2004年7月22日〜24日
放射線医学総合研究所 (放医研)千葉、日本
背景
(1)2003年12月に開催されたアジア原子力協力フォーラム(FNCA)放射線治療ワークショップでの提案に基づき、さらにまた2004年3月に開催されたFNCAコーディネーター会合での承認を受けて、FNCA2004放射線治療プロジェクト上咽頭がんミニワークショップが2004年7月22日から24日にかけて、放射線医学総合研究所(放医研:千葉、日本)において、日本の文部科学省(文科省)と放医研の共催、また日本原子力産業会議(原産)の協力で開催された。このワークショップには、FNCAに参加している中国、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの8カ国の代表が参加した。
このワークショップの目的は、上咽頭が ん共同臨床研究参加国間において、上咽頭がんの放射線治療技術、 および放射線副作用の重篤度判定の標準化を議論することである。
開会式
(2)放医研の立崎英夫博士がモデレーターを務めた。放医研、理事長佐々木康人博士が開会挨拶を述べた。続いて文科省、清水美和子氏、最後に放医研、辻井博彦博士が歓迎挨拶をおこなった。
セッション1: 上咽頭がん診療
(3)日本の立崎博士が加盟国の参加施設の提出した調査結果を発表した。健康保険制度による治療費の払戻し還付;放射線療法、化学療法、画像診断、診察を含む治療費の合計;病気診断、追跡調査における各種画像診断法の様々な形式の実施可能性および利用可能性;そして上咽頭がんの標準治療法等の基本的問題が含まれた。
参加者は、不明確データを明らかにした。また、 2004年12月のFNCAワークショップの前にこれらのデータを確認することとする。このデータの外部発表が可能か議論された。
セッション2: 上咽頭がん診断
(4)日本の井上博士が日本医学放射線学会(JCR)や様々な米国の機関により推奨される標的体積の推奨と放射線治療計画方針を発表した。議論は、上咽頭がんの治療における患者の最適な体位と、照射野の配置設定に集中した。議論の中心は、さまざまな組織、特に視神経、視交叉、下垂体、側頭葉の耐容線量であった。報告されているデータは、視神経、視交叉の耐容許容線量は50〜65Gyであると示している。(Emami et al 1991) しかしながら、参加者は上咽頭がんの生存者における失明の発生は各自の臨床経験ではまれであると感じていた。生存者の視神経と視交叉に対する治療計画と照射線量の見直しが推奨された。
韓国のチョウ博士が腫瘍病期診断における陽電子放出断層撮像法(PET)の有効性と上咽頭がんにPET/CTスキャンを用いた自施設のデータを示す小講演を行った。
上咽頭がんの病期診断については、 CTは必須とするが、MRIはをオプションとすることで合意した。PETは有効なモダリティに違いないが、全ての参加国において実施可能ではなく、従って、病期診断には利用されない。
セッション 3: 上咽頭がんの放射線療法
(5)フィリピンのカラガス博士、ベトナムのコ・チン博士、タイのクラトーン博士、中国のツォウ博士、インドネシアのススウォロ博士、マレーシアのイスマイル博士が各自の施設における通常の治療計画技術を発表した。これには計画標的体積、治療照射野、処方線量、決定臓器が含まれている。また、カラガス博士は2003年の米国放射線腫瘍学会(ASTRO)の上咽頭がん治療資料に関する簡単な発表を行った。
照射野のマージンと遮蔽の形成、特に口腔周辺と視神経について、徹底して議論された。視神経に対する 40〜50Gyの線量は容認できると判断されたが、その後は 、 この組織は可能な限り治療範囲から除外されるべきである。
チョウ博士と井上博士は次回の会合で CTの治療計画に基づく照射野の提案を行う。T1-2とT3-4臨床例に対する文書化した照射野の設定方法を日本のメンバーが準備し、12月の次回会合の前に配布される。
統一のプロトコルを用いる多施設共同研究の特性を考慮し、小線源治療と強度変調放射線治療はこの研究に用いるべきではないと決定した。
セッション 4: 急性毒性判定規準
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(6)セッションの始めに日本の辻井博士が視神経症について、放医研データの発表と文献のショートレビューを発表した。
日本の大野博士がCTCAE version3(Common Terminology Criteria for Adverse Events:有害事象判定規準共用専門用語第3版)とRTOG/EORTC(Radiation Therapy Oncology Group/ European Organization for Research and Treatment of Cancer:放射線腫瘍学グループ/欧州がん研究治療機構)に基づく、放射線副作用の標準判定規準を発表した。スライドで示された臨床例を用いて、特に境界線上の臨床例について広範囲な議論があった。この研究には、CTCAEが使用される。 |
セッション5: 上咽頭がんに対する化学療法
(7)タイのクラトーン博士が上咽頭がんに対する化学療法、特にアジュバント治療について、臨床研究のレビューを行った。これに続いて日本の小林博士が、化学放射線同時併用療法の利点と遠隔転移制御の必要性を強調した。さらに、上咽頭がんに対する新たな薬剤のレビューや将来の試行の可能な方向について発表した。
セッション 6: 議事録起草
(8)議事録草案が議論され、修正し、採択された。
閉会挨拶
