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放射線加工・高分子改質 ワークショップ

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ワークショップ

FNCA 2010 電子加速器利用ワークショップ
概要   議事録   プログラム   参加者リスト

FNCA2010 電子加速器利用ワークショップ
-天然高分子の放射線加工-
概要

2011年2月14日〜18日、タイ、バンコク

 2010年度の電子加速器利用ワークショップは、2011年2月14日〜2月18日までの5日間、タイのバンコク市において開催されました。プログラムは添付1 、参加者リストは添付2を参照。
 初日には、「天然高分子の放射線加工」と題するオープンセミナーが開催され、タイの放射線加工に関連する研究機関や大学、さらに農業局等から約60人が参加しました。初めに、タイ原子力技術研究所所長代理のスミトラ・タチャイ氏と、FNCA日本コーディネーターの町末男氏から挨拶があり、その後、天然高分子の放射線加工に関する4つの講演が行われました(オープンセミナーのサマリーは添付3参照)。


オープンセミナーの様子

天然高分子の放射線加工により
製品化された商品(展示会)

 初日の午後には、各国より、放射線加工によるキトサン由来の植物生長促進剤を用いたフィールド試験の進捗状況が報告され、各国において良好な結果が得られていることが確認されました。カントリーレポートのサマリーは添付4を参照。
 2日目の午前には、キトサン由来の植物成長促進剤の総合的評価と今後の計画についての討議が行われました。午後には、オリゴキトサン植物成長促進剤の商業化へ向けての課題について討議が行われ、今後は、植物成長促進剤の費用対効果分析を行うとともに、商業化へのプロセスにおける参加各国内での課題を明瞭化し、農業関係機関との連携による商業化への具体的な計画を立てることが確認されました。続いて植物成長促進剤の製造と特性化のための共通情報フォーマットについて意見交換が行われ、今後は、各国のフィールド試験の手順や結果を植物ごとに共通のフォーマットに記入し共有することにより、効率的かつ効果的にフィールド試験を進めていくことで合意されました。その後、2011年度の植物成長促進剤の研究計画について討議が行われ、次年度(2011年度)が本プロジェクトの現行フェーズの最終年度であることから、今後は、現在のフィールド試験の段階から、商業化へ向けた活動へ発展させること等が確認されました。
 3日目の午前には、各国より、放射線架橋とグラフト重合によるハイドロゲル超吸水材の製造に関するカントリーレポートが発表され(サマリーは添付4参照)、午後には、タイ原子力技術研究所(TINT)の宝石照射センター(GIC)と、不妊虫放飼法技術施設へのテクニカルビジットが行われました。

TINT宝石照射センター
 
不妊虫放飼法技術施設

 4日目には、放射線加工による超吸水材の製造施設の概念設計に関する討議が行われ、本分野において先駆的な研究を行っているベトナムの参加者が、自国における超吸水材の製造方法や用途等を紹介しました。午後には、超吸水材の土壌改良材としての利用に関する発表および討議が行われ、鳥取大学において行われている放射線架橋カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた砂地の水理特性の特徴化に関する研究が紹介されました。その後、超吸水材の製造と特性化のための、共通情報フォーマットに関する討議が行われ、参加者より、土壌改良材としての超吸水材に必要なパラメーターが提案され、今後はこの共通フォーマットを用いて研究開発を進めていくことで合意されました。その後、2011年度の超吸水材の研究計画に関する討議が行われ、今後は、現在の材料開発あるいはフィールド試験の段階から、商業化へ向けた活動へと発展させることや、各国における現行の研究フェーズの達成目標をより明確化させることなどが確認されました。


ワークショップ4日目の様子

 最終日には、FNCAとIAEA/RCAとの協力体制について発表及び質疑応答が行われました。FNCAとIAEA/RCAの協力の重要性が再認識され、今後も情報、技術、ノウハウ、そして文献等の共有を継続していくことが確認されました。さらに、今後の研究開発のための参加国間におけるワークシェアリングに関する意見交換が行われ、農業部門との連携強化や、参加各国内における超吸水材のニーズの再調査等が提案されました。その後、議事録案が提案され、審議の後に承認されました。


