FNCA 2014 バイオ肥料プロジェクトワークショップ
議事録
2014年11月24日 - 11月27日
マレーシア、カジャン市
1) ワークショップの開催概要
i) 期日: |
2014年11月24日〜27日 |
ii) 場所: |
マレーシア、カジャン |
iii) 主催: |
日本文部科学省(MEXT)
マレーシア原子力庁 |
iv) 出席者: |
中国、インドネシア、日本、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナムの8ヵ国より合計12名 |
開会セッション
FNCAマレーシアコーディネーターであるマレーシア原子力庁副長官のMuhd Noor Muhd Yunus氏より挨拶があり、全ての参加者に対し温かい歓迎の意が表された。続いて、FNCA日本コーディネーターの町末男氏より挨拶があり、マレーシア原子力庁の厚遇とワークショップ開催への尽力に対し感謝の意が表された。また、マレーシアプロジェクトリーダー(PL)のKhairuddin Bin Abdul Rahim氏がワークショップ参加者の紹介を行った。最後に、Abdul Rahim氏およびフィリピンPLのJulieta A. Anarna氏が本ワークショップのラポターに指名された。
基調講演として、町氏より2013年〜2014年におけるFNCAの活動概要と進捗状況が報告された。町氏はFNCAの10プロジェクトについて、それぞれの活動概要と主要な成果を紹介した。引き続き、日本PLである東京農工大学(TUAT)教授の横山正氏より、2013年度のFNCAバイオ肥料プロジェクトの活動が総括され、本ワークショップの主要課題が提示された。
オープンセミナー
ワークショップの2日目、11月25日にはバイオ肥料に関する半日のオープンセミナーが開催され、研究機関、農業関係機関、大学、プランテーション産業界、およびバイオ製品関連業界の代表者、ならびに農家と農業愛好家の約100名が参加した。
オープンセミナーはMuhd Yunus氏の挨拶で始まり、続いて4つの講演が行われた。初めに、町氏より持続可能な農業を推進するための原子力技術が紹介された。続いて、プトラマレーシア大学教授兼バイオ肥料会社であるPhytogold Sdn. Bhd.社技術参与のZulkifli Haji Shamsuddin氏より、学究的環境から農産業市場への原子力技術導入の道程について紹介があり、また、マレーシア原子力庁照射施設部長のMohd Sidek Othman氏より、研究開発・商業化のためのマレーシア原子力庁の照射施設利用に関する戦略について報告があった。その後、Malaysian Agri Hi-Tech Sdn. Bhd.社のSalwa Md. Hashim氏より、マレーシア農産業におけるバイオ肥料の商業化および受容が紹介された。引き続き、Abdul Rahim氏を議長とし、日本(横山氏)、タイ(Phatchayaphon Meunchang氏)、インドネシア(Iswandi Anas氏)、フィリピン(Anarna氏)、ベトナム(Pham Van Toan氏)の各国PLが参加するパネル討議が行われ、バイオ肥料製品の品質、キャリアの照射滅菌、農家やプランテーション業界に対するバイオ肥料の普及方法、ならびに先進的なバイオ肥料のR&Dプロジェクト等が議論された。
セッション1 カントリーレポート
8ヶ国がそれぞれ活動の進捗状況と2012年〜2014年の活動のまとめを発表した。各国の報告概要は添付資料3の通りである。
セッション2 高品質な商業用バイオ肥料生産のための放射線滅菌利用の拡大
参加国より、いくつかのバイオ肥料菌の生存率向上に関し、キャリアの放射線滅菌で良い効果が得られていることが紹介された。しかしながら、これらの情報は未だ明確でないため、次の試験として選抜された植物に関する効果評価試験を行わなければならない。得られた試験結果は作成中のバイオ肥料ガイドラインに記載することも考えられる。
セッション3 多機能バイオ肥料開発および農家への拡大戦略
