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バイオ肥料 ワークショップ

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ワークショップ

FNCA 2004 バイオ肥料 ワークショップ


アジアで期待される環境にやさしいバイオ肥料
FNCA バイオ肥料ワークショップ ベトナム ハノイで開催


2005年1月24〜28日
2004年度バイオ肥料ワークショップが、ベトナム ハノイ市で開催された。

■主   催:日本文部科学省 (MEXT)、ベトナム科学技術省(MOST)
■開催機関:ベトナム原子力委員会 (VAEC)・原子力科学技術研究所(INST)
         ベトナム農業科学研究所 (VASI)
■協力機関:日本原子力産業会議
■参 加 国:中国、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、日本、ベトナムから計 20名

バイオ肥料プロジェクトは、窒素固定(空中の窒素を植物が利用できる形態に変える)などの微生物が持つ機能を「バイオ肥料」として利用することで、アジア各国の作物収量の増加や、化学肥料の利用量を減らすことで、環境保全に貢献することを目的とした5年間のプロジェクト。今年で 3年目を迎えている。

開会では、ベトナム原子力委員会 Dr. Vuong Huu Tan委員長、原子力科学技術研究所(INST) Dr. Vo Van Thuan所長、日本側プロジェクト・リーダー横山 正 東京農工大助教授が開会の挨拶を行った。


  自国で利用しているバイオ肥料の説明するインドネシア代表

参加国からは「土壌微生物活性の改善」を中心トピックスに、各国のバイオ肥料研究の進展状況や、実証試験の進捗を報告した。

日本からは雑菌による土壌汚染防止のため、カナダ産放射線滅菌キャリア(ピート)が根粒菌バイオ肥料に用いられ、市販されていること等が紹介された。

各国からは効果的バイオ肥料には土着のバクテリアや土壌成分や化学肥料によるバイオ肥料有効菌の死滅対策が重要との報告がなされた。また、各国が実施した圃場実証では、バイオ肥料がある種の化学肥料の代替にできるという結果が得られた。

放射線キャリア滅菌については日本の原研鳴海氏より、適切な照射線量の講演があり、また、原産永崎氏より、 FNCA各国のコバルト照射施設を紹介し、施設の有効活用を提案した。照射施設は、未だ参加国で広くは利用されておらず、各種キャリアに対し、効果的な滅菌線量研究を深め、各国の密接な協力が必要で、FNCAコ−ディネーターによる各国の農業機関と放射線照射施設間の利用に関する橋渡しが求められた。

バイオ肥料の農家普及については 政府と民間会社の適切な品質管理下での販売促進が重要であることが認識された。また FNCAで、 バイオ肥料農家普及のため、マニュアルを 2006年末に出版することが合意された。 


ベトナム原子力委員会、コバルト 60照射装置でたまねぎを照射

また、 ワークショップ期間中、参加者は、 VAEC・INST等を訪れ、IAEAプロジェクト下で設置されたコバルト60照射装置などを見学した。


FNCA各国のバイオ肥料事業活動の概要 >>

2004 FNCA バイオ肥料ワークショップ議事録(仮訳)
ベトナム・ハノイ市


2005年1月 24〜28日


第5回FNCAコーディネータ会合(2004年3月東京)での合意に基づき、2004年FNCAバイオ肥料ワークショップが以下の通り開催された。

日   程 : 2005年1月24〜28日
会   場 : ハノイ サイゴンホテル
主催・後援: ベトナム科学技術省 (MOST)、
日本文部科学省 (MEXT)
支 援 者: ベトナム原子力委員会 (VAEC)・原子力科学技術研究所(INST)、
ベトナム農業科学研究所(VASI)
事 務 局 : 日本原子力産業会議(JAIF)
参 加 者 : 中国、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン各1名、タイ2名、日本4名、ベトナム9名 合計20名

 ベトナム原子力委員会(VAEC)Dr. Vuong Huu Tan委員長、 原子力科学技術研究所(INST) Dr. Vo Van Thuan所長、日本側は、プロジェクト・リーダー 横山 正 東京農工大助教授が開会の挨拶を行った。


