2006年度FNCA放射線治療ワークショップ議事録(仮訳)
2007年1月9〜13日
ベトナム、ハノイのグオマン・ホテルおよび
ホー・チ・ミン市のレックス・ホテル
(1)2006 年 3 月の第 7 回アジア原子力協力フォーラム( FNCA )コーディネーター会合および
2006 年 1 月の第 6 回 FNCA 会合の合意に基づき、 2007 年 1 月 9 〜 13 日にベトナムのハノイとホー・チ・ミン市で、 2006 年度 FNCA 放射線治療ワークショップが開催された。この会合は、ベトナム国立がん研究所( K 病院)の主催、日本の文部科学省( MEXT )の共催、 (社)日本原子力産業協会( JAIF )の協力により開催された。 FNCA8 カ国、すなわち 中国、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、タイおよびベトナムの代表がワークショップに参加した。バングラデシュの代表はオブザーバーとして参加した。
ハノイの開会式
(2) ベトナムの国立がん研究所(K病院)のDr. To Anh Dungが司会を務めた。K病院のDr. Nguyen
Ba Ducが歓迎の辞を述べ、ベトナムでは2番目に多い死因であるがんに対する放射線療法の
重要な役割を強調した。ベトナム原子力委員会(VAEC)のDr. Bui Van Tuanは、歓迎の辞で、
がんに対する国家戦略が2006年1月に政府で承認されたことを説明し、さらに、国際ネット
ワークの重要性を強調した。ベトナム保健省の国際協力部門のDr. Tran Thi Giang Huongは、
歓迎の辞で、参加諸国の共同努力の重要性を表明した。最後に、参加諸国を代表して、日本
の放射線医学総合研究所(NIRS)の辻井 博彦氏が、ワークショップを主催したベトナムに感
謝の意を表明すると共に、FNCAの枠組みを説明し、オブザーバーとしてのバングラデシュの
参加を歓迎した。
(3)K病院のDr. Nguyen Ba Ducがベトナムの放射線療法の現状と、新国立がん研究所の設
立を含む将来の計画について特別講演を行った。日本の辻井 博彦氏は、FNCAプロジ
ェクトの歴史と、本会合の目的について説明した。
議事次第が採用され、司会および報告者が選出された(添付資料1を参照)。新規参
加者として、中国のDr. YangおよびマレーシアのDr. Tangが紹介された。後に、バン
グラデシュのDr. Alamが紹介された。
セッション 1: 子宮頸がんに対する化学放射線療法の第 II 相研究( CERVIX-III )
(4) 登録されたCervix-III患者の状況が各国によって発表された。(患者数:中国18、イ
ンドネシア5、日本32、韓国10、マレーシア14、フィリピン12、タイ19、ベトナム10)。
日本の加藤 真吾氏が、120の症例について累積臨床データを発表した。追跡調査率は
91%である。急性毒性については、グレード3の白血球減少が21%であった。非血液毒
性では、上部消化器(GI)症状(グレード3以上)が6%であった。したがって、急性
毒性は容認できうると見なされた。18.6カ月の中間追跡調査値では、データは、2年
の局所制御率が87.6%、2年間で再発がない割合が68.5%、2年の全生存率が76.5%を示
した。遅発性合併症の中には、直腸/S字結腸にグレード3 - 4の遅発性毒性が3例あ
った。腫瘍縮小効果、遅発性毒性、全生存率をモニターするために、さらなる追跡調
査が必要と思われる。
セッション 2: 子宮頸がんの傍大動脈リンパ節転移予防放射線療法 / アジュバント化学療法
(5) フィリピンのDr. De Los Reyesが、14の症例のd1、22、43についてCDDP 75mg/m2を用
いた化学放射線併用療法の臨床結果を報告し、治療法をさらに改善する必要性につい
て意見を表明した。日本の加藤氏は、Cervix III研究から傍大動脈リンパ節(PALN)
転移が陰性の28人の患者のパターンを報告し、新規共同研究として、進行性子宮頸が
んに対する傍大動脈リンパ節転移予防放射線療法(RT)の臨床試験を提案した。日本
の大野氏は、RTOG 79-20およびEORTCの試験等これまで発表された臨床結果を参照し
ながら、進行性子宮頸がんに対する傍大動脈リンパ節転移予防放射線療法の効果を報
告した。タイのDr. Thephamongkholは、進行段階にある症例におけるアジュバント化
