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放射線治療 ワークショップ

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ワークショップ

FNCA 2008 放射線治療ワークショップ

FNCA2008年放射線治療ワークショップ
概要

2009年1月28−31日
インドネシア、スラバヤ

ワークショップの参加者達
ワークショップの参加者達

 2008年度放射線治療ワークショップが2009年1月28日から31日にかけインドネシアのスラバヤで開催されました。この会合は、インドネシア原子力庁(BATAN)と日本の文部科学省の共同開催で行われ、会合には、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、タイ及びベトナムの8カ国から計18名が参加しました。韓国は会合には参加しなかったものの、FNCA共同臨床研究の治療データを提出しました。
 本プロジェクトは、アジア地域で患者が多い子宮頸がん、上咽頭がん等に対する統一・基準化されたプロトコール(治療手順)を、参加各国の国際共同臨床試験を通じて確立し、アジア地域の放射線治療の水準向上をめざすことを目的としています。ワークショップでは、以下の5つのテーマに関する発表と議論が行われました。

局所進行子宮頸がんに対する化学放射線療法の第II相研究(CERVIX-III)

 この治療法は、リニアック等を用いて外部から患者に照射する外照射と、密封した小さな放射線源を体内に挿入し内部から患部を照射する内照射という2つの標準的な放射線治療法に加えて、患者に抗がん剤を投与する化学療法を同時に行うものです。
 現在までに、ステージIIB60名、ステージIIIB60名からなる計120名の患者が登録され、解析された。急性毒性の発生率及びその程度は許容範囲内、また最晩期合併症は穏やかか或いは中程度であり、3年でのフォローアップ(追跡調査)率は93%を示しました。3年でのグレード3-4の遅発性の直腸と膀胱における合併症発生率は、それぞれ4%及び0%、全生存率及び局所制御率は、それぞれ68.8%及び80.9%でした。この成績は、国際的に認められた他の臨床研究報告と比べて、同等もしくはやや優れたものと言え、この化学放射線併用療法が、FNCA加盟国における局所進行子宮頸がん患者に対し実現可能でかつ効果的な治療法である事を示しています。

局所進行子宮頸がんに対する拡大照射野による化学放射線療法の第II相研究(CERVIX-IV)

 この治療法は、進行子宮頸がんに対し、抗がん剤同時併用のもと傍大動脈リンパ領域を含んだ拡大照射野で放射線治療を行うものです。
 評価対象となる登録が18件あり、予備分析が行われました。この結果では、用量規定毒性(グレード3及び4)、血液毒性及び非血液毒性が高い発生率を示していて、これらによりプロトコールの完遂が困難である事が分かりました。このため、傍大動脈リンパ節への放射線治療技術の修正/傍大動脈リンパ節放射線治療領域の縮小/治療日程の修正を柱とする、プロトコールの修正案が作成されました。

上咽頭がんに対する化学放射線療法の第II相研究(TxN2-3)(NPC-I)

 この治療法は、第III〜IV期(進行性)上咽頭がんで所属リンパ節に肥大があり、根治が難しい症例に対し、放射線療法と化学療法を同時併用した後、再発や転移を防止するため化学療法を追加するものです。
 現在までに100名近くの患者登録がなされ、治療成績は他の臨床研究と同等か、若干それ以上に優れた結果を示しています。今後も登録を継続し、120名以上の登録を目指すことになりました。

上咽頭がんに対する化学放射線療法の第II相研究(T3-4N0-3)(NPC-II)

 この治療法は、第III〜IVB期(進行性)上咽頭がんで所属リンパ節の状態が良好であり、比較的軽微な症例に対し、放射線療法と化学療法を同時併用した後、化学療法を追加するものです。
 現在までに52名が登録されており、そのうち95%の患者が6サイクルの化学療法を完遂させました。毒性は制御可能であり、グレードIVへの症状悪化はごく僅かでした。24ヶ月の中間成績では、1年の全生存率が95%、2年では84%でした。国際的に認知されている他の臨床研究と比較検討するため、患者登録数を70名以上にする必要があり、NPC-IIは、あと1年登録を継続することとなりました。

放射線量測定における品質保証/品質管理(QA/QC)

