FNCA 2012 人材養成プロジェクトワークショップ 議事録
2012年9月12日〜9月14日 中国 深セン
i) |
期日 : |
平成24年9月12日〜9月14日 |
ii) |
場所 : |
中国、深セン |
iii) |
主催 : |
中国広東核電集団公司(CGNPC)、中国国家原子能機構(CGNPC)、日本文部科学省(MEXT)
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開会セッション
中国国家原子能機構(CAEA)国際合作司副処長のMr. XU Zhixiongと、中国広東核電集団公司(CGNPC)人力部長のMr. LI Yangにより歓迎挨拶が行われた。続いて文部科学省研究開発局原子力課原子力国際室調査員の齋藤毅氏と、FNCAコーディネーターの町末男氏により開会挨拶が述べられた。
オープンセミナー
Mr. XU Zhixiongにより、「中国における原子力発電計画の展望」に関する紹介が行われた。また町末男氏により、「持続的発展と繁栄のための原子力技術」に関する発表が行われた。続いて、清華大学工学物理学部副部長のProf. CHEN Shaominにより「中国における原子力専門家の教育訓練」について、ハルビン工科大学のDr. LIU Guodongにより「原子炉工学の大学教育及び企業との協力」について紹介がなされた。CGNPCにおける人材育成がビデオの上映によって紹介された後、CGNPC原子力発電訓練所副所長のMr. CHEN Taiにより、「CGNPCにおける訓練の実践」に関する発表が行われた。また中広核工程有限公司(CNPEC)人材育成部訓練マネージャーのMr. BIE Bifanにより「CGNPC及び関連会社における採用システム」に関する紹介が行われた。最後に、日本原子力研究開発機構(JAEA)原子力人材育成センター長の山下清信氏により、「日本によるアジア各国の原子力人材育成支援プログラム」に関する発表が行われた。
セッション1: FNCAプロジェクトの報告
町氏により、FNCAの現行10プロジェクトについて、進捗状況が報告された。報告の中で、FNCA参加国が共通利益を有する分野において、FNCAと国際原子力機関(IAEA)の中の枠組であるアジア原子力地域協力協定(RCA)の間で連携を図るべきであるとの提言がなされた。
続いて山下氏により、FNCA人材養成プロジェクトの成果と課題に関する説明が行われ、FNCA参加国内において原子力人材育成ネットワークを構築するべきであることと、効率的かつ効果的な人材育成の進展のために、予算を適切に配分するべきであることが勧められた。
セッション2: 原子力発電及び原子力利用に向けた国家的原子力人材育成の戦略
町氏により、2012年7月26日〜27日にタイ・バンコクで開催された第4回「原子力発電のための基盤整備に向けた取組に関する検討パネル」において、人材育成ネットワークに関する議論が実施された旨報告が行われた。これに続き、以下のトピックスに関するカントリーレポートが、各国参加者により発表された。
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原子力人材育成の国家政策及び予算 |
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効果的な人材育成のためのネットワーク |
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人材育成のニーズと課題 |
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研究機関・大学・電力会社の役割と協力 |
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人材育成のための国際協力の重要性 |
なお、各国のカントリーレポート概要を添付1に示す。
セッション3: アジア原子力教育訓練プログラム(ANTEP)の改良と文部科学省技術者交流事業(NREP)
FNCA及び文部科学省技術者交流事業(NREP)の事務局である原子力安全研究協会より、アジア原子力教育訓練プログラム(ANTEP)及びNREPの実施状況について報告が行われた。今後FNCA各国は、他国に提供可能な人材育成プログラムに関する情報を、FNCA事務局に通年提供することが合意された。プログラムに関する情報提供の呼びかけは年1回実施される。また各国のニーズ調査は、従来通り年1回実施される。さらに、各国は自国の機関及び人材育成ネットワークのウェブサイトからANTEPウェブサイトにリンクを貼る旨、合意された。
