セッション1、2:カントリーレポート
議長:ベトナム、タイ
FNCA参加9か国(バングラデシュ、インドネシア、日本、カザフスタン、マレーシア、モンゴル、韓国、タイ、ベトナム)より、前回のワークショップ以降の核セキュリティ・保障措置の実施、核セキュリティ文化およびキャパシティ・ビルディングへの取り組みについて、開発および向上を含めて、カントリーレポートの発表が行われた。
すべての参加国が保障措置と核セキュリティの強化に向けて国際機関または地域的機関、および他の国々との緊密な協力について発表した。ほとんどの参加国が国際原子力機関(IAEA)や他国および各種組織の協力を得て、トレーニングコース、セミナー、ワークショップを開催し、核セキュリティ・保障措置分野の人材養成を率先して行った。
セッション3:円卓討議(核鑑識)
議長:日本
発表の要旨
- 日本(日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN/JAEA)富川裕文氏)
まず、国の核セキュリティ体制における核鑑識の重要性が示され、原子力技術先進国の1つである日本は核セキュリティサミットにおいて正確かつ精密な核鑑識能力を確立することによって国際的な核セキュリティに貢献すると約束したことが述べられた。また、不純物測定、同位体比測定、粒子形状分析、ウラン年代測定などの核鑑識分析技術の開発や核鑑識ライブラリの開発に関するJAEAの経験が報告された。JAEAのプロトタイプ核鑑識ライブラリは燃料製造プロセス・燃料サイクルプロセスに関する情報を伴った核燃料サイクルデータベースと、サンプル分析の情報を伴ったサンプル・分析データベースで構成されている。
2016年の第4回核セキュリティサミットでは核鑑識能力を促進すべきであることが再確認された。アジア地域における核セキュリティ能力を強化するために、この地域で核鑑識のネットワークを構築することが重要である。
- マレーシア(原子力許認可委員会(AELB)ズル・ヘルミ・ビン・ガザリ氏)
マレーシアにおける核鑑識活動の概要が発表された。核鑑識はマレーシアにとって比較的新しいテーマであるため、国際的な支援を得ながら核鑑識の能力育成に着手したところである。マレーシアはIAEAとの協力で核鑑識研究所を設立することを計画しており、2016年に核鑑識に関するマレーシアの能力を評価するIAEA専門家調査団の派遣を要請した。IAEAの調査団から提案される一連の検査技術・手法の概要が示され、マレーシアが利用できる分析手段を提示された。マレーシアが核鑑識の能力を築くためには国際的な支援が重要である。
- タイ(タイ原子力庁(OAP)ブンチャウィー・スリモク氏)
タイにおける核鑑識の活動が発表された。OAPは国内外のパートナーの支援を得て、国内ステークホルダーの核セキュリティ能力の強化に取り組んでいる。タイでは現場の担当者のために多様なトレーニングコースが設けられている。また、OAPはIAEAと欧州委員会の支援により、2014年に核鑑識ライブラリを開発した。こうした活動を通してOAPはステークホルダーの強力な国内ネットワークを構築し、核鑑識に関する啓発を行い、この問題に関する国のキャパシティ・ビルディングに貢献している。
討議の要旨
富川氏より、討議のポイントとして、なぜFNCAの枠組みの中で核鑑識に関する協力を行うべきか、具体的にどのようなトピックについて協力すべきなのかが提案された。その上で、富川氏より、アンケート調査を用いて各国の現状を把握し、加盟国間で情報を共有すること、この情報に基づいて行動計画を策定することなどの長期的視点の協力案が挙げられた。参加者からインフラと機器の整備という緊急の必要性、分析のために核物質を輸送することの難しさ、教育訓練の不足、国の核鑑識ライブラリの作成の難しさなど、核鑑識能力を構築・強化する上での課題が指摘され、こうした課題を克服するために参加国間で経験と良好事例を共有し合うことが合意された。また、すべての国が独自の核鑑識研究所を設置する必要はないが、少なくともFNCAはアジア地域における核鑑識の協力の仕組みについて議論すべきであるとの意見もあった。また、ある参加者からは、アジア地域では核物質の使用よりも放射性物質の使用の方が多く、FNCAでの協力について議論を開始する前であっても核鑑識に関する意識を向上させることが重要であることが指摘され、この問題についてワークショップまたはセミナーを開くことが提案された。
セッション4:核セキュリティに係る放射線源の管理
議長:バングラデシュ
発表の要旨
- IAEA(IAEAレネ・シュリー氏)
核セキュリティに関する放射線源の管理に向けたIAEAの活動が簡単に紹介された。1993〜2016年の間に確認された不法取引の事例数が報告され、放射性物質と関連施設のセキュリティの概念的な進展について説明された。また、核セキュリティに関連した指針書の作成について詳細に説明された。IAEAはこれまでに放射線源と利用に関するeラーニング・モジュールを開発している。IAEAは、放射線源のセキュリティとセキュリティ管理に関するトレーニングコースやワークショップの開催を継続している。また、IAEAは加盟国が核セキュリティを強化し、使用中の線源、保管、および使用済線源に重点を置いた物理的防護を向上させるのを支援するため、ピアレビュー・サービスである国際核物質防護諮問サービス(IPPAS)を提供している。発表の最後に、核セキュリティに関連した今後のIAEAの会合リストが提示された。
- カザフスタン(カザフスタン国立原子力センターアレクサンドル・オシンチェフ氏)
セミパラチンスク核実験場の歴史および現状について発表され、大量破壊兵器の実験結果の除去が完了していることが報告された。
- モンゴル(モンゴル原子力委員会ゲレルマー・ゴンボスレン氏)
モンゴルにおける核セキュリティに関連した放射線源の管理について発表された。モンゴルでは、法規案の作成に責任を負う原子力委員会(NEC)と査察の実施に責任を負う国家専門検査庁(GASI)が共同で放射線源のセキュリティと防護に取り組んでいる。また、モンゴルは空港や国境各所に放射線ポータルモニターを設置していること、放射線施設の物理的防護システム向上のため、米国エネルギー省との協力を進めている。
セッション5:保障措置の意識向上と原子力施設運転者のキャパシティ・ビルディング
