FNCA 2013 バイオ肥料プロジェクトワークショップ
議事録
2013年11月18日 - 11月21日 フィリピン、ロスバニョス市
1) ワークショップの開催概要
i) 期日: |
2013年11月18日〜21日 |
ii) 場所: |
フィリピン、ロスバニョス |
iii) 主催: |
日本文部科学省(MEXT)
フィリピン原子力研究所(PNRI)
フィリピン大学ロスバニョス校(UPLB)分子生物学・バイオテクノロジー研究所(BIOTECH) |
iv) 出席者: |
中国、日本、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナムの7ヵ国より合計11名 |
開会セッション
フィリピン原子力研究所(PNRI)所長のAlumanda M. Dela Rosa氏、およびフィリピン大学ロスバニョス校(UPLB)分子生物学・バイオテクノロジー研究所(BIOTECH) 所長のReynaldo V. Ebora氏より挨拶があり、すべての参加者に対し温かい歓迎の意が表された。続いて、日本文部科学省(MEXT)の青木萌氏、FNCA日本コーディネーターの町末男氏より挨拶があり、PNRIおよびUPLBの厚遇とワークショップ開催への尽力に対し感謝の意が表された。また、フィリピンプロジェクトリーダー(PL)のJulieta A. Anarna氏、およびマレーシア原子力庁のPhua Choo Kwai Hoe氏が本ワークショップのラポターに指名された。
基調講演として、町氏より2012年〜2013年におけるFNCAの活動概要と進捗状況が報告された。町氏はFNCAの10プロジェクトについて、活動の総括と2013年度の計画を発表した。引き続き、日本PLである東京農工大学(TUAT)教授の横山正氏より、2012年度のFNCAバイオ肥料プロジェクトの活動が総括され、本ワークショップの主要課題が提示された。
持続可能な農業の生産性向上のための原子力技術およびバイオ肥料技術の利用に関するオープンセミナー
ワークショップの初日にはオープンセミナーが開催され、FNCAバイオ肥料プロジェクト関係者を含め、フィリピンの研究機関、大学より約80名が参加した。
初めにPNRI農業研究課長のGlenda B. Obra氏より、フィリピンにおける原子力技術による農業技術改良について発表があった。次に、町氏より持続可能な農業に貢献するための原子力技術が紹介された。続いて、BIOTECH農業・森林プログラムリーダーのMarilyn B. Brown氏より、持続可能な農業と森林再生に向けたバイオ肥料の応用技術について報告があった。また、BIOTECHのNelly S. Aggangan氏より、ミンダナオ島のバナナの土壌病害であるフザリウム病に感染したバナナ(Lakatan種およびCavendish種)の生育と収量が菌根菌バイオ肥料「MykovamTM」により改善効果があることが紹介された。さらに、国際稲研究所(IRRI)次席科学官のHelen Grace S. Centeno氏より、気候変動下における人々の食卓を守るための米生産について発表があった。次いで、国際農林水産業研究センター(JIRCAS)プロジェクトリーダーの安藤象太郎氏からは、島嶼における環境保全のための適切な農業実践例が紹介された。最後に、マレーシア原子力庁のPhua Choo氏より、マレーシアにおけるバイオ肥料生産・利用のための放射線技術に関する成功例が報告された。
セッション1 カントリーレポート
7ヵ国がそれぞれ2013年の研究の概要を報告した。各国の報告概要は添付資料3の通りである。
セッション2 バイオ肥料の商業生産に向けたキャリアの放射線滅菌法の拡大
マレーシア、フィリピン、およびタイにおいてはキャリアの商業生産にガンマ線照射滅菌を利用した成功例がある。キャリアの商業生産におけるガンマ線照射滅菌は、マレーシアで25kGy〜50kGy、フィリピンで20kGy、タイで25kGyの線量でそれぞれ照射されている。放射線滅菌の利点を説明するため、PLはバイオ肥料製造者との繋がりをつくり、また国の原子力研究所/照射施設とコンタクトを取る必要があることが確認された。放射線滅菌されたキャリアから作られるバイオ肥料接種材のQA/QCがより優れたものであり、さらに保存期間が長いことを実証するため、バイオ肥料生産者によってテストされる必要がある。また、エンドユーザーへの実証展示も必要である。中国に関してはCNNCと企業において利用可能な照射施設があるため、PLはそれらとコンタクトを取り、またバイオ肥料生産者が放射線滅菌利用に関心を持つよう努力をすル必要があることが確認された。タイにおいては、バイオ肥料生産者への技術移転が進んでおり、企業において商業利用のための照射サービスが利用可能であることが確認された。ベトナムはホーチミン市のVAEIと企業において照射サービスが利用可能であり、フィリピンについては、バイオ肥料を含む農業利用のための新たな照射施設が建設されることが薦められる。
セッション3 多機能バイオ肥料開発および農家への拡大戦略
参加各国において、一つのバイオ肥料微生物が複数の機能を持つ場合と、異なる機能を持つ複数のバイオ肥料微生物を組み合わせる場合の2つの手法による多機能バイオ肥料に関する研究が行われた。耐熱性を持つ優良株を得る研究課程においては、放射線照射技術が利用された。各国より多機能バイオ肥料の利点が明確に述べられた。全ての参加者は、2014年度の計画として、多機能バイオ肥料開発の研究、それを用いたポットおよび圃場試験、および、多機能バイオ肥料の利点に関する研究を続けることが確認された。