 この活動は、多国間の共同研究を効果的に行うため、各施設が信頼できる線量測定法を整備することを目指しており、子宮頸がん治療に係る線量測定や線源の放射能校正等のQA/QCを対象にしています。
 FNCA加盟の4ヶ国(中国、韓国、インドネシア、ベトナム)の7センターで実施された計20本に及ぶ光子ビーム相互比較測定の結果が発表され、17ビームが最適レベル、3ビームが許容レベルと、すべてのビームが適切な出力であったと報告されました。また、QA/QCの向上を図るため、「小線源治療の物理面におけるハンドブック」が各国参加者に配布されました。

オープンセミナー

 ソエトモ総合病院診療センターにおいて、オープンセミナーが開催され、医療従事者と医学生等、およそ60名による聴講がありました。講義では、がんの治療にとって早期発見が最も重要である事が強調され、がんを放置し手遅れになる事例を激減させたマレーシアの地域広報活動等が紹介されました。

オープンセミナーの風景 オープンセミナーの風景
オープンセミナーの風景

「2008年度FNCA放射線治療ワークショップ所感」

日本プロジェクト・リーダー 辻井博彦(放医研)

 今回のワークショップ(WS)は、いろいろな意味で困難性が予想されました。というのは、今年度からFNCA関連の予算が大幅に減額されたため、他のプロジェクト同様、放射線治療プロジェクトでもWSの参加人数を大幅に減少せざるを得なかったからです。昨年までは各国から2人参加が原則だったのですが、今回は一人になってしまったため、きっと登録患者数は減少し、WSでの議論もかなり低調になるであろうと恐れていたからです。さらに、子宮頸がんに対する現行プロトコール(Cervix-IV))の治療においては、従来法よりも副作用が大きいと思われるため、その継続性に疑念がもたれ、大きな壁を感じていたのです。こういったネガティブな予想の基に開催されたWSでしたが、その成果は思ったよりも大きく、次回に向けて新しい展望が持てる成果が得られたのです。参加数が少ないに係わらず、少数精鋭メンバーになったせいか議論は大変活発で、いくつか重要な決議がなされました。大きな収穫の一つは、子宮頸がんに対する次のプロトコールの見通しが立ったことです。生存率をさらに向上させるための治療法として、化学放射線併用療法(Cervix-V)に補助的化学療法を加える治療法(Cervix-V)が提案され、了承されたのです。すでにCervix-Vにより、化学放射線併用療法の有用性と安全性が確認されていますので、さらに補助的化学療法を加える必要があるかどうかは、治療期間や医療費のことを考えると大変重要な課題です。将来は、補助的化学療法ありなしの両者間での比較試験も可能になりますもで、臨床試験としては、大きな飛躍になります。もし補助的化学療法が必要ないという結果がでれば、そのぶん治療期間は短くなり、余分の出費を抑えることが出来ますので、患者さんにとって大きな福音となります。さらに、アジア諸国のなかでこういった比較試験が実施できるようになれば、得られる成果は大きく、FNCAの掲げた医療レベルの向上に大きく貢献することになるわけです。なお、現行のCervix-Wは若干修正の上で継続されることになりました。一方、上咽頭腫瘍についてみると、さすがに本疾患の高頻度国が参加しているだけあって、症例数の登録は思った以上にスムースでした。上咽頭腫瘍は、以前は日本でもそれほど珍しくない疾患だったのですが、最近はすっかり稀な疾患の一つになっています。従って、本疾患の日本からの登録数はゼロで、われわれとしては少々肩身の狭い思いを余儀なくされていました。そのかわり、専らデータ収集や統計解析役を担っているのですが、うれしいことに、いまの臨床試験の結果をまとめて学術誌に投稿する役目については、全員の総意で日本が担うことが決まったのです。われわれとしては最初、登録患者数の多い国から執筆者を選ぶことを提案したのですが、討議の末、子宮頸がん同様日本が投稿することになったのです。これはうれしい誤算でした。
 さて、まじめなWSにおいても、懇親会などの楽しみはあります。最近は、宴もたけなわになると決まってカラオケが入ります。インドネシアでもこれは例外ではありませんでした。フィリピン人がいずれもエンタテイナー揃いであることは周知の事実ですが、今回、インドネシア人も負けず劣らず芸達者であることが分かりました。これは筆者にとってこれは大きな発見でした。日本や中国も奮闘しましたが、ホスト国には及びませんでした。さて、次のWSはマレーシアで開催されることが決まりました。それまで一年間の猶予がありますので、日本勢はその間ひそかに練習し、カラオケで披露したいと思っています。



