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放射線治療 ワークショップ

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ワークショップ

FNCA 2009 放射線治療ワークショップ

2009年度FNCA放射線治療ワークショップ
概要

2010年1月18-21日
マレーシア、クチン, リバーサイド・マジェスティック・ホテル


背景

 2009年度放射線治療ワークショップが2010年1月18日から21日にかけマレーシアのクチンで開催されました。この会合はマレーシア厚生省と日本の文部科学省が共同で開催したもので、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ及びベトナムの9カ国から計17名が参加しました。
 本プロジェクトは、アジア地域で患者が多い子宮頸がん、上咽頭がん等に対する統一・基準化されたプロトコール(治療手順)を、参加各国の国際共同臨床試験を通じて確立し、アジア地域の放射線治療の水準向上をめざすことを目的としています。ワークショップでは、以下の5つのテーマに関する発表と議論が行われました。

ワークショップの参加者達
ワークショップの参加者達

局所進行子宮頸がんに対する化学放射線療法の第U相研究 (CERVIX-III)

 プロトコールCERVIX-IIIは、リニアック等を使って外側から患者に照射する外照射と、密封した小さな放射線源を体内に挿入し内側から患部を照射する内照射という標準的な2つの放射線治療法に加え、抗がん剤による化学療法を同時に行うものです。
 2003年4月から2006年3月までの間に合計120名の患者(中国18名、インドネシア5名、日本32名、韓国10名、マレーシア14名、フィリピン12名、タイ19名、ベトナム10名)が本試験に登録され、プロトコールCERVIX-IIIに従って、抗がん剤(シスプラチン)の毎週投与と放射線治療の同時併用療法で治療されました。治療による急性の副作用は許容範囲内、治療後4年の局所制御率および全生存率はそれぞれ78.4% および 60.4%でした。また遅発性の重篤な副作用の発生率は直腸で6.7%、膀胱では0%です。これらの治療成績はこれまでに米国やカナダで行われた大規模な臨床試験のそれと比較して遜色ないものです。以上の結果は、FNCAの化学放射線治療のプロトコールCERVIX-IIIがアジア地域の進行子宮頸がん患者にとって安全かつ有効であることを示しています。本治療法はFNCA参加各国においては、進行子宮頸がんに対する標準的な治療法として広く用いられるようになっています。今後さらに1年間は患者の経過観察を継続し、治療後5年の長期経過観察結果を検討する予定になっています。

局所進行子宮頸がんに対する拡大照射野による化学放射線療法の第U相研究 (CERVIX-IV)

 プロトコールCERVIX-IVは抗がん剤同時併用をしながら、傍大動脈リンパ領域を含んだ拡大照射野で放射線治療を行い、骨盤腔リンパ節への転移が見られる局所進行子宮頸がんに対する予防的放射線治療の有用性を確認するものです。2009年1月から、治療開始後2-4週に予防照射を開始するようにプロトコールを変更したことで安全性が向上し、遂行し易い治療になりました。現時点でのCERVIX-IVの有効性は、1年局所制御率100%、1年無増悪率82.9%、1年生存率96.2%と良好です。

上咽頭がんに対する化学放射線療法の第U相研究(any T N2-3) (NPC-I)

 プロトコールNPC-Iは、上咽頭がんで首のリンパ節に転移があり予後因子*1が重篤な症例に対し、放射線療法と化学療法を併用して行い、その後更に、再発・転移防止のためにアジュバント化学療法*2を行うプロトコールです。

 *1 予後因子:
  回復見込みの判断材料となる疾患の種類、症状、病期、病理像、部位、遺伝子、合併症、年齢等の要素。
 *2 アジュバント化学療法:
  治癒の確率を上げるために、放射線による根治治療の終了後または根治治療中または術後に行う化学療法。

