2019年度より、放射線育種プロジェクトの主査を中井弘和先生より引き継ぐことになりました。この枠組みでは、イネやダイズの新品種を中心として大きな成果が挙げられ、現在は、「持続可能な農業」及び「低投入」をテーマとした主要作物の改良が進められています。気候変動の影響が世界各地で顕在化する中、「持続可能な農業」及び「低投入」は非常に重要な課題であることに疑う余地はありません。一方、広く多様なアジアにおいて、答えが1つではないことも間違いありません。突然変異育種の観点からどのような貢献ができるか、各国リーダーや日本国内委員はじめ関係者の方々と一緒に考えていきたいと思います。
放射線を中心とした人為突然変異の育種利用は90年以上の歴史があり、これほど長く使われている技術は他に類を見ないと言えます。私の理解では、突然変異育種は多くの経験の上に成り立っている技術であり、マニュアル化することが難しい部分が多くあります。これまで築き上げられた技術を受け継ぎ、発展させ、後世に受け継いでいくためにも、近年発展が目覚ましい遺伝子解析技術やゲノム編集技術等も取り入れながら、突然変異育種に携わる研究者・技術者のコミュニティーをこのプロジェクトを通じて広げていきたいと考えています。 |