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放射線治療 ワークショップ

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ワークショップ


FNCA 2012 放射線治療ワークショップ

2012年度 FNCA 放射線治療プロジェクトワークショップ
概要

2013年1月15日〜1月18日
タイ バンコク


 2012年度放射線治療ワークショップが2013年1月15日から18日にかけてタイのバンコクにおいて開催されました。本ワークショップはタイ原子力技術研究所(TINT)、マヒドール大学シリラート病院および日本文部科学省(MEXT)が共同で開催したものです。バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナムのFNCA11カ国、また国際原子力機関(IAEA)からのオブザーバーとして原子力科学技術に関する研究、開発および訓練のための地域協力協定(RCA)の加盟国であるミャンマー、パキスタン、スリランカ3カ国から計27名が参加しました。本プロジェクトは、アジア地域で患者が多い子宮頸がん、上咽頭がん等に対する統一・基準化されたプロトコール(治療手順)を、参加国間の国際共同臨床試験を通じて確立し、アジア地域の放射線治療の水準向上を目指すことを目的としています。

開会式
 マヒドール大学シリラート病院医学部放射線治療科准教授であるYaowalak Chansilpa氏が本セッションの司会を務め、同院放射線治療科科長・准教授のVutisiri Veerasarn氏の歓迎挨拶の後、放射線医学総合研究所(NIRS)の前理事である辻井博彦氏より開会の挨拶が行われました。

   

 マヒドール大学シリラート病院医学部助教授のNantakan Apivarodom氏およびKullathorn Thephamongkhol氏が乳がんに関して特別講演を行い、2D、3DおよびIMRTを含めた全乳房照射の原理および手法についての発表がありました。乳がんに対する術中乳房部分照射(IORT)も紹介され、その一般概念と問題点が議論されました。

   

局所進行子宮頸がんに対する拡大照射野を用いた放射線治療と同時化学療法の第II相試験(CERVIX-IV)
 プロトコールCERVIX-IVは、抗がん剤を同時併用しながら、傍大動脈リンパ領域を含んだ拡大照射で放射線治療を行い、骨盤腔リンパ節への転移が見られる局所進行子宮頸がんに対する予防的放射線治療の有用性を確認するものです。2009年1月から、治療開始後2-4週に予防照射を開始するようにプロトコールを変更したことで安全性が向上し、遂行し易い治療になりました。
 本プロトコールへ登録されている登録患者は83名で(本ワークショップ時点で)、そのうち79名が評価可能と判断されました。(ただし、本セッションでは、バングラデシュ(21名)、中国(6名)、インドネシア(6名)、日本(19名)、韓国(7名)、マレーシア(5名)、フィリピン(4名)、タイ(4名)、ベトナム(5名)の合計77名分が発表されました。)登録患者83名の半数はステージIIB期であり、残りの半数はIIIB期で2012年末時点でのフォローアップ率は99%(78/79例)でした。中間解析ではCERVIX-IVは、治療後2年間の無増悪性生存(PFS)*1の割合がCERVIX-IIIのリンパ節転移陽性の症例よりも良好であることが示されました。本プロトコールでは、目標患者数100名に到達するまで患者の募集を継続することとしました。

*1 無増悪生存(PFS):治療中(後)、がんの進行が見られない状態で患者が生存している期間の長さ

    

上咽頭がん(any T、N2-3)に対する化学放射線療法の第II相試験(NPC-I)
 プロトコールNPC-Iは、上咽頭がんで首のリンパ節に転移があり予後因子*2が重篤な症例に対し、放射線療法と化学療法を併用して行い、その後さらに再発・転移防止のためにアジュバント化学療法を行うプロトコールです。
 追跡調査データとして、これまでに登録された121名の患者のうち、77名の生存患者の経過観察期間中央値は46カ月、3年局所制御率および生存率はそれぞれ89%、66%だったことが報告されました。
 また、NPC-I臨床試験の結果が、Journal of Radiation Research(2012年)に掲載されたことが査読者のコメントとともに報告されました。参加者からは、今後発表していく論文では、様々な文化背景と制約事項を抱えたアジア諸国で多施設間共同臨床試験を実施する重要性について強調するべきである、との意見が挙げられました。

*2 予後因子:回復見込みの判断材料となる疾患の種類、症状、病気、病理像、部位、遺伝子、合併症、年齢等の要素

   