FNCA2010 電子加速器利用ワークショップ
-天然高分子の放射線加工-
議事録

2011年2月14日〜18日、タイ、バンコク

1) ワークショップアウトライン

i) 期日 : 2011年2月14日〜18日
ii) 場所 : タイ、バンコク
iii) 主催 : 文部科学省 (MEXT)
タイ原子力技術研究所 (TINT)
iv) 参加者 : 8カ国16人 (バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)
v) プログラム : 添付1

2) ワークショッププログラム

オープンセミナー「天然高分子の放射線加工」

 天然高分子の放射線加工をテーマとしたオープンセミナーがバンコク市のコートヤードマリオットホテルで開催された。研究機関や大学、農業省等から約60名がセミナーに参加した。オープンセミナーのサマリーは添付3を参照。

セッション1: FNCAの概要

 タイ原子力技術研究所(TINT)の所長代理であるスミトラタチャイ氏とFNCA日本コーディネーターの町末男氏から歓迎の挨拶があり、それぞれのセッションへの積極的な参加を通し、本ワークショップが有益で有意義なものになることを祈願した。その後、参加者は簡単な自己紹介を行った。参加者リストは添付2を参照。
 FNCA日本コーディネーターの町氏からFNCAの成果と2010年の大臣級会合の開催報告があり、2010年度の大臣級会合のサマリープロジェクト活動及び最新情報が発表された。天然高分子の放射線加工、放射線治療、そして突然変異育種の分野におけるFNCAとIAEA/RCAとの相互協力が重要であると述べられた。
 日本のプロジェクトリーダーである日本原子力研究開発機構の玉田正男氏は、エンドユーザーへの技術移転を目標とした天然高分子の分解による植物生長促進剤(PGP)と、放射線架橋ハイドロゲルによる超吸水材(SWA)の研究開発に焦点を置いた第3フェーズプロジェクトの概要を述べた。
 参加国は植物生長促進剤のフィールド試験を継続して行い、得られたデータをそれぞれのデータシートにまとめることで合意した。データシートを活用することにより、エンドユーザーへキトサン植物生長促進剤の情報を一般化して伝えることができると期待される。干ばつ地帯に有効な土壌改良材としての超吸水材について今後得られるデータは、エンドユーザーが、理解しやすいような農業利用における超吸水材の効果をまとめたものが必要である。参加国は、ワークショップにおいて、植物生長促進剤と超吸水材の効果的な技術移転へのアプローチについて討議するよう要請された。