議長:マレーシア
発表の要旨
- バングラデシュ(バングラデシュ原子力委員会(BAEC)アビッド・イムティアズ氏)
バングラデシュにおける保障措置活動に関連した規則について説明された。現在、バングラデシュには3 MW TRIGA MK-IIの研究炉1基とRI製造施設がある。研究炉の炉心に使われている19.7%低濃縮ウラン燃料要素や遠隔放射線治療装置などの遮蔽としての劣化ウラン(DU)などに関し、バングラデシュで行われている保障措置活動について報告された。核物質計量管理および現在の保障措置活動は全面的にIAEAの要件に従っており、毎年12月に、IAEAに保障措置の報告を送っている。
また、BAECはこれまで保障措置に限定した事業者向けの意識向上プログラムやキャパシティ・ビルディングのプログラムを持っておらず、意識向上プログラムのほとんどは原子力安全と核セキュリティに関するものであったが、今後は保障措置分野とも関連し合うことになる。現在、初の原子力発電所の建設が進められていることから、事業者と規制機関の両方のキャパシティ・ビルディングを強化する必要性が認識されている。
- インドネシア(インドネシア原子力庁(BATAN)アグス・スナルト氏)
インドネシアにおけるこれまでの保障措置の経緯が説明された。インドネシアでは、根拠となる法に定められているとおり、従うべき多数の要件があり、インドネシアにとって保障措置の実施は不可欠である。インドネシアはスルポン、バンドン、およびジョグジャカルタに3つの研究炉を持っている。それぞれの主要測定点(KMP)に1人の保障措置担当官があり、その担当官がKMPについて全面的に責任を負うこと、また、施設の運転にあたって常に意識しておかなければならない側面について説明された。
インドネシアでは保障措置分野における事業者と規制機関の能力を高めるため、保障措置に関する意識向上を図る多くのトレーニングコースが実施されている。事業者向けの保障措置キャパシティ・ビルディングは非常に効率的に行われている。2015年と2016年に事業者と監督機関に対して多くのプログラムが実施されている。また、2016年にオンライン報告システムの使用が開始された。毎年、「保障措置実施チームワーク」(見習いの保障措置担当官を含む)を展開しているのに加え、2016年には実験炉(ペブルベッド型原子炉)の保障措置システムを開発している。
保障措置に関する意識向上によって原子力施設の事業者と保障措置担当官の間のよりよいコミュニケーションと協力が確立され、一方キャパシティ・ビルディングにより原子力施設の事業者と保障措置担当官の保障措置の知識と技能を向上させることができ、どちらも保障措置をよりよく実施するための重要な側面である。
- ベトナム(ベトナム放射線・原子力安全庁(VARANS)グエン・ヌ・ホアイ・ヴィ氏)
ベトナムにおける保障措置の取り組みと保障措置の規制の構造について発表された。IAEA保障措置協定の追加議定書(AP)に関する全国セミナー、原子力の平和利用と核不拡散に関する専門家会合、APアウトリーチ活動のための資料作成、ハノイとホーチミン市の大学へのアウトリーチ活動など、多くの保障措置認識向上プログラムを実施している。すべてのプログラムは主に米国エネルギー省、IAEA、JAEA、オーストラリア、日本などの国際機関・国と協力して行われている。
事業者のキャパシティ・ビルディングに関しては、ベトナムはすでに事業者の計量管理報告、およびAP申告に関するワークショップ/トレーニングコースを実施しているベトナムはキャパシティビルディング・プログラムを強化するために多くのプログラムを準備している。事業者のキャパシティ・ビルディングは、自分たちが何に従わなければならないのかを事業者に認識させ、事業者が完全かつ正確な情報を提供するのを後押しするために非常に重要である。
セッション:カントリーレポートサマリー
BATANのバンバン・トリ・プルノモ氏よりセッション1、2のカントリーレポートサマリーがまとめられた。このカントリーレポートサマリーは、本報告に添付され、また、FNCAウェブサイトに掲載される。
セッション6:円卓討議(核セキュリティ・保障措置プロジェクトの今後の活動と目標)
議長:日本
はじめにFNCA核セキュリティ・保障措置プロジェクトの日本プロジェクトリーダーであるJAEAの千崎雅生氏より、参加各国への本プロジェクトの今後の活動計画に関するアンケート結果が示された。次いで千崎氏より、参加者に対してアンケートの各トピックの回答について説明が求められた。千崎氏により今後3年間の活動計画案が作成され、2016年11月に参加各国に配布される予定である。
セッション7:閉会セッション
ISCN/JAEAの平井瑞紀氏とBATANのプルノモ氏とにより本ワークショップの会議報告が提示された。本報告は後日、確認のため参加者に配布される。
添付資料
- 会合プログラム
- 参加者リスト
- カントリーレポートサマリー
バングラデシュ
Dr Abid Imtiaz
Principal Scientific Officer, Nuclear Safety, Security and Safeguards Division,
Bangladesh Atomic Energy Commission (BAEC)
Dr Nasrin Begum
Senior Medical Officer
Institute of Nuclear Medicine and Allied Sciences, Rajshahi,
Bangladesh Atomic Energy Commission (BAEC)
インドネシア
Mr Hendig Winarno
Deputy Chairman for Nuclear Technology Utilization,
National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Mr Totti Tjiptosumirat
Head of Law, Public Relation and Cooperation Bureau,
National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Mr Agus Sunarto