上咽頭がん(T3-4、N0-1)に対する放射線化学療法に対する第II相試験(NPC-II)
 プロトコールNPC-IIは、頭蓋の方に局所的に進行した上咽頭がんで、首のリンパ節に転移がなく予後因子が軽微な症例に対し、放射線療法と化学療法を併用して行うプロトコールです。アジュバント化学療法を実施しない点がNPC-Iとの違いです。本プロトコールへの合計70名の登録患者のデータ概要が発表されました。(ただし、本セッション内では、バングラデシュ(0名)、中国(0名)、インドネシア(13名)、日本(0名)、韓国(0名)、マレーシア(6名)、フィリピン(0名)、タイ(1名)、ベトナム(54名)の合計74名分が発表されました)。
  NPC-IプロトコールのT3-4、N0-1*3サブグループと比較した時、NPC-IIの局所制御率が予想よりも低い理由について議論されました。放射線治療の技術上の差(2Dもしくは3Dを使用することによる差)、サブグループの維持化学療法(アジュバント化学療法)*4の有無または自然経過といった複数の仮説が提示されました。

*3 TNM分類表:がんの進行度を、どのくらいの大きさになっているか、周辺のリンパ節にどれほど転移しているか、遠隔臓器への転移があるか、の3つの要素(T:原発腫瘍、N:リンパ節転移、M:遠隔転移)で決める国際的な規約
*4 アジュバント化学療法:治療の確率を上げるために放射線治療終了後に行う化学療法

   

新規加盟国からのカントリーレポート、FNCAとIAEA/RCAの協力
 FNCAへの新規参加国であるカザフスタンからカントリーレポートとして、セメイ国立大学のTasbolat Adylkhanov氏よりカザフスタンにおける放射線治療の現状について発表がありました。
 続いて、IAEA/RCAからのオブザーバーとして、パキスタン原子力委員会(PAEC)核医学腫瘍研究所(INMOL)のMasooma Riaz氏が乳がんおよび子宮頸がんの発生率および治療について、スリランカ国立がんセンターのM. A. Yasantha Ariyaratne氏がスリランカにおける上咽頭がんに対する治療の現状について、ミャンマー、マンダレー総合病院のKhin Cho Win氏が自国の放射線治療の現状についてそれぞれ発表しました。

Tasbolat Adylkhanov氏
(カザフスタン)
Masooma Riaz氏
(パキスタン)
M.A Yasantha Ariyaratne氏
(スリランカ)
Khin Cho Win氏
(ミャンマー)

上咽頭がんに対する同時化学放射線療法(CCRT)の第I/II相試験(NPC-III)
 プロトコールNPC-IIIは、頸部リンパ節に転移のある上咽頭がん症例に対し、導入化学療法を行った後、放射線療法と化学療法を同時併用するプロトコールです。放射線療法と化学療法を同時併用した後で、化学療法を追加するプロトコール(NPC-I)との違いは、化学療法の順番を同時併用の前に行う点にあります。2012年末時点で本プロトコールへ登録されている41名の患者(男性29名、女性12名)のデータが発表されました。(ただし、本セッションでは、 バングラデシュ(1名)、中国(4名)、インドネシア(6名)、日本(0名)、韓国(0名)、マレーシア(9名)、フィリピン(7名)、タイ(0名)、ベトナム(10名)で、合計37名分が発表されました。)
 100%の患者は導入化学療法を受け、73%は同時化学放射線療法(CCRT)を受けました。(化学療法4サイクル以上)17名(41%)がCCRTを中断し、毒性はNPC-Iに比べ軽度でした。ほとんどの国では、プロトコールは忍容性があり、より多くの症例登録が期待できることが明らかとなりました。

   

新プロトコール
 局所進行子宮頸がんに対する化学放射線療法の第II相試験(CERVIX-III)およびNPC-Iの臨床試験の終了に伴い、本セッションでは新しいプロトコールの臨床研究対象として子宮頸がんに対するプロトコール(CERVIX-V)および乳がんに対するプロトコール(BREAST-I)について日本より提案があり、検討がなされました。

 CERVIX-Vに対する臨床研究では、以下の3案が提案されました。

1. 3次元(3D)画像誘導小線源治療(IGBT)に関するパイロット研究
2. 局所進行子宮頸部腺がんに対するCCRTの第II相試験
3. 骨盤リンパ節転移を有する局所進行子宮頸部扁平上皮がん患者に対する予防的傍大動脈放射線療法の有無でCCRTを比較するランダム化比較試験*5