 新規患者登録は2009年で閉じられています。全体の患者数は128名で、有効性は3年生存率が65%、局所制御が87%です。本試験の背景が、もともと遠隔転移を起こす可能性の高い患者が対象であること、治療前に経済的理由等で骨シンチ検査ができない患者を含んでおり治療時に既に転移していた可能性があること、放射線治療の治療技術がまだ高度でないことなどを考慮すると、満足すべき成績と考えられました。今後は影響している因子について、より詳細な解析を行う予定です。また、長期的な有効性や安全性も確認する必要があるため、経過観察が引き続き2年間行われます。

上咽頭がんに対する化学放射線療法の第U相研究(T3-4N0-1) (NPC-II)

 プロトコールNPC-IIは、頭蓋の方に局所的に進行した上咽頭がんで、首のリンパ節に転移がなく予後因子が軽微な症例に対し、放射線療法と化学療法を併用して行うプロトコールです。アジュバント化学療法を実施しない点がNPC-Tとの違いになります。
 各国の症例報告は、インドネシアから12例、マレーシアから6例、タイから1例、ベトナムから40例ありました。NPC-IIの抗がん剤の投与量は他の著名な国際的臨床研究より1割程度少なく、これにより有害な事象の発生が明らかに減り、患者への負担が軽減されています。6か月後の腫瘍消失率は96%、3年局所制御率は75%、生存率は80%でした。更なる症例追加と経過観察が必要とされました。
 次期の臨床試験として、広範な頚部リンパ節に転移がある進行上咽頭がん症例(NPC-Iと同様の対象)に対する「ネオ・アジュバント化学療法(先行的に実施する化学療法) +化学放射線併用療法」が提案され、試験治療を行うことになりました。現在、上咽頭がん患者が非常に多いために正式な治療開始まで相当の待機期間を要する地域もあります。先に抗がん剤を投与することにより、この待機期間を無駄にせず遠隔転移制御や全身治療が出来ることが期待されています。

放射線量測定における品質保証/品質管理(QA/QC)

 本活動は、多国間の共同研究を効果的に行うため、各施設が信頼できる線量測定法を整備することを目指しており、子宮頸がん治療に係る線量測定や線源の放射能校正等のQA/QCを対象にしています。
 前回ワークショップ以降、フィリピン、日本、マレーシア、タイの4カ国、4施設、14ビームに対する蛍光ガラス線量計を用いたリニアック出力線量調査を実施し、いずれも最適範囲内である±3%の良好な結果でした。今後、バングラデシュとベトナム(ハノイ)の治療施設に対する調査を予定しています。

視察と公開講座

 ワークショップに関連し、現地サラワク総合病院を視察し、また同病院で公開講座を開催しました。公開講座では「リウマチについての明るい話題と暗い話題、そして不明な部分」「FNCA放射線治療プロジェクトの概要」「サラワク総合病院の放射線治療の概要」「サイバーナイフによる定位放射線療法」「子宮頸がんの化学放射線併用療法」「日本の放射線治療の概要」が紹介され、医療従事者64名により聴講されました。


平成21年度FNCA放射線治療ワークショップ
議事録(仮訳)

平成21年1月18日(月)-21日(木)
マレーシア、サラワク州、クチン市


(1) 平成21年3月に行われた第10回アジア原子力協力フォーラム(FNCA)と同年12月に行われた第10回FNCA大臣級会合の合意に従って、平成21年度FNCA放射線治療ワークショップが平成22年1月18日から21日にかけてマレーシアサラワク州のクチン市内で開催された。会合は、マレーシア厚生省と日本の文部科学省(MEXT)の共催であり、日本の原子力安全研究協会(NSRA)との協力により実施された。FNCAの9加盟国、すなわちバングラデシュ、中国、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、そしてベトナムからの代表者がワークショップに参加した。

