FNCA 2011 人材養成プロジェクトワークショップ 議事録
2011年11月15日〜11月18日 ベトナム ハノイ
i) |
期日 : |
平成23年11月15日(火)〜11月18日(金) |
ii) |
場所 : |
ベトナム、ハノイ市 |
iii) |
主催 : |
日本文部科学省(MEXT)、ベトナム原子力研究所(VINATOM)
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iv) |
参加者 : |
バングラデシュ、中国、インドネシア、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピンより各1名、ベトナムより2名、日本より5名、計15名 |
開会セッション
VINATOM所長のDr. VUONG Huu Tanが歓迎挨拶を、FNCA日本コーディネーターの町末男氏が開会挨拶を述べた。
オープンセミナー
Dr. VUONG Huu Tanはベトナムにおける原子力科学技術の全体像を紹介した。また町氏が、経済的発展と福祉に利用される原子力技術について発表を行った。続いてベトナム電力公社(EVN)のMr. PHAN Minh Tuanがベトナムにおける原子力発電所初号機の導入と、それに伴う人材養成について紹介した。そして日本PLである日本原子力研究開発機構(JAEA)の山下清信氏が、日本がアジア各国への支援として実施している人材養成プログラムについて発表を行った。
セッション1: FNCAプロジェクト総括
町氏により、終了したプロジェクト及び新規発足したプロジェクトを含む、近年のFNCA活動について報告がなされた。また山下氏より、過去のワークショップの結果を基に、人材養成プロジェクトの概要と課題について説明がなされた。参加各国は、各国における原子力人材養成に関する情報を一元的に管理する、単一の連絡窓口(担当組織または担当者)を特定するべきであることが指摘された。
セッション2: 各国の原子力人材養成における主要戦略課題(カントリーレポート)
以下のトピックスに関するカントリーレポートが各国より発表された。
・ |
原子力人材養成に関する各国の政策 |
・ |
各国の人材養成に関するニーズ、また人材養成の手法 |
・ |
政府・研究機関・民間企業の役割及び三者間の協力活動 |
(添付1参照)
セッション3: アジア原子力教育訓練プログラム(ANTEP)及び国際原子力安全交流対策(技術者交流)
原子力安全研究協会により、本年度のアジア原子力教育訓練プログラム(ANTEP)におけるアンケートの結果が発表された。
人材養成プログラムの分野 |
ニーズ数 |
放射線安全 |
15 |
放射性廃棄物管理 |
14 |
放射性同位体(RI)利用 |
26 |
研究炉 |
32 |
原子炉 |
26 |
マネジメント(管理) |
16 |
その他 |
9 |
FNCA参加国内で提供及び利用可能なプログラムの数 |
64 |
さらに、日本以外の国々の間で、ニーズとプログラムのマッチングが成立可能である例が示された。
韓国原子力研究所(KAERI)原子力訓練センター長のMr. LEE Ki-bogと、マレーシア原子力庁シニアディレクター(管理)のDr. Dahlan bin Hj. MOHDにより、韓国及びマレーシアがFNCA参加国に提供可能であるプログラムについて紹介が行われた。
参加者はANTEPと文部科学省の主催する国際原子力安全交流対策(技術者交流)の効果的な在り方、また参加国間で協力の枠組を強化する方策について討議した。ANTEPのアンケートにおいて、(これまでニーズとプログラムに関する調査を同時に行っていたものを)先にニーズについて調査し、その後プログラムについて改めて調査することが提案された。
セッション4: 原子力発電導入のための人材養成における戦略及び課題
VINATOM原子力訓練センター副センター長Mr. NGUYEN Manh Hung及びインドネシア原子力庁(BATAN)教育訓練センター長Mr. Hendriyanto HADITJAHYONOにより、原子力発電所導入のための人材養成の取組について紹介がなされた。広東核電集団公使(CGNPC)のMr. HU Jianjunより、成功談として、CGNPCにおいて実施されている教育・訓練の模様について紹介がなされた。また日本原子力発電株式会社総合研修センター副所長の濱野博之氏により、日本において原子力発電所初号機を導入した際の経験について説明がなされた。
セッション5: 原子力発電のための人材養成における原子力研究機関の役割
山下氏により、原子力研究機関は専門家や施設等の基盤を提供することにより原子力発電のための人材養成に貢献することが出来る旨、説明がなされた。
またDr. LEEは、韓国の原子力発電計画においては当初より、エネルギーセキュリティ及び原子力発電技術の国産化等、経済的利点に主眼が置かれていたことについて触れた。
