FNCA 2015 バイオ肥料プロジェクトワークショップ 議事録
2015年11月24日 - 11月27日
タイ、バンコク市
1) ワークショップの開催概要
Ⅰ) 期日 |
2015年11月24日-27日 |
Ⅱ) 場所 |
タイ、バンコク |
Ⅲ) 主催 |
日本文部科学省(MEXT)
タイ原子力技術研究所(TINT)
タイ農業局(DOA)
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Ⅳ) 出席者 |
バングラデシュ、インドネシア、日本、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナムの8ヵ国より合計12名(添付資料2参照)
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Ⅴ) 日程 |
添付資料1
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開会セッション
タイ原子力技術研究所(TINT)副所長のHannarong Shamsub氏、およびタイ農業局(DOA)副局長のSurmsuk Salakpetch氏より挨拶があり、全ての参加者に対し温かい歓迎の意が表された。続いて、FNCA日本アドバイザーの南波秀樹氏、文部科学省調査員の青木萌氏より挨拶があり、TINTおよびDOAの厚遇とワークショップ開催への尽力に対し感謝の意が表された。また、タイプロジェクトリーダー(PL)のPhatchayaphon Meunchang氏がワークショップ参加者の紹介を行った。最後に、マレーシアおよびフィリピンPLが本ワークショップのラポターに指名され承認された。
基調講演として、南波氏より2014年-2015年におけるFNCAの活動概要と進捗状況が報告された。南波氏はFNCAの10プロジェクトについて、それぞれの活動概要と主要な成果を紹介した。引き続き、日本PLである国際農林水産業研究センター(JIRCAS)の安藤象太郎氏より、FNCAバイオ肥料プロジェクトの活動が総括され、本ワークショップの主要課題が提示された。
オープンセミナー
ワークショップの初日、11月24日には持続可能な農業のための原子力技術およびバイオ肥料の開発に関する半日のオープンセミナーが開催され、ワークショップ参加者を含め、省庁、研究機関、大学、産業界より約50名が参加した。
セッション(1)持続可能な農業のための原子力技術では5つの発表が行われた。初めに土地開発局のSathaporn Jaiarree氏より、タイにおける原子力技術による持続可能な農業改良が報告された。次にMeunchang氏より、バイオ肥料生産向上のための原子力技術利用の動向が紹介された。続いてTINTのPhiriyatorn Suwanmala氏より、放射線加工を利用したキトサン由来の植物生長促進剤生産について発表があった。引き続き、米作局のSuniyom Taprab氏より、持続可能な農業のための放射線育種応用について報告があった。最後に東洋大学の鳴海一成氏より、日本における放射線を利用した産業微生物の育種技術が紹介された。
セッション(2)持続可能な農業のためのバイオ肥料研究開発では2つの発表が行われた。スラナリー工科大学のNeung Teaumroong氏より、タイにおけるバイオ肥料の研究開発について発表があった。また、フィリピン大学ロス・バニョス校のJulieta A. Anarna氏より、フィリピンにおけるバイオ肥料生産のための放射線技術応用が紹介された。
セッション2 カントリーレポート
8ヶ国がそれぞれ2015年の活動の進捗状況と2016年-2017年の活動計画を発表した。各国の報告概要は添付資料3の通りである。
セッション3 商業用バイオ肥料生産のための放射線滅菌利用の拡大
全ての参加者は、ガンマ線を利用したキャリアの放射線滅菌がバイオ肥料の品質を向上し、接種材の保存期間を延ばすものであるということに賛成した。しかしながら、いくつかの参加国においてバイオ肥料キャリア滅菌に関するガンマ線照射の可用性やアクセスのしやすさは将来的に改善されるべきである。マレーシア、中国、フィリピンにおいてはガンマ線照射施設をバイオ肥料接種材照射のために商業的に利用することが可能であるが、その他の国のFNCA参加国(バングラデシュ、インドネシア、タイ、ベトナム)においては研究目的のみで利用可能である。モンゴルはガンマ線照射施設を保有していない。
セッション4 多機能バイオ肥料開発および農家への拡大戦略
多機能バイオ肥料の開発と農家への拡大について、1)参加国は、バイオ肥料中の微生物について多機能性を確認するための試験を行うこと、2)来年度のワークショップにおいて多機能バイオ肥料に関する試験結果の発表を行うことがまとめられた。
セッション5 FNCAバイオ肥料品質保証/管理ガイドラインの作成