学療法の役割を再検討した。発表されたこれらのデータに基づき、傍大動脈リンパ節
転移予防放射線療法の役割が考察された。
セッション 3: 局所進行頸がんに対する新規臨床試験
(6) 傍大動脈リンパ節転移予防放射線療法およびアジュバント化学療法に関する徹底的
な議論の後、次の4つのオプションがさらに提案された。
- 骨盤のみに対するCCRT(化学放射線同時併用療法)
- 1. 骨盤に対するCCRTに続いてPALN RT(連続的)
2. 広範囲な領域に対するCCRT(骨盤およびPALNに対するRT)
- CRT(骨盤)に続いてアジュバントCT
バングラデシュおよび中国はI、日本はII.1およびII.2、フィリピンはII.2およびIII、
タイはIII、他の国々はII.2に賛成投票した。さらに議論をした後、最終的にオプシ
ョンII.2が選定された。辻井氏は、毒性試験をしていないので、第I/II相試験をする
べきだと提案した。その後、新規プロトコルの適格性基準について議論が行われた。
PS 0-1のみが組み込まれた。CDDP投与量は、40mg/m2に維持されているが、急性毒性
のグレードに応じた投与量の変更が提案された。加藤氏が新規プロトコルの草案を作
成し、2007年3月までに電子メールで配布する予定である。
セッション 4: 上咽頭がん( NPC )に対する化学放射線療法の第 II 相研究( TxN2-3 )( NPC-I )
(7) 登録されたNPC-I患者の状態が国別に発表された。(患者数:中国3、インドネシア4、
マレーシア15、フィリピン3、タイ5。韓国とベトナムは、アジュバント化学療法を受
けない非プロトコル症例をそれぞれ、5および135と発表した)。
(8) 日本の大野 達也氏は、第II相研究、NPC-Iの累積データを発表した。登録された患者
数は28であった。患者全員が放射線療法を終えており、46%が中断の必要があった。
患者の83%が最低4サイクルの同時併用化学療法(CTX)を終えている。一方、36%はア
ジュバント化学療法を終えていない。血液毒性については、同時併用CTX中にグレー
ド4毒性を示した患者はおらず、アジュバントCTX中にグレード4を示した患者は4人い
た。非血液毒性については、1人の患者がグレード4の粘膜炎を示し、同時併用CTX中
に1人がグレード4の痛みを示し、アジュバントCTX中にグレード4毒性を示した患者は
いなかった。発表されている他の臨床研究と比較すると、ひどい悪心/嘔吐および白
血球減少の発生率は低かったが、重い粘膜炎の発生率は同じであった。CTスキャン検
査の遵守率(28例の内8例、29%)が低かったため、規定の6カ月の腫瘍除去率は計算
できなかった。さらなる追跡調査が必要と思われる。
(9)多くの研究所が治療後6カ月でCTスキャンを実施しなかったので、この方針は再検討
された。対象患者数25についても検討された。決定は次のセッションに延期された。
(10) タイのDr. Thephamongkholが、アジュバント化学療法の役割を発表した。同氏は文
献調査に基づき、遠隔転移の発生率は不適切な局所制御によるものと推定した。
セッション 5: NPC に対する化学放射線療法の第 II 相研究( T3-4N0-1 )( NPC-II )
(11) 大野氏は、NPC-II(アジュバントCTXを行わないプロトコル)の累積データを発表し
た。登録患者数は31であった。1人の患者は放射線療法を終えておらず、13%が中断を
要した。患者の86%は最低4サイクルのCTXを終えている。血液毒性については、1人の
患者がグレード4の貧血を起こした。グレード4の非血液毒性を示した患者はいなかっ
た。ひどい悪心/嘔吐および白血球減少の発生率は低いと考えられる。
(12)NPC研究の今後の計画について議論が行われた。プロトコルの変更は次のように決定
された。サンプルサイズは、NPC-IおよびIIの両方について、3年の全生存率を調べる
ために十分な程度に増やす必要がある。正確な数は、後日、小林国彦氏が計算を行う。
両方の研究は患者の登録を継続する。
セッション 6: 照射線量の品質保証/品質管理( QA/QC )
(13) マレーシアのDr. Tang Tieng Sweeが、MINT-SSDLシステムを含むマレーシアにおけ
る医学物理学の状況と、サラワク総合病院の状況について報告した。日本の水野 秀
之氏は、外部照射および一般的な監査システムの品質保証/品質管理(QA/QC)につ
いて説明した。また、日本のQA状況についても紹介した。