セッション 2: 放射線によるキトサン由来植物生長促進剤の製造と利用

 参加8カ国は2010年の活動と2011年から2012年の研究計画を詳細に示したレポートを発表した。レポートのサマリーは添付4のPartAを参照。
 インドネシア原子力庁のダルマワン・ダルウィスは植物生長促進剤のフィールド試験結果のまとめに関するリードスピーチを行った。オリゴキトサン植物生長調整・促進剤は75〜100 kGyの範囲でガンマ線を用いて生産された。ジベレリンやオーキシン、そしてサイトカイニンのようなオリゴキトサン植物生長調整物質の効果が見出された。植物生長促進剤のためのオリゴキトサン生産のコスト評価は、材料と加工費に基づいて行われた。南スマトラ州のインドララヤ地区で、(MitaniとRajabasa種を用いた)大豆のオリゴキトサンのフィールド試験が行われた。結果は、オリゴキトサンを用いた大豆種の生産性はどちらもコントロールより高い値を示した。Rajabasa とMitani 種の生産性の向上は約40パーセントであった。オリゴキトサン植物生長調整剤の普及と研修が、チアンジュール、マジャレンカ、パレンバン、そしてバニュワンギのいくつかの農家のグループによって行われ、トレーニングの他、オリゴキトサン植物生長調整剤やフィールド試験に関する農家との討議などいくつかの活動が行われた。その結果、農家はオリゴキトサンを自家の大豆に使用することに興味を持っていることが分かった。
 2011年から2012年のオリゴキトサン植物生長促進剤の研究は、インドネシア原子力庁アイソトープ放射線技術研究センターの農業部とも協力して行われる予定である。長年の無機肥料の利用は、土壌肥沃度を減少させ、最終的に生産性を横倍にする。土壌肥沃度を維持し、植物の生産性を上げるため、2011年と2012年は、無機肥料の利用を軽減するためのバイオあるいは有機肥料と組み合わせたオリゴキトサンを無機肥料に代用したり、オリゴキトサンと有機肥料の組み合わせを大豆植物体のフィールド試験で実施する予定である。植物の主要栄養素の分布を分析するためは、アイソトープである32Pと15Nを用いた測定技術が有効であり、植物、収穫高・生産量への全体のNやPの摂取のようなパラメーターが計測できる。
 マレーシア原子力庁のカマルディン・ビン・バハリ氏は、オリゴキトサン植物生長促進剤の実用化へ向けた課題についてリードスピーチを行った。植物生長促進剤のためのオリゴキトサンのパイロットスケールの生産が、連続流ガンマ線照射によって行われた。総生産量は約2,200リットルであった。オリゴキトサン植物生長促進剤を実用化へつなげるための課題は、原材料、オリゴキトサンの生産、フィールド試験、農家の抱える問題と競合生長促進剤などである。
 ベトナム原子力研究所(VAEI)のグェン・コック・ヒエンも、同じくこのテーマで発表を行った。ガンマ線と過酸化水素水(0.25、 0.5、 1パーセント)の相乗作用によるキトサンの分解について調査を行い、分解過程は分解キトサン(オリゴキトサン)の平均的な分子量のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって明らかにされた。得られたオリゴキトサンの構造はフ−リエ変換赤外分光法(FT-IR)とX線回折(XRD)によって特徴づけられた。結果は、分子量5,000から10,000までのオリゴキトサンは、10kGy以下の低線量で、少量の過酸化水素を含むキトサン溶液のガンマ線照射により効果的に製造されることが示された。オリゴキトサンの主鎖らせん構造にはほとんど大きな変化はなかったが、得られたオリゴキトサンは、約10パーセントのアミノ基を失い、カルボキシル基の構造はフ−リエ変換赤外分光法(FT-IR)によって特定できなかった。オリゴキトサンの形態は、元のキトサンの形態とは異なり、本質的に不定形であった。ガンマ線と過酸化水素を組み合わせた手法は、オリゴキトサンのスケールアップした製造に大変効果的である。
 日本原子力研究開発機構の長澤尚胤氏が、植物生長促進剤の生産と特徴評価のための共通情報フォーマットの討議のためのリードスピーチを行った。参加者のさまざまな発表に基づき、ガンマ線照射により得られたオリゴキトサンは植物生長促進剤また植物エリシター(高生産、害虫や菌類からの防御効果)として有効であることが確認された。植物生長促進剤の共通情報データシートを作成することは、結果を効率的に共有する上で重要である。植物生長促進剤データシートは、植物の種類、場所、気候条件、植え付け・収穫管理、葉面散布、種類、分子量、オリゴ糖の濃度、植物生長効果(作物生産量、長さ、重さ、散布、コントロール等)の項目から構成される。全ての参加国は、植物生長促進剤の良好な結果を共有し、オリゴキトサン植物生長促進剤を商業化し、さらに植物生長促進剤の使用を農家のようなエンドユーザーへ促進するため、植物生長促進剤共通情報データシートを活用することに合意した。
 日本原子力研究開発機構の玉田正男氏は、第3フェーズの研究計画に関するリードスピーチを行った。参加国は、植物生長促進剤に関する研究の最近の状況と、2011年の見通しを添付5の通り示した。

セッション3: 放射線架橋とグラフト重合によるハイドロゲル超吸水材の製造

 中国、日本、インドネシア、フィリピン、タイ、そしてベトナムの6カ国が超吸水材の研究活動に関するレポートを発表した。それぞれのレポートのサマリーは添付4のBを参照。
 その後、ベトナム原子力研究所(VAEI)のレ・ハイ氏は、放射線による超吸水材の製造施設の概念設計に関するリードスピーチを行った。ベトナムでは、今日、農業生産において新しい手法が用いられている。農業製品の値段は比較的安定している。清潔で安全な農業製品を生産する事業は、ベトナム政府の主要な事業の一つである。事業開発と高技術の農業生産へ向けての研究が、国内のいくつかの地方で行われてきた。乾地農業の逃避は国家のポリシーとなっている。多くの農業製品が値上がりし、農家は、農業生産における科学利用と技術利用について理解を深めようと努めた。多くの民間会社は、国における農業の発展的なニーズに合う最先端技術の製品を生産する工場を建設するため、農業の研究所と密接にかかわっている。
 有機肥料の製造に加え、農業用あるいは、添加物としての超吸水材の直接的な利用の需要は年間500トンから1,000トンになった。タン・フン有限会社は、最少で年間3,000トンという超吸水材製造照射施設の建設のため、技術的、経済的な実現可能性の研究を行っている。
 鳥取大学の井上光弘教授と、ラヴォロナンテナイナ・アンドリ・ヘニントソア氏はトマトの収穫を向上するための、放射線架橋によるカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた砂地の水理特性の特徴化について発表を行った。放射線で架橋されたCMCが、蒸留水(雨水のシュミレーション)、水道水、そして塩水で飽和された際の保水力と水理特性の観点から、さまざまな比率で混合された際の効果が評価された。灌漑において使用された水質により、トマトの生産におけるCMCゲルの効率性は、水やゲルの吸水特性に大きく影響された。
 超吸水材の製造と特徴評価のための共通情報フォーマットの草案が長澤尚胤氏によって発表された。参加者は土壌改良材としての超吸水材に必要なパラメーターを提案した。合意されたフォーマットは添付7を参照。
 玉田正男氏は第3フェーズの研究計画に関するリードスピーチを行った。参加国は超吸水材の最近の研究状況確認し、添付6の通り2011年の展望を示した。

