2004 FNCA バイオ肥料ワークショップ議事録(仮訳)
ベトナム・ハノイ市
2005年1月 24〜28日
第5回FNCAコーディネータ会合(2004年3月東京)での合意に基づき、2004年FNCAバイオ肥料ワークショップが以下の通り開催された。
日 程 : |
2005年1月24〜28日 |
会 場 : |
ハノイ サイゴンホテル |
主催・後援: |
ベトナム科学技術省 (MOST)、 日本文部科学省 (MEXT) |
支 援 者: |
ベトナム原子力委員会 (VAEC)・原子力科学技術研究所(INST)、 ベトナム農業科学研究所(VASI) |
事 務 局 : |
日本原子力産業会議(JAIF) |
参 加 者 : |
中国、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン各1名、タイ2名、日本4名、ベトナム9名 合計20名 |
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ベトナム原子力委員会(VAEC)Dr. Vuong Huu Tan委員長、 原子力科学技術研究所(INST) Dr. Vo Van Thuan所長、日本側は、プロジェクト・リーダー 横山 正 東京農工大助教授が開会の挨拶を行った。
セッション1
8ヶ国からカントリーレポートが発表された。中心テーマは「土壌微生物活性の改良」であり、報告には各国のバイオ肥料研究の状況、担体の放射線滅菌が含まれた。
セッション 2、4、5
ベトナムより3、タイより1、日本より3の7つの特別講演が行われた。
セッション 3
「放射線による滅菌」と「原子力施設の利用」が議論された。議論した点と合意された点は以下の通り。
<放射線滅菌>
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放射線 ( g 線と電子線 )による担体の滅菌は特にバイオ肥料の商業生産においてはまだ参加国で広く利用されてはいない。 |
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バイオ肥料の担体はピート、コンポスト、フィルターケーキ、ヤシコイアダスト等多様な物があるので、それぞれの担体に対し、効果的な滅菌線量研究を深める必要がある。バイオ肥料製品に対する貯蔵時間と同様に、梱包材のタイプ、寸法も検討する必要がある。 |
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担体の照射滅菌研究には各国内での放射線照射に関する密接な協力が必要である。 |
<原子力施設の利用>
ほとんどの国で使われている放射線照射設備は Co-60 と電子線照射装置である。すべてのFNCA国は担体や研究試料の照射に利用できる放射線照射施設を持っている。蒸気や熱による滅菌に加え、数カ国は担体の放射線滅菌の経験がある。
放射線照射のコストと不完全滅菌の問題が放射線照射利用の拡大を妨げている。
コーディネーターオフィスからの照射施設とコ−ディネーターの橋渡し支援は各国における照射利用を促進するであろう。バイオ肥料材の照射需要増大はコストを低減させる。
セッション5
「バイオ肥料の農家普及について」と「圃場実証試験」が議論された。議論点と合意点は以下の通り。
<バイオ肥料の農家普及>
バイオ肥料の農家普及は、圃場実証試験や広告、簡単なマニュアルの配布などを通じた技術移転によっていくつかの FNCA国で進められている。ほとんどの国における農家へ普及したバイオ肥料は根粒菌、 菌根菌、PGPRである。日本ではあずきに根粒菌が使われている一方、他の国では多くの種類の豆科作物に使われている。多くの国では接種原が不足しており、また菌根菌のような接種原は高価であるため、普及が滞っている。政府と民間会社の適切な品質管理下での販売が促進されれば、バイオ肥料の普及はもっと進むであろう。未来の食糧保障需要と環境危機に対し、バイオ肥料は、農業でのさらなる重要な役割を果たしていくであろう。
<FNCA圃場実証試験とN-15 実験>
圃場実証試験が参加国で大規模および研究レベル規模でなされた。ほとんどの結果は、バイオ肥料は、ある種の化学肥料の代替になり得るというものであった。しかし、いくつかの参加国はマレーシアにおける PGPRの米への利用のようなある領域への利用に焦点を当てて考えている。N-15を用いるトレーサー実験が行われたが、N-15アイソトープのコストが高いため非常に限定されている。 FNCA コーディネータオフィスに、この件に対するIAEAの支援を要請したい。
<バイオ肥料マニュアル>
・マニュアル執筆の分担は以下の通り。
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編集責任 : ベトナム |
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分析方法 : 日本 |
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品質管理 : 韓国、ベトナム |
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根粒菌 : ベトナム |
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菌根菌 : マレーシア、タイ |
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根圏窒素固定菌 : 中国、フィリピン、インドネシア |
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りん溶解菌 : 韓国 |
・日本は初版として担当部分のマニュアルを提出した。他の参加国は各国でのマニュアル案の進捗を報告した。
・マニュアル完成に向けた提案やコメントが出された。すべての原稿は 2005年FNCAバイオ肥料ワークショップ前にFNCAコーディネーターオフィスに送られ、編集され、2005年ワークショップに提出される。
・FNCAコーディネーターオフィスは参加国にマニュアルのフォーマットを配布する。
・最終版を 2006年末に出版予定とする。
セッション 6
「総合討論」が行われた。 2004年トピックスのレビューは、各国のカントリーレポートでなされた。2005年のトピックスは、「圃場試験」で収量効果測定、実行可能性調査や技術移転を含む。滅菌手段のひとつとして、放射線による滅菌バイオ肥料担体を使った圃場実証試験が日本によって推奨された。
<バイオ肥料グループニュースレター>
ニュースレター第 5号は5月にマレーシア、第6号はインドネシアが9月に発行する。
<IAEA、ICRISAT およびJSPSとの協力>
FNCAは上記機関との協力を奨励する。
<次回ワークショップ>
フィリピンが主催することに決定した。フィリピンは、それを了承した。
ワークショップ第 3日目に参加者はベトナム原子力委員会 原子力科学技術研究所とハノイ照射センターを訪れ、放射線防護・監視センターとCo-60施設を見学した。
この議事録はすべてのワークショップ参加者によって議論、合意された。これは 2005年3月日本で開催される第6回コーディネータ会議で報告される予定である。
すべての海外参加者は、主催機関:原子力科学技術研究所 (INST)、ベトナム原子力委員会 (VAEC)とベトナム農業科学研究所(VASI)による運営とホスピタリティ、このワークショップを成功に導き、忘れられないものにしてくれたことに感謝した。
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