FNCA2008年放射線治療ワークショップ
議事録

2009年1月28−31日
インドネシア、スラバヤ

(1) 平成20年3月に開催された第9回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)コーディネーター会合と、平成20年11月に開催された第9回FNCA大臣級会合の合意を受け、平成20年度放射線治療ワークショップが平成21年1月28日から31日にかけインドネシアのスラバヤで開催された。この会合は、インドネシア原子力庁(BATAN)と日本の文部科学省の共同開催であり、日本の(財)原子力安全協会の協力により実施された。FNCA加盟8カ国、すなわちバングラデシュ、中国、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、タイ及びベトナムの代表者がワークショップに参加した。韓国から治療データの提出はあったが、代表者の会合への参加はなかった。

開会式

(2) インドネシア原子力庁(BATAN)長官フディ・ハストォー氏が開会挨拶を行い、国を代表し公式にワークショップを開会した。彼は、FNCA放射線治療プロジェクトの歴史を振り返ると共に、科学技術の枠組みにおける本プロジェクトの重要性を強調した。日本プロジェクト・リーダーである辻井博彦主査が挨拶を述べ、QA/QCハンドブックの出版を含め、本プロジェクトの成果について語った。彼は、また、本会合の目的と大まかなプログラムを説明した。

(3) ナナ・スプリアナ氏が、特別講義「インドネシアにおける放射線治療の現状」を行った。彼は、インドネシアにおける放射線治療の歴史と最近の状況を説明した。

(4) 議題が採択され、議長と記録者が選任された。(別紙1)新しくバングラデシュから参加したパルビン・アクター・バヌー氏を含め、すべての参加者が紹介された。

セッション 1: 局所進行子宮頸がんに対する化学放射線療法の第II相研究(CERVIX-III)

(5) 局所進行子宮頸がんに対する化学放射線療法(CERVIX-III)についての、最新の臨床データが各国代表者により発表された。(中国:18、インドネシア:5、日本:32、韓国:10、マレーシア:14、フィリピン:12、タイ:19、ベトナム:10).追跡調査のまとめは、加藤真吾委員によって発表された。ステージIIB60名、ステージIIIB60名からなる計120名の患者が登録され、解析された。急性毒性の発生率及びその程度は許容範囲内、また最晩期合併症は穏やかか或いは中程度であり、3年のフォローアップ(追跡調査)率93%を示した。3年でのグレード3-4の遅発性の直腸と膀胱における合併症発生率は、それぞれ4%及び0%であった。3年での患者の全生存率及び局所制御率は、それぞれ68.8 %及び80.9%であった。

(6) CERVIX-IIIの成績は、国際的に認められた他の臨床研究報告と比べて、同等もしくはやや優れたものとなっている。この事は、化学放射線併用療法がFNCA加盟国における局所進行子宮頸がん患者に対し実現可能でかつ効果的な治療法である事を示している。結果は、傍大動脈リンパ節と遠隔転移は、治療戦略の更なる向上のために分析されるべき事を明らかにした。直腸と膀胱の線量と晩発毒性の関係は、今後、評価される予定である。追跡調査が少なくとも5年の期間、継続して行われる事が推奨された。

セッション2: 局所進行子宮頸がんに対する拡大照射野による化学放射線療法の第II相研究(CERVIX-IV)

(7) 大野達也委員が、他に公表されている拡大照射野による化学放射線療法のデータを発表した。彼は、1998年から2009年に発表され、いずれもこの治療手順が深刻な合併症と関連付けを示している8つの研究結果を報告した。彼は、これらの試験で用いたシスプラチン投与量が、この治療法を順守する事に対し影響を与えると結論した。彼は、可能な限り内臓への線量を減らす事を推奨した。続いて、参加国におけるCERVIX-IVプロトコールによる結果発表が行われた。患者数は、中国が3、インドネシアが4、日本が3、韓国が7、マレーシアが1、フィリピンが4及びタイが1であった。日本と韓国を除いた参加国は、非常に高価な腹部CT検査がプロトコールに盛り込まれている事が、本治療法の患者適用を難しくしているとした。これらの結果では、深刻な毒性の増加、特に白血球減少、好中球減少、吐き気及び倦怠感が示された。