テクニカルビジット

 参加者は、タイ原子力技術研究所の宝石照射センター(GIC)を訪問した。タイで最新で最大である電子線加工機が、ナコンナヨック地方のGICオンガラックに設置されている。設置が完了した後、GICはタイと海外の両方の宝石産業にサービスを提供する電子線とコバルト60ガンマ線照射装置を兼ね揃えた、南アジア最大で、最も近代的な宝石照射センターになるであろう。
 参加者はまたタイ原子力庁オンガラックの不妊虫放飼法技術施設を視察した。ミバエは果物にとって最も強力な害虫の一つである。孵化したての幼虫は内側から果実を食べ、商取引の際の検疫が必要となるため、大きな障壁となる。
 タイ原子力庁(OAP)は、2005年にチャンタトゥリ地方(Chantaturi province)のブラハ大学で、不妊虫放飼法技術施設によるミバエの管理に関するトレーニングコースを行った。農家は不妊虫放飼法技術の利用に大いに関心を示した。プロジェクトはその後も行われている。タイ原子力研究所は週に500万の不妊バエを生産している。品質管理はIAEAの標準的な手順に従って行われた。この不妊虫放飼法技術プロジェクトによりロンゴンを植えている農家の収入は1,000バーツ以上も向上した。

セッション4: FNCAプロジェクトとRCA/IAEAプロジェクトの連携

 マレーシア原子力庁・IAEA/RCAプロジェクトリードカントリーコーディネーターのカイルール・ザマン・ダラン氏は農業利用及び環境保全のための高分子材料の放射線加工プロジェクト(IAEA/RCA RAS8109)の進捗レポートを発表した。レポートのサマリーは、添付8を参照。
 カイルール氏はまた、2012-2015のRCAの次期プロジェクトの草案を発表した。FNCAとRCAの連携におけるいくつかの問題点が討議され、会議は、協力の重要性を認識し、FNCAの活動においてFNCAのメンバーではないRCA加盟国を含む、FNCAとRCA間の情報、技術、ノウハウ、そして文献の共有の継続が確認された。この協力体制は、次のRCAの活動(2012-2015)においても継続されるべきである。

セッション5: 研究開発のための参加国間におけるワークシェアリング

 町末男氏は参加国間で共有出来る可能な研究活動について発表を行った。
 よりよいワークシェアリングのため、参加国は、以下の事項を行うことで合意した。
 
1. オリゴキトサンの利用
(1) 農業省・研究所(植物を害虫から保護し、収穫高を向上させるため)と密接に協力し、フィールド試験のための主要な作物を見つけ出す。
(2) コスト評価を含む工学研究とフィールド試験のためのオリゴキトサンを製造するため、パイロットプラント設計及び運転の計画を立てる。
2. 超吸水材
(1) 農業省や農業機関と連携し、参加国における超吸水材のニーズや、超吸水材が効果的に利用されている干ばつ地域について調査する。農業省や農業機関と連携し超吸水材のフィールド試験のための準備を行う。
3. 上述の事項に関する成果については、日本のプロジェクトリーダーである玉田氏に報告すべきである。
4. 上述の事項を含む植物生長促進剤と超吸水材の利用のため、参加国のコーディネーターは、2011年3月の第12回コーディネーター会議で、農業省・農業機関との連携を図るよう要請されるべきである。

