FNCA 2008バイオ肥料プロジェクトワークショップ
「持続可能な農業のための多機能バイオ肥料」
議事録
2009年2月23日‐26日
インドネシア、ジャカルタ
2008年3月に東京で開催された第9回コーディネーター会合における合意に基づき、2008年度FNCAバイオ肥料プロジェクトワークショップが以下の通り開催された。
日時: |
2009年2月23‐26日 |
場所: |
インドネシア原子力庁(BATAN)
アイソトープ・放射線技術応用センター
メインホール
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主催: |
インドネシア原子力庁(BATAN)
日本文部科学省(MEXT) |
インドネシア事務局: |
インドネシア原子力庁(BATAN)
アイソトープ・放射線技術応用センター |
日本事務局: |
(財)原子力安全研究協会(NSRA) |
参加者: |
中国、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムより計15名が参加(添付資料1) |
ワークショッププログラム
プログラムは添付資料2の通り
オープニングセッション
オープニングセッションはDr. Hudi Hastowo(インドネシア原子力庁長官)ので開会の辞で始まり、引き続きFNCA日本コーディネーターの町末男氏(文部科学省参与)より挨拶があった。
セッション1:導入発表
町氏より「2009年に向けたFNCAの前進」と題して発表があり、原子力技術の平和的で安全な利用における地域との積極的な連携を通じて、FNCAは社会経済をより一層発展させる効果的なメカニズムであることが認識されていくだろうとの展望が示された。また、FNCAプロジェクトにおいて、原子力発電および放射線応用の基盤を築くことが重要視されるべきであると述べられた。
続いて、FNCAインドネシアコーディネーターのDr. Taswanda Taryo(インドネシア原子力庁)より、「インドネシアの持続可能な発展のための放射線技術」と題して発表があり、農業分野において利用されているアイソトープおよび原子力技術の能力として、肥料およびバイオ肥料のトレーサーとしてアイソトープ技術を利用した、植物栄養学および肥料への応用が紹介された。
日本プロジェクトリーダーの横山正氏(東京農工大学准教授)より、FNCAバイオ肥料プロジェクトの活動概要に関し、「2007年度バイオ肥料プロジェクト−持続可能な農業のための多機能バイオ肥料−」と題して発表があった。
セッション2:カントリーレポート
添付資料3
セッション3:プロジェクト計画および挑戦
1. オートクレーブ滅菌と比較した放射線滅菌キャリアで作られた接種材の品質の改良
リードスピーカー: Dr Pham Van Toan(ベトナム)、Ms Soertini Gandanegara(インドネシア)
放射線滅菌キャリアを用いた接種材は、オートクレーブ滅菌よりも保存性が高く、さらに汚染が少なく有用微生物の生存性も高い。しかし、1年以上有用微生物を保存したデータがないため、今後、長期保存において、オートクレーブ殺菌と比較しながら放射線滅菌キャリアを用いた接種材の品質向上試験を行う必要がある。
2. 放射線施設の利用、および原子力研究機関と農業試験場との協力
リードスピーカー: 町末男氏、Dr Khairuddin Bin Abdul Rahim(マレーシア)
すべてのFNCA加盟国にはガンマ照射施設があるが、これらは、医薬関連品滅菌、食品照射、バイオ肥料キャリアの滅菌など、異なった目的で使用されている。これらの施設をバイオ肥料キャリア照射に利用できるようにすることが重要な課題であり、バイオ肥料の研究或いは生産に関連する機関と、原子力研究機関との間に良好な協力関係を築くことが必要となる。また、放射線照射サービスは、特に民間部門の潜在的ユーザーに公表されるべきである。
3. 多機能バイオ肥料の試験結果
リードスピーカー: 相野公孝氏、Dr Siriluck Jitacksorn (タイ)
抗菌活性物質生産能は、植物病害の発病抑制において重要な役割を演じる。さらに、内生細菌が感染した植物において、全体誘導抵抗(ISR)の活性化は発病抑制メカニズムの要素である。このメカニズムは、多機能バイオ肥料を見つけ出すのに非常に役に立つと考えられる。
4. バイオ肥料の普及戦略