オーストラリア、インドネシア、カザフスタン、韓国、マレーシア、フィリピンより、提供可能なプログラムの概要について発表が行われた。国際協力は各国の人材プログラムを支援する資源であることが強調された。
セッション4: 原子力発電導入に向けた人材育成戦略
バングラデシュ原子力委員会(BAEC)のMr. Md. Khairul ISLAMより、2020年に建設が開始されるルーパー第一原子力発電所の進展に向けた、適切かつ十分な人材を提供するための戦略について紹介がなされた。1,000MWの原子炉2基を稼働するために、運転機関に合計1,660名、また規制機関に合計291名の人材を提供することが計画されている。
またベトナム原子力研究所(VINATOM)のMr. NGUYEN Manh Hungより、2020年にニントゥアン省フォック・ディンにおいて建設が開始される原子力発電所初号機に関する紹介がなされた。原子力人材育成の国家的計画によると、原子力発電のために2,400名の技術者(海外で教育を受けた者200名を含む)、原子力利用技術のために650名の技術者(海外で教育を受けた者150名を含む)を育成することが構想されている。
インドネシア原子力庁(BATAN)のMr. Hendriyanto HADITJAHYONOより、2015年〜2019年における原子力発電所初号機の導入に関する法律(National Act No. 17/2007)において定められている、インドネシアの国家的計画について紹介が行われた。2009年11月に実施されたIAEAの統合原子力基盤評価評価(NIR)ミッションによると、インドネシアは大部分の基盤整備に関する広範囲な準備作業を終えており、原子力発電の導入に関する決定を下せる段階にあるが、政府による決定がなされていないため、計画は遅れる見通しである。
最後に、CGNPCのMr. HOU Yinghongが中国における政府・研究機関・大学・建設請負業者の役割について紹介を行った。また、原子力発電所初号機導入開始時における人材育成の成功譚が、”Gold Man”の逸話(原子力発電導入時に、人材を1名育成するのに人と同じ大きさの金の像を作れるほど、人材育成費用を費やしたこと)を通じ示された。
セッション5: 原子力利用(食品・農業、工業、医療、環境防護)に向けた人材育成戦略
オーストラリア、マレーシア及びフィリピンの参加者により、リードスピーチとして、原子力技術利用のための人材育成戦略が発表された。
オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)のDr. Herma BUTTNERにより、核医学(PET/SPECT)の分野における基本的知識及び実践的技術向上のための遠隔教育、また小中学生・高校生、中学校教師、一般市民を対象とした講習の取組が紹介された。
フィリピン原子力研究所(PNRI)のDr. Corazon Casenas BERNIDOより、PNRIと医療機関の間で行われている核医学の人材育成に関する協力の取組が説明された。
マレーシア原子力庁のDr. Ishak bin MANAFより、マレーシア原子力庁が企業・大学との間で実施している放射線技術の訓練プログラムや共同研究について、報告がなされた。
研究機関・大学・エンドユーザーが、原子力技術及びそれらの関連分野において協力関係を築くことの重要性が確認された。放射線治療・放射線育種・材料科学などの先端技術のための人材育成について、FNCAとRCAとの将来的な協力を見据えて議論が行われた。
セッション6: 第13回大臣級会合に向けた人材育成に関する提言
町氏により第13回コーディネーター会合(2012年3月7日〜9日、福井市)において承認された「人材育成に関する提言」について説明がなされ、ワークショップ参加者より支持を得た。町氏により、次回のFNCA大臣級会合において各国のFNCAコーディネーターにより人材育成に関する議論が行われるべく、参加者は本ワークショップの結論(添付2)を各国のFNCAコーディネーターに報告するべきであることが促された。
マレーシアより人材育成ネットワークの担当機関について、原子力発電はマレーシア原子力発電公社、放射線利用についてはマレーシア原子力庁が所掌しているため、検討中である旨報告がなされた。
