セッション1:カントリーレポートサマリー
議長:バングラデシュ
日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN/JAEA)の奥田将洋氏より、2020年度ワークショップ以降の核セキュリティ・保障措置の実施、核セキュリティ文化の促進、キャパシティ・ビルディングの取り組みについてのカントリーレポートサマリーが示された。2021年6月にフィリピンが核物質の防護に関する条約の改正に批准したことが強調された。カントリーレポートサマリーは本ワークショップの会議報告に添付され、FNCAウェブサイトに掲載される。
セッション2:核セキュリティ(人材育成のためのステークホルダーマトリックス)
議長:インドネシア
発表:日本、オーストラリア
1) 日本
ISCN/JAEAの野呂尚子氏より、いくつかのFNCA参加国が作成した核セキュリティステークホルダーマトリックスの進捗状況が紹介された。
このマトリックスは、2021年〜2023年の本プロジェクトのために提案されたものである。インドネシア、日本、カザフスタン、モンゴル、フィリピン、タイからステークホルダーマトリックスが事務局に提出され、本マトリックス作成の試みに対して謝意が示された。これに関連して、作成した国に対し、核セキュリティステークホルダーマトリックスの作成者は誰か、本マトリックスを単独または他の関連組織と共同で埋めたのか、より重要な質問としてキャパシティの強化・構築のためにFNCAが接触すべき対象は誰か、知見の共有を求めた。
マトリックスを作成した国は、他の組織と共同でマトリックスを埋めたとのことであった。さらに、FNCA参加国の高官が出席するFNCA大臣級会合でFNCA日本コーディネーターがこの件を扱うことができれば、このマトリックスは他のステークホルダーに配布される。これは、質問にあった「キャパシティの強化・構築のためにFNCAが接触すべき対象」に対する答えとなるだろう。
また、野呂氏は日本の経験から得た教訓についても紹介した。単独の当事者(ISCN)が国内の核セキュリティに関するすべてのステークホルダーを特定し、マトリックスを作成するのは難しいと説明した。核セキュリティは国家の責任であり、複数の組織が核セキュリティに対する責任を有しており、それを理解しなければならない。また国内の核セキュリティ体制は時と共に変化する。能力ギャップの特定には、責任と能力に関するインプットを具体的かつ詳細に記載する必要がある。
日本から学ぶべき教訓として、例えばアイソトープ(RI)セキュリティのステークホルダーにもっとアプローチして放射線源セキュリティ能力の構築及び改善を支援することである。続いて、次のステップが提案された。
- 国別核セキュリティマトリックス作成のためのフォローアップ技術会合:2022年夏〜秋
- マトリックスに関する良好事例と教訓を共有するオープンセミナーの開催:2023年ワークショップ
2) オーストラリア
オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)のケイトリン・トゥール氏より、ANSTOが国内で核鑑識技術を整備してきた経験と、国内、地域、国際レベル、並びに国際原子力機関(IAEA)との核鑑識に係る協力について紹介された。
はじめに、核セキュリティ分野におけるオーストラリアの現状について説明がなされた。核物質、放射線源、原子力緊急時対応準備に関わる3つの組織がある。原子力施設の核セキュリティ・保障措置に関しては、オーストラリア保障措置・不拡散局(ASNO)が統括している。オーストラリアにおける放射線源の安全と緊急時対応に関しては、オーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA)が管轄している。この2つの組織は、それぞれ核物質の規制機関、放射線源と緊急時対応の規制機関である。
オーストラリアにおける核鑑識実施能力の整備に関しては、2012年に韓国ソウルで開催された第2回核セキュリティ・サミットでのオーストラリア首相の「私たちは、不法な核物質の検知を向上させるために鑑識科学技術の開発をリードしている」というスピーチが引用された。
ANSTOの核鑑識チームは、国内、地域レベルでの協力や、IAEAとの協力のもと活動している。中でもIAEAとは共同で会議や技術会合を含む政府フォーラム、トレーニング活動を行っており、IAEAの核セキュリティガイドラインの整備にも寄与している。また、核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ(GICNT)における核鑑識ワーキンググループの活動もサポートしており、フィリピン(PNRI)、韓国(KINAC)、日本(JAEA)、インドネシア(BATAN)など多くのアジア諸国との協力の実績がある。さらにANSTOとIAEAは、2022年11月に核鑑識地域トレーニングコースの開催を予定している(コロナウイルス感染症の影響により変更の可能性あり)。
オーストラリア国内の核鑑識について、ANSTOはACTpolicing(オーストラリア首都特別区警察)に対して、核物質等の取り扱いに関するケーススタディの支援を行っている。また、IAEA INFCIRC/917に採択された、核セキュリティにおける核鑑識に関するIAEAとの共同声明についても説明があった。オーストラリア政府は、IAEA加盟国がINFCIRC/917を承認することによりこの共同声明を支持することを期待している。
セッション3:保障措置(追加議定書(AP)で求められる輸出管理及び申告に関する良好事例)
議長:タイ
発表:韓国
韓国原子力統制技術院(KINAC)のキム・ジョンスク氏より、韓国において保障措置追加議定書(AP)で求められる輸出管理及び申告の良好事例が紹介された。AP申告の義務を適切に果たすためには、国家の輸出管理制度が不可欠である。そこで、韓国の戦略物資の輸出管理制度について韓国におけるAPの実施状況とともに紹介された。
汎用品については産業通商資源部(MOTIE)、軍需品リストについては防衛事業庁(DAPA)、原子力供給国グループ(NSG)のトリガーリスト品目については原子力安全委員会(NSSC)がそれぞれ主な許認可当局である。NSSCはまた、保障措置規制当局(SRA)として韓国における保障措置の実施に責任を負っている。その他、外務省、韓国関税庁、国家情報院などの行政機関が様々な形で輸出管理業務に携わっている。
輸出許可の審査手順、要件、条件について紹介された。MOTIEとNSSCはそれぞれ独立した技術支援機関(TSO)及びウェブベースの電子許認可システムを維持しており、TSOとして韓国戦略物資管理院(KOSTI)、電子許認可システムとして戦略物資輸出管理情報システム(Yestrade)、そしてKINACと原子力関連の輸出入管理に係るオンライン・システム(NEPS)があると説明された。
AP第2条a項の申告に関して、原子力事業者、研究者、学術界等の保障措置関係者の意識向上が重要であることが強調された。なお、APの申告義務を完全に遵守するための政府の取り組みは、1999年のAP署名時から始まり現在に至っている。その一例としてNSSCは、第2条a項関連情報をSRAに報告する許認可申請者に対応するため、PC版だけでなくモバイル版のウェブベースのAP報告システムを提供している。