リードスピーカー: Ms Juliet Anarna (フィリピン)
一般的に、バイオ肥料の利用において農家の使用量を増やすためにはより強力な情報が必要である。現在、バイオ肥料の推進・普及計画に関して、政府の市場介入や支援が行われており、さらに、バイオ肥料の利点を公開するため、一般農家での展示圃が全国的に行われている。その他の促進戦略としては、主にエンドユーザーを対象としたメディアキャンペーンを行うことである。バイオ肥料の販売促進を助長するために、大会、セミナー、試写会及び農業展示会において効果を公表する必要がある。また、マーケティング戦略も必要である。種苗会社、製造者および卸売業者の間での連携により、これらの促進を一層強化することができる。結論として、農家の支持とともに政府および民間部門のサポートこそが、持続可能な農業におけるバイオ肥料の成功の鍵となる。
テクニカルビジット
A. インドネシア農業省Pacet試験地へのテクニカルビジット(西ジャワ州Cianjur県)
Pacet試験地にある野菜(ブロッコリー、カリアン、ニンジン、レタスとキャベツ)のバイオ肥料試験圃場を訪問した。処理は対照(50%と100%の堆肥(FYM)施用)とバイオ肥料と50%のFYMとの組合せ施用である。試験はまだ進行中であるが、ブロッコリー、バイオ肥料を施用したキャベツとニンジンにおいて、好反応が得られている。
B. PT Hobson Interbuanaバイオ肥料工場へのテクニカルビジット(西ジャワ州Cianjur県、Sukaresmi地区)
PT Hobson Interbuanaのバイオ肥料工場を訪問した。本工場では、豆類用の放射線滅菌キャリアを用いたバイオ肥料(Rhizo-PlusとRhizo-Nut-Plus)と植物生育促進物質Hobsanol(植物の葉のワックス層からの抽出物)を製造している。QC/QAを含む製品の製造プロセスが説明され、参加者一同は訪問による新知見を学び満足し、PT Hobson Interbuana の厚意に大いに感謝した。
セッション4:2009-2010年の計画
リードスピーカー:横山 正PL
- 参加者は対象作物およびキャリア滅菌のための試験計画を決定した。(表1および2)
- 各国において、輸送費を含めたキャリア照射にかかるコストを計算し、オートクレーブと比較すべきであるとまとめられた。
オープンセミナー
サマリーを添付資料4(PDF28KB)に記す。
表1. 主要対象作物における多機能バイオ肥料接種に関する試験計画
植物 |
主導国 |
国 |
微生物の種類 |
ダイズ |
タイ |
中国、日本、タイ |
根粒菌+植物生長促進根圏細菌 |
ベトナム、タイ |
根粒菌+拮抗微生物 |
タイ |
根粒菌+菌根菌 |
野菜 |
フィリピン |
インドネシア |
植物生長促進根圏細菌 |
マレーシア |
植物生長促進根圏細菌+リン溶解菌+
拮抗微生物 |
ベトナム |
植物生長促進根圏細菌+リン溶解菌+
拮抗微生物 |
フィリピン |
アゾスピリルム菌+植物生長促進根圏細菌
アゾスピリルム菌+菌根菌 |
イネ |
インドネシア |
フィリピン、日本 |
アゾスピリルム菌 |
インドネシア |
植物生長促進根圏細菌+リン溶解菌 |
マレーシア |
アゾスピリルム菌+植物生長促進根圏細菌 |
中国 |
植物生長促進根圏細菌+リン溶解菌 |
表2. 放射線によるキャリア滅菌のための試験計画
国 |
母材 |
照射量 |
微生物 |
中国 |
ピート、イネワラ |
20, 30, 40kGy |
根粒菌、植物生長促進根圏細菌、
リン溶解菌 |
インドネシア |
コンポスト |
25kGy以下 |
植物生長促進根圏細菌、リン溶解菌 |
日本 |
ピート、土 |
50kGy以下 |
根粒菌、アゾスピリルム菌 |
マレーシア |
コンポスト |
20‐50kGy |
アゾスピリルム菌、菌根菌、リン溶解菌、
植物生長促進根圏細菌、拮抗微生物 |
フィリピン |
土、木炭 |
20‐30kGy |
アゾスピリルム菌、菌根菌、
植物生長促進根圏細菌 |
タイ |
ピート、フミン酸 |
8‐25kGy |
根粒菌、植物生長促進根圏細菌 |
ベトナム |
ピート |
20‐40kGy |
根粒菌、リン溶解菌、拮抗微生物
植物生長促進根圏細菌 |
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