セッション7: 2012年人材養成プロジェクトの方向性と計画
町氏及び山下氏により、今後の人材養成プロジェクトの方向性と計画について提案がなされ、議論により以下の点が合意された。
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次回ワークショップにおいて以下のトピックスを扱う。
- 知識管理(ベテランから新人への知識の伝達方法)
- 遠隔教育
- 原子力人材育成分野における研究機関による大学への支援システム
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・ |
継続的に人材育成ネットワークを構築・強化する。FNCA参加国は人材育成ネットワークの組織図を作成し、拠点機関、事務局及びネットワークが支援する対象を特定する。FNCA参加国はこれらの情報を、ワークショップ後の9月30日までにFNCA事務局に報告しなければならない。人材育成ネットワークは(ANTEPを含む)各種情報の普及のための拠点となる。 |
議論の中で、CAEAが中国の成功体験を共有する意向がある旨申し出た。またFNCAの検討パネルも原子力発電のための人材育成に関する成功体験を提供する場となり得ることが確認された。
セッション8: 総括と結論
町氏の提案に基づき、ワークショップの結論が作成された。
添付2に結論を示す。
閉会セッション
CGNPC人力部組織開発・人力資源計画課長のMr. HOU Yinghong、Mr. CHEN Tai、及び町氏によりそれぞれ閉会挨拶が述べられ、ワークショップは閉会した。
テクニカルビジット
大亜湾原子力発電所における以下の施設へのテクニカルビジットが実施された。
・ 展示施設
・ 技術訓練センター
・ シミュレーター訓練センター
・ エンジニアリング訓練センター
添付1: 各国カントリーレポート概要
オーストラリア
オーストラリアは原子力発電の導入を予定していないが、2006年のオーストラリア政府への報告書においては、原子力発電の導入が決定された場合に必要な人材について、予測が行われている。
近年、一般的な放射線安全意識向上訓練を含む放射線訓練に必要とされる作業(放射線源、核医学、(ウラン)採掘)が特定された。ANSTOやオーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA)等の個々の原子力安全機関が具体的なニーズに対応する人材育成計画を策定している。
オーストラリア原子力研究所(AINSE)は、ANSTOによって運営されている(原子力技術の)研究施設の利用機会を、国内の大学生に提供している。
バングラデシュ
バングラデシュは、2020年に建設が開始されるルーパー第一原子力発電所の進展に向け、適切かつ十分な人材を必要としている。主に科学技術省傘下のBAEC、教育省傘下の国内の大学が原子力人材育成に携わっている。近年、BAEC内部に訓練機関が設立され、この機関を通じ、原子力発電に関する基礎的・専門的な訓練、また(日本文部科学省主催・日本原子力研究開発機構実施の)講師育成研修(ITP)の一部であるフォローアップトレーニングコース(FTC)が実施されている。いくつかの国内の大学は、原子力科学技術に関連する上級課程を開始した。限られた期間内に(BAEC内部の)訓練機関を本格的に活用して人材育成を実施することは、課題の1つである。現在、効果的かつ効率的な人材育成のため、訓練方針を策定しているとともに、人材育成ネットワークの設立にも取り組んでいる。バングラデシュは、IAEAや建設請負会社、また日本の文部科学省による、原子力発電所初号機導入のための訓練への支援を期待している。
中国
中国では、原子力発電の新5ヵ年計画が承認を受け、発布された。福島第一原子力発電所事故後も、中国は安全かつ効率的に、原子力発電を継続する。
人材は経済的・社会的発展、また原子力開発に欠かすことの出来ない資源である。人材育成は中国の課題であるが、政府・大学・研究機関・民間企業が協力し、積極的に促進に努めなくてはならない。2011年2月CAEAにより、省庁・大学・研究機関・民間企業等の間で調整を行う、国際協力調整委員会が設立された。同様に人材育成ネットワークも構築する予定である。
インドネシア
1. 原子力人材育成の政策・予算
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原子力研究開発・利用に携わる人材には、一定の水準の訓練を提供しなくてはならない。 |