開会式

(2) 開催国を代表してサラワク州厚生局長ザルキフリ・ジャンタン氏が開会挨拶を行い、ワークショップは公式に開会した。彼は、科学技術の枠組における本プロジェクトの重要性を強調した。日本のプロジェクト・リーダーである辻井博彦氏が挨拶し、会合の目的とプログラムの概要を説明した。

(3) タン・ティンスィー氏が、「マレーシアにおける放射線治療の現状」を演題とする特別講義を行った。彼は、マレーシアにおける放射線治療の歴史と現状を説明した。

(4) 議題が採択され、議長と書記が選ばれた。 (別添1参照) すべての参加者が紹介された。

セッション1: 局所進行子宮頸がんに対する化学放射線治療の第2相試験 (CERVIX-III)

(5) 局所進行子宮頸がんに対する化学放射線併用療法(CCRT)の第2相試験の臨床データが参加各国の代表者から発表された。(患者数は、中国18名、インドネシア 5名、日本 32名、韓国10名、マレーシア14名、フィリピン12名、タイ19名、ベトナム10名). 追跡調査データの総括が日本の加藤真吾氏により発表された。第IIB期の患者60名と第IIIBの患者60名からなる合計120名の患者が登録され分析された。4年のフォローアップ率94%のデータでは、治療による急性副作用の発生および程度は許容範囲内であり、最後期の合併症は軽度あるいは中等度であった。グレード3-4の遅発性の直腸と膀胱の合併症は、それぞれ6.7%と0%だった。治療後4年の全生存率と局所制御率は、それぞれ60.4%と78.4%だった。障害の発生パターンについて、興味深い議論があった。障害の部位は18%が局所であり、34%が遠隔転移である。遠隔転移の障害が起こる主たる部位としては、傍大動脈リンパ節への転移が17名、鎖骨上リンパ節への転移が見られた患者は10名だった。CERVIX-IIIの結果は国際的に認知された臨床試験報告の成績と比肩できるか、或いはそれより優れたものになっている。これは、化学放射線併用療法がFNCA加盟国の局所進行子宮頸がん患者にとって、実現可能で効果的な治療法であることを示すものである。直腸および膀胱への線量と遅発毒性の関連が評価された。少なくとも治療後5年間、追跡調査を継続することが推奨された。

セッション2: 局所進行子宮頸がんに対する拡大照射野を用いた放射線治療と同時化学療法の第2相試験(CERVIX-IV)

(6) 局所進行子宮頸がんに対する拡大照射野を用いた放射線治療と同時化学療法の第2相試験(CERVIX-IV)の臨床データが参加各国の代表者から発表された。 (患者数は、バングラデシュ2名、中国3名、インドネシア8名、日本8名、韓国7名、マレーシア1名、フィリピン4名、タイ1名、ベトナム0名である。).加藤真吾氏が臨床試験データの総括を発表した。治療後1年の局所制御率は100%、1年無憎悪率は83%だった。しかし、登録患者数が、尚もって少ない。更なる患者登録が要請され、治療の安全性と効果を検証するために、より長い追跡調査が必要とされた。

(7) CERVIX-IV の臨床試験データに関する自由討議が行われた。患者登録上での難しさは、腹部および骨盤へのCTスキャンの実施がプロトコールに定められている点、骨盤と膨大動脈の部位が同時に治療される場合の毒性、そして治療費にある。毒性の減少が観察されたこと考慮して、昨年発表された修正プロトコールを今後継続することが決まった。毎週の化学療法の回数は、5-6回が良い。全体の治療時間は60日を超えるべきではない。データ集計センターは、平成22年4月までに修正した治療プロトコールを各国に送る予定である。

(8) 子宮頸がんの次回臨床試験に関する自由討議が行われた。実施中の様々な臨床試験が加藤氏から発表され、FNCA加盟国内で実施できる実現可能性が議論された。韓国のチョー氏は、韓国で実施している3週間置きにCDDP 75 mg/m2を投与する療法の臨床データを次回FNCA会合において発表するよう、求められた。

