FNCA 2013 人材養成プロジェクトワークショップ 議事録
2013年9月17日〜19日 敦賀市、日本
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期日 : |
2013年9月17日〜19日 |
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場所 : |
敦賀市、日本 |
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主催 : |
文部科学省 |
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共催 : |
福井県、若狭湾エネルギー研究センター(WERC)、福井大学 |
開会セッション
開会セッションにおいて、町末男FNCA日本コーディネーターと坂本修一文部科学省研究開発局研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)が開会挨拶を述べた。続いて杉本達治福井県副知事が歓迎挨拶を述べた。
Session 1: FNCAプロジェクトについて
町コーディネーターにより、2012年の第13回大臣級会合の概要とプロジェクトの進捗に関する報告が行われた。町コーディネーターはFNCA参加国とIAEAアジア原子力地域協力協定(RCA)が、共通の利益を有する分野において、WSへの相互参加を通した成果と経験の共有により、協力関係を築くことを提言した。
続いて山下清信主査により、2012年度の人材養成プロジェクトの成果と今後の課題について報告がなされた。すべてのFNCA参加国において国内の原子力人材育成ネットワークが立ち上げられ、またネットワークの連絡窓口担当者が指定された。ネットワークの継続的強化が非常に重要であることが強調された。また講師育成研修(ITP)及び技術者交流事業(NREP)継続と、ANTEPのさらなる活用に対する期待が述べられた。
原子力人材養成に関する公開セミナー
9月17日午後、WS参加者は福井大学附属国際原子力工学研究所第一講義室に移動し、約60名の聴衆参加の下、「原子力人材養成に関する公開セミナー」を開催した。
町コーディネーターによる開会挨拶の後、坂本戦略官により、「文部科学省におけるアジア諸国を中心とした原子力人材育成の取組」に関する講演の中で、「専門家交流(FNCA)」、「研究者育成」及び「講師育成」の3つの事業と、日本の原子力人材育成ネットワークに関する説明がなされた。
次に安濃田良成福井大学附属国際原子力工学研究所所長による「福井大学附属国際原子力工学研究所における教育研究の現状」と題した講演の中で、研究所の概要、近年の研究課題及び国際交流の取組に関する紹介が行われた。
続いて文部科学省による技術者交流事業により福井県に招聘されているアジアの研究者を代表しバングラデシュのMs. Shill SOMAが、また講師育成研修により日本に招聘されているベトナムのMr. NGUYEN Tuan Khaiが、今後の研修活動に対する抱負を述べた。
続いて中国広核電集団(CGNPC)のMr. HOU Yinghongにより、「中国における原子力人材育成」と題し、中国における原子力発電開発の見通しと、それに伴う人材育成の取組について紹介が行われた。
続いてベトナム原子力研究所(VINATOM)のMr. NGUYEN Manh Hungにより、「ベトナムにおける原子力人材育成」と題し、ベトナムの原子力発電導入計画に伴う人材育成活動について講演が行われた。
続いてインドネシア原子力庁(BATAN)のMr. Eko Yuli WINARNOにより、「インドネシアにおける原子力人材育成」と題し、インドネシアにおける原子力科学技術及び原子力発電導入のための人材育成等に関する講演が行われた
最後に町コーディネーターにより、「持続的発展に役立つ原子力発電と放射線利用及びFNCA活動」と題し、原子力利用の利点及びFNCAの活動内容に関する説明が行われた。
セッション2:原子力発電と原子力利用のための国家的人材育成戦略(カントリーレポート)
冒頭、町コーディネーターは、原子力の放射線利用と発電利用のための効果的な人材育成の実施に向け、特定の連絡窓口の設置を伴う原子力人材育成ネットワークを各国に設立することに対して合意した、第13回大臣級会合の決議及び第13回コーディネーター会合における「人材育成に関する提言」について言及した。また第14回コーディネーター会合の結論と提言においては、人材育成を担当する上級行政官がワークショップに参加し、経験を共有し、原子力人材育成の報告について検討を行うべきであることが合意されている。
続いて各国参加者により、原子力発電と原子力利用のための国家的人材育成における以下の重要項目について、発表が行われた。
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原子力人材育成のための政策、予算 |
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人材育成ネットワーク及び連絡窓口に関する更新点 |
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原子力人材育成におけるニーズと課題 |