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資格・能力のある人材は、教育(大学または高校)・訓練(主にBATANの教育訓練センター等の認定訓練センター)及び(インドネシア原子力規制庁(BAPETEN)による)許認可によって育成される。 |
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原子力人材育成の予算は関連機関に分配される。 |
2. 原子力人材育成ネットワークNuclear HRD Network
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インドネシアにおいて原子力人材育成ネットワークに関与する機関は、研究機関、規制機関、省庁(エネルギー鉱物資源省・農業省・保健省・教育省等)、医療機関、企業、インドネシア国有電力公社等である。 |
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FNCA人材育成ネットワークの担当機関は、BATANの教育訓練センターである。 |
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国際協力、特にFNCAの活動は人材育成において非常に有効である。またインドネシアは、国際機関との共同出資によるワークショップ開催の取組を開始する予定である(BATANと国際理論物理研究センター(ICTP)との協力等)。 |
3. 原子力人材育成における課題
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原子力産業における年齢分布が非常に懸念されている。 |
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またベテランと新人の間の能力の差が大きいことも主要な課題である。 |
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訓練のニーズ分析、能力開発の促進(海外における訓練の実施等)、双方向コミュニケーションによる指導、知識管理システムの整備等が、課題に対処する方策である。 |
日本
日本の原子力人材育成ネットワークは、文部科学省・経済産業省・外務省及び内閣府によって支えられている。原子力国際協力センター(JICC)が原子力発電に関連する事項と海外からの問い合わせについて、JAEAが一般的な原子力人材育成に関する事項についてそれぞれ対応し、ネットワークの拠点として機能している。ネットワークには、大学・企業・研究開発機関・学術団体等、66の組織が参加している。
毎年原子力技術者を提供するという意味で大学は原子力人材育成において欠かせない役割を果たしているため、原子力研究機関は大学を支援すべきであるということが指摘されている。毎年の卒業生の数は、学部生800名、修士800名、博士260名である。JAEAは、多くの大学生を訓練受講者または研究生として受け入れており、また職員の研究者を教授として20の大学に派遣している。
日本は原子力技術開発を研究炉の建設から始めた。JRR-3は初の国産原子炉であり、日本の企業のみによって建設された。その際参加した企業が、日本国内及び国外における主要な原子力企業となった。原子力技術の結集のため、原子力発電導入の前に国内の企業のみで研究炉を建設することが強く推奨される。また、高温・高圧技術を結集するために、国内の企業のみで火力発電所を建設することも、同様に推奨される。これらの技術の集約が、安全で確実な原子力発電の導入を導くのである。
カザフスタン
カザフスタン政府は原子力発電の導入を含む原子力産業の発展のために、持続的な政策を実施している。我々の次の目的は人材育成、継続的な教育、原子力産業の発展を最大限に促す研究開発活動である。
教育科学省、カザフスタン原子力庁、産業・新技術省が人材育成に関与している政府機関である。またこれらの機関の監督下で人材育成に関与するのが、大学、国立原子力センター(NNC)、国営原子力会社カザトムプロム、原子力技術パークである。
NNCは、修士・博士課程にある学生への実験施設の提供等の点において、大学を支援している。また企業も将来有望な学生に対し奨学金や特別訓練を提供している。