セッション3: 外照射治療のQA/QC

(9) 4カ国4治療センターの14ビームについて行われたガラス線量計を用いた相互比較測定報告が、水野秀之氏によって発表された。全14ビームはすべて最適水準内であった。

(10) 次回の調査スケジュールに関し更なる調査を必要とする国として、バングラデシュとベトナム(ハノイ)が残っている。

(11) 水野秀之氏がFNCA加盟国における医療物理士の状況調査の進捗を発表し、発表中に欠落していた情報も更新した。

セッション4: 上咽頭がん(TxN2-3)に対する化学放射線療法の第2相試験(NPC-I)

(12) 上咽頭がん(TxN2-3)に対する化学放射線療法の第2相試験( NPC-I)の最近の臨床データが参加各国の代表者から発表された。(患者数は、バングラデシュ1名、中国5名、インドネシア5名、日本0名、韓国5名、マレーシア25名、フィリピン5名、タイ5名、ベトナム82名である。) 大野達也委員が、他の臨床試験との比較を示しながら、FNCA NPC-I臨床試験結果に関する総括と評価を発表した。 彼は、このFNCA臨床試験では他の試験に比べ全生存率が下がってきている点を強調した。このため、現在のNPC-Iプロトコールを改善するための議論を実施した。N2とN3別、そして骨シンチの有無に着目したサブグループ分析が必要である。更に、臨床試験の比較対照のため、放射線治療のみ行われた患者からなる治療群が必要である。

(13) 新規患者登録は2009年に閉じている。総患者数は128名である。長期間における有効性と遅発毒性を確認するために更なる追跡調査が必要である。

セッション5: 上咽頭がん(T3-4 N0-1) に対する化学放射線療法の第2相試験 (NPC-II)

(14) 上咽頭がん(T3-4 N0-1)に対する化学放射線療法の第2相試験( NPC-II)における59名の患者からなる最近の臨床データが参加各国の代表者から発表された。患者数は、バングラデシュ0名、中国0名、インドネシア12名、日本0名、韓国0名、マレーシア6名、フィリピン0名、タイ1名、ベトナム40名である。大野達也委員が、FNCA NPC-II臨床試験結果に関する総括と評価を発表した。患者の76%が6サイクルの化学療法を完了している。シスプラチンの平均投与量である165mg/m2という数値は、チャン氏が実施した臨床試験における値174-187 mg/m2より、若干少ない。吐き気、嘔吐、白血球減少の発生もまた、チャン氏の試験より少ない。毒性は制御可能なものばかりであったが、数名がグレードIVの毒性を示した。腫瘍消失率(CR)は96%であり、これはT-3からT-4という対象病期を考えれば満足できる結果である。36ヶ月の平均追跡期間における3年全生存率は80%である。

(15) 登録患者数は59名である。新規患者の登録が提案された。その一方で、長期間における有効性と遅発毒性を確認するために更なる追跡調査が必要とされた。

(16) 自由討議において、大野委員がNPC-IのT-3とT-4のサブグループを分析し、局所制御の観点でNPC-IIのデータと比較することを提案した。

セッション6: サラワク総合病院放射線治療部門の視察

(17) ワークショップ参加者はサラワク総合病院の視察を実施し、治療部門を見学した。すべての参加者は、治療部門による歓迎に大変感謝した。本部門で成功をおさめている疼痛管理プログラムが参加者間で共有された。

セッション 7: 将来計画と他の活動

(18) 放射線治療が治療の一役を担える他のがんについて、議論があった。合意には達しなかった。更なる調査が推奨された。

(19) 臨床試験NPC-Iの初期の結果が、国際誌での公開のため投稿されるだろう。5年での臨床試験結果を得るため、追跡調査が継続されるだろう。

(20) 臨床試験NPC-III は、標準的な技術あるいはIMRTで実施されるだろう。シスプラチンと5-FUを2-3サイクル投与する化学療法が、ネオ・アジュバント療法として使われるだろう。