オンライン演習:追加議定書(AP)で求められる輸出管理
進行:韓国、日本
本ワークショップの特別イベントとして、APの下での輸出管理に関するシナリオベースのオンラインエクササイズが、キム・ジョンスク氏とISCN/JAEAの進行により実施された。
直井洋介氏より閉会の言葉が述べられた後、ワークショップは正式に終了した。
添付資料
- 会合プログラム
- 参加者リスト
- カントリーレポートサマリー
オーストラリア
Ms. Kaitlyn Toole
Senior Scientist, Nuclear Forensics
Australian Nuclear Science & Technology Organisation (ANSTO)
Mr. Travis Van Der Velden
Manager, Nuclear Security and Nuclear Safeguards,
Australian Nuclear Science & Technology Organisation (ANSTO)
バングラデシュ
Dr. Abid Imtiaz
Chief Scientific Officer
Nuclear Safety, Security and Safeguards Division
Bangladesh Atomic Energy Commission (BAEC)
中国
Mr. Chen Chen
Training Manager
International Cooperation and Training Division
State Nuclear Security Technology Center (SNSTC)
Ms. Ju Jingmin
Training Manager
International Cooperation and Training Division
State Nuclear Security Technology Center (SNSTC)
インドネシア
Mr. Khairul
Senior Nuclear Security Officer
Nuclear Energy Research Organization (ORTN)
National Research and Innovation Agency (BRIN)
日本
和田 智明
FNCA日本コーディネーター
玉田 正男
FNCA日本アドバイザー
船曳 一央
文部科学省
山本 桂史
文部科学省
直井 洋介
日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN/JAEA)
センター長
宇根 博信
京都大学 複合原子力科学研究所 教授
浅沼 徳子
東海大学 工学部 准教授
井上 尚子
日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN/JAEA)
野呂 尚子
日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN/JAEA)
関根 恵
日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN/JAEA)
奥田 将洋
日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN/JAEA)
木村 祥紀
日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN/JAEA)
松井 芳樹
日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN/JAEA)
本川 りさ
日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN/JAEA)
山口 かおり
日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN/JAEA)
猪越 千明
公益財団法人 原子力安全研究協会 国際研究部
小池 亜紀
公益財団法人 原子力安全研究協会 国際研究部
カザフスタン
Mr. Alexandr Ossintsev
Head of Department for Security Control and Non-proliferation
National Nuclear Center of the Republic of Kazakhstan
韓国
Mr. Jinho Chung
Team Leader, International Cooperation Team,
Korea Institute of Nuclear Nonproliferation and Control (KINAC)
Ms. Jongsook Kim
Professor
Korea Institute of Nuclear Nonproliferation and Control-International Nuclear Nonproliferation and Security Academy (KINAC-INSA)
マレーシア
Mr. Fedrick Charlie Anak Matthew Brayon
Section Head
Nuclear Installation Division
Atomic Energy Licensing Board (AELB)
Ms.Hasfazilah bint Hassan
Head of Nuclear Security Group
Malaysian Nuclear Agency
モンゴル
Ms. Gerelmaa Gombosuren
Department of Nuclear Safety and Security
The Executive Office of the Nuclear Energy Commission
Government of Mongolia
フィリピン
Ms. Eileen Beth A. Hernandez
Science Research Specialist II
Nuclear Safeguards and Security Section
Nuclear Regulatory Division
Philippine Nuclear Research Institute (PNRI)
タイ
Ms. Harinate Mungpayaban
Nuclear Chemist
Security and Safeguards Technical Support Section
Office of Atoms for Peace (OAP)
ベトナム
Ms. Bui Thi Thuy Anh
Director
International Cooperation Division
Vietnam Agency for Radiation and Nuclear Safety (VARANS)