2015年度 FNCA 原子力安全マネジメントシステムプロジェクトワークショップ 概要
2015年6月8日 - 12日 ベトナム・ダラト
開会
ベトナム原子力研究所(VINATOM)副所長兼ダラト原子力研究所(DNRI)所長のDr. NGUYEN Nhi Dienが、参加者に対し歓迎の挨拶を行い、ワークショップを開会した。Dr. DienはFNCA原子力安全マネジメントシステム(SMS)プロジェクトにおけるオーストラリアの主導的な役割に対して、謝意を表明した。
続いて、主導国オーストラリアのプロジェクトリーダーであるMr. Hefin GRIFFITHSが、ANSTOを代表して返礼の挨拶を行い、Dr. Dien及びDNRIの特別ゲストによるピアレビューへの支援に対し、謝意を示した。Mr. GRIFFITHSはまた、ワークショップとピアレビューを開催するベトナムの職員により、準備と運営が見事に行われていることについても感謝した。
Mr. GRIFFITHSは参加者、特に今回初の参加者を歓迎し、我々は初対面の者同士としてワークショップに臨んでいるが、WSを終える頃には友人になっているであろうし、ピアレビューは安全性の向上という共通の目標に向け、友人同士助け合うことであると述べた。
イントロダクションとSMSプロジェクトの背景
参加各国の代表は自己紹介を行った。参加者リストは下記の通りである。
Mr. GRIFFITHSは、FNCAの活動概要について説明した。FNCAは日本が主導する、アジアにおける原子力技術平和利用のための枠組である。この中でSMSプロジェクトは2009年に開始し、2013年まで活動を続ける予定であった。SMSプロジェクトは、やはりピアレビューと自己評価の取組を行い、成功裏に終了した前身の原子力安全文化プロジェクトを引き継ぎ、オーストラリアによって主導されている。Mr. GRIFFITHSは、オーストラリアが今後2年間プロジェクトに対し資金提供を行うこと、つまり2016年までプロジェクトを継続する意向であるということを公表した。
SMSプロジェクトのねらいは以下の通りである。
・原子力施設の安全マネジメントシステムの重要側面(Key Aspect)を特定する
・原子力安全マネジメントの自己評価/ピアレビューのツールを開発する
・合意に基づき、参加各国内の機関においてピアレビューを実施する
初回のワークショップは、2010年、シドニーにおいて開催された。続いて、ワークショップとピアレビューが2010年10月にインドネシアのスルポン、2011年11月にマレーシアのクアラルンプール、2012年10月に韓国のデジョン、2014年5月にバングラデシュのダッカで開催された。Mr. GRIFFITHSは、過去のピアレビューで得た経験は、今回のピアレビューにおいても役立つであろうと述べた。
Mr. GRIFFITHSはワークショップの予定について説明を行った。アジェンダの最終版は、下記の通りである。
ベトナムの原子力関連活動の背景
ピアレビューに向け情報を提供するために、Dr. Dienはベトナムにおける原子力発電計画と、新規研究炉計画について、発表を行った。Dr. Dienは以下の9つの部署を有するVINATOMの概要について説明した。
・原子力科学技術研究所(INST)
・放射性・希土類元素技術研究所(ITRRE)
・非破壊検査センター(NDE)
・原子力訓練センター(NTC)
・ハノイ照射センター(HIC)
・原子力研究所(NRI)
・原子力技術産業応用センター(CANTI)
・原子力技術センター(CNT)
・放射線技術センター(VINAGAMMA)
810名のスタッフのうち、500名は大学卒で、そのうちの130名は准教授の資格等、高度な資格を持っている。
VINATOMの機能は以下の通りである。
・研究開発
・技術支援・サービス
・訓練
・原子力発電と放射線利用に関する技術的助言
・政府に対する支援(原子力政策・法律の起草)
Dr. Dienは、2006年の首相による決断に基づく、ベトナムにおける2020年までの原子力平和利用計画について説明した。これはロシアによる協力の下、ニントゥアン省に1,200MWeの原子炉を2基建設するというものである(ニントゥアン第1原子力発電所)。建設開始は2017年を見込んでいる。さらに、恐らく日本の設計により、1,000MWeの原子炉を2基追加することも検討中である(ニントゥアン第2原子力発電所)。
Dr. Dienはプロジェクトにおける顕著な出来事と、ロシアと日本で研修が行われていることなど、人材育成の状況について説明した。
またDr. Dienは、ベトナムの原子力発電計画への技術的支援と、新規研究炉等の先端的研究と教育に対する支援を目的とした、原子力科学技術センター(CNEST)の新設についても紹介した。新規研究炉の設置場所については、3カ所の候補地が挙がっており、2016年にフィージビリティ調査が開始される予定である。
カントリーレポート
前回の提案に従い、今回のワークショップでは、安全マネジメントシステムに一層注力することになっていた。各国参加者は、安全マネジメントにおいて改訂された点や変更点に関するカントリーレポートの発表を行った。それぞれの発表は歓迎され、有意義な議論が行われた。
特別講演と特別セッション
前回のバングラデシュにおけるワークショップの提案に基づき、原子力安全推進協会(JANSI)の倉田聡氏が、ピアレビューのねらいについて説明する発表を行った。これにより、ピアレビューの範囲と役割が定義され、またピアレビューと監査との違いが明らかになった。この発表はすべての参加者、特に初参加者にとって非常に有益であった。
前回ピアレビューからのフィードバック
ピアレビューの重要なステップの1つは、前回ピアレビュー開催組織が、改善の余地ありとされた点について、フォローアップを行うことである。
バングラデシュ原子力委員会(BAEC)原子力研究所(ARE)のMr. Mohammad Mezbah Uddinが、2014年のピアレビュー結果への対応について発表を行った。BAECと原子炉運転・保守ユニット(ROMU)は、ピアレビューによる改善提案に基づき、以下の点を含め、多くの改善を実施していることが明らかになった。
・人材育成、安全監視、経年管理の改良
・BAECにおける品質管理部の設立、また研究炉センター長の下における文書・計画・訓練部の設立
・研究炉運転寿命を15年から20年に延長するための年間計画の提出
・地震等の過酷な自然災害に対応するための安全マネジメント計画の策定
幅広く改善が行われている一方、Mr. Uddinは、ピアレビューにおいて指摘されたすべての点を改善するには、多くの年月を要するであろうと述べた。
自己評価とピアレビューのプロセス
自己評価ツールはピアレビューの要であり、利用者が正しく理解していることが重要である。初参加者のため、Mr. GRIFFITHSは、DNRIにおけるピアレビューに先立ち、すべての参加者がツールに対する理解を深めるよう、訓練を行った。
ワークショップのまとめと結論
DNRIのスタッフによる発表により、ピアレビューに先立ち、研究炉と関連施設に対する理解が深まった。カントリーレポートは興味深く、好評を博した。
初参加者がワークショップに先立ち、各国の原子力利用の状況や施設について理解することが出来るよう、カントリーレポートをワークショップの前に入手出来るようにする取組が、今回試された。この取組は、参加者が各国の原子力の枠組みを理解する一方で、カントリーレポートの内容を主に安全マネジメントに関する事項に絞り、またワークショップを時間内に終了させることを目的としている。
プロジェクトに資金提供が行われるのはあと1年であり、ワークショップとピアレビューの開催国となることが出来るのも、あと1ヵ国のみである。タイが次回ワークショップ・ピアレビュー開催国の第1候補となった。
ピアレビュー
6月10日〜12日にかけ、DNRIのDNRR研究炉及び周辺施設を対象としたピアレビューが実施された。参加者は、6月10日にDNRIを訪問した。
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