(21) 参加国内でのFNCAプロトコールの受入られ方につき、別添2参照。

(22) 参加者は、次回ワークショップについて、政府の合意を条件として日本開催を提案した。仮の開催日程は2010年11月である。

(23) 国内および国際会議においてFNCAの結果を発表することの重要性が、強調された。

セッション8: ワークショップ議事録草稿

(24) 会合議事録の草稿が示され、議論と改訂作業が行われ、その後採択された。

閉会式

(25) 参加者は開催委員会、特にタン・スウィンシー氏とC・R・ビーナ・デビ氏のすぐれたワークショップ運営と手厚いもてなしに感謝を表明し、辻井博彦主査のリーダーシップと原子力安全研究協会に感謝を表明した。また特に、日本文部科学省に本プロジェクトへの支援継続に対する感謝を強調した。閉会の辞は辻井博彦主査代理として井上武宏委員が行い、本プロジェクトの将来に対する期待並びに主催者と参加者に感謝を表明した。マレーシア原子力庁(Nuclear Malaysia)副長官(実務担当)のモハメド・ノール・モハメド・ユヌス氏が公式にワークショップを閉会した。

セッション9: 公開講座

(26) ワークショップの一環として、サラワク総合病院において公開講座が開催された。辻井博彦主査代理として井上武宏委員が開会の辞を述べ、サラワク総合病院院長であるジュナイディ・ディキ氏が歓迎挨拶を述べた。5人の講師による5講演があった。(プログラムは別添1参照). 放射線腫瘍医、医療物理士、放射線治療技師、看護士、他部門の医師および医学生からなる64名の聴講があった。

別添 2 : 参加国内でのFNCAプロトコールの受入られ方

国名 NPC I NPC II CX I CX II CX III CX IV
バングラデシュ -
中国 -
インドネシア
日本 -
韓国
マレーシア -
フィリピン
タイ
中国 -

= 受入られている、 = 完全には受け入れられていない

参加国に対してFNCAプロトコールがもたらしたインパクト

バングラデシュ
 バングラデシュでは、世界保健機関(WHO)調査によると、毎年20万人以上のがんの新規患者が診察されている。がん治療センターは充分なものではない。そのため国立病院における患者の待機時間が非常に長いものになっている。ネオ・アジュバント化学療法は治療の遅延のため色々なケースで使用されている。現在のバングラデシュでは、進行上咽頭がんと子宮頸がん治療に対しては化学放射線併用療法が好まれ、実施されている。FNCAは共に活動し、研究結果を相互比較し、子宮頸がんと上咽頭がん患者のより良い治療のために治療法を国内普及させるための良好な討論の場になっている。

中国
 CERVIX-IIIは私の病院での標準的治療法になっている。今後、新規のCERVIX-IV適用患者も増えるだろう。 医療保険の適用により、80-90%の患者は充分な治療を受けることが出来ている。昨年からは、IMRTによる治療も開始した。そのため、プロトコールに従い、NPC-IIとNPC-IIIにより多くの患者登録を行うだろう。

インドネシア
 一般的には、子宮頸がんと上咽頭がんのFNCAプロトコールは受け入れられており、我々の治療手順のひとつとして導入されている。障害としては、婦人科医師との治療方針の違いに起因し、スラバヤにおける子宮頸がんプロトコールの登録が困難になっている点がある。経済的に困難な部分が特に化学療法ではあり、多くの患者(全体の60%)が低所得で社会経済的な問題を抱えている。沢山の臨床結果が存在しているので、他の専門家全員がFNCAのプロトコールを理解し、そして受け入れているという訳ではない。