 1は、近年行われるようになってきた治療法で、子宮頸がんの小線源治療でCTやMRIなどの3次元画像を治療計画に応用するものです。本臨床研究の目的、主評価項目、副評価項目および試験の概要発表に続き、意見交換が行われました。2については、疾患頻度が低いため現時点では臨床試験は行わず、今後の会合で引き続き検討することとなりました。3は、CERVIX-IIIとCERVIX-IVの優劣を比較する内容です。ランダム化臨床試験の実現性について議論があり、CERVIX-IVの臨床試験の最終結果を見るまで本臨床試験についても検討していくことになりました。
 全体的な議論の後、1についてのパイロット試験を行っていくことが承認されました。

*5 ランダム化比較試験:被験者を無作為に2つのグループに分けて両方の治療法の有効性を比較する臨床試験。治療方法の優劣をより正確に確認することができる。

    

 続いて、乳がんに対するプロトコールとして、「乳房温存術および乳房切除術後の患者に対して寡分割放射線療法を用いた乳がんのプロトコール」が提案されました。
 従来の分割照射と比較して、本療法の安全性と有効性を確認すること、また、短期療法であることから、利便性および費用対効果を確認することも目標とされました。本臨床試験プロトコールは参加者の同意を得、試験プロトコールについて最終的な細目の検討を行い、本ワークショップ終了後に、症例登録を開始することが合意されました。その後の議論で挙げられた意見を取り入れ、本ワークショップ終了までにプロトコール改訂版を配布することとなりました。

外部照射治療の品質保証/品質管理(QA/QC)
 本活動は、多国間の共同研究を効果的に行うため、各施設が信頼できる線量測定法を整備することを目指して、子宮頸がん治療に係わる線量測定や線源の放射能校正等のQA/QCを対象としています。本ワークショップでは、日本とタイから発表報告がありました。
 日本からは、本活動において、これまで10治療施設15設備の42ビーム(4-18 MV)で行われた、ガラス線量計を用いたリニアック(X線を発生させる装置)出力の測定調査の概要が報告されました。本年度は2012年5月にベトナム・ハノイの国立がん病院を訪問して測定調査を行ったことが報告されました。測定結果は1%で最適水準内でした。今後は、カザフスタンおよびオブザーバー参加のミャンマーなどでもさらにQAを行う予定です。

 続いてタイより、放射線療法の先進技術に関するQAについて講演が行われ、その中でQA/QCの必要性、技術、方法および外照射治療で頻発する放射線療法の過誤の類型について述べられました。

    

テクニカルビジット
 3日目にはマヒドール大学シリラート病院を訪問し、病院概要の説明を受けた後、放射線治療の現場等見学しました。また、本病院でのがん登録プログラムについての紹介がありました。同じくマヒドール大学傘下のシリラートピヤマハラートガルン病院(SIPH)も訪問し、病院概要およびタイ伝統医学について説明を受けました。

    

今後の予定等
 次回のワークショップは、韓国にて2013年11月25〜30日(仮:第一候補)または2013年11月18〜23日(仮:第二候補)に行われることが決まりました。参加者に対して今後の学会においてFNCAプロトコールの試験結果を発表していくことが奨励されました。

    

閉会
 辻井博彦氏が閉会の辞を述べ、タイおよび参加者の貢献に対する感謝と本プロジェクトに対する将来の期待を表明し、ワークショップは閉会しました。

一般公開講座
 ワークショップの一環として、Jasmine Executive Suiteで一般公開講座が開催され、1) FNCA放射線治療プロジェクトの活動内容、2) 画像誘導適応小線源治療(IGAB)、3) 肺の体幹部定位放射線治療(SBRT)、4) 粒子線治療、5) サイバーナイフについて講演が行われました。病院関係者や学生、医師などおよそ60名が参加しました。

    


