2013年度 FNCA 放射線治療プロジェクトワークショップ 議事録
2013年11月19日〜11月22日
韓国 ソウル
(1) アジア原子力協力フォーラム(FNCA)第14回FNCAコーディネーター会合の合意に従って、2013年度 FNCA放射線治療ワークショップが2013年11月19から22日にかけて韓国のソウルで開催された。会合は韓国原子力医学院(KIRAMS)および日本文部科学省(MEXT)によって共催された。FNCAの11加盟国、すなわち、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナムから、また国際原子力機関(IAEA)からのオブザーバーとして原子力科学技術に関する研究、開発および訓練のための地域協力協定(RCA)の2加盟国であるミャンマー、パキスタンが同ワークショップに参加した。
開会式
(2) KIRAMS放射線治療科主任のMi-Sook KIM氏が本セッションの司会を行った。
KIRAMS理事長のChul-Koo CHO氏が本ワークショップを公式に開催した。同氏は、過去10年にわたるFNCA活動について概要を述べ、また、FNCAプロジェクトに対する韓国の協力を強調した。次に、未来創造科学部(MSIP)宇宙および原子力協力部門長官兼上級副長官のTai-Surp JOE氏が祝辞を述べた。その後、FNCAのプロジェクトリーダーであり、放射線医学総合研究所(NIRS)前理事の辻井博彦氏が開会の辞を述べた。
(3) ソウル国立大学病院放射線腫瘍科教授のEui Kyu CHIE氏が「多施設共同試験グループによる臨床試験:韓国放射線治療グループ(KROG)、韓国の放射線腫瘍医の取り組み」に関して特別講演を行った。同氏は、臨床研究の一般概念と重要性について、またKROGの活動について述べた。
(4) 個々の参加者が自己紹介を行った。
(5) アジェンダが採択され、セッション議長と書記係が選出された(プログラム参照)。
セッション1:局所進行子宮頸がんに対する拡大照射野を用いた放射線治療と同時化学療法の第II相試験(CERVIX-IV)
(6) NIRS重粒子医科学センター病院医師の若月優氏がCERVIX-IVのプロトコールを紹介し、追跡調査データの概要についても報告した。本プロトコールには87例が登録されており、本ワークショップ開催時点でのフォローアップ率は99%(86/87例)であった。
局所進行子宮頸がんに対する拡大照射野を用いた放射線治療と同時化学療法の第II相試験(CERVIX-IV)の臨床データが各参加国の代表者により発表され、以下の患者数が報告された。バングラデシュ(24名)、中国(7名)、インドネシア(6名)、日本(19名)、韓国(7名)、マレーシア(5名)、フィリピン(4名)、タイ(4名)、ベトナム(8名)。
若月氏が臨床データの概要を報告した。本プロトコール登録患者87名のうち、83名が評価可能であった。治療成績よりCERVIX-IIIとCERVIX-IV の毒性は同等であり、CERVIX-IVの治療プロトコールは有用と考えられた。2年局所制御率は95.5%、5年局所制御率は89.3%である。2年全生存率は89.6%、5年全生存率は71.6%であり、CERVIX-IIIより良好であった。
(7) その後、CERVIX-IVの臨床データに関する自由討議が行われた。CERVIX-IVに関しては、さらなるデータを収集して試験を完了し、将来の発表に備える必要がある。
セッション2:子宮頸がんに対する新プロトコール (CERVIX-V)
(8) 前回ワークショップ時の討議と合意を確認後、2つの新プロトコールが紹介され、討議された。
(9) 最初に、埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科教授の加藤真吾氏が「3D画像誘導小線源治療(3D-IGBT)」を紹介、レビューした。次に、若月優氏が予備試験結果を報告した。同氏は本報告において、子宮頸がんのモデル症例3例と、腫瘍サイズや子宮傍組織浸潤レベルが異なる各症例に3D-IGBTを用いた治療レジメンも提案した。
(10) 若月優氏は、もう一つのプロトコールである「局所進行子宮頸部腺がんに対するCCRTの第II相試験」についても発表した。この組織型の罹患率増加に伴い、同氏は上記に関する前向き研究に向けたデータ収集を提案した。
(11) 次いで、2つの新プロトコールに関する自由討議が行われた。
3D小線源治療プロトコールに関しては、技術的実現性(インフラストラクチャ)と登録可能性(スタッフや機器、時間などのリソース)の両方が討議された。データセンターがシミュレーションした3症例の内容を参加者に送付する予定である。