韓国
 現在、5つの大病院が局所進行子宮頸がん治療プロトコールとしてCERVIX-IIを導入している。彼らは、過去5年間における治療結果に非常に満足している。プロトコールCERVIX-IIIは、既にKyung-Hee 大学病院および Eul-Ji 大学病院を含めた幾つかの病院で導入されている。優れた治療結果を期待して今後2年に沢山の使用例が登録されるだろう。

マレーシア
 プロトコールCERVIX-IIIは、我々の部門の子宮頸がん治療に導入されている。この研究成果は2009年4月に開催されたICARO(放射線治療の進歩に関する国際会議)で発表された。プロトコールNPC-Iは、我々の部門の標準的治療として受け入れられている。プロトコールNPC-IIは上咽頭がん症例で観察されている遠隔転移のため、若干の難しさが出ている。修正後のプロトコールCERVIX-IVは実施し易いものなので、適用が増えるだろう。FNCAの会合は、そこで発表される治療結果と参加者との議論とが我々の治療行為に直接的な効果を与えており、我々にとって非常に重要なものになっている。FNCAはアジア地域の患者に焦点を絞っており、その治療成果が直接我々の患者にとっての実益になっている。このため、これまでのFNCA会合が我々の国にとって非常に有益であったと感じている。我々にとって、西洋における臨床試験のデータを持つことより、アジア地域で実施した臨床試験結果を保有することが、より実用的であり有益である。

フィリピン
 FNCAの諸活動は、子宮頸がんと上咽頭がん治療に対する放射線治療法の利用において、非常に大きな影響力を持っている。FNCAの他の臨床試験で使われたプロトコールが今では子宮頸がんと上咽頭がん治療における現在の臨床業務の一部になっている。FNCAの諸活動への参加は、アジア地域での放射線治療業務における相違点と共通点を正しく認識させる機会を我々に与えている。こうした機会は、これらのがんについての我々の理解を本当に深めてきた。プロジェクトが参加国に与えた非常に大きな利益に鑑み、これらの活動が活発に継続することが望まれる。

タイ
 私の病院では、プロトコールCERVIX-Iが化学療法で対処する前には標準的治療法であった。プロトコールCERVIX-IIは、私が担当したある研修医の小研究に取り上げられてきた。研修後、彼女は医薬分子構造設計(SBDD:Structure-Based Drug Design)を彼女自身で考案し、彼女の病院で標準的に投与した。彼女はタイの国家的研究フォーラムに膨大なデータを提出し、2009年の最高位を受賞した。 プロトコールCERVIX-IIIは標準的な治療法、臨床の手引きであり、医学生と研修医には放射線治療の訓練において馴染み深いものになっている。プロトコールNPC-IとNPC-IIはこれまで議論され続けてきたが、最終的に腫瘍医を説得しきれずにいる。彼らは相変わらず私が服薬遵守より遠隔転移を恐れているものと考えており、そのため、彼らはINT0099療法に固執している。

ベトナム
 子宮頸がんと上咽頭がんに対するプロトコールは、私達の病院の標準プロトコールになった。私は、FNCA会合参加者とだけではなく病院の若いスタッフと最新の知見を共有することが出来る。FNCAに参加する前は、私は子宮頸がんと上咽頭がんの放射線化学併用療法には、さほど興味がなかった。しかし、毎年のFNCA会合を通して、私は今やこのプロトコールを採用するよう同僚を説得出来るまでになっている。


2009年度FNCA放射線治療ワークショップ
プログラム

2010年1月18-21日
マレーシア、サラワク州、クチン市


開催機関 : マレーシア厚生省(MOH)及び日本文部科学省
実施機関 : (財)原子力安全研究協会(NSRA)
日程 : 2010年1月18日-21日
開催場所 : マレーシア、クチン市内リバーサイド・マジェスティック・ホテル