セッション1

 8ヶ国からカントリーレポートが発表された。中心テーマは「土壌微生物活性の改良」であり、報告には各国のバイオ肥料研究の状況、担体の放射線滅菌が含まれた。


セッション 2、4、5

 ベトナムより3、タイより1、日本より3の7つの特別講演が行われた。


セッション 3

  「放射線による滅菌」と「原子力施設の利用」が議論された。議論した点と合意された点は以下の通り。

<放射線滅菌>

放射線 ( g 線と電子線 )による担体の滅菌は特にバイオ肥料の商業生産においてはまだ参加国で広く利用されてはいない。
バイオ肥料の担体はピート、コンポスト、フィルターケーキ、ヤシコイアダスト等多様な物があるので、それぞれの担体に対し、効果的な滅菌線量研究を深める必要がある。バイオ肥料製品に対する貯蔵時間と同様に、梱包材のタイプ、寸法も検討する必要がある。
担体の照射滅菌研究には各国内での放射線照射に関する密接な協力が必要である。

<原子力施設の利用>

 ほとんどの国で使われている放射線照射設備は Co-60 と電子線照射装置である。すべてのFNCA国は担体や研究試料の照射に利用できる放射線照射施設を持っている。蒸気や熱による滅菌に加え、数カ国は担体の放射線滅菌の経験がある。
 放射線照射のコストと不完全滅菌の問題が放射線照射利用の拡大を妨げている。
 コーディネーターオフィスからの照射施設とコ−ディネーターの橋渡し支援は各国における照射利用を促進するであろう。バイオ肥料材の照射需要増大はコストを低減させる。


セッション5

 「バイオ肥料の農家普及について」と「圃場実証試験」が議論された。議論点と合意点は以下の通り。

<バイオ肥料の農家普及>

 バイオ肥料の農家普及は、圃場実証試験や広告、簡単なマニュアルの配布などを通じた技術移転によっていくつかの FNCA国で進められている。ほとんどの国における農家へ普及したバイオ肥料は根粒菌、 菌根菌、PGPRである。日本ではあずきに根粒菌が使われている一方、他の国では多くの種類の豆科作物に使われている。多くの国では接種原が不足しており、また菌根菌のような接種原は高価であるため、普及が滞っている。政府と民間会社の適切な品質管理下での販売が促進されれば、バイオ肥料の普及はもっと進むであろう。未来の食糧保障需要と環境危機に対し、バイオ肥料は、農業でのさらなる重要な役割を果たしていくであろう。

<FNCA圃場実証試験とN-15 実験>

 圃場実証試験が参加国で大規模および研究レベル規模でなされた。ほとんどの結果は、バイオ肥料は、ある種の化学肥料の代替になり得るというものであった。しかし、いくつかの参加国はマレーシアにおける PGPRの米への利用のようなある領域への利用に焦点を当てて考えている。N-15を用いるトレーサー実験が行われたが、N-15アイソトープのコストが高いため非常に限定されている。 FNCA コーディネータオフィスに、この件に対するIAEAの支援を要請したい。

<バイオ肥料マニュアル>

・マニュアル執筆の分担は以下の通り。

  - 編集責任 : ベトナム
- 分析方法 : 日本
- 品質管理 : 韓国、ベトナム
- 根粒菌 : ベトナム
- 菌根菌 : マレーシア、タイ
- 根圏窒素固定菌 : 中国、フィリピン、インドネシア
- りん溶解菌 : 韓国

・日本は初版として担当部分のマニュアルを提出した。他の参加国は各国でのマニュアル案の進捗を報告した。

・マニュアル完成に向けた提案やコメントが出された。すべての原稿は 2005年FNCAバイオ肥料ワークショップ前にFNCAコーディネーターオフィスに送られ、編集され、2005年ワークショップに提出される。

・FNCAコーディネーターオフィスは参加国にマニュアルのフォーマットを配布する。

・最終版を 2006年末に出版予定とする。


セッション 6

 「総合討論」が行われた。 2004年トピックスのレビューは、各国のカントリーレポートでなされた。2005年のトピックスは、「圃場試験」で収量効果測定、実行可能性調査や技術移転を含む。滅菌手段のひとつとして、放射線による滅菌バイオ肥料担体を使った圃場実証試験が日本によって推奨された。