FNCA、JAEA、ロシア、IAEA等によってもたらされる国際協力の機会も、大学院生の訓練において活用されている。
能力のある専門家を最大限に生かし原子力部門の発展を維持するために、新しい人材育成戦略が策定された。戦略のマイルストーンは以下の通りである。
・ キャリアのための物質的・道徳的動機の創造
・ 職業指針・選択
・ 専門家育成・再訓練における条件の規定
・ 専門家・管理職確保システムの構築
関連機関の間から、国立の原子力技術訓練センターを設立し、教育水準の向上、原子力関連機関のための訓練実施、訓練の監督、訓練結果の認証等の機能を担わせることが提案されている。
韓国
1. 国家の原子力人材育成戦略
文明はエネルギーの消費に基づいており、化石燃料はエネルギー資源として重要な役割を果たしていた。しかし、気候変動、供給力、経済効率の観点から、化石燃料はもはや良い選択とは言えない。また太陽光・水力・風力・潮力エネルギーは、経済効率にもとり、エネルギーセキュリティの観点において確実ではない。福島第一原子力発電所事故後の新しいパラダイムにおいても、原子力発電は避けることの出来ない選択であると結論づけられる。
高水準の社会は文明化されており、より多くの福祉が求められる。診断・治療等、医療の分野において、また農業・食品加工・衛生・産業及び環境への応用と言った分野でも、放射線が利用されている。放射線利用は人類社会のために広く利用されている。このため、人材育成は国家に発展従い、より強く求められる。
原子力人材育成は原子力利用を進めていく上で最も重要な項目である。原子力発電の導入を予定する新規参入国では、能力構築のため原子力発電所の規制・安全・建設・運転・保守、また研究開発等の様々な分野の人材が必要とされる。またすでに原子力発電を導入している国々でも、新しい原子力発電所の建設、研究開発、安全規制等のために、さらに多くの人材が求められている。
韓国の原子力エネルギーシステム基本計画(2008年〜2030年)によると、韓国は原子力発電の割合を2008年時点の38%から、2030年時点には59%にまで増加させることになっている。このため、原子力発電所が新規増設される。また小型モジュラー炉(SMR)、多目的小型モジュラー炉(SMART)、第4世代原子力システム、新型研究炉等のための大規模な研究開発における人材育成が必要とされている。
2012年から開始する新しい国家原子力推進計画では、大学における原子力教育プログラムへの支援、産業・研究開発部門における人材の維持、人材の国際競争力の強化等により、継続的に原子力推進政策を実施していく。政策を一言で表すと「揺るぎない強力な支援」ということであるが、福島第一原子力発電所事故後、国民の支持は幾分離れている。
2. ネットワークと協力
韓国の原子力人材育成の枠組は、それぞれ別の省庁に属する2つのグループから成り立っている。1つ目のグループは、原子力工学部を有する12の大学、韓国原子力研究所(KAERI)の原子力教育訓練センター、及び韓国原子力安全技術院(KINS)の原子力安全スクールで構成され、これらは教育科学技術部(MEST)に属している。2つ目のグループは韓国水力・原子力株式会社(KHNP)の原子力発電教育機関、韓国プラントサービス・エンジニアリング(KPS)の原子力保守訓練センターから構成され、これらは知識経済部に属している。
研究開発はKAERI、安全規制はKINS、基本教育は大学、韓国電力株式会社(KEPCO)は商業発電、KPSは原子力発電所の保守というように、関係者それぞれが担当の分野を持っている。HRDのニーズが重複する場合は、これらの関係者は国内外において協力する。
我々はオンライン上に2つの国際協力の枠組を有している。その1つであるアジア原子力技術教育ネットワーク(ANENT)は、情報交換及び(IAEAに参加する)アジア諸国に対し、原子力教育訓練のデータベースとサイバープラットフォームを提供する目的で、2004年に発足した。またIAEAの知識管理部は、IAEA参加国にサイバー学習の機会を提供するウェブポータル”CLP4NET”を整備しており、これはLMS-MOODLE(サイバー学習のプラットフォーム)を土台にしている。KAERIはANENTとCLP4NETの開発作業において、IAEAとともに作業を行ってきた。
マレーシア
1. |
マレーシアにおける原子力人材育成の枠組は、政府・規制機関・研究開発機関・教育機関・産業界・電力会社・運転機関・関連団体の互恵的協力に基づいている。様々な人材(専門家、技術者等)を考慮し、資格・能力のある人材を育成するために、これらの組織はそれぞれ異なった役割と機能を有する。 |