1月17日日曜日

クチン着、ホテルに移動

1日目 1月18日月曜日

08:30-09:00 参加登録
09:00-10:00 開会式
座長: Tang Tieng Swee 氏(マレーシア)
歓迎挨拶: マレーシア厚生大臣または同省代表
挨拶: 辻井博彦氏(日本)プロジェクト・リーダー
特別講演: 「マレーシアにおける放射線治療の現状」
              Tang Tieng Swee 氏(マレーシア)
議事の採択
集合写真
10:00-10:15 休憩
10:15-12:00 セッション1: 局所進行子宮頸がんに対する化学放射線療法の第II相研究(CERVIX-III)
共同議長:
  Kulllathorn Thephamongkhol (タイ) (書記)
  Nana Supriana (インドネシア)
1) 各国のフォローアップ(追跡調査)データ報告
  中国
  インドネシア
  日本
  韓国
  マレーシア
  フィリピン
  タイ
  ベトナム
2) フォローアップ・データのまとめ
  加藤真吾氏(日本)
3) 議論
12:00-13:00 昼食
13:00-16:00 セッション2: 局所進行子宮頸がんに対する拡大照射野による化学放射線療法の第II相研究(CERVIX-IV)
共同議長:
  Rey H. de los Reyes氏(フィリピン)(書記)
  Parvin A. Banu氏(バングラデシュ)
1) 各国の臨床データの発表
  中国
  インドネシア
  日本
  韓国
  マレーシア
  フィリピン
  タイ
  バングラデシュ
2) 臨床データのまとめ
  加藤真吾氏(日本)
3) 議論
4) 実施中の臨床試験についての検証
  加藤真吾氏(日本)
5) 議論
16:00-16:20 休憩
16:20-18:00 セッション3: 外照射治療における品質保証/品質管理(QA/QC)
共同議長:
  Tang Tieng Swee氏(マレーシア)(書記)
  Chul-Koo Cho氏(韓国)
1) 外照射のQA/QC、 現地調査の報告
  水野秀之氏(日本)
2) 今後の調査の予定
  水野秀之氏(日本)
3) 議論

2日目 1月19日火曜日

09:00-12:00




09:00-10:30
セッション4: 上咽頭がんに対する化学放射線療法の第II相研究(TxN2-3)(NPC-I)
共同議長:
  Beena Devi氏(マレーシア)(書記)
  井上武宏氏(日本)
1) 各国の臨床データの発表
  バングラデシュ
  中国
  インドネシア
  韓国
  マレーシア
  フィリピン
  タイ
  ベトナム
2) 臨床データのまとめ
  大野達也氏(日本)
3) 議論
10:30-10:50 休憩
10:50-12:00 4) 治療結果についての評価
  大野達也氏(日本)
5) 議論
12:00-13:00 昼食
13:00-17:00




13:00-14:30
セッション5: 上咽頭がんに対する化学放射線療法の第II相研究(T3-4N0-3)(NPC-II)
共同議長:
  Dang Huy Quoc Thinh氏(ベトナム)(書記)
  Dyah Erawati氏(インドネシア)
1) 各国の臨床データの発表
  インドネシア
  マレーシア
  タイ
  ベトナム
2) 臨床データのまとめ
  大野達也氏(日本)
3) 議論
14:50-17:00 4) 治療結果についての評価
  大野達也氏(日本)
5) 議論
6) 実施中の臨床試験についての検証
  大野達也氏(日本)
7) 議論(次の臨床試験の申し入れ)

3日目 1月20日水曜日

09:00-13:00 セッション6: 視察 サラワク総合病院放射線治療部門
13:00-14:00 昼食
14:00-17:00



14:00-15:30
セッション7: 将来計画と他の諸活動
共同議長:
  辻井博彦氏(日本)
  Xu Xiaoting氏(中国)
次の子宮頸がんとNPCのプロトコールについて
1) 可能となる次の子宮頸がんのプロトコールについて議論
2) 可能となる次のNPCのプロトコールについて議論
15:30-15:45 休憩
15:45-17:00 次回ワークショップおよびその他について
3) 次回ワークショップ開催スケジュール
4) 他の活動について

