamal Uddin (PL)
Associate Professor
Department of Radiation Oncology
National Institute of Ear, Nose & Throat

Dr Parvin Akhter Banu
Senior Consultant
Clinical Oncology Department
Labeid Cancer Hospital and Super Specialty Center

Dr Sharif Ahmed
Associate Consultant
Cancer Care Center
United Hospital Limited

中国

Prof Cao Jianping (PL)
Professor / Director
School of Radiation Medicine and Protection,
Soochow University

Dr Xu Xiaoting
Vice-Director of the Department of Radiation Oncology
The First Affiliated Hospital of Soochow University

インドネシア

Dr Henry Kodrat
Development Coordinator
Department of Radiation Oncology, Faculty of Medicine,
Universitas Indonesia- Cipto Mangunkusumo Hospital

Mr Bambang Haris Suhartono
Medical Physicist of Radiotherapy Department
Dr. Soetomo General Academic Hospital

日本

和田 智明 氏
FNCA日本コーディネーター

玉田 正男 氏
FNCA日本アドバイザー

加藤 真吾 氏(PL)
埼玉医科大学
国際医療センター 放射線腫瘍科
教授

中野 隆史 氏
(国研)量子科学技術研究開発機構
量子生命・医学部門
部門長

唐澤 久美子 氏
東京女子医科大学
放射線腫瘍学講座
教授・基幹分野長

大野 達也 氏
国立大学法人群馬大学
大学院医学系研究科腫瘍放射線学
教授

若月 優 氏
(国研)量子科学技術研究開発機構
量子生命・医学部門
QST病院
診療診断部長

水野 秀之 氏
(国研)量子科学技術研究開発機構
量子生命・医学部門
QST病院 放射線品質管理室
主幹研究員

小此木 範之 氏
(国研)量子科学技術研究開発機構
量子生命・医学部門
量子医科学研究所 重粒子線治療研究部
骨盤部腫瘍臨床研究グループ
医長

牧島 弘和 氏
筑波大学 
放射線腫瘍学講座
講師

福田 茂一氏
(国研)量子科学技術研究開発機構
量子医生命・医学部門 QST病院 
放射線品質管理室
室長

中路 拓 氏
(国研)量子科学技術研究開発機構
量子生命・医学部門 QST病院 
放射線品質管理室
技術スタッフ

船曳 一央 氏
文部科学省
研究開発局 研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付
核不拡散科学技術推進局
室長補佐(国際協力・核不拡散担当)

田中 史代 氏
文部科学省
研究開発局 研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付
行政調査員

山田 愛(事務局)
公益財団法人原子力安全研究協会

カザフスタン

Prof. Tasbolat Adylkhanov
Consulting Professor
National Research Oncology Center, Nur-Sultan City, Kazakhstan

Dr Yevgeniya Kossymbayeva
Assistant of Clinical and Radiation Oncology Department
Semey Medical University

Dr. Akmaral SAVKHATOVA
Head of Department
Daily Radiation Therapy Department
Kazakh Institute of Oncology and Radiology

韓国

Dr JANG Wonil (PL)
Chief,
Department of Radiation Oncology
Korea Institute of Radiological & Medical Sciences (KIRAMS)

Dr KIM Kum Bae
Chief Medical Physicist
Radiation Oncology Department
Korea Institute of Radiological & Medical Sciences (KIRAMS)

マレーシア

Dr Winnie Nyek Ping Ng (PL)
Clinical Oncologist,
Radiotherapy & Oncology Department
National Cancer Institute

Dr.Rosdiana binti Abd Rahim
Clinical Oncologist,
Radiotherapy & Oncology Department
National Cancer Institute

Mr Muzzamer Bin Mohammad Zahid
Medical Physicist,
National Cancer Institute,Putrajaya, Malaysia

Dr Beena Devi
Consultant Clinical Oncologist
Normah Medical Specialist Centre
Kuching Sarawak

モンゴル

Dr Uranchimeg Tsegmed (PL)
Radiation Oncologist
Department of Radiation Oncology
National Cancer Centre of Mongolia

Dr Erdenetuya Yadamsuren
Radiation Oncologist of Radiotherapy Department
National Cancer Center of Mongolia

Dr.Bilegsaikhan Batsuuri
Radiation Oncologist of Radiotherapy Department
National Cancer Center of Mongolia

フィリピン

Dr Miriam Joy Calaguas (PL)
Senior Consultant
Department of Radiation Oncology
St. Luke's Medical Center, Quezon City/Bonifacio Global City

Dr Rey H. De Los Reyes
Dean & Professor, Institute of Medicine
Far Eastern University – Nicanor Reyes Medical Foundation (FEU-NRMF)

Honorary Consultant,
Department of Oterics and Gynecology
Jose R. Reyes Memorial Medical Center (JRRMMC)

Dr Jaemelyn Marie O. Fernandez
Research Coordinator / Medical Specialist (Radiotherapy)
Department of Radiotherapy
Jose R. Reyes Memorial Medical Center

Dr Jerickson Abbie Sapno Flores
Research Coordinator / Medical Specialist (Radiotherapy)
Department of Radiotherapy
Jose R. Reyes Memorial Medical Center

タイ

Dr Yaowalak Chansilpa (PL)
Consultant,
Division of Radiation Oncology, Department of Radiology
Faculty of Medicine, Siriraj Hospital, Mahidol University

Dr Kullathorn Thephamongkhol
Lecturer
Division of Radiation Oncology, Department of Radiology
Faculty of Medicine, Siriraj Hospital, Mahidol University

Mr Pitchayut Nakkrasae
Medical Physicist
Division of Radiation Oncology, Department of Radiology
Faculty of Medicine, Siriraj Hospital, Mahidol University

Dr. Jiraporn Setakornnukul
Radiation Oncologist
Division of Radiation Oncology, Department of Radiology

ベトナム

Dr Nguyen Cong Hoang (PL)
Head of Radiation Oncology Department / Vice Director of National Radiation Oncology Centre
National Cancer Hospital (K Hospital)

Dr To Anh Dung
Head of Breast and Gynecology Radiotherapy Department,
National Cancer Hospital (K Hospital)

Dr Dang Huy Quoc Thinh
Vice Director
Head of RadiationOncology
Ho Chi Minh City Oncology Hospital

President of Vietnamese Palliative Health Care Society

Head of International Affairs- Office- Vietnamese Cancer Society





オンラインオープンセミナー



オンラインオープンセミナーとして、FNCA放射線治療プロジェクト運営グループの大野達也氏(群馬大学)がプレゼンテーションを行いました。。

※本内容に関するお問い合わせ(2022年3月31日まで):


Forum for Nuclear Cooperation in Asia