<バイオ肥料グループニュースレター>

 ニュースレター第 5号は5月にマレーシア、第6号はインドネシアが9月に発行する。

<IAEA、ICRISAT およびJSPSとの協力>

 FNCAは上記機関との協力を奨励する。

<次回ワークショップ>

 フィリピンが主催することに決定した。フィリピンは、それを了承した。

 ワークショップ第 3日目に参加者はベトナム原子力委員会 原子力科学技術研究所とハノイ照射センターを訪れ、放射線防護・監視センターとCo-60施設を見学した。

 この議事録はすべてのワークショップ参加者によって議論、合意された。これは 2005年3月日本で開催される第6回コーディネータ会議で報告される予定である。

  すべての海外参加者は、主催機関:原子力科学技術研究所 (INST)、ベトナム原子力委員会 (VAEC)とベトナム農業科学研究所(VASI)による運営とホスピタリティ、このワークショップを成功に導き、忘れられないものにしてくれたことに感謝した。



2004年度 FNCAバイオ肥料ワークショッププログラム


日   時: 2005年1月24日〜1月28日
場   所: ベトナム ハノイ:サイゴンホテル
主   催: ベトナム科学技術省(MOST),文部科学省(MEXT)
開催機関: ベトナム原子力委員会(VAEC),ベトナム農業科学研究所(VASI)
協   力: (社)日本原子力産業会議(JAIF)

※ 全プレゼンテーションは質疑応答10分を含む


1月24日(月)
<開会セッション>
議長:ベトナム
08:30-09:00 登録
09:00-09:10 開会・歓迎挨拶
09:10-09:20 日本側より挨拶:横山 正氏(日本プロジェクトリーダー)

<セッション1:カントリーレポート発表>
議長:韓国・マレーシア

09:30-10:10 中国カントリーレポート(CAAS, Dr. Pan Jiarong)
10:10-10:50 インドネシアカントリーレポート:土壌微生物の活動の改良(インドネシア原子力庁 Ms. Soertini Gandanegara)
10:50-11:20 休憩
11:20-12:00 日本カントリーレポート:2003/2004年度FNCA バイオ肥料プロジェクトレビュー(横山 正氏)
12:00-13:30 昼食
議長:中国・インドネシア
13:30-14:10

韓国カントリーレポート: バイオ肥料、魅力的な環境に優しい代替物−リン酸可溶バイオ肥料の観点から (NIAST, Dr. Suh Jang-Sun)

14:10-14:50 マレーシアカントリーレポート:マレーシアの農産業における植物成長促進菌及びバイオ肥料に開発と展望(マレーシア原子力庁 Dr. Khairuddin Bin Abdul Rahim)
14:50-15:30 フィリピンカントリーレポート:フィリピン・イザベラ地方におけるトウモロコシ生産のためのBio-N接種効果の評価(フィリピン原子力研究所 Mr. Richard M. Balog)
15:30-15:50 休憩
15:50-16:30 タイカントリーレポート:タイ農業におけるバイオ肥料:接種方法と土壌状態の改良(農業庁 Dr. Omsub Nopamornbodi)
16:30-17:10 ベトナムカントリーレポート(ベトナム原子力科学技術研究所 Dr. Pham Van Toan)
18:30-20:00 レセプション


1月25日(火)
<セッション2:特別講演I>
議長:フィリピン・タイ
09:00-09:40 特別講演:ベトナム
09:40-10:20 特別講演:東京農工大学 横山 正氏
10:20-10:40 休憩
10:40-11:20 (予備)
11:20-12:00 特別講演:微生物の放射線滅菌 (日本原子力研究所 鳴海 一成氏)
12:00-13:30 昼食
<セッション3:円卓討議I>
議長:日本・タイ
13:30-15:00 討議:照射による滅菌について
15:00-15:30 休憩
15:30-17:00 討議:照射施設の有効活用について
リードオフスピーチ:(財)日本原子力産業会議 永崎 隆雄氏


1月26日(水)
テクニカルビジット ( 原子力科学技術研究所付属ハノイ照射センター )