(14) 日本の中村 譲氏は、完了した密封小線源治療の訪問調査について報告した。この調
査は2002年度から2006年度にかけて8カ国の16の病院で実施された。Ir-HDRマシンの
放射能の測定値は、+/- 3%以内の偏差を示した。RTPが計算したポイントAの線量精度
は、+/- 4%以内の偏差を示した。結果は満足のいくものであると見なされた。
(15)日本の水野氏は、郵送線量調査について将来の計画を説明した。調査はガラス線量
計とタフ・ウォーター・ファントムの郵送サービスによって実施される。水野氏がこ
のシステムを2006年11月に中国で試したところ、線量偏差は+/-2%以内であった。郵
送調査は、2007年1月から2月にかけて韓国で行われる。2007年末までにすべての国で
調査を終えることを目指している。
セッション 7: 108 の陸軍中央病院と国立がん研究所の実地見学
(16) 参加者は108の陸軍中央病院の実地見学を行い、サイバーナイフ・システムを見学し
た。その後、国立がん研究所を訪問し、放射線腫瘍学部門を見学した。
セッション 8: ハノイの公開講座
(17) ワークショップの一環として、国立がん研究所(K病院)で第1回公開講座が開催さ
れた。医師、医学物理士、研究者を含むおよそ45人が参加した。FNCA参加者によって、
三つの講義が行われた(添付資料3.3ワークショッププログラム)
(18) 最後に、ベトナムにおける放射線療法の将来計画に関する特別講演が、ベトナム原
子力委員会(VAEC)のDr. Vuong Huu Tanによって行われた。同氏は、ベトナムにお
ける原子力の平和利用とVAECの役割について紹介した。
セッション 9: ホー・チ・ミン市腫瘍病院の実地見学
(19) 参加者は、ホー・チ・ミン市腫瘍病院の実地見学を行い、新リニアック(直線加速器)
センターを含む放射線腫瘍学部門を見学した。
ホー・チ・ミン市の開会式
(20)ホー・チ・ミン市腫瘍病院のDr. Dang Huy Quoc Thinhが司会を務めた。ホー・チ・
ミン市腫瘍病院の副院長のDr. Pham Xuan Dungが歓迎の辞を述べ、続いて、放射線医
学総合研究所(NIRS)の辻井 博彦氏がFNCAプロジェクトを紹介した。
セッション 10: ホー・チ・ミン市の公開講座
(21)ワークショップの一環として、第2回公開講座が開催された。外科腫瘍医、内科腫瘍
医、放射線腫瘍医、医学物理士および学生を含むおよそ80人が参加した。FNCA参加者
によって、五つの講義が行われた(添付資料3.3ワークショッププログラム)。
セッション 11: 将来計画とその他の活動
(22) 日本の立崎 英夫氏が、がん治療の状況に関するアンケート案を発表した。関係病院
で放射線療法および他の治療法を受けた患者数に対する調査が提案され、若干の修正
後に決定された。
(23) 辻井氏は、プロジェクトの次回評価が2007年度末になることをグループに伝えた。
したがって、すべての臨床データをそのときまでに用意する必要がある。
(24) 将来の計画が議論され、承認された。
計画の内容:より多くの患者を集めるために、NPC-IおよびNPC-IIプロトコルのスケ
ジュールが変更され、延長された。正確な数を計算し、後日通知する。追跡調査に使
用する様式は年に1度9月に送付される。データは、次回会合の1カ月前に、登録セン
ターである放射線医学総合研究所に送付する必要がある。外照射治療の新規QA/QC活
動は継続し、2007年に終える。Cervix IIの論文草案は現在作成中であり、国際ジャ
ーナルに投稿される。ASTRO、ESTROまたは各国の学会への報告が奨励される。
(25) 会合では、次回ワークショップの開催地として、フィリピン政府の了解を条件にフ
ィリピンが提案され、2008年1月21〜27日の暫定スケジュールが承認された。
セッション 12: ワークショップ議事録の起草
(26) 報告者が提出した議事録草案が討議され、修正の後採択された。 閉会式
(27) 参加者は、MEXT、K病院、ホー・チ・ミン市腫瘍病院、会合を準備した現地スタッフおよびJAIFに感謝の意を表明した。特に参加者は、このプロジェクトに対する日本政府からの引き続く支援に謝意を表明した。閉会の辞で辻井氏は、受入機関および参加者に感謝の意を表明すると共に、プロジェクトの将来に対する期待を述べた。 施設訪問
(28) 参加者は国立がん研究所が手配した施設訪問を行った。 |