円卓討議において、参加者より原子力研究機関の役割について、以下の提案がなされた。
・ |
人材育成計画策定及び改良 |
・ |
原子力発電計画実施のための技術支援機関(TSO)としての機能 |
・ |
大学との協力 |
・ |
原子力(発電)技術の国産化 |
・ |
放射性廃棄物管理への直接的関与 |
・ |
IAEAの定義する基盤整備に係わる19項目への直接的関与 |
セッション6: 福島第一原子力発電所事故後の原子力人材養成
町氏が福島第一原子力発電所について概説し、事故により得られた主な教訓について以下の通り述べた。
・ |
非常用電源設備は予想される津波の最大到達点より高い位置の防水室に設置しなくてはならない。 |
・ |
非常用に移動電源を用意しなくてはならない。 |
・ |
格納容器におけるベントラインの確認を行い、また建屋における水素爆発を防止するための水素再結合装置をさらに設置しなくてはならない。 |
・ |
等 |
円卓討議において、広報活動の重要性及び放射線安全について説明する広報担当者の育成について言及がなされた。
セッション7: 人材養成プロジェクトの方向性
町氏により、本プロジェクトからの提案として、次回のコーディネーター会合に提出されるべき事項について概説がなされた。
・ |
急を要する人材養成プログラムの分野を特定する。 |
・ |
(日本だけではなく)参加各国がトレーニングコースを主催することを促す。 |
・ |
トレーニングコースにおける現地経費は主催国が負担し、旅費は参加国が負担するべきである。 |
セッション8: サマリー及び結論
セッション7において提案された事項に基づき、ワークショップのサマリー及び結論が作成された。(添付2参照)
閉会セッション
VINATOM副所長のMr. CAO Dinh Thanh及び町氏より、閉会の挨拶が行われ、ワークショップが終了した。
※ 11月18日は、中央軍108病院を訪問した。
添付1: 各国カントリーレポート概要
バングラデシュ
長期に渡って、原子力分野全般において有能な人材の持続的育成が重要視されてきた。バングラデシュは1,000MWの原子力発電所2基をRuppoor地区に導入する計画を開始した。この計画のため時宜に即して有能な人材を得るべく、バングラデシュ政府及びバングラデシュ原子力委員会(BAEC)は国内及び海外における教育訓練を予定している。バングラデシュは供給メーカーやIAEA、日本の文部科学省からの教育訓練の機会提供を期待している。原子力発電計画のため、今後3〜5年の間、段階的に1,700〜1,800人の人材を雇用する予定である。
中国
中国は人材養成を最優先事項とし、そのシステムにおいて革新を図っている。中国にとって必要なことは、人材の増員、組織の最適化、イノベーション能力の増強、また人材管理システムの改良である。そのために、以下を実施している。
・ |
原子力人材養成への投資増加 |
・ |
奨励制(Incentive system)の最大化 |
・ |
能力育成環境の構築 |
・ |
原子力産業界の組織間のコミュニケーション強化 |
インドネシア
インドネシア原子力庁(BATAN)長官の布告により、コア・コンピテンシー(中核となる能力)は以下の通りであるとされた。
・ |
RI及び放射線利用 |
・ |
核燃料・核物質 |
・ |
原子炉及び原子力エネルギー |
・ |
原子力・放射線安全 |
現在、国内の大学において130名程度の学生が原子力技術について学んでいる。BATAN教育訓練センターはインドネシアにおける主要な訓練機関として、大学・病院・企業等と協力して訓練を実施している。経年管理及び原子力発電導入のための人材養成が課題である。
日本
2010年11月、日本の原子力人材養成に関連する組織で構成される包括的枠組、原子力人材育成ネットワーク(JN-HRD Net)を設立した。JN-HRD Netは、国内的には学生等の原子力志向の促進、知識の継承等を行う。対外的には、以下の手段で新規原子力導入国への支援を行う。
・ |
セミナー開催 |
・ |
日本人専門家派遣Dispatching Japanese experts |
・ |
原子力人材養成プログラム整備のための助言及び支援 |
また国内外の原子力人材養成活動に関する情報を収集し、連絡窓口として世界各国からの質問に対応する。
カザフスタン
炉設計者・将来の原子力発電所の運転者・環境専門家等、原子力産業の迅速かつ持続可能な発展のため、カザフスタンは能力のある専門家を必要としている。そのため補助金を増やすなどして、国内の大学において原子力に関する訓練を受ける学生の数を増やす計画をしている。核医学・生物物理学センターが間もなく運営を開始するので、放射線治療・診断の専門家や商業放射線利用のための技術者、社会工学者が緊急に必要とされている。またこの分野における専門家や大学講師の養成も必須である。カザフスタンは国内外の機関との協力の下、人材養成プログラムを実施している。中でも注目すべきことは、カザフスタン国立原子力センター(NNC)が、中央アジア諸国の地震学者育成のために、国際訓練センターを新設したことである。