(8) 加藤真吾委員が参加国全提出データの分析を発表した。25件の内、化学療法における異なる投与量使用、治療前時に傍大動脈リンパ節が陽性の事例、また治療されなかった等から、7件は評価対象外とされた。評価対象となる18件の内、治療からの逸脱が、放射線治療及び化学療法の実施においても共に観察された。今回の予備分析は、用量規定毒性(グレード3及び4)、血液毒性及び非血液毒性についてより高い発生率を示しており、これらの毒性のためにプロトコールの完遂が困難である事が判明した。

(9) CERVIX-IVを中止し新しいプロトコールを作るべきか、それとも修正した上で継続すべきかについて自由な討論が行われた。後者が合意され、修正案が作られた。(表1).

表1. CERVIX-IVプロトコールの修正点
1. 傍大動脈リンパ節への放射線治療技術の修正
    AP-PA 領域
    4門: 推奨
    IMRT: 任意選択化
2. 傍大動脈リンパ節放射線治療領域の縮小
    上限: 脊椎1番〜2番の間に縮小
    照射領域: 幅8cmから7cmに縮小
3. 治療日程の修正
    全骨盤放射線治療開始の2-4週間後に傍大動脈リンパ節放射線治療を開始
4. CDDPの投与量(修正なし)
    40mg/m2を堅持

(10) 加藤真吾委員が、修正した原型プロトコールと新登録様式を各国にE-メールで送付する。次年度ワークショップに、各国は再度結果報告を行う。

セッション3: 放射線量測定における品質保証/品質管理(QA/QC)

(11) ガラス線量計を用いて実施した、加盟4ヶ国の7センターで治療で使用している20の光子ビームについての相互比較測定報告が、水野秀之委員により発表された。その中で、17ビームは最適レベルに属し、2ビームは許容レベル、1ビームは許容外レベルと判定された。このビーム報告は、その後修正され、許容外から許容範囲レベル内と判定された。

(11-b) QA/QCの向上を図り、「小線源治療の物理面におけるハンドブック」が各国参加者に配布された。

(12) 次回の現地調査計画に関して、タイ、マレーシア、バングラデシュとベトナムのハノイの調査が残っている。調査機材に対する関税の問題が述べられた。提案された解決法は、IAEAの調査団の実施方法を採用する事である。つまり、調査機材は商業的価値が無い事を申請し、小額の価格申請を行うものである。この手段はうまく機能しそうな見込みがあり、今後すべての現地調査で採用される。

セッション4: スラバヤのソエトモ総合病院放射線治療部門の施設訪問

(13) 参加者はソエトモ総合病院に施設訪問し、放射線治療部門を見学した。

セッション5: オープンレクチャー(公開講座)

(14) ワークショップの1行事として、ソエトモ総合病院診療センターにおいて、オープンレクチャーが開催された。辻井博彦主査が開会挨拶を、またソエトモ総合病院副院長であるウスマン・ハディ氏が歓迎挨拶を行った。5人の講演者によるオープンレクチャーが、これに続いて行われた。(プログラムは添付1参照)放射線治療医、医学物理士、放射線技師、看護士、他部門の医師及び医学生等、およそ60名による聴講があった。

セッション6: 上咽頭がんに対する化学放射線療法の第II相研究(TxN2-3)(NPC-I)

(15) このセッションは、上咽頭がん治療に関する他の研究との比較についての井上武宏委員の発表で始まった。全参加者に対し、RTOG研究報告における、グレードIIIの合併症発生が40%という際立った様相が強調された。その後、参加各国の報告が発表された。(中国 5、インドネシア 5、マレーシア 25、フィリピン 5、タイ 5、そしてベトナム 59)治療中断の原因、特に口腔乾燥症の発生を重視しながら急性及び遅発の病態、再発時の再照射、治療後に残った首の節に対する処理と化学療法治療に対する不服従に関連した問題等について、議論があった。

(16) 大野達也委員が、他の臨床研究と比較しながら、FNCA NPC-Iの研究結果の要旨を発表した。FNCAの研究が、たくさんの事例において他の臨床研究と同等か、若干それ以上に優れた結果を示している事を彼は明らかにした。大野委員が発表した結果に基づいて研究を延長する必要性について討議された。参加者は、研究を継続し、他の臨床研究に比較する為に120名以上の患者を登録する事が望ましいとした。