FNCAガイドラインVol.2『放射線技術を利用したバイオ肥料キャリアの生産』の編集方法が議論された。マレーシアの専門家によって作成されたドラフトを基に、編集内容や部分毎の担当責任者が合意された。バングラデシュにおけるキャリア作製については追記される予定である。放射線滅菌とオートクレーブ滅菌キャリアの比較に関する論文はガイドライン中に引用される。本ガイドラインはマレーシアPLのKhairuddin Bin Abdul Rahim氏が編集長となり本フェーズの終了前に発行することが合意された。
セッション6 バイオ肥料と照射オリゴキトサンPGPの相乗効果に関する2015年の試験評価・今後の展望
バイオ肥料とオリゴキトサンの相乗効果について、6ヶ国中5ヶ国より植物生長促進効果および収量について良好な相乗効果が得られていることが報告された。タイにおける試験でははっきりとした結果が得られず、良好な効果が出ていなかったものもあった。ベトナムではトマトとキャベツについてR. solanacearumによる青枯病への病害抑制に関し良好な効果が見られた。今後、バイオ肥料と照射オリゴキトサンの相乗効果を評価するため、日本PLの安藤象太郎氏はエリシターあるいは植物生長促進剤としての有効性評価のためにオリゴキトサンの提供をFNCA電子加速器利用プロジェクトに依頼する。照射オリゴキトサンに関する情報共有はバイオ肥料プロジェクトの参加者にとって非常に有益である。参加国はFNCAバイオ肥料プロジェクトとFNCA電子加速器利用プロジェクトとの合同ワークショップの開催を提案した。
セッション7 放射線滅菌とオートクレーブ滅菌の効果比較に関する論文作成
放射線滅菌とオートクレーブ滅菌の比較に関する試験データを発表することの重要性が確認された。これは今後、関連する研究者、学術界、産業界、エンドユーザーなどの関係者向けの参考文献となる。信頼度の高い論文で発表された科学的なデータは、バイオ肥料生産における放射線滅菌導入に影響力を持ち、FNCA参加国における持続可能な農業の推進強化に繋がる。いくつかの国では、来年あるいは再来年にかけて発行される科学誌への投稿の準備が進められている。
セッション8 プロジェクト活動評価および2015年 - 2017年の計画
2015年 - 2017年の本フェーズでは、以下の事項に取り組む。
1. |
照射滅菌キャリアの有効性についてデータを蓄積し、バイオ肥料中の有用微生物の生存率についてオートクレーブ滅菌と比較した際の放射線滅菌キャリアの有用性について論文を発表する。発表はインドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムで2015年および2016年に行う。 |
2. |
バングラデシュ、インドネシア(現在は行っていない)、マレーシア、フィリピンにおいて、既にキャリア滅菌のための放射線技術がバイオ肥料製造会社に移転されている。各国政府は原子力研究所に対し、キャリア滅菌のための照射施設の利用を促進するよう奨励すべきである。 |
3. |
植物病害軽減および/あるいは植物生長促進剤のためのバイオ肥料と照射オリゴキトサンの相乗効果に関する評価を続ける。 |
4. |
放射線による微生物育種も視野に入れ、単体あるいは複数の菌株から、育種各国の需要および状況に合った多機能バイオ肥料を開発する。各国FNCAコーディネーターは自国の政府に対し、多機能バイオ肥料研究開発に関する資金面でのサポートを依頼する。 |
5. |
科学的データを基に「FNCAバイオ肥料ガイドラインVol. 2 放射線技術を利用したバイオ肥料キャリアの製造」を編集し、本フェーズの終了年度(2017年)までに発行する。 |
6. |
2016年は以下の項目に焦点を当ててプロジェクト活動を進める。
- オリゴキトサンの植物病害抑制および/あるいは養分利用に関する効果の明確化
- 多機能バイオ肥料開発
- バイオ肥料の品質向上のためのガンマ線滅菌キャリアの有用性の明確化
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セッション7 議事録
議事録が討議され全ての参加者によって合意された。これは2016年3月に日本で開催される第17回コーディネーター会合で報告される。また、2016年のワークショップの開催国候補は、ベトナムあるいはバングラデシュである。
閉会セッション
Meunchang氏より閉会の挨拶があり、また南波氏よりタイからの温かいもてなしに感謝の意が表された。
テクニカルビジット
参加者は11月26日にスパンブリ県のサトウキビの試験圃場を訪問した。試験圃場では、DOAの協力の下、農家がサトウキビ生産に植物生育促進根圏細菌(PGPR)を接種菌としたバイオ肥料を利用している。PGPRバイオ肥料と化学肥料を組み合わせることにより生育が促進され、茎収量は植え付けで約150 t/ha、1・2回目の株出しで120 t/haという結果が確認された。
3) 添付資料
添付資料1 ワークショッププログラム
添付資料2 ワークショップ参加者リスト
添付資料3 セッション2 カントリーレポートサマリー
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