韓国
原子力発電所の他国への輸出、次世代原子力システムや中小規模原子炉、改良型原子炉等の大規模研究開発、国内における原子力発電所新規建設、またこれらの活動のための安全規制及び保障措置のため、韓国では原子力人材養成へのニーズが急激に高まっている。韓国は産業界及び研究開発の現場において高いレベルの人材を維持し、また人材の国際的競争力を高めるため、韓国国家原子力推進計画によって継続的に大学における原子力関連の教育プログラムを支援する。韓国においては、関連機関・学術界・産業界・財団法人が非常に緊密な協力関係を持っている。強固な国内の協力基盤に基づき、様々な国際プログラムを提供することが可能である。韓国は、国内外からのニーズに対応した教育訓練を開発するために、国内の原子力人材養成プログラムをより強力にネットワーク化する予定である。
マレーシア
マレーシアは2011年、原子力発電計画策定・実行・調整のためにマレーシア原子力発電公社(MNPC)を設立した。原子力発電計画はIAEAの提議する基盤整備に係わる19項目に沿ったものである。原子力人材養成プログラムには、政府、研究開発機関、規制機関、産業界、電力事業者、教育機関等、様々な組織が関与している。マレーシアには20の公立大学が存在し、203名の学生が原子力科学・医学物理について学んでいる。またマレーシア原子力庁においても、原子力・放射線技術について学ぶことが可能である。人材及び知識の不足を解決すること、また原子力発電のための訓練を実施することが課題である。
モンゴル
モンゴルは2015年までに原子力発電所建設に着手し、2021年までに運転を開始する計画を持っている。そのため、フィージビリティスタディへの準備のための前段階的庁舎が2011年に開始された。政府は人材養成を優先事項としているが、限られた人員で国内の教育システムを立ち上げるのは困難である。まずは急を要する事柄、関連組織の活動の統合、また放射性鉱物探索と原子力発電に関する調査を担当する国立の原子力研究機関設立から開始するべきである。国内の大学が原子力技術に関するコースを設けており、また諸外国から訓練コースの提供も受けている。高レベルの専門家を育成する講師・研究者が必要であるため、以下の手段が必須であると考えられる。
・ |
講師・技術者を海外に派遣する |
・ |
海外から講師として専門家を招く |
・ |
学士・博士の数を増やす |
2010〜2020年の間に、モンゴルは23〜40人の人材を毎年海外に派遣する予定である。
フィリピン
フィリピン原子力(PNRI)の原子力訓練センターは、PNRIの職員に向け、原子力発電、原子力工学等を含む18コースを実施している。同時に原子力訓練センターは依頼に応じて、大学教員や検疫官や小売業者等を含む特定の業者に基礎的な訓練コースを提供している。原子力発電導入に対する国家的決定はなされていないが、継続的に規制機関及び電力事業者に必要とされる能力について検討している。フィリピンはIAEA、JAEA、米国エネルギー省、オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)、オーストラリア核安全保障・拡散防止事務所(ASNO)等の機関と協力して人材養成プログラムを実施している。既存のプログラムの活用及び協調のため、FNCAの人材養成プロジェクトは他の国際的・地域的プログラムと協力するべきである。
ベトナム
原子力発電所建設について決定がなされたため、政府は教育訓練施設改良のための投資、訓練プログラムの改善・高度化、(原子力技術について学ぶ)学生の増員等、2015年までの政策・計画を策定した。2020年までに、ベトナムは以下の人材を必要としている。
・ |
原子力発電分野の技術者:2,400人 |
・ |
原子力利用分野の技術者:650人 |
・ |
原子力発電分野の修士・博士:350人 |
・ |
原子力利用分野の修士・博士250人 |
人材養成における課題は、原子力技術について学ぶ学生の増員、国内訓練プログラムの設置、労働者の定着である。教育訓練省(MOET)の管轄下の大学及びVINATOMが人材養成を担当している。人材養成を成功裏に進めるために、関連する省庁、国内及び海外組織との連携が必要である。
添付2: 人材養成ワークショップまとめ及び提言
1. |
FNCA人材養成プロジェクトの目的
(1) 人材養成プロジェクトの主要な目的について以下の通り定義された。
・ 原子力人材養成に関する経験、また戦略・課題・計画に関する情報の共有
・ 課題への対処に向けた、FNCA参加国間の協力促進
・ ANTEPの実施及び強化
・ 国際的な原子力人材養成プログラムに関するデータベースの提供