1月27日(木)
<セッション4:特別講演II>
議長:中国・韓国
09:00-09:40 特別講演:ベトナム
09:40-10:20 特別講演:ベトナム
10:20-10:40 休憩
<セッション5:円卓討議II>
議長:インドネシア・ベトナム
10:40-11:20 特別講演: 有機農法システムにおける生物学および生物有機化合肥料の利用 (Suranaree University of Technology, Dr. Nantakorn Boonkerd)
11:20-12:30 討議:バイオ肥料の農家への普及
12:30-14:00 昼食
議長:フィリピン・タイ
14:00-15:30 討議:圃場実証
15:30-15:50 休憩
15:50-17:00 討議:バイオ肥料マニュアル


1月28日(金)
<セッション6:円卓討議III>
議長:日本・マレーシア
09:00-10:30 全体討議:2004年度活動レビューと2005年度活動計画,ニュースレター,次回ワークショップについて
10:30-11:00 休憩
11:00-12:00 全体討議:続き
12:00-14:00 昼食(議事録原案作成)
14:00-16:00 議事録作成
<閉会セッション>
19:00 送別パーティ

List of Participants of the 2004 FNCA Biofertilizer Workshop
January 24-28, 2005
Hanoi, Vietnam

ProjectLeader

Country

Name

Address

China

1. Dr. Jiarong Pan

Associate Professor, Institute for Application of Atomic Energy
Chinese Academy of Agriculture Sciences (CAAS)

Indonesia 2. Ms. Soertini Gandanegara Senior Research Scientists, Oil and Plant Nutrition Research Group,
Div. of Agriculture, Crd Isotope And Radiation Technology
National Nuclear Atomic Energy (BATAN)

Japan

3. Dr.Tadashi Yokoyama

Doctor of Agriculture, Faculty of Agriculture
Tokyo University of Agriculture and Technology

4. Dr. Issay Narumi

Senior Researcher, Research Group for Biotechnology Development
Takasaki Radiation Chemistry Research Establishment
Japan Atomic Energy Research Institute (JAERI)

5. Mr. Takao Nagasaki

Project Manager, Asia Cooperation Center (ACC)
Japan Atomic Industrial Forum (JAIF)

6. Ms. Mari Miura

Asia Cooperation Center (ACC)
Japan Atomic Industrial Forum (JAIF)

Korea 7. Dr. Jang-Sun Suh Senior researcher, Utilization of Environmental microbes/ Applied Microbiology
National Institute of Science and Technology (NIAST)
MALAYSIA 8. Dr. Khairuddin Bin Abdul Rahim Research Officer, Division of Agrotechnology and Biosciences
Malaysian Institute for Nuclear Technology Research (MINT)
PHILIPPINES 9. Mr. Richard Miston Balog Science Research Specialist I, Agricultural Research Group/ Atomic Research Division
Philippine Nuclear Research Institute (PNRI)

Thailand

10. Dr. Omsub Nopamornbodi

Biofertilizer Expert Advisory, Senior Expert Office
Depertment of Agriculture (DOA)

11. Dr. Nantakorn Boonkerd
(Invited by FNCA as a special speaker)

Professor / Lecturer, School of Biotechnology
Institute of Agricultural Technology, Suranaree University of Technology

VIET NAM

 

Dr. Vo Van Thuan

Director of INST/VAEC

Dr. Dang Duc Nhan

INST/VAEC

Dr. Pham Van Toan

Vietnam Agricultural Science Institute



FNCA各国のバイオ肥料事業活動の概要
FNCA バイオ肥料ワークショップ・ハノイ



概要
 各国が実施した圃場実証では、バイオ肥料がある種の化学肥料の代替にできるという結果が得られた。
 効果的バイオ肥料には土着のバクテリアや土壌成分や化学肥料によるバイオ肥料有効菌の死滅対策が重要との報告がなされた。
バイオ肥料見本を示すインドネシア代表
バイオ肥料見本を示すインドネシア代表
放射線キャリア滅菌
 日本の原研鳴海氏より、放射線の生物作用、土壌微生物の放射線耐性、放射線滅菌の際の問題点、放射線増感のための方策、バイオ肥料に用いるキャリアの放射線滅菌の具体例等の講演があり、また、原産永崎氏より、FNCA各国のコバルト照射施設を紹介し、施設の有効活用を提案した。
 照射施設は、未だ参加国で広くは利用されておらず、各種キャリアに対し、効果的な滅菌線量研究を深める必要があり、各国の密接な協力が必要で、FNCAコ−ディネーターによる各国の農業機関と放射線照射施設間の利用に関する橋渡しが求められた。