2つめのプロトコールである子宮頸部腺がんに関しては、60症例が必要であるため、過去2年間の腺がんまたは腺扁平上皮がんの症例数をデータセンターに報告するよう、全参加者が求められた。全プロトコールは若月氏が来年発表する予定である。まずは、データセンターがレトロスペクティブ研究用のフォームを送付する予定である。
セッション3:上咽頭がん (T3-4、N0-1) に対する放射線化学療法に対する第II相試験 (NPC-II)
(12) 群馬大学重粒子線医学研究センター教授の大野達也氏がNPC-IIのプロトコールを紹介した。NPC(T3-4、N0-1)に対する放射線化学療法に対する第II相試験(NPC-II)の臨床データが参加各国の代表者により発表され、以下の患者数が報告された。バングラデシュ(0名)、中国(0名)、インドネシア(13名)、日本(0名)、カザフスタン(0名)、韓国(0名)、マレーシア(6名)、モンゴル(0名)、フィリピン(0名)、タイ(1名)、ベトナム(50名)。大野達也氏が70例の臨床データの概要を発表した。
(13) その後、上咽頭がん(T3-4、N0-1)(NPC-II)の臨床データに関する自由討議が行われた。NPC-IIの新規患者登録が過去3年にわたって少ないことから、主要討議は試験の終了に関してであった。参加者は新規症例募集が難しいことを説明し、大野氏は70症例のデータがあれば国際誌に投稿できると述べ、参加者はNPC-II試験を終えることに合意した。
セッション4:外部照射治療の品質保証/品質管理 (QA/QC)
(14) 11ヵ国16設備の44ビーム(4-18 MV)で行われたガラス線量計を用いた相互比較測定の概要に関する報告が、NIRS重粒子医科学センター物理工学部重粒子設備室長の福田茂一氏より発表された。今年度は、カザフスタンのカザフ腫瘍学および放射線学研究所で測定が行われた。今後は、参加国の主催施設からさらに監査を行うことになる。
(15)KIRAMS放射線腫瘍科、放射線治療研究所及び韓国医用重粒子加速器プロジェクトの医学物理士及び上級研究員であるSang Hyoun Choi氏が、外照射治療のQA/QCと韓国の現状に関して講演した。
セッション5:上咽頭がんに対する同時化学放射線療法 (CCRT) の第II相試験(NPC-III)
(16) 大野達也氏がプロトコールNPC-IIIを紹介した。上咽頭がんに対するCCRTの第II相試験(NPC-III)の臨床データが参加各国の代表によって発表され、以下の患者数が報告された。バングラデシュ(1名)、中国(5名)、インドネシア(7名)、日本(0名)、カザフスタン(0名)、韓国(0名)、マレーシア(9名)、モンゴル(0名)、フィリピン(7名)、タイ(0名)、ベトナム(20名)。大野氏がNPC-III試験結果に関する臨床データの概要と評価を発表した。NPC-IIIの47例を解析した。NPC-IIIの毒性はNPC-Iに比べ忍容性が高かった。NPC-III の2年および3年局所制御率はNPC-Iより低かった。2年および3年無増悪生存率(PFS)および全生存率(OS)は、NPC-IもNPC-IIIも同様であった。
(17) 次いで、NPC-IIIに対するCCRTの第II相試験の臨床データに関する自由討議が行われた。治療中断による局所制御の問題が討議された。2試験間の毒性を評価することも提案された。さらに大野氏は、強度変調放射線治療(IMRT)実施施設ではNPC-IIIの患者にもIMRTを行うことを提案した。最後に、本試験で予定される総症例数は120例とされた。
セッション6:乳がんに対する寡分割放射線療法の第II相試験 (BREAST-I)
(18) NIRS重粒子医学センター病院治療課第三治療室室長の唐澤久美子氏が、前回ワークショップで作成された乳がんに対する寡分割放射線療法の第II相試験であるBREAST-Iプロトコールを紹介、レビューした。登録用紙を改訂し、近日中に全参加者にEメールで配布する予定とした。BREAST-Iの臨床データが参加各国の代表によって発表され、以下の患者数が報告された。バングラデシュ(23名)、中国(2名)、インドネシア(3名)、日本(19名)、カザフスタン(0名)、韓国(0名)、マレーシア(0名)、モンゴル(1名)、フィリピン(0名)、タイ(1名)、ベトナム(0名)。総症例数は49例、乳房温存療法(BCT)27例、乳房切除後放射線療法(PMRT)22例であった。腋窩および鎖骨上窩への放射線療法の適応や、BCTとPMRTのようにプロトコールを2つに分けて作成することの可能性についても討議された。
唐澤氏が臨床データの概要を発表した。PMRTでは鎖骨上窩への放射線療法が含まれているが、BCTでは含まれていない。
(19) NIRS重粒子医科学センター物理工学部重粒子設備室長の福田茂一氏が、本プロコールの治療過程における線量測定について報告した。ガウンやタオルで治療域を覆うことで皮膚線量が増加することが報告された。
(20) 唐澤氏が49例の臨床データの概要を発表した。