4日目 1月21日木曜日

09:00-11:00 セッション8: ワークショップ議事録草稿
共同議長:
  Rey H. de los Reyes氏(フィリピン)
  Chul-Koo Cho氏(韓国)
1) 議論
2) 議事録採択
11:00-11:15 休憩
11:15-12:00 閉会式
閉会の辞: 辻井博彦氏(日本)
挨拶: Muhd Noor Muhd YUNUS氏 FNCAマレーシアコーディネーター
        マレーシア原子力庁(Nuclear Malaysia)副長官(技術サービス)
12:00-13:00 昼食
13:30-15:00 セッション 9: オープン・レクチャー
共同議長:
  Tang Tieng Swee氏(マレーシア)
  Beena Devi氏(マレーシア)
開会挨拶: 辻井博彦氏(日本) プロジェクト・リーダー
歓迎の辞: サラワク総合病院 院長Dr. Junaidi Diki氏
講演
1) 「リウマチについての明るい話題と暗い話題、そして不明な部分」
  Teh Cheng Lay氏 サラワク総合病院(マレーシア)
2) 「FNCA医療プロジェクトの紹介」
  加藤真吾氏(日本)
3) 「サラワク総合病院における放射線治療概説」
  Beena Devi氏 サラワク総合病院(マレーシア)
4) 「頭蓋外腫瘍治療におけるサイバーナイフ・システムを用いた
  定位放射線療法」
  Chul-Koo Cho氏 (韓国)
5)「子宮頸がんのための化学放射線併用療法 」
  Kulllathorn Thephamongkhol氏 (タイ)
6)「日本の放射線治療の現状と未来
  井上武宏氏(日本)
閉会の辞: Tang Tieng Swee氏(マレーシア)


2009年度FNCA放射線治療ワークショップ
参加者リスト

2010年1月18-21日
マレーシア、サラワク州、クチン市


バングラデシュ

Dr. PARVIN AKHTER BANU
Senior Consultant,
Senior radiation oncologist, The cancer Unit
Delta Hospitals Limited

中国

Dr. Xu Xiaoting
Doctor
The First Affiliated Hospital of Suzhou University

インドネシア

Dr. Nana Supriana
Medical Staff, Dept.Radiotherapy
Cipto Mangunkusumo Hospital

Dr. Dyah Erawati
Head of Radiotherapy Department, Divisin of Radiotherapy
Dr. Soetomo General Hospital

日本

辻井 博彦
(独)放射線医学総合研究所 理事

井上 武宏
大阪大学大学院 医学系研究科 放射線治療学 教授

小林 国彦
埼玉医科大学 国際医療センター 呼吸器病センター 内科 教授

加藤 真吾
(独)放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター病院 臨床検査室 室長

大野 達也
群馬大学 重粒子線医学研究センター 医学生物学部門 准教授

水野 秀之
(独)放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター 放射線治療管理室研究員

加藤 毅彦
(財)原子力安全研究協会 国際研究部 調査役

韓国

Dr. Chul-Koo Cho
Head, Department of Radiation Oncology
Korea Cancer Center Hospital

マレーシア

Dr. Tang Tieng Swee
Senior Medical Physicist, Department of Radiotherapy & Oncology
Sarawak General Hospital

Dr. C.R. Beena Devi
Senior Consultant Clinical Oncologist, Department of Radiotherapy & Oncology
Sarawak General Hospital

フィリピン

Dr. Rey H. De los Reyes
Chairman, Department of Obsterrics and Gynecology
Jose R. Reyes Memorial Medical Center

タイ

Dr. Kulllathorn Thephamongkhol
Lecturer
Siriraj Hospital, Mahidol University

ベトナム

Dr. DANG HUY QUOC THINH
Vice Director - Head of department of RT
Ho Chi Minh City Oncology Hospital



Forum for Nuclear Cooperation in Asia