セッション7: 上咽頭がんに対する化学放射線療法の第II相研究(T3-4N0-3)(NPC-II)

(17) 本研究の臨床データが各国から発表された。中国(1)、インドネシア(8)、マレーシア(6)、タイ(1)、ベトナム(36)である。95%の患者が6サイクルの化学療法を完遂させた。実際のシスプラチンの投与量である165mg/m2は、チャンの臨床研究の投与量174-187 mg/m2より僅かに低い。吐き気、嘔吐及び白血球の減少の発生も、同様に低い。毒性は制御可能であり、グレードIVへの進行はごく僅かであった。遵守率(CR)は95%であり、T3-4の疾患にとしては好ましい反応である。24ヶ月の中間フォローアップでは、1年の全生存率が95%、2年の全生存率が84%であった。

(18) 患者登録があと1年延長される。総患者数は70名以上になる見込みである。更なるフォローアップ作業が、長期での効果と晩発毒性を確認する為に必要である。

セッション8: 将来計画と他の活動

(19) 現在のプロトコールについて、次の事項が確認された。

  • CERVIX-IIIのフォローアップは2年以上継続すること。
  • CERVIX-IVは修正された上で、継続すること。
  • NPC-Iは、少なくとも合計患者数を120名にする為、更に1年登録を継続すること。
  • NPC-IIは、患者登録数を70名以上にする為、あと1年登録を継続すること。

(20) 次のプロトコールの可能性が討議された。子宮頚がんに対する方策の一つとして、化学放射線併用療法+補助的な化学療法(CRT + adjuvant chemotherapy)が提案された。拡大照射野を含んだ新しい試みは現在実施しているCERVIX-IV の結果を待つ必要がある。上咽頭がんに関しては、補助的な化学療法を含んだものと含まないものが、それぞれ提案された。更なる議論は、次回ワークショップで行われる。

(21) 大野達也委員が、NPC-Iに関する論文の第一号著者に任命された。論文が高品質である事の重要性が、強調された。

(22) 立崎英夫委員が、FNCA加盟国の医学物理士の状況調査の進捗具合を発表した。学歴とトレーニングについて、更に記述が必要であるとの提案があった。

(23) 本会合は、政府の合意を条件として、次回のワークショップのホスト国をマレーシアとする事を提案した。仮の開催期間は、2010年1月18-22日であり、クチンが仮の開催地として提案された。

(24) 2008年度の予算は各国から1名のみ招聘する形に減少したが、本プロジェクトは重大な成果を達成してきており、継続する価値を有するものである。各国のFNCAコーディネーターを説得し、参加者を増やす為の資金を獲得する事が重要である。プロジェクト・リーダー及び(または)臨床登録実務を行っている人間が本会合に参加する事が一番に推奨される。高い品質のデータ収集を維持しながら試験に関連する結果及び記録を取る為には、同一者が会合に継続して参加する事が極めて重要である。それゆえ、子宮頸がんと上咽頭がんそれぞれに対応して、少なくとも各国から2人が本会合に参加する事が提案された。

(25) 国内及び海外で開催される会合において研究成果が発表される事の重要性が強調された。

セッション9: ワークショップ議事録の草稿

(26) セッションの最初に、ミリアム・J・C・カラガス氏が米国放射線腫瘍学会(ASTRO)の教育コースの経験について、特別講義を行った。FNCAオープンレクチャーによる教育的な貢献が言及された。ASTRO, IAEA, JICA等が開催するトレーニングに参加する手段が、議論された。

(27) 記録者により発表された議事録の草稿が議論され、修正され、採択された。

閉会式

(28) 参加者は地元の開催委員会に感謝の意を表明した。特にナナ・スプリアナ氏とダヤ・エラワチ氏のワークショップにおける優れた運営手腕と手厚いもてなしと、辻井博彦主査のダイナミックなリーダーシップ、そして原子力安全研究協会(NSRA)に対して、感謝の意を表明した。参加者は、本プロジェクトに対する日本の文部科学省による継続的な支援に、特別な感謝を表明した。閉会挨拶は、日本の辻井博彦主査が行い、主査は主催機関と参加者への感謝を述べると共に、本プロジェクトの未来に対する期待を表明した。インドネシア原子力庁(BATAN)の研究成果利用・原子力科学技術広報担当次官であるタスワンダ・タリョ氏が、公式にワークショップを閉会した。