2. |
人材育成の中核となる要素は教育と訓練のシステムである。すべての人材育成プログラムは国家計画に従い、また産業及び国際協力の枠組と密接に協力しなければならない。 |
3. |
加えて、教育機関及び研究機関は人材育成と研究開発活動において効果的な役割を果たさなければならない。協力的な取組が原子力人材育成プログラムを強化し、またバランスの取れたより良い世界的発展に向け、知識及び経験の共有を促すのである。 |
モンゴル
将来的に、火力発電のみではモンゴルの電力を賄うことは出来ない。そのため政府及び国際協力プログラムによる支援の下、この課題に対する科学的アプローチが必要とされる。原子力発電所整備計画(プロジェクトI及びII)の実施により、モンゴルは原子力発電を導入することが可能となる。そのため、以下が必要とされる。
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原子力技術の教育訓練システムの整備 |
・ |
国内の教育システムを整備するための講師の育成(講師候補者を訓練徐行のため海外派遣し、帰国後国内で人材育成に携わる) |
・ |
原子力発電既導入国の経験の学習 |
しかしながら、モンゴルはパブリックアクセプタンスの課題を有する。福島第一原子力発電所事故は、国民の間に強い影響と懸念をもたらした。彼らの不信を払拭し、原子力に係わる活動とその必要性について積極的に説明することが必要である。
フィリピン
1. 原子力人材育成政策と予算
フィリピン科学技術省(DOST)の重要な目標の1つとして、科学技術の人材育成を掲げている。大学院生に対し、1年間におよそ1,000万ドルの奨学金が割り当てられているが、原子力人材育成に特定の予算配分がなされているわけではない。奨学金はDOSTの以下のプログラムに与えられている。
・ |
科学技術人材育成促進プログラム(ASTHRD) |
・ |
技術のための工学研究開発(ERDT)プログラム |
・ |
DOST人材育成プログラム(DOSTの正規職員向け) |
PNRI法律により、原子力の平和的利用の推進及び規制を担当するよう定められており、また原子力人材育成の担当機関である。PNRIは人材を教育訓練のために海外に派遣する予算を持っていない。限定的に、近隣ASEAN諸国の大学院教育のためにDOSTから受ける予算を活用することは出来る。PNRIは多国間協力ではIAEA、日本文部科学省、二国間協力では欧州共同体、米国エネルギー省、米国原子力規制委員会等から提供される海外訓練プログラムを活用している。
2. 原子力人材育成の戦略
原子力人材育成戦略の中には、以下が含まれている。
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PNRIの原子力訓練センターによる地域的訓練の強化 |
・ |
大学を含む教育機関における科学技術教育の強化 |
・ |
国際協力を通じた人材育成 |
・ |
DOSTの在外フィリピン人科学者を短期間帰国させることによる人材育成プログラム |
PNRIの原子力訓練センターは、非破壊検査等の原子力利用に関する訓練コース及びセミナーを実施している。2011年には、624名参加の下、46の訓練コース及びセミナーが実施された。
原子力発電計画の準備段階として、「長期的なエネルギーの選択肢としての原子力発電に関する研究」省庁間コアグループ(NEPIOの先行機関)により、原子力発電のための人材育成計画が現在作成されている。もし将来的に原子力発電所を建設する場合、それがターンキープロジェクトであるなら、設計・建設・運転のための全ての資格・能力を育成することは予定されていない。IAEAのマイルストーン文書フェーズ1及び2において要求されている事項は、請負に出すか、あるいは国際・二国間協力による支援を利用することが可能である。フィリピンが重点的に取り組むのは、規制機関に要求される、また運転・整備上の安全確保に必要とされる資格・能力である。
3. 原子力人材育成ネットワーク
原子力教育訓練のため、PNRIは以下の組織との連携を保っている。
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大学 |
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フィリピン非破壊検査協会(PSNT)、フィリピン核医学協会(PSNM)、フィリピン放射線防護協会等の職業団体 |