セッション6: まとめとサマリーレポート

 議事録案が確認され、討議の後承認された。
 タイ原子力技術研究所(TINT)副所長のシリナート・ラオハロジェナパン氏と町末男氏は閉会の辞を述べた。次回のワークショップはフィリピンで開催される予定である。

3) 結論と提案

 本ワークショップにおける結論と提案は以下の通りである。

A. 植物成長促進剤

1) 結論
@ 放射線はピラノース環の間でキトサンを分解するため、植物の生長を阻害する不純物を含まない生長促進剤を製造できる。
A 本プロジェクトで作成されたガイドラインに掲載されているプロトコールに従い各国が植物生長促進剤を製造することにより、標準的な植物生長促進剤を製造することができる。
B 連続流システム照射の場合、使用期限は、過酸化水素の残存の観点から再検討されるべきである。
C 植物生長促進剤の肥料としての登録は、登録手続きに資金が伴うため、商用化への障害となる可能性がある。
D 植物生長促進効果を向上させるメカニズムを解明するため、農業関係の科学者との密接な協力が必要である。
E オリゴキトサンの主要な効果は、エリシターとしての抗菌作用であり、植物生長促進効果は間接的な現象であると考えられる。またオリゴキトサンは、化学抗菌剤に代わる安全な抗菌剤開発へ向けて利用できる可能性がある。
 
2) 提案
@ 植物生長促進剤の費用対効果分析は、技術移転の実現へ向け、避けられない手順である。
A 参加国は利用を使用者へと広げるプロセスにおける国内の課題を明瞭化し、農業関係機関との連携による商業化への戦略を示すよう推奨される。
B 参加国は、植物生長促進剤が草高や収穫量に与える効果を比較するため、本プロジェクトで作成されたガイドラインに従い、植物生長促進剤を製造すべきである。

B. 超吸水材

1) 結論
@ 超吸水材は各国特産の低コストな原材料を用いて作成されるべきである。
A 超吸水材の生分解性は環境への負担を軽減できるが、使用目的に合うよう最適化されるべきである。
B 超吸水材の吸水率と生分解性の割合は土壌中で比較しながら調査されるべきである。
C 吸水率は灌漑湿潤と乾燥を繰り返すことにより減少したことが確認された。
D 乾燥のエネルギー消費過程や、超吸水材のモノマー残存等が技術的な課題である。
E 新しい種類の超吸水材はこれらの観点から広く研究される必要がある。
 
2) 提案
@ 超吸水材の費用対効果分析は商用化を実現させるため必要不可欠である。
A コスト評価により、放射線加工の利点と農業利用への利点が明瞭化されるべきである。
B 参加国は、利用を使用者へと広げるプロセスにおける国内の課題を明瞭化し、農業関係機関との連携による商業化への戦略を示すよう推奨される。
C 超吸水材は、乾燥地帯における農地を拡大できるという利点を持っている。

4) 添付資料

  添付1: プログラム
  添付2: 参加者リスト
  添付3: オープンセミナーサマリー
  添付4: カントリーレポートサマリー
  添付5: 植物生長促進剤の将来計画
  添付6: 超吸水材の将来計画
  添付7: 超吸水材の生産と特性化のための共通情報フォーマット
  添付8: IAEA/RCA進捗リポート
          "農業利用と環境保全のための高分子材料の放射線加工(RAS/8109)"


FNCA2010 電子加速器利用ワークショップ
-天然高分子の放射線加工-
プログラム

2011年2月14日〜18日、タイ、バンコク


オープンセミナー「天然高分子の放射線加工」
09:00 - 09:30 レジストレーション
09:30 - 09:50 開会挨拶
Dr. Tatchai SUMITRA(タイ原子力技術研究所(TINT)所長代理)
町末男(FNCA日本コーディネーター)
09:50 - 10:10 1. 放射線加工の産業利用における世界の状況
町末男(FNCA日本コーディネーター)
10:10 - 10:30 2. 日本における放射線加工の近年の成果
玉田正男(日本原子力研究開発機構(JAEA))
10:30 - 10:50 3. タイの持続可能な農業の発展へ向けての国家政策
Mr.Songpol SOMSRI (タイ農業省)
10:50 - 11:10 4. 植物と農業へのキトサンの利用
Dr. Rath PICHYANKURA
(チュラロンコーン大学キチン・キトサン生体材料センター)
11:10 - 11:25 休憩 / 展示会
11:40 - 12:30 卓上討議:放射線加工の利用と課題
議長: Dr.Sirinart Laoharojanaphand (TINT)
パネリスト: 上記講演者
[討議のポイント]
(1). 放射線加工の利点
(2). 農業における放射線加工利用の有望な分野
(3). 放射線加工の産業利用における障害
(4). 需要主導型研究と、研究機関と産業の連携の拡大
12:30 - 13:30 昼食