添付資料リスト

添付1: プログラム
添付2: 参加者リスト


FNCA2008年放射線治療ワークショップ
プログラム

2009年1月28−31日
インドネシア、スラバヤ

開催機関 : インドネシア原子力庁(BATAN)及び日本文部科学省
実施機関 : (財)原子力安全研究協会(NSRA)
日程 : 2009年1月28日-31日
開催場所 : インドネシア、スラバヤ、於ブミ・スラバヤ・ホテル

1月27日火曜日

スラバヤ着、ホテルに移動

1日目 1月28日水曜日

8:30-9:00 参加登録
9:00-10:00 開会式
座長: Nana Supriana 氏(インドネシア)

歓迎挨拶: インドネシア原子力庁(BATAN)長官Hudi Hastowo氏
挨拶: 辻井博彦氏(日本)プロジェクト・リーダー
特別講演: 「インドネシアにおける放射線治療の現状」
Nana Supriana氏(インドネシア)

議事の採択
集合写真
10:00-10:15 休憩
10:15-12:00 セッション1: 局所進行子宮頸がんに対する化学放射線療法の第II相研究(CERVIX-III)
共同議長: 中野隆史氏(日本)
Kulllathorn Thephamongkhol氏(タイ)
1) 各国のフォローアップ(追跡調査)データ報告
    中国
インドネシア
日本
韓国
マレーシア
フィリピン
タイ
ベトナム
(バングラデシュ)
2)   フォローアップ・データのまとめ
      加藤真吾氏(日本)
3)   議論
12:00-13:00 昼食
13:00-16:00 セッション2: 局所進行子宮頸がんに対する拡大照射野による化学放射線療法の第II相研究(CERVIX-IV)
共同議長: 中野隆史氏(日本)
Rey H. de los Reyes氏(フィリピン)
1) 序論: 拡大照射野による化学放射線療法の報告データの発表
    大野達也氏(日本)
2) 各国の臨床データの発表
    中国
インドネシア
日本
韓国
マレーシア
フィリピン
タイ
ベトナム
(バングラデシュ)
3)   臨床データのまとめ
      加藤真吾氏(日本)
4)   議論
16:00-16:20 休憩
16:20-18:00 セッション3: 放射線量測定における品質保証/品質管理(QA/QC)
共同議長: Tang Tieng Swee氏(マレーシア)
Cao Jianping氏(中国)
1) 外照射のQA/QC、 現地調査の報告
    水野秀之氏(日本)
2)   今後の調査の予定
      水野秀之氏(日本)
3)   議論

2日目 1月29日木曜日

9:00-10:00 セッション 4: スラバヤ、ソエトモ総合病院放射線治療部施設訪問
現地説明: 放射線治療部長
10:00-10:20 休憩
10:20-12:20 セッション5: オープン・セミナー
共同議長: Nana Supriana氏(インドネシア)
Dyah Erawati氏(インドネシア)
開会挨拶  
  辻井博彦氏(日本) プロジェクト・リーダー
歓迎の辞  
  ソエトモ総合病院 院長
Slamet Riyadi Yuwono氏(インドネシア)
講演
1) 「ソエトモ総合病院における放射線治療概説」
    ソエトモ総合病院放射線治療部 主任
Bambang Widjanarko氏(インドネシア)
2)   「前立腺がんにおけるIMRT(強度変調放射線治療)の役割」
      Miriam J. C. Calaguas氏(フィリピン)
3)   「子宮がんにおける化学放射線療法」
      加藤真吾氏(日本)
4)   「サラワクにおける上咽頭がん早期発見プログラム」
      C. R. Beena Devi氏(マレーシア)
5)   「マルチリーフコリメーター(MLC)を用いたコバルト治療における物理QA/QC:ソエトモ総合病院放射線治療部の経験」
      ソエトモ総合病院放射線治療部物理士チーム
Bambang Haris氏(インドネシア)
閉会の辞  
  Dyah Erawati氏 (インドネシア)
12:30-14:00 昼食
14:00-17:30 施設訪問