バイオ肥料の農家普及
 
農家普及には 政府と民間会社の適切な品質管理下での販売促進が重要であることが認識された。また FNCAで、 バイオ肥料農家普及のため、マニュアルを 2006年末に出版することが合意された。


中国:
中国農業科学院CAAS  Dr. Pan Jiarong報告
 世界人口の22%を世界耕作面積の3.22%、1.1億ヘクタールで養わねばならず、しかも国土の27.3%が砂漠化中で、化学肥料に代わるバイオ肥料開拓が大いに期待されている。
 現在、バイオ肥料は50万トンが生産され、5百万ヘクタール(5%)以上の穀物と野菜の耕作地に利用されているが、まだ新しいバイオ肥料の開発余地が大いにある。
 窒素固定細菌、リン溶解菌等は1950年代ソビエトより導入された。接種菌はマメ科植物から、非マメ科植物へと拡大している。また、接種源として1種のみの接種菌を使うのではなく、様々な機能を保持している接種菌の混合物を使う傾向になってきた。微生物はそれが生息していた土壌環境に適応している。微生物肥料中の接種菌は、その微生物が生息していた環境より悪い環境に接種されたときは効果の低下が見られた。
  このバイオ肥料にはピートや鶏糞等が目的菌のキャリア(培地)に用いられており、長期保管による菌の減少が課題でる。
  蒸気滅菌は、低コストのため、キャリアーの滅菌に使われている。放射線滅菌は魅力的だが、現時点ではコストが高い。
  そのため、キャリアの蒸気滅菌と25kGy放射線滅菌の試験が行われ、その後液体に懸濁した接種菌を加え3ヶ月あるいは6ヶ月保存して、接種菌の残存量を測定したら、両手法とも、菌数は高い状態が維持され、ガンマ線照射が蒸気滅菌処理と同程度の効果が出ることが確認された。

ガンマ線照射設備 バイオ肥料製造
ガンマ線照射設備  バイオ肥料製造 

インドネシア:

インドネシア原子力庁 BATAN Ms. Soertini Gandanegara,報告
 インドネシアでは、1969年にLEGINと名付けられたBradyrhizobiumの接種菌が導入された。キャリアーとしてはpeat が使われていたが、近年はゼオライトがキャリアーとして用いられている。接種菌は単一ではなく、窒素固定菌、リン溶解菌、IAA生産菌の混合物である。ダイズのためのRHIZOPLUSという接種源は4種のBradyrhizobiumとPseudomonas, Azospirillumを含んでいる。最近の傾向として、微生物肥料は作物等の収量の増加をめざすだけではなく、ファイトレメディエーションの植物の生育をよくする目的でも使われている。
 大豆の圃場試験を高地で行ったところ、灌漑システムが悪く、16%程度の増収だったが、将来的には、79%の増収を見込んでいる。3種の土壌をキャリアーとして放射線滅菌法を適用した結果、50Kgyでは完全な滅菌ができたが、30KGyでも有効な滅菌処理が確認できた。

韓国:
国立農業科学技術研究所(NIAST)Dr. Jang-Sun Suh,報告
 韓国では過剰な化学肥料の使用に替わる自然にやさしく持続可能なバイオ肥料の利用が求められており、そのためにはバイオ肥料の効果の安定性・信頼性が求められている。品質管理を重要視しており、キャリアの放射線滅菌を考慮中である。
  リンは窒素に次いで植物の生育を制限する無機養分である。難溶解性リンを植物が利用できる形態に変化させるリン溶解菌は植物根圏に生息している。トマトでは、Enterobacter agglomerans, 小麦ではAzotobacter chroococcum, ダイズではPsudomonas putida 等が上げられる。栽培植物の育苗箱にリン溶解菌を接種する試みを開始した。多くのキャリアーの特性を評価した。perliteはキャリアーとして良い特性を持っていることを見いだしたが、市販品のキャリアーとしては大部分ピートが使われている。
リン溶解菌を接種したトマト(右)
リン溶解菌を接種したトマト(右)
韓国の土壌から単離したリン溶解菌は極めて高いリン溶解活性とトマトに対しての生育効果を持っている。リン溶解菌を接種した育苗試験では、無処理区に比べて40%以上の生育増加を示した。このような微生物肥料を現場で使うときには、土壌、施用法、天候の違い等で効果が変動するという問題も残されている。品質管理を重要視しており、キャリアの放射線滅菌を考慮中である。