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原子力に関する省庁間コアグループの参加機関 |
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国家安全保障や情報、また原子力安全に関連する機関 |
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その他の研究機関 |
タイ
1. 政策
「2010年〜2030年の電力開発計画(PDP2010)によると、1,000MWの原子力発電所(2基)をそれぞれ2026年と2027年に稼働させる予定である(総発電量の3%を賄う)。
2. 原子力発電のための人材育成戦略
原子力人材育成は国家エネルギー政策委員会(NEPC)内の原子力発電基盤整備委員会(NPIPC)によって主導されている。
タイ電力公社(EGAT)は以下を含む人材育成戦略を策定した。
・ 大学・研究機関における教育訓練プログラム
・ 海外における教育訓練
・ 原子力発電所の建設及び運転におけるOJT
・ 採用
・ 重要な分野の研究に対する奨学金の授与
・ 他の電力会社・組織との関係構築
・ 社内訓練センターの設立
・ 国際的コンサルタント・組織・機関・原子力発電所との連携
3. 研究機関及び大学による原子力技術利用及び原子力発電のための人材育成
タイ原子力技術研究所(TINT)は、研究所・大学・医療機関・企業等の専門家を対象に、知識と経験を向上させるための訓練コース・セミナー会合を提供している(年間1,500名)。また、EGATによる訓練プログラムや、研究炉・放射性同位元素(RI)製造施設・放射性廃棄物管理施設へのテクニカルビジットを支援している(年間2,500名)。
チュラロンコーン大学が博士号(原子力工学)、工学修士号(原子力工学)、科学修士等(原子力技術)を提供しているように、国立大学もまた、原子力利用及び原子力発電のための人材育成を支援している。1つの履修課程につき、(年間)およそ10名から15名が卒業している。
4. 国際協力
タイの人材育成において最も重要な戦略の1つが、RCA、FNCA、MEXT、KAERI、アジア原子力安全ネットワーク(ANSN)、ANENT、米国エネルギー省等、既存の手段を通じた国際協力である。
ベトナム
2006年1月3日、原子力発電及び非発電利用の方針と計画を定めた「2020年までの原子力の平和利用に関する戦略」が首相によって署名された。また2007年12月27日、「2025年までのエネルギー開発に関する国家計画及び2050年への展望」が首相によって承認された。これによると、2050年まで原子力発電を推進し、総発電量の15〜25%を賄うこととされている。
ベトナムは原子力発電の導入に関し、ニントゥアン第1原子力発電所計画(フォック・ディン地区に1〜2号機(2,000MW)、ビンハイ地区に3〜4号機(2,000MW))という具体的な計画を有している。ロシアと日本が供給に係わる。計画は2009年11月25日に国会に提出され、承認を受けた。投資者は2012年に認可の申請を提出し、入札及び設計調達建設の署名は2013年、商業運転の開始は2015年頃になる予定である。
試算によると、2,400名の技術者、350名の修士及び博士修了者が2020年までの原子力発電計画に必要とされている。ベトナムは、教育訓練省(MOET)が拠点及び事務局を務める原子力人材幾瀬ネットワークを設立した。このネットワークにはベトナム電力公社、大学、ダラト原子力研究所等の原子力研究機関、ベトナム原子力研究所(VINATOM)が関与し、原子力分野の学生及び若手研究者を支援する。また、電力大学(EPU)、ダラト大学(DLU)、ホーチミン科学大学(HCMUS)は近年、原子力に関わる学部をそれぞれ設立した。
添付2: 2012年FNCA人材養成ワークショップ結論
人材養成プロジェクトの目的 |
1. |
人材養成プロジェクトの目的が以下の通り再確認された。
・ 原子力人材育成に関する戦略・課題・計画に関する情報交換と共有
・ 原子力人材育成の課題に対応するためのFNCA参加国間の協力の強化
・ ANTEPの実施と改良
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原子力人材育成ネットワーク |