セッション4 2013年におけるバイオ肥料と照射オリゴキトサン植物生長促進剤の相乗効果試験の評価および今後の展望
本年度のバイオ肥料と照射オリゴキトサンの併用試験については、いくつかの有益な効果が得られている。ベトナムにおいては、リン溶解バチルス菌を用いたバイオ肥料を施肥したトマトに300ppm濃度のオリゴキトサンを土壌および葉に接種した場合、ラルストニア.ソラナセイラムに起因する青枯病が明らかに抑制された。モンゴルにおいては、アゾスピリラム、アゾトバクター、アゾアーカスを含む混合株のバイオ肥料を投与したトマトに、100ppm濃度のオリゴキトサンを2週間間隔で葉に接種した場合、フザリウムに汚染された土壌での栽培でも収量の減少は見られなかった。マレーシアにおいては、イネのポット試験において、クレブシエラ属およびエンテロバクター属を含む混合株のバイオ肥料を施肥する1週間前に40ppm濃度のオリゴキトサンを接種した場合、その収量が顕著に増加した。全ての参加者が、さらなる試験を行い、バイオ肥料と照射オリゴキトサンの相乗効果を確認することに同意した。また、全ての参加者は、バイオ肥料と照射オリゴキトサンの植物病害抑制における相乗効果について共通の手順を設定するべきであると提言された。各国におけるバイオ肥料と照射オリゴキトサンの相乗効果試験II;植物病害抑制試験計画については添付資料4の通りである。
セッション5 バイオ肥料の品質保証/管理のためのFNCAガイドライン作成
「FNCAバイオ肥料ガイドライン 第1号 品質保証/管理のためのバイオ肥料微生物数の計測」の草案が提案され、最終版とするための修正の道筋が議論され賛成された。2、4、5、8、9章については、それぞれフィリピン、タイ、タイ、ベトナム、中国の専門家が修正する。本号については、本年度中に公開される予定である。また、第2号の内容と編集手順が議論され、タイトルを「放射線技術を利用したバイオ肥料キャリアの生産」とすることが合意された。第2号の草案についてはマレーシアの専門家により準備される。
セッション6 2014年度プロジェクト活動計画
本プロジェクトの今後の活動計画が討議され、以下の通り確認された。
1) バイオ肥料の商業生産に向けた放射線滅菌の拡大
1. 町氏より、バイオ肥料キャリアの放射線滅菌ついて、オートクレーブ滅菌と比較した有用な効果に関するデータを収集することが提案された。
2. 考えられる一つの課題として、各国から集めたデータを利用して論文を作成し、国際的な学術誌へ投稿することも考えられる。
2) 多機能バイオ肥料開発および農家への拡大戦略
1. 2014年度の計画として、複数の微生物の組み合わせによる多機能バイオ肥料開発、参加各国におけるバイオ肥料生産技術の向上、さらに農家への普及のための多機能バイオ肥料における経済的利点の評価に関する研究を続けていくことが、全ての参加者により合意された。
2. 今後、放射線照射による微生物育種を利用し、有用な多機能微生物の作出が進められる。
3) バイオ肥料と照射オリゴキトサン植物生長促進剤の相乗効果試験の評価
1. 全ての参加者が、さらなる試験を行い、バイオ肥料と照射オリゴキトサンの相乗効果を確認することに賛成した。また、全ての参加者はバイオ肥料と照射オリゴキトサンの植物病害抑制における相乗効果について共通の手順を設定するべきであると提言された。
2. 得られた試験結果はFNCA電子加速器利用プロジェクトと共有される。
4) バイオ肥料の品質保証/管理のためのFNCAガイドライン作成
1. 「FNCAバイオ肥料ガイドライン 第1号 品質保証/管理のためのバイオ肥料微生物数の計測」は、中国、フィリピン、タイ、ベトナムの専門家によって章毎に修正される。本号については本年度中にFNCAのウェブサイト上でPDFにより公開される。
2. 第2号のタイトルは「放射線技術を利用したバイオ肥料キャリアの生産」とし、草案はマレーシアの専門家によって準備される。
セッション7 議事録
議事録、および結論と提言について討議が行われ、参加者全員によって合意された。これは2014年に日本で開催される第15回コーディネーター会合で報告される。また、2014年のワークショップの開催国候補は、ベトナムまたはマレーシアである。結論と提言は添付資料5の通りである。
閉会セッション
BIOTECHのLiza Custodio氏より閉会の挨拶があった。また、町氏より、フィリピンの温かいもてなしに感謝の意が表された。
2) テクニカルビジット
ワークショップ3日目の11月20日に、マジャイジャイに位置するCostales Nature Farmを訪問した。Ronald Costales氏が運営する本農園では、BIOTECHにおいて作られているバイオ肥料のBio-NとMykovamを利用しており、さらに微生物を利用した独自の有機肥料も生産している。参加者は農園の概要について説明を受けた後、有機野菜が栽培されている様子や、園内で生産される有機飼料で育成された家畜等の状況を見学した。
3) 添付資料
添付資料1 FNCA 2013 バイオ肥料プロジェクトワークショップ プログラム
添付資料2 FNCA 2013 バイオ肥料プロジェクトワークショップ 参加者リスト
添付資料3 セッション1 カントリーレポートサマリー
添付資料4 バイオ肥料と照射オリゴキトサンの相乗効果試験II;植物病害抑制試験
添付資料5 結論および提言(英文のみ)
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