FNCA 天然高分子の放射線加工ワークショップ
13:30 - 13:40 開会挨拶
Dr.Sirinart Laoharojenaphand(TINT)
町末男(FNCA日本コーディネーター)
13:40 - 14:00 参加者自己紹介・ 集合写真
セッション1. FNCAの概要
議長: タイ原子力技術研究所副所長
14:00 - 14:20 FNCAの成果と2010年の大臣級会合
町末男(FNCA日本コーディネーター)
14:20 - 14:40 天然高分子の放射線加工プロジェクトの概要
玉田正男(JAEA)
14:40 - 15:00 休憩
セッション 2: 放射線加工によるキトサン由来植物生長促進剤(PGP)の製造と利用
議長: Dr. Phiriyatorn SUWANMALA (TINT)
15:00 - 15:30
15:30 - 16:00
16:00 - 16:30
16:30 - 17:00
17:00 - 17:30
17:30 - 18:00
カントリーレポート(バングラデシュ)
カントリーレポート(中国)
カントリーレポート(インドネシア)
カントリーレポート(日本)
カントリーレポート(マレーシア)
カントリーレポート(フィリピン)
 
2日目: 2月15日(火)
セッション 2 (続): 放射線加工によるキトサン由来植物生長促進剤(PGP)の製造と利用
議長: Ms. Charito ARANILLA TRANQUILAN (フィリピン原子力研究所(PNRI))
09:00 - 09:30
09:30 - 10:00
カントリーレポート(タイ)
カントリーレポート(ベトナム)
10:00 - 10:15 休憩
10:15 - 11:45 討議1: 結果の統括と植物生長促進剤のフィールド試験の計画
リードスピーチ:
1. Dr. Darmawan DARWIS (インドネシア原子力庁(BATAN))
2. Dr. LE Hai (ベトナム原子力研究所(VAEI))
討議
11:45 - 13:00 昼食
セッション 2 (続): 放射線加工によるキトサン由来植物生長促進剤(PGP)の製造と利用
議長: 玉田正男(JAEA)、Dr. NGUYEN Quoc Hien (VAEI)
13:00 - 14:30 討議 2: オリゴキトサン植物生長促進剤の商業化へむけた課題
リードスピーチ:
1. Dr. Kamarudin BIN BAHARI (マレーシア原子力庁)
2. Dr. NGUYEN Quoc Hien (VAEI)
討論
14:30 - 14:45 休憩
14:45 - 15:30 討議 3: 植物生長促進剤の製造と特性化へ向けた共通情報フォーマット
リードスピーチ:
長澤尚胤 (JAEA)
討議
15:30 - 17:00 討議 4: 2011-2012年度の研究計画
リードスピーチ: 玉田正男 (JAEA)
討議
 
3日目: 2月16日(水)
セッション 3: 放射線架橋とグラフト重合によるハイドロゲル超吸水材の製造
議長: Dr. Kamarudin BIN BAHARI (マレーシア原子力庁)
10:15 - 10:45
10:45 - 11:15
11:15 - 11:45
カントリーレポート: 中国
カントリーレポート: インドネシア
カントリーレポート: 日本
11:45 - 13:15 昼食
テクニカルビジット
13:15 - 16:15 タイ原子力技術研究所宝石照射センター訪問
 
