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開催日 |
2001年8月20日〜24日 | 場所 |
タイ・バンコク市 | 共催機関 |
文部科学省(MEXT)、カセトサート大学(KU)、タイ原子力庁(OAEP)、タイ農業庁(DOA) | 実施機関 |
日本原子力研究所(JAERI)、農林水産省(MAFF)、日本原子力産業会議(JAIF) | 参加総数 |
53名 内訳:中国3名、インドネシア3名、日本17名、韓国2名、マレーシア3名、フィリピン3名、 タイ19名、ベトナム3名 | |
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| ワークショップで放射線育種とバイオ肥料プロジェクトが同時開催された |
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| 1) 突然変異育種 |
| | 茨城県大宮町にある世界最大規模のガンマフィールド
(中央の塔から出た放射線が廻りの植物に突然変異を発生させる |
これまでFNCAの農業利用分野の協力として、禾穀類(イネ、麦、トウモロコシ等)、豆類、油料作物、園芸作物など主要作物を対象としたフェーズ1(1993年度〜1997年度)、優れた品種の選抜法(スクリーニング)や突然変異育種のための変異原など、突然変異育種のための基本的手法を対象としたフェーズ2(1998年度〜2001年度)を進めてきた。 2001年度は、フェーズ2の最後となる「突然変異育種のための分子生物学的手法」をトピックスとして、技術情報の交換が行われた。また、フェーズ2に続くフェーズ3のテーマを、作物の「生殖様式に関する対応法」とし、協力活動を進めること合意された。 さらに、今回のワークショップでは、これまでの協力活動の総決算として、「耐旱性(かんばつへの耐性)」をテーマにインドネシア、ベトナム、フィリピン、中国の4カ国の参加による多国間共同研究計画を2002年度からスタートさせることも合意された。 この共同研究計画は、第2回FNCAコーディネーター会合で合意された「イネやソルガムなど各国のニーズの高い作物品種に絞った協力」との行動計画をふまえ、耐乾燥性に優れたソルガム、大豆の新品種を開発することが目的である。 このほかワークショップでは、サブ・プロジェクトの一つである突然変異育種データベースや突然変異育種マニュアルをFNCAのホームページで制限付きで供用開始することが合意された。 | |
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| 2) バイオ肥料 |
| | インドネシアで販売しているバイオ肥料 |
今回のワークショップでプロジェクト策定会合が開催されたバイオ肥料プロジェクトは、根粒菌等による窒素固定(空気中の窒素からタンパク質の元となるアンモニアを作る)や菌根菌等によるリン酸の吸収促進など作物へ養分を供給する土壌微生物の作用を有効に利用して、食用作物、特にアジア諸国にとって重要なタンパク源である豆科作物等の収量増加をはかるものである。 バイオ肥料は、国際原子力機関(IAEA)の技術協力によりジンバブエやバングラデシュなどで大きな成果を上げており、日本でも北海道の十勝農協で商業ベースで実用化されている。 このプロジェクトでは、2002年度から2006年度までの5年計画で、有効な微生物や(キャリア微生物資材を安定に保持する担体)の開発や接種微生原(バイオ肥料)の施用法やリン32の改良などに取組む。このため、対象とする作物に最も効果的な微生物を選抜するため、窒素15をトレーサー(注1)として利用したり、キャリアの殺菌に放射線照射を利用する。
バイオ肥料の利用により、大量の化学窒素肥料の施肥に伴う経済負担や土壌環境破壊を避けることができる。さらに田畑転輪による栽培(稲および豆)で連作障害の回避と地力増強(農地保全)が期待でき、持続可能型農業の確立に大きく貢献できる。 | |
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| また現地圃場における根粒菌の接種効果の判定に極めて有用な根粒を作らない豆の品種を放射線育種により作ることも検討さわる予定である。バイオ肥料グループは、バイオ肥料の研究を行っているタイ農業省窒素15分析研究室、タイ農業省土壌科学部土壌微生物課およびカセサート大学微生物・アイソトープ研究室などの視察を行なった。 さらに突然変異育種とバイオ肥料グループの参加者によって、カセトサート大学ガンマ線照射センタ(GISC)、農業省生物技術開発センター(DOA)、パタンタニ・稲研究所などの視察が行われた。 なお、次回2002年度FNCA農業利用ワークショップは、突然変異育種とバイオ肥料の2つのテーマで、中国で開催される予定である。 | |
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| (注1)トレーサー |
| そのまま検知できない元素を含む物質の中にラジオアイソトープ(RI)をまぜておくと、RIから出る放射線を測定器で追跡することにより、その物質の動きを知ることができる。 |
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| ワークショップ参加者によるカセサート大学ガンマ線照射施設視察 |
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