多機能バイオ肥料は、植物の成長と収量に有用な異なる効果を持つ、選抜された複数の有用微生物を組み合わせたものである。多機能バイオ肥料として利用する前に、一つの菌がもう一方の菌の成長を阻害することを避けるため、有用微生物の親和性を試験しなければならない。一方で多機能とは、リン溶解能と同時にカリウム溶解機能を持つといった、有用微生物が単体で2つの異なる機能を持つ場合も考えられる。或いは、突然変異育種技術を利用して多機能株を探すことも考えられる。
農家のバイオ肥料利用を拡大する戦略として、1)農家を信頼させるための農家の圃場を使った展示圃場、2)政策立案者への説得、3)バイオ肥料製造、普及への企業の協力が必要だと考えられる。
セッション4 バイオ肥料と照射オリゴキトサンPGPの相乗効果に関する試験評価・今後の展望
バイオ肥料とオリゴキトサンの相乗効果については、病害抑制効果の程度、および植物生長促進効果の2点について研究を行っており、6ヵ国が報告を行った。オリゴキトサンはいくつかの植物病害について植物防除作用を誘導する物質として既に知られている。ベトナムのデータによると相乗効果は病害抑制のみで見られ、その効果は明確であった。しかしながら植物生長パラメーターを用いた相乗効果については、オリゴキトサンの植物生長効果の有効性をバイオ肥料の効果と区別することは難しかった。植物生長パラメーターを利用して両者の相乗効果にバイオ肥料が貢献していることを評価するためには、オリゴキトサンの植物生長効果への有効性をバイオ肥料の効果と区別するための方法を開発しなければならない。
セッション5 FNCAバイオ肥料ガイドラインVol. 2 放射線技術を利用したバイオ肥料キャリアの生産
FNCAバイオ肥料ガイドラインVol. 2『放射線技術を利用したバイオ肥料キャリアの生産』の編集について議論が行われた。参加者は、マレーシアの専門家により作成されたドラフトに基づき、キャリアの選定および準備について適当な例を追記することに合意した。各章の編集責任者が割り振られた。また、編集作業は2015年1月末までに終了し、3月末までに発行する予定である。
セッション6 プロジェクト活動評価および次期フェーズに向けた計画
本プロジェクトの計画の一つはキャリアの放射線滅菌利用および挑戦である。町氏から、1) バイオ肥料微生物の保存について、オートクレーブと比較した場合の照射滅菌キャリアの有用性に関するデータを蓄積すること、また2) 照射滅菌キャリアの有用性を論文で発表することが提案された。
一部の参加国では、バイオ肥料製造会社に対する照射滅菌キャリア利用の普及も計画として含まれる。全ての参加国は多機能バイオ肥料開発のための微生物の組み合わせに関する研究、および照射オリゴキトサンとの相乗効果試験評価を続けていく。また、本試験に関しては横山氏により収集されるべきパラメーターと、接種プロトコルが提示される。
セッション7 議事録
議事録、および結論と提言について討議が行われ、全ての参加者によって合意された。これは2015年に日本で開催される第16回コーディネーター会合で報告される。また、2015年のワークショップの開催国候補は、ベトナム、インドネシアあるいはタイである。結論と提言は添付資料4の通りである。
閉会セッション
Muhd Yunus氏より閉会の挨拶があった。また、町氏よりマレーシアの温かいもてなしに感謝の意が表された。
2) テクニカルビジット
11月25日に、セランゴール州セルダンのマレーシア農業EXPO公園において、2年に一度開催される農業博覧会に参加した。博覧会では、マレーシア農業・農業関連産業省(MOA)およびマレーシア農業研究開発研究所(MARDI)による案内によりテクニカルツアーが行われ、参加者は、農業、プランテーション業、漁業、畜産業、食糧生産業といった様々な農業関連の展示を視察した。
3) 添付資料
添付資料1 ワークショッププログラム
添付資料2 ワークショップ参加者リスト
添付資料3 セッション1 カントリーレポートサマリー
添付資料4 結論および提言(英語) |