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原子力発電計画のための人材育成における研究機関、大学及び電力会社の役割 |
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原子力発電計画のための人材育成の主要課題と戦略 |
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原子力人材育成のための国際協力の望ましい在り方 |
各国カントリーレポートの要約は別添に示されている。
発表終了後、参加者はセッション2のまとめとして円卓討議を行い、以下の4点について議論が行われた。
1. 原子力人材育成のための政策、予算
中国、ベトナム等いくつかの参加国においては、原子力人材育成の政策と予算を非常に明確に定めている。福島第一原子力発電所事故後、日本政府は原子力発電所の廃止措置と安全に関する活動に一層注力している。マレーシアとフィリピンは原子力人材育成のための政策と予算について、それぞれの政府による決定を待っている状態である。中国は予算に加え、幅広い原子力人材育成政策を策定している。
2. 原子力人材育成におけるニーズと課題
すべての参加国は、パブリックアクセプタンスが原子力人材育成の主要な課題であるという点に同意した。参加国はパブリックアクセプタンスのために実施されている活動をリスト化し、次回ワークショップで報告することについて合意した。また原子力人材育成の発展のためには、小学校教諭を対象とした研修や原子力コミュニケーターの育成、また遠隔教育も活用されるべきである。
3. 原子力発電のための人材育成の具体的課題と対策
インドネシアとマレーシアは、若い研究者や原子力関連企業の社員が3ヵ月以上を要する能力向上訓練を拒否する問題について言及したが、この課題に対する解決策は、議論の中では見出せなかった。
4. 原子力発電のための国際協力の必要性
原子力人材育成のために、日本・中国・韓国といった先進国との間で行うのみならず、IAEAといった国際機関との間においても、国際協力は非常に重要であると言うことが合意された。中でも、参加国に専門家を派遣する交流プログラムは非常に重要な要素である。
セッション3:アジア原子力教育訓練プログラム(ANTEP)と技術者交流事業(NREP)の改良
ワークショップ参加者は原子力安全研究協会によるANTEPとNREPへの貢献に対し謝意を示し、ANTEP及びNREPの概要を説明するとともにプログラム評価の端緒となった発表を評価した。
ANTEP調査実施方法に関し、以下の通り議論が行われた。
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NREP受講者の選抜方法については肯定的な意見が述べられた。 |
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ANTEPのテーマ分類にあたっては、より一般的な分類方法にすべきである。 |
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ANTEP調査期間をより長く設定すべきであり、2ヵ月が提案された。 |
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人材育成フォーカルポイントが募集枠を超過している分野と、利用可能なプログラムについて理解するために、ニーズと提供可能プログラムに関するANTEP調査結果をフォーカルポイントに通知するべきである。
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予算の不足による実施面での課題は、日本のNREPの選抜課程に参加国を関与させることによって対処し得る。以下の取組が提案された。
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参加国(人材育成フォーカルポイント)にテーマ毎の応募者上限人数を通知する。(8名まで) |
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参加国(のフォーカルポイント)は応募者に優先順位を付ける。推薦状の送付も考えられる。 |
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人材育成フォーカルポイントと、高評価の不合格者に対し、日本以外の国が提供する利用可能プログラムの情報を提供する。これらのプログラムにおける財政的援助は現物出資である可能性がある(受講料免除、宿泊施設提供等)。 |
NREPの応募用紙について修正の余地がある(可能であればコメントを求めるため人材育成の担当者に応募用紙を送付する)。
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目的については明確に記すべきである。 |
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応募者は、応募者の能力開発と参加国の利益の観点から、受講の必要性について明記すべきである。 |