4日目: 2月17日(木)
セッション3 (続): 放射線架橋とグラフト重合によるハイドロゲル超吸水材の製造
議長: Dr. Jing PENG (北京大学)
09:00 - 09:30
09:30 - 10:00
10:00 - 10:30
カントリーレポート:フィリピン
カントリーレポート: タイ
カントリーレポート: ベトナム
10:30 - 10:45 休憩
10:45 - 12:00 討議1: 放射線による超吸水材の生産設備の概念設計
リードスピーチ: Dr. LE Hai (VAEI)
12:00 - 13:15 昼食
セッション3 (続): 放射線架橋とグラフト重合によるハイドロゲル超吸水材の製造
議長: Ms. Salma SULTANA (バングラデシュ原子力委員会(BAEC))
        Dr. Darmawan DARWIS (インドネシア原子力庁(BATAN))
13:15 - 14:45 討議 2: 農業のための土壌改良材としての超吸水材の利用
リードスピーチ:
井上光弘、Dr. Ravolonantenaina Andry Henintsoa (Tottori University)
14:45 - 15:15 討議 3: 超吸水材の特性化と製造のための共通情報フォーマット
リードスピーチ: 長澤尚胤 (JAEA)
15:15 - 15:30 休憩
15:30 - 17:00 討議 4: 2011年度から2012年度の研究計画
リードスピーチ: 玉田正男 (JAEA)
 
5日目: 2月18日(金)
セッション 4: FNCAプロジェクトとIAEA/RCAプロジェクトの連携
議長: Dr. NGUYEN Quoc Hien (VAEI)
09:00 - 10:30 リードスピーチ: Dr. Khairul Zhaman HJ MOHD DAHLAN
(マレーシア原子力庁)
10:30 - 10:50 休憩
セッション 5: 研究開発のための参加国間におけるワークシェアリング
議長: Dr. Khairul Zhaman HJ MOHD DAHLAN(マレーシア原子力庁)
10:50 - 11:30 リードスピーチ: 町末男 (FNCAコーディネーター)
11:30 - 13:00 昼食
セッション 6: 結論とサマリーレポート
議長: Dr. Phiriyatorn SUWANMALA (タイ原子力庁)
13:00 - 14:00 議事録案の討議
14:00 - 14:30 議事録採択
14:30 - 15:00 閉会挨拶
Dr.Sirinart Laoharojenaphand (タイ原子力技術研究所(TINT)副所長)
町末男 (FNCA日本コーディネーター)

FNCA2010 電子加速器利用ワークショップ
-天然高分子の放射線加工-
参加者リスト

2011年2月14日〜18日、タイ、バンコク

バングラデシュ

サルマ・サルタナ
バングラデシュ原子力委員会(BAEC)
原子力研究所(シャバール)(AERE)
原子力科学技術研究所(INST)
原子力放射線化学部
上級科学研究院

中国

ジン・ペン
北京大学
化学分子工学カレッジ
准教授

インドネシア

ダルマワン・ダルウィス
インドネシア原子力庁(BATAN)
アイソトープ・放射線技術利用センター
放射線加工部研究員

日本

町 末男
FNCA日本コーディネーター

玉田 正男
日本原子力研究開発機構
量子ビーム応用研究部門
環境・産業応用研究開発ユニット
ユニット長

長澤 尚胤
日本原子力研究開発機構
量子ビーム応用研究部門
環境・産業応用研究開発ユニット
環境材料プロセシング研究グループ
研究副主幹

井上 光弘
鳥取大学 乾燥地研究センター
教授

ラヴォロナンテナイナ・アンドリ・ヘニントソア
鳥取大学乾燥地研究センター研究員

今泉 恵美
原子力安全研究協会国際研究部

マレーシア

カマルディン・ビン・バハリ
マレーシア原子力庁
放射線加工技術部高分子放射線改質グループ研究員

カイルール・ザマン・ダラン
放射線加工技術部高分子放射線改質グループ部長

フィリピン

チャリトー・アラニラ・タランキラン
フィリピン原子力研究所(PNRI)
原子力研究部・化学研究グループ
上級科学研究スペシャリスト

タイ

フィリヤトロン・スワンマラ
タイ原子力技術研究所(TINT)
原子力研究開発グループ
原子力科学研究員

カシニ・ヘムヴィチアン
タイ原子力技術研究所(TINT)
原子力研究開発グループ
原子力科学研究員

アタウィト・テチャウィブンウォン
タイ原子力技術研究所(TINT)
原子力事業開発部部長

ソラダ・チャニンタユタヴォン
タイ原子力技術研究所(TINT)
国際関係官

ベトナム

グェン・クック・ヒエン
ベトナム原子力研究所(VAEI)
放射線技術研究開発センター
研究開発部
科学研究員

レ・ハイ
ベトナム原子力研究所(VAEI)
原子力研究所(NRI)
放射線技術部
部長


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Forum for Nuclear Cooperation in Asia