マレーシア:

マレーシア原子力庁(MINT) Dr. Khairuddin Bin Abdul Rahim報告
「マレーシアの農産業における植物成長促進菌及びバイオ肥料の開発と展望」
 根粒菌のほか、新しい技術として植物生育促進根圏細菌の研究を進めている。
  マレーシアの主要農産物であるオイルパームの幼苗生産と収量向上のため、バイオ肥料として適当な土壌微生物の選定検討が行われた。
  また、オイルパームや米に由来する農業廃棄物が、バイオ肥料の担体として有望であると提案された。なお、現在焦点をあてている根粒菌、菌根菌のほか、植物生育促進根圏細菌も共通のテーマにすることが、インドネシア代表から提案された。
バイオ肥料散布
バイオ肥料散布

フィリピン:
フィリピン原子力研究所(PNRI) Mr. Richard Miston Balog 報告
「フィリピン・イザベラ地方におけるトウモロコシ生産のためのBio-N接種効果の評価」
 大学や農家などと広く協力し、研究を行っている。ファーマーズフィールドデーを設けるなど、農家への普及にも力を入れている。

ファーマーズフィールドデーのセレモニー ファーマーズフィールドデー見学会
ファーマーズフィールドデーのセレモニー  ファーマーズフィールドデー見学会

  また、N-15で窒素固定率の見積もり試験を行っている。現地産の窒素固定菌に活性炭と土壌を混合したバイオ肥料製品であるBio-Nを低窒素含有土壌に接種したところ、一定の効果が見られた。しかしながら、化学肥料との併用に関しては、使用条件等に改善の必要性があった。化学肥料とバイオ肥料の最適混合割合は、少なくとも2収穫期後には確立するであろう。
 本試験結果をもとに経済性評価がなされた。
窒素化学肥料1ha当たり80kg(7760円)使用する場合と替わりにバイオ肥料を5パック(500円)使用する場合の試験結果を比較すると収量は2580kgから2880kgに増加し、収入を3750円増加させ、肥料代は7260円節約され、合計11000円の経済利益をもたらした。さらに効果が上がることを期待している。1ペソ=1/56US$=1.8円

処置 生産量(kg/ha) 総収入 ペソ 肥料代 ペソ 総収益ペソ
肥料不使用  210  1,460  0 1,460
化学肥料  2,580  18,060  9,910 8,150
バイオ肥料  2,880  20,160  5,820 14,340

タイ:
農業省(DOA) Dr. Omsub Nopamornbodi 報告
「タイ農業におけるバイオ肥料:接種方法と土壌状態の改良」

 農業国であり、国土の41%は農耕地で、食料安全要求の増大から、政府の方針として、化学肥料から自然生物肥料への置き換えを進めている。
 土壌細菌コレクションの組み合わせを検討することで、最適な微生物活動を引き出せることを示した。また、土壌状態の改良例として、サトウキビ由来の農業廃棄物を窒素固定菌及び根粒菌と混合したものを堆肥化し、トマトのポット栽培に使用した結果が紹介された。
  タイの圃場実証試験では根粒菌、根粒菌+ 金根菌、堆肥接種原が米、マメ科作物、野菜に試され、根粒菌が効果的と確認され、キャリアの放射線滅菌の実験がなされた。

ベトナム:
ベトナム農業研究所(VASI) Dr. Pham Van Toan
「ベトナムの穀物生産におけるバイオ肥料の効果」

  窒素固定菌、リン可溶化菌、植物成長促進菌及び根病原抑制菌からなる複合バイオ肥料を用いた試験が紹介された。この複合バイオ肥料の使用は、ポテト、落花生、トマト、綿、コーヒー、胡椒、松などの成長と収率改善にプラス効果があり、また、植物の根に作用する植物病原菌に対する抑制効果も見られた。
 収量増の効果は以下の通り。