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FNCAコーディネーターまたは人材育成フォーカルポイントは、応募内容について確認するために、応募書類に署名を行い承認すべきである。 |
国際協力を促進するために以下の提案がなされた。(二国間の)組織間の覚書締結は協力を促進する。
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(ある国の特定のニーズに向け)専門家を派遣することは、専門的知識の共有のために有益である。 |
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特定の協力プロジェクト(専門的知識の共有)は(覚書等の)正式な合意によって、有効に、また明確になる。 |
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共同研究については、将来的な人材育成の発展の機会に向け、綿密に精査するべきである。 |
セッション4:原子力発電所初号機導入のための人材育成戦略
1.大学は、原子力・機械・電気・化学工学等の分野で、原子力発電所初号機の運転を担う電力会社に入社する学生に対し、基本的教育を提供する役割を持つ。訓練において得る知識は電力会社における職務遂行に役立つ。
2.原子力研究機関は、原子力工学、原子炉安全、放射線安全、核セキュリティの分野において、原子力発電所初号機の運転を担う電力会社に入社する学生に対し、基本的教育を提供する役割を有する。原子力研究機関は基礎的なものから高度なものに至るまで、実用的な知識を提供しなくてはならない。実践的な経験はこれらの分野において知識と技能を高めるにあたり、非常に有用である。
3.原子力発電のための人材育成において、最も重要な役割を担うのが原子力発電所メーカーである。メーカーは原子力発電炉の運転・管理・保守の分野において、電力会社社員に実用的訓練を提供する役割を有する。電力会社の従業員が原子力発電所試運転と稼働の初期段階に参加するにあたり、メーカーによる訓練の段階で得た専門的な知識と技能は、非常に重要である。これらのレベルの高い訓練に参加するのは、特別な人材のみとするべきである。
4.原子力発電既導入国が、導入予定国との間で、原子力発電のための人材育成戦略の経験を共有することは、非常に重要である。このテーマに関しては次回のワークショップにおいても取り扱うべきである。日本、韓国、中国といった国々は、原子力発電のための人材育成戦略について、詳細な発表を行うべきである。
セッション5:原子力利用(食品・農業、工業、医療、環境防護)のための人材育成戦略
オーストラリアとマレーシアより、(食品・農業、医療、環境防護の分野における)原子力技術利用の成功事例に関する発表が行われ、参加者より高く評価された。エンドユーザーとの協力に関する議論において、以下の項目が提案された。
1. |
準備段階においては、原子力技術を利用した製品に関し、幅広く明確な情報を、国民及び政府に普及する。 |
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政府からの支援を得る。 |
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初期段階においては低価格を実現する。 |
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製品利用の成功事例について情報普及を行う。 |
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研究機関は原子力技術利用の分野における新たな技術革新に関する情報を提供することによって、製品の開発に従事する企業を支援するべきである。 |
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放射線治療は重要かつ普遍的な分野であるため、専門家を育成し、特別な注意を払うべきである。 |
7. |
核物理、放射線化学の分野における大学での基本的な教育は、さらなる人材育成のために非常に重要である。 |
セッション6:2013年度の人材養成プロジェクトの方向性と計画
冒頭、山下主査が「2013年度の人材養成プロジェクトの方向性と計画」と題した発表を行い、以下の論点を提示した。
1. |
各国の原子力人材育成の成功事例や情報の共有 |
2. |
FNCA参加国間で原子力人材育成に関する協力を促進する方策 |
3. |
各国内の人材育成ネットワーク間の連携の促進 |
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ANTEPの機能強化 |
発表の中で、参加各国内で人材育成ネットワークが設立されたことは、プロジェクトの1つの成果である旨言及された。またモンゴルはネットワークの構成を大幅に変更し、タイのネットワークは未だ案の段階であること、またベトナムはネットワークの事務局を明確化すべきであることが指摘された。
山下主査は、講師育成研修(ITP)の講師育成コースとフォローアップ訓練コースは原子力発電導入予定国に非常に有益であると述べた。ITPは参加各国が自立した人材育成プログラムを策定するに当たり、効果的な方策の1つである。原子力発電計画の成否は人材育成のロードマップにより大いに左右される。また中国は、これらの国々における規制機関及び原子力発電所運転機関の人材育成に関し、重要な役割を果たし得る。本ワークショップで提示されたパブリックアクセプタンスの課題は重要であり、適切に対処すべきであることが付け加えられた。