Deputy Director of Nuclear Fuel Technology Center
National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Mr Khairul
Manager of Center for Security Culture and Assessment / Senior Nuclear Security Officer National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Dr Sudi Ariyanto (open seminar)
Head of Center (Director), Education and Training Center
National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Mr Jazi Eko Istiyanto (open seminar)
Chairman of Nuclear Energy Regulatory Agency (BAPETEN)
Mr Budi Rohman
Director of Nuclear Material and Installation Inspection,
Nuclear Energy Regulatory Agency (BAPETEN)
Mr Bambang Tri Purnomo
Staff of Directorate of Installation and Nuclear Material Inspection,
Nuclear Energy Regulatory Agency (BAPETEN)
Ms Desy Triana
Staff of Directorate of Installation and Nuclear Material Inspection,
Nuclear Energy Regulatory Agency (BAPETEN)
Mr Deshinta Indirani
Staff of Directorate of Installation and Nuclear Material Inspection,
Nuclear Energy Regulatory Agency (BAPETEN)
日本
Mr Tomoaki Wada
FNCA Coordinator of Japan
Mr Shoji Kasuga
International Nuclear Cooperation Division, Research and Development Bureau,
Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT)
Mr Masao Senzaki
Senior Fellow
Integrated Support Center for Nuclear Nonproliferation and Nuclear Security (ISCN),
Japan Atomic Energy Agency (JAEA)
Mr Hirofumi Tomikawa
Integrated Support Center for Nuclear Nonproliferation and Nuclear Security (ISCN),
Japan Atomic Energy Agency (JAEA)
Ms Naoko Noro
Integrated Support Center for Nuclear Nonproliferation and Nuclear Safety (ISCN),
Japan Atomic Energy Agency (JAEA)
Ms Mizuki Hirai
Integrated Support Center for Nuclear Nonproliferation and Nuclear Safety (ISCN),
Japan Atomic Energy Agency (JAEA)
Ms Atsuko Takano
International Affairs and Research Department,
Nuclear Safety Research Association (NSRA)
カザフスタン
Mr Alexandr Ossintsev
Head of Management Group, Department of Special Projects,
National Nuclear Center of the Republic of Kazakhstan (NNC)
韓国
Ms Hyewon Shim
Principal Researcher
Strategic Planning Division
Korea Institute of Nuclear Nonproliferation and Control (KINAC)
マレーシア
Mr Zul Helmi Bin Ghazali
Senior Assistant Director
Policy and External Affairs
Atomic Energy Licensing Board (AELB)
モンゴル
Ms Gerelmaa Gombosuren
Expert of International Contracts Implementation
Nuclear Energy Commission Government of Mongolia
タイ
Dr Boonchawee Srimok
Nuclear Engineer
Bureau of Nuclear Safety Regulation
Office of Atoms for Peace (OAP)
ベトナム
Dr Nguyen Nu Hoai Vi
Assistant to Director General
Vietnam Agency for Radiation and Nuclear Safety (VARANS)
IAEA
Mr Rene Schlee
Associate Radioactive Material Officer
Division of Nuclear Security
International Atomic Energy Agency (IAEA)