トマト 21%、
ジャガイモ 31%、
ピーナッツ 19%、
綿 12%、
コーヒー 16% 
 ベトナム・バイオ肥料の製製造
ベトナム・バイオ肥料の製製造

日本
東京農工大学 共生科学技術研究部 助教授 Dr. 横山 正 報告
 雑菌による土壌汚染防止のため、カナダ産放射線滅菌キャリア(ピート)が根粒菌バイオ肥料に用いられ、市販されていること等が紹介された。


特別講演 (1) ベトナム
ハノイ市で排出されるゴミコンポストには微生物肥料を作るために必要な有機物や微量養分が多数含まれている。しかし、その中には雑多な細菌がコンポスト1g当たり108含まれており、またカビ類は106含まれている。そこで、それらを微生物肥料のキャリアーとして用いるために放射線滅菌を試み50〜55KGyで良好な結果が得られた。そして、雑菌がない窒素固定細菌あるいはリン溶解菌のためにキャリアーが調整できた。Nitraginと名付けた接種源を上記コンポストとピートで作成しマメ科作物に接種したら、無接種区に比較して両処理区とも、20-25%の化学窒素肥料の節約ができた。

特別講演 (2) 日本
 東京農工大学 共生科学技術研究部 助教授 Dr. 横山 正 報告
東南アジアで広範囲に栽培されているダイズやリョクトウ等のマメ科作物の共生窒素固定能力の改善をめざすために、リョクトウが属するVigna属植物の近縁野生種をタイで探索し、着生している根粒からBradyrhizobium属根粒菌を単離し、特性解明を行った。各植物種に共生していた根粒菌は植物種ごとにグループ化でき、グループごとに特異的な根粒形成遺伝子を保有していた。また、その遺伝子の特性は、タイのダイズ根粒菌のそれとも大きく異なっていた。各グロープに属する根粒菌は、16S-rRNAとgyrBの系統解析から、Bradyrhizobium japonicum系統とBradyrhizobium elkanii系統の2系統に区分された。接種試験の結果から、単離した根粒菌の大部分はダイズに根粒を着生できた。Vigna属近縁野生種は様々な限界地域に定着しており、共生している根粒菌もそのような環境で生息可能なものである。これらの根粒菌の共生遺伝子は、様々な限界環境に植えられつつあるダイズ等の潜在的な優良接種菌としての可能性を持っていることが分かった。

特別講演 (5) ベトナム
10株のAzotobacterの特性調査を行った。全ての菌株は窒素固定活性、IAA生産による植物生育促進活性、青枯れ病Ralstonia Solanasearumに対する抵抗活性を有していた。上記株中、5株はAspergillus nigerやFusarium oxysporumを阻害した。また、その中の4株は、様々な植物病原菌の生育を阻害することが分かった。特に、AT33, 31,79と名付けた菌株は、複数の機能を持つ微生物肥料として使える可能性が示された。

特別講演 (6) ベトナム
150の土壌サンプルから、ピーナッツの青枯れ病を抑制する15株のPseudomonas属細菌を単離した。これらの菌株はIAA生産能力を有していた。H-3-2と名付けた菌株は、15株中、最も高いIAA生産能力とピーナッツの青枯れ病の抑制能力を示した。H-3-2の種名をAPIキッとを用いて調べた結果、Pseudomonas putidaであることが分かった。

特別講演 (7) タイ
  有機農業系へのバイオ、生物有機肥料の利用
  Dr. Nantakorn Boonkerd, Suranaree University of Technology

植物栄養分のうち、窒素は最も重要な成分である。現在、タイ国政府が推進している有機農業システムでは化学肥料の使用が禁じられている。そこで、必要な窒素成分はマメ科作物−根粒菌共生系やアゾラ−シアノバクテリア共生系を利用した緑肥から供給することが試みられている。水稲の栽培前後にリョクトウやダイズを栽培し、茎や根を緑肥として用いた場合、30-60Kgの化学窒素肥料の代替えとなった。また、水稲を移植する2−3週間前にアゾラを栽培しそれをすき込むことで水稲の収量は15-22.5%増加し、30-90Kgの化学窒素肥料の代替えとなった。このようにマメ科作物−根粒菌共生系やアゾラ−シアノバクテリア共生系の生物窒素固定系を緑肥として用い、既存の農業技術と結びつけることはタイの有機農業の推進に貢献している。


Forum for Nuclear Cooperation in Asia