続いて町コーディネーターが「人材養成プロジェクトの将来計画案」と題した発表を行い、人材養成プロジェクトの目的は大幅に達成されたものの、現在のプロジェクトの枠組においてさらに活動を強化すべき点も存在する旨述べた。また以下の点を念頭に置き、人材養成プロジェクトの評価を行うべきであることを述べた。
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参加各国の人材育成プログラム強化にあたり人材養成プロジェクトが貢献した点はどのようなものか。 |
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ワークショップにおける情報交換は参加国における人材育成プログラムの改良にあたり有益であるか。 |
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参加国のニーズに適応するために、どのように人材養成プロジェクトを改良すべきであるか。 |
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ANTEPは有益であるか。 |
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ANTEPの機能を強化するためにはどのようにすればよいか。 |
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人材養成プロジェクトを継続すべきか、または終了すべきか。 |
2014年から2016年までの新しいフェーズにおける方針の案が提示され、町コーディネーターは、活動内容を受動的なものと能動的なものの2種類に分類した。受動的活動に分類されるのは、国家計画と地域協力を促進するために、原子力人材育成の経験・戦略・課題を共有すること(現行の活動の継続)である。また能動的活動に分類されるのは、以下の内容である。
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参加各国内における人材育成ネットワークの設立と各国のネットワーク間における情報交換 |
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NREP以外で、ニーズに沿ったプログラムを実施することによるANTEPの機能強化 |
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国民の理解と原子力発電のための関係者の関与の達成に向け、原子力コミュニケーターを育成するための効果的な計画の策定 |
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文部科学省による現行の人材養成関連事業の見直し(よりニーズに沿うことを目指す) |
ワークショップ参加者は提示された論点に関する議論に積極的に加わり、提示された内容を指示した。カザフスタンは、原子力工学、放射線防護、廃棄物管理といった特定の分野の人材育成について、多くの時間をかけ詳細な議論を行うことを提案した。マレーシアは、資金と予算の可動化がANTEPの成功に関わる決定的な点である旨述べた。オーストラリアは、重粒子加速器を利用した最先端技術の利用の重要性に対し注意を払うべきであることを指摘し、文部科学省とIAEAによる国際または地域セミナーの開催の可能性について提案した。
施設訪問
セッション6終了後、以下の組織・施設において、施設訪問を実施した。
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若狭湾エネルギー研究センター照射室 |
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日本原子力発電株式会社敦賀総合研修センター
- 原子力発電教育シミュレーター室
- プラントモデル室
- トラブル研修室
- 第一実習室
汚染サーベイメーター
Ge半導体測定装置
- 分解点検エリア
- 水と蒸気の実習装置室
水と蒸気(熱)の実習装置
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敦賀発電所2号機フルスコープシミュレーター |
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原子力緊急事態支援センター |
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福井原子力センター「あっとほうむ」
- 施設の概要について説明を受け、体験型展示を見学した。 |
セッション7:まとめと結論
町コーディネーターが結論の文案を提示し、参加者による検討・修正の後、最終版はワークショップ後参加者に回覧され、決定されることとなった。
閉会セッション
町コーディネーター及び青木萌文部科学省研究開発局研究開発戦略官付調査因が、それぞれ閉会挨拶を述べた。
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