3日目 1月30日金曜日

9:00-12:00 セッション6: 上咽頭がんに対する化学放射線療法の第II相研究(TxN2-3)(NPC-I)
共同議長: 井上武宏氏(日本)
Beena Devi氏(マレーシア)
1) 序論: 局所進行型上咽頭がん治療の現状
    井上武宏氏(日本)
2) 各国の臨床データの発表
    中国
インドネシア
日本
韓国
マレーシア
フィリピン
タイ
ベトナム
(バングラデシュ)
3)   臨床データのまとめ
      大野達也氏(日本)
4)   議論
10:30-10:50 休憩
10:50-12:00
5)   治療結果についての評価
      大野達也氏(日本)
6)   議論
12:00-13:00 昼食
13:00-16:00 セッション7: 上咽頭がんに対する化学放射線療法の第II相研究(T3-4N0-3)(NPC-II)
共同議長: Dang Huy Quoc Thinh氏(ベトナム)
Miriam J C Calaguas氏(フィリピン)
1) 各国の臨床データの発表
    中国
インドネシア
日本
韓国
マレーシア
フィリピン
タイ
ベトナム
(バングラデシュ)
2)   臨床データのまとめ
      大野達也氏(日本)
3)   議論
14:30-14:50 休憩
14:50-16:00
4)   治療結果についての評価
      大野達也氏(日本)
5)   議論

4日目 1月31日土曜日

9:00-10:00 セッション8: 将来計画と他の活動
共同議長: 辻井博彦氏(日本)
立崎英夫氏(日本)
1) 将来計画
2)   次回ワークショップ開催予定
3)   他の活動について
10:00-10:20 休憩
10:20-12:00 セッション9: 議事録草稿
共同議長: 立崎英夫氏(日本)
Miriam J C Calaguas氏(フィリピン)
1) 議論
2)   議事録採択
12:00- 閉会式
閉会の辞
辻井博彦氏(日本)

挨拶
インドネシア原子力庁(BATAN)次官
(研究成果利用・原子力科学技術広報担当)
Taswanda Taryo氏(インドネシア)
12:30-13:30 昼食


FNCA2008年放射線治療ワークショップ
参加者リスト

2009年1月28−31日
インドネシア、スラバヤ


国名 氏名

役職・組織名

バングラデシュ DR. PARVIN AKHTER BANU

Senior radiation oncologist, the cancer Unit,
Delta Hospitals Limited

中国 Prof. Cao Jianping

Professor, Director of the Radiation Medicine and Public Health School
School of Radiation Medicine and Public Health, Soochow University

インドネシア Dr. Nana Supriana

Medical Staff
Cipto Mangunkusumo Hospital

Dr. Dyah Erawati

Medical Staff, Divisin of Radiotherapy
Dr. Soetomo General Hospital

日本 辻井 博彦

放射線医学総合研究所理事

井上 武宏

大阪大学大学院医学系研究科放射線治療学教授

中野 隆史

群馬大学大学院医学系研究科
病態腫瘍制御学講座腫瘍放射線学教授

加藤 真吾

放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院臨床検査室室長

立崎 英夫

放射線医学総合研究所
緊急被ばく医療研究センター被ばく医療部障害診断室室長

大野 達也

群馬大学重粒子線医学研究センター
准教授

水野 秀之

放射線医学総合研究所重粒子医科学センター放射線治療品質管理室研究員(医学物理士)

加藤 毅彦

原子力安全研究協会調査役

マレーシア Dr. Tang Tieng Swee

Senior Medical Physicist, Department of Radiotherapy & Oncology
Sarawak General Hospital, Ministry of Health, Malaysia

Dr. C.R. Beena Devi

Head and Senior Consultant Clinical Oncologist, Department of Radiotherapy & Oncology
Sarawak General Hospital, Ministry of Health, Malaysia

フィリピン Dr. Miriam Joy C. Calaguas

Chairperson, Department of Radiation Oncology St. Luke's Medical Center

Dr. Rey H. De los Reyes Chairman, Dept. of Obstetrics and Gynecology
FEU-NRMF: Associate Professor and Senior Consultant
Dr. Jose R. Reyes Memorial Medical Center (JRRMMC) and
Far Eastern University-Dr. Nicanor Reyes Medical Foundation (FEU-NRMF)
タイ Dr. Kulllathorn Thephamongkhol

Lecturer
Siriraj Hospital, Mahidol University

ベトナム Dr. DANG Huy Quoc Thinh

Vice Director
Ho Chi Minh city Oncology Hospital




Forum for Nuclear Cooperation in Asia