(2) 国際協力の下での原子力発電及び放射線利用を考慮し、プロジェクトの継続が要求された。
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2. |
国際協力の下で各国の人材養成を支援するため、各国間の調整機能を向上させる目的で、プロジェクト参加各国は適切な組織を、単一の連絡窓口として指定することが提案された。
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3. |
(JAEAの実施する)講師育成研修は各国の人材養成を強化するに当たり、非常に有効であるため、オーストラリア、日本、韓国はプログラムを拡大することが要求された。
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4. |
Train trainers programにおいてニーズの多い分野については、今後の計画のため、山下氏・Dr. LEE・町氏に報告されるべきことが勧告された。日本と韓国は受領国のニーズに応じたTrain trainers programを提供するよう考慮するべきであることが提言された。
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5. |
オーストラリア・日本・韓国による講師派遣の取組は各国人材養成支援において大いに必要とされており、日本の国際原子力安全交流対策(技術者交流)はこの目的のために利用され得るということが言及された。
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6. |
ANTEPについて
1) |
参加各国による多様なニーズに応じるため、日本のみならず、オーストラリア・韓国・マレーシアからもプログラムが提供されることが重要であることが強調された。 |
2) |
ANTEPに提供されるプログラムは受領国のニーズに適合したものでなくてはならない。この観点から、今後は、ニーズに関する調査を先だって実施しウェブサイトに掲載した後、ニーズに関する情報を考慮してプログラムに関する情報を募ることが提言された。 |
3) |
ほぼすべての参加国がANTEPに提供可能なプログラムを有する。受講費用はプログラム提供国によって、旅費及び滞在費は受講者によって支払われるべきであることが提言された。 |
4) |
原子力発電計画において人材養成は優先事項であるため、(海外における)プログラム受講のための旅費及び滞在費は、受領国の政府によって支払われるべきであることが要求された。
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7. |
原子力発電所導入に向けた人材養成について
1) |
契約の上、供給メーカーが運転・保守に必要な訓練を提供することも可能であるが、原子炉工学・安全等、基本的な訓練は供給メーカーによる実用的訓練以前に政府によって実施されるべきであることが言及された。 |
2) |
原子力発電計画におけるプロジェクトマネジメントの重要性、また水力・火力発電における経験を生かすべきであることが言及された。 |
3) |
原子炉(施設)、また原子炉物理・原子炉安全・放射線防護・廃棄物管理等の専門知識を、原子力発電所の技術者及び運転者の訓練に生かす上で、原子力研究機関は重要な役割を果たすことが提言された。
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8. |
福島第一原子力発電所事故後、広報の能力を向上されることが重要性を増しており、各国は原子力広報担当者の人材養成を計画するべきであることが言及された。
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9. |
各国が特定の分野において訓練コースを主催する可能性を探るべきであることが合意された。現地経費は主催国が、旅費・滞在費は受講者が負担する。
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10. |
本ワークショップの合意事項及び結論を受けた各国の対応は、次回ワークショップにおいて報告されるべきであることが合意された。
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11. |
次回ワークショップの議題として、以下の事項が合意された。
1) |
原子力人材養成に関する経験、また戦略・課題・計画に関する情報の共有 |
2) |
課題への対処に向けた、FNCA参加国間の協力促進の手段 |
3) |
ANTEP強化 |
4) |
2011年度ワークショップ結論に対する各国の対応 |
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