(21) 次いで、乳がんに対する寡分割放射線療法の第II相試験の臨床データに関する自由討議が行われた。
セッション7:参加国からのカントリーレポート、FNCAとIAEA/RCAの協力
(22) ミャンマーのKyawt Kyawt Naing氏およびパキスタンのMasooma Riaz氏により、放射線療法施設および癌統計の現状に関するカントリーレポートが発表された。
(23) カントリーレポートに続き、各加盟国から新たな話題が報告された。
中国、インドネシア、日本、カザフスタン、モンゴル、およびベトナムは、各国でまもなく完成予定の最新施設の最新状況を報告した。
FNCA活動に関連する取り組みには次のものがある:
1. 辻井博彦氏著『Carbon Ion Radiotherapy(炭素イオンを用いた重粒子線治療)』が近日発刊される。
2. 2013年8月に韓国で開催された第29回国際女医会議において、唐澤久美子氏により放射線治療におけるFNCA活動が報告された。
3. 2013年9月25日、米国アトランタで開催された第55回米国放射線腫瘍学会(ASTRO)において、M. Calaguas氏によりFNCAの子宮頸がんデータが発表された。
提案された新たな話題は、次のものである:
Kullathorn Thephamongkhol氏が、FNCAが現在取り組んでいる様々ながんの臨床転帰予測に数学モデルを行いたい旨を提案した。辻井氏は本提案の報告を提言し、全参加者が合意した。
今後の研修コースは次のとおりである:
1. 高線量率 画像誘導小線源治療(HDR IGBT)研修コース(2014年2月20‐21日、群馬県)
2. 転移癌の集学的展望(2014年3月7‐8日、マニラ)
セッション8:韓国原子力医学院 (KIRAMS) のテクニカルビジット
(24) 参加者はKIRAMSのテクニカルビジットを行った。放射性医薬品製造センター主幹研究員のKwon-Soo Chun氏が参加者を迎え、病院の沿革および業績を紹介した。その後、院内のサイバーナイフセンターなどの放射線療法設備の見学を行った。
セッション9:韓国国立がんセンターのテクニカルビジット
(25) 参加者は韓国国立がんセンターのテクニカルビジットを行った。陽子線治療センターを訪問した。
セッション10:将来計画および過去3年間の活動評価
(26) 次回ワークショップ、次回ワークショップのスケジュール、およびその他の活動に関して、以下の事項について協議の上、合意された。
1. |
同一参加者がFNCA年次会合に出席して臨床データを発表することに、満場一致で合意した。これにより、プロトコール研究の継続性および成功を保証する。 |
2. |
唐澤氏は、FNCA活動に関して地域の放射線腫瘍学会と協力することを提言した。 |
3. |
次回ワークショップを、2014年11月最終週(仮)にベトナムで開催することに同意した。 |
4. |
2014年以降のFNCA会合は、モンゴルやカザフスタンのような他の国で開催する可能性もあることが、正式な承認を得て、本会合にて満場一致で合意された。 |
セッション11:ワークショップの議事録草稿
(27) 書記によって示された議事録の草稿について、協議の上、修正が行われた。議事録はワークショップ参加者によって満場一致で採択された。
閉会
(28) 唐澤久美子氏が閉会の辞を述べ、その中で韓国および参加者の貢献に対する感謝と本プロジェクトに対する将来の期待を表明し、公式にワークショップを閉会した。
セッション12:一般公開講座
(29) ワークショップの一環として、KIRAMSで一般公開講座が開催された。開会式では、KIRAMS放射線医学研究所所長のChang Woon Choi氏が歓迎の挨拶を述べた。KIRAMS放射線治療科主任のMi-Sook Kim氏が本セッションの司会を行った。
(30) 最初の講演として、埼玉医科大学教授の加藤真吾氏がFNCA放射線治療プロジェクトの紹介と取り組みについて講演を行った。
(31) 韓国における放射線治療の現状をテーマに、KIRAMSのMi-Sook KIM氏が講演を行った。
(32) ホーチミン市立がん病院のDang Huy Quoc Thinh氏が、頭頸部扁平上皮がんに対する同時化学放射線療法について講演を行った。
(33) フィリピンの聖ルークス医療センターのMiriam Joy Calaguas氏が、IMRTでの経験について講演を行った。
(34) NIRSの唐澤久美子氏が乳がんの重粒子線治療について講演を行った。
(35) KIRAMSのWon Gyun Jung氏がKIRAMSの重粒子線治療の計画をテーマに講演を行った。
(36) NIRSの唐澤久美子氏の挨拶をもって公開講座は閉会した。
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