2. |
現在準備中の国もある一方で、いくつかの参加国はすでに国家的な原子力人材育成ネットワークを設立した。 |
3. |
原子力人材育成ネットワークの設立状況は、2012年11月に予定されている第13回FNCA大臣級会合において報告されるべきである。 |
4. |
原子力人材育成ネットワークの担当者・担当機関が特定された。これは人材育成に関する国際協力活動及びネットワークの拠点としての役割を果たす。
|
原子力発電計画のための人材育成 |
5. |
原子力発電導入のための、人材育成の戦略的計画の重要性が強調された。 |
6. |
急速に増えつつある原子力発電計画において、中国は成功モデルとなっている旨が言及された。 |
7. |
福島第一原子力発電所事故後、原子力発電所の安全のための人材育成が取り分け重要である旨が言及された。 |
8. |
人材育成において建設請負会社の役割が非常に重要であること、またそれは国の人材育成計画に統合されるべきことが認識された。 |
9. |
人材育成における大学と研究機関の必要不可欠な役割が強調された。 |
10. |
FNCA参加国の大部分において、原子力発電はエネルギー供給の確保及びCO2の削減という役割を果たし得ることが言及された。
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原子力知識管理 |
11. |
原子力技術利用において、ベテラン層と若年層との間で大きな能力差が存在する点について懸念が表明された。 |
12. |
次回ワークショップにおいて、参加国内で実施されている戦略的・効果的な原子力知識管理(NKM)について知見を交換するために、NKMに関する議題をアジェンダに盛り込むことが勧められた。
|
人材育成のための政府予算確保 |
13. |
人材育成プログラムの計画及び実施のため、国家予算を確保することの重要性が強調された。 |
14. |
適切な技術、資格・能力の特定において、原子力発電及び原子力利用のための人材育成に関する明確な政策が不可欠であることが認識された。 |
15. |
実践的訓練との効果的な統合による遠隔教育が、経費削減のための良い方策となることが言及された。
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アジア原子力教育訓練プログラム(ANTEP) |
16. |
参加国からのANTEPプログラム(FNCA参加国間で相互利用が可能な人材育成プログラム)に関する情報提供について、謝意が示された。 |
17. |
しかしながら、人材育成のための各国予算の不足により、これらのプログラムは十分活用されるに至っていない。これらのプログラムの効果的な活用のために、各国政府による奨学金の提供について勧告がなされた。 |
18. |
訓練受講者に対する金銭的支援を含むプログラムの提供が各国に促された。 |
19. |
日本文部科学省の主催する技術者交流事業に対する謝意と、また受入人数増加の要望が示された。
|
原子力利用のための人材育成 |
20. |
原子力利用技術の商業化に向け、人材育成を含む技術のエンドユーザーとの協調が重要である旨について合意が得られた。 |
21. |
核医学及び放射線医療の分野において、機器の保守に携わる技術者の育成が重要である旨、言及がなされた。 |
22. |
農業・材料科学・医療の分野における重イオンビームの活用に関する地域シンポジウムの開催について提案が行われた。
|
方向性と計画 |
23. |
以下の計画について、原則として合意が得られた。
(1) |
人材育成ネットワークのフォローアップ(検証・分析・修正) |
(2) |
人材育成の戦略・課題・計画に関する情報の交換と共有 |
(3) |
原子力研究機関による大学への支援の強化 |
(4) |
原子力人材育成の課題への対応におけるFNCA参加国間の協力 |
(5) |
ANTEPの実施と強化 |
(6) |
各国の計画実施のためFNCAによる協力が必要とされる活動の特定
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その他 |
24. |
第13回コーディネーター会合において承認された「人材育成に関する提言」は、第13回大臣級会合において発表され、コメントに応じる。 |
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