(9)参加者は文科省、放医研、会合運営の現地スタッフと原産に感謝の意を表した。また、このプロジェクトに対する日本政府の継続的な支援に対して謝意を表した。辻井博士より閉会挨拶があり、運営委員および参加者に感謝の意が述べられた。
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プログラム
■主催:放射線医学総合研究所(放医研)
文部科学省(文科省)
■協賛:日本原子力産業会議(原産)
■日程:平成16年7月23日(金)〜24日(土)
■会場:放医研 千葉県千葉市稲毛区
■宿泊:ホテルサンガーデン千葉Stay at Hotel Sungarden Chiba
千葉市中央区1-11-1、TEL: 043-224-1131 FAX: 043-224-1156
7月22日(木)
東京国際空港(成田)着
19:00 - 21:00 |
歓迎レセプション (ホテルサンガーデン千葉)
司会:立崎英夫(放医研国際室)
歓迎挨拶:佐々木康人(放医研理事長)
歓迎挨拶:清水美和子(文科省原子力課)
歓迎挨拶:辻井博彦(放医研重粒子医科学センター長) |
7月23日(金)
09:00 - 10:00 |
セッション1:上咽頭がん医療
議長:チョ, C.K., 韓国
1) アンケート結果
立崎, H., 日本
2) 討議 |
10:00 - 10:15 |
< 休憩 > |
10:15 - 12:00 |
セッション2:上咽頭がん診断
議長:加藤, S., 日本
1) 画像診断と病期判定
井上, T., 日本
チョ, C.K., 韓国
2) 討議 |
12:00 - 13:00 |
< 昼食> |
13:00 - 18:00 |
セッション3:上咽頭がん放射線治療
共同議長:フアド, B.I., マレーシア
R. ススウォロ, インドネシア
1) 標的体積と治療計画
カラガス, M.J.C., フィリピン
D.H.クォク, チン, ベトナム
クラトーン T., タイ |
15:00 - 15:15 |
< 休憩 >
共同議長:D.H.クォク, チン, ベトナム
クラトーン T., タイ
ツォウ J., 中国
R. ススウォロ, インドネシア
フアド, B.I., マレーシア
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17:00 - 17:15 |
< 休憩 >
2) 討議 |
7月24日(土)
09:00 - 11:00 |
セッション4:急性有害事象基準
議長:中野, T., 日本
1) 急性有害事象
大野, T., 日本 |
10:00 - 10:15 |
< 休憩 >
2) 討議 |
11:00- 14:00 |
セッション5:上咽頭がんに対する化学療法
共同議長:須藤, H., 日本
1) シスプラチン投与
小林, K., 日本 |
12:00 - 13:00 |
< 昼食 >
2) アジュバント化学療法
クラトーン T., タイ |
14:00 - 15:00 |
セッション6: 議事録起草
共同議長:立崎, H., 日本
カラガス, M.J.C., フィリピン
フアド, B.I., マレーシア
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15:00 - |
閉会挨拶
辻井博彦, 日本 |
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参加者リスト
国 |
氏名 |
役職 |
所属機関 |
中国 |
ツォウ ジュウイン |
放射線治療部長 |
蘇洲大学第一病院 |
インド
ネシア |
R ススウォロ |
教授/放射線部放射線・
放射線治療専門医 |
インドネシア・ジャカルタ・
インドネシア大学医学部
チプト・マングンクスモ病院 |
日本 |
辻井博彦 |
重粒子医科学センター長 |
放射線医学総合研究所 |
日本 |
井上武宏 |
助教授 |
大阪大学大学院
医学系研究科 |
日本 |
中野隆史 |
教授 |
群馬大学大学院
医学系研究科 |
日本 |
小林国彦 |
助教授 |
埼玉医科大学 |
日本 |
加藤真吾 |
重粒子医科学センター病院
診断課 |
放射線医学総合研究所 |
日本 |
立崎英夫 |
国際室長 |
放射線医学総合研究所 |
日本 |
大野達也 |
重粒子医科学センター病院
主任医師 |
放射線医学総合研究所 |
日本 |
須藤久男 |
放射線部長 |
松戸市立病院 |
日本 |
清水美和子 |
調査員 |
文部科学省研究開発局
原子力課 |
日本 |
木村正子 |
国際室専門職 |
放射線医学総合研究所 |
日本 |
進士賀一 |
国際室専門職 |
放射線医学総合研究所 |
日本 |
瀬口忠男 |
アジア協力センター長 |
日本原子力産業会議 |
日本 |
中杉秀夫 |
アジア協力センターマネージャー |
日本原子力産業会議 |
日本 |
花光圭子 |
アジア協力センター副主管 |
日本原子力産業会議 |
日本 |
寺中朋文 |
アジア協力センター調査役 |
日本原子力産業会議 |
韓国 |
チュル・クー チョウ |
放射線治療部長 |
韓国がんセンター病院 |
マレーシア |
フアド・イスマイル |
放射線治療部医師 |
マレーシア・カバンサーン
大学病院 |
フィリピン |
ミリアム J.C. カラグアス |
放射線治療部長 |
聖ロカ医療センター |
タイ |
クラトーン テファモンクール |
放射線部放射線治療科 |
マヒドール大学
シリライ病院 |
ベトナム |
D.H. コォ チン |
第2放射線部主任 |
ホーチミン市がん病院 |
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