2012年度 FNCA 放射線治療プロジェクトワークショップ
議事録

2013年1月15日〜1月18日
タイ バンコク


(1) アジア原子力協力フォーラム(FNCA)第13回FNCAコーディネーター会議の合意に従って、2012年度 FNCA放射線治療ワークショップが2013年1月15から18日にかけてタイのバンコクで開催された。会合はタイ原子力技術研究所(TINT)、マヒドール大学シリラート病院および日本文部科学省(MEXT)によって共催された。FNCAの11加盟国、すなわち、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナムから、また国際原子力機関(IAEA)からのオブザーバーとして原子力科学技術に関する研究、開発および訓練のための地域協力協定(RCA)の3加盟国であるミャンマー、パキスタン、スリランカが同ワークショップに参加した。

開会式

(2) マヒドール大学シリラート病院医学部放射線治療科准教授であるYaowalak Chansilpa氏が本セッションの司会を行った。
 マヒドール大学シリラート病院医学部放射線治療科科長・准教授のVutisiri Veerasarn氏が本ワークショップを公式に開催した。同氏は、FNCAプロジェクトに対するタイの協力を強調した。同氏は開会の挨拶も行い、本ワークショップに対する全面的な支援を行うとした。その後、放射線医学総合研究所(NIRS)の前理事である辻井博彦氏が挨拶を行った。

(3) マヒドール大学シリラート病院医学部助教授のNantakan Apivarodom氏およびKullathorn Thephamongkhol氏が乳がんに関して特別講演を行った。同氏らは、2D、3DおよびIMRTを含めて、全乳房照射の原理および手法について述べた。乳がんに対する術中乳房部分照射(IORT)も紹介され、その一般概念と問題点が議論された。

(4) 5名の新メンバーである、日本の高井良尋氏、カザフスタンのTasbolat Adylkhanov氏、ミャンマーのKhin Cho Win氏、パキスタンのMasooma Riaz氏、スリランカのYasantha Ariyaratne氏が自己紹介を行った。

(5) アジェンダが採択され、セッション議長と書記係が選出された (プログラム参照) 。

セッション1: 局所進行子宮頸がんに対する拡大照射野を用いた放射線治療と同時化学療法の第II相試験(CERVIX-IV)

(6) 埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科教授の加藤真吾氏がCERVIX-IVのプロトコールを紹介し、追跡調査データの概要についても報告した。本プロトコールには83名が登録されており、その半数はステージIIB期であり、残りの半数はIIIB期であった。2012年末時点でのフォローアップ率は99%(78/79例)であった。局所進行子宮頸がんに対する拡大照射野を用いた放射線治療と同時化学療法の第II相試験(CERVIX-IV)の臨床データが各参加国の代表者により発表され、以下の患者数が報告された。バングラデシュ(21名)、中国(6名)、インドネシア(6名)、日本(19名)、韓国(7名)、マレーシア(5名)、フィリピン(4名)、タイ(4名)、ベトナム(5名)。
 放射線医学総合研究所(NIRS)重粒子医科学センター病院医師の若月優氏が臨床データの概要を報告した。全参加国から登録された総患者数(83名)のうち79名は評価可能であるとされた。

(7) その後、CERVIX-IVの臨床データに関する自由討議が行われた。本プロトコールの試験に関して、目標患者数100名に到達するまで患者の募集を継続することが決定された。

セッション2: 上咽頭がん(any T、N2-3)に対する化学放射線療法の第II相試験(NPC-I)

(8) 最初に、群馬大学重粒子線医学研究センター教授の大野達也氏がプロトコールおよび追跡調査データの概要を報告した。121名の登録患者中77名の生存患者の経過観察期間中央値は46カ月である。3年局所制御率および生存率はそれぞれ89%および66%であった。
 NPC-I臨床試験の結果は、Journal of Radiation Research(2012年)に掲載された。加えて、査読者のコメントが紹介され、その内容について討議された。今後発表する論文では、様々な文化背景と制約事項を抱えたアジア諸国での多施設間共同臨床試験の実施の重要性を強調するべきである、との意見がだされた。

(9) その後、本セッションの自由討議が行われた。

セッション3: 上咽頭がん(T3-4、N0-1)に対する放射線化学療法に対する第II相試験(NPC-II)

(10) 若月優氏がNPC-IIのプロトコールを紹介した。NPC(T3-4、N0-1)に対する放射線化学療法に対する第II相試験(NPC-II)の臨床データが参加各国の代表者により発表され、以下の患者数が報告された。バングラデシュ(0名)、中国(0名)、インドネシア(13名)、日本(0名)、韓国(0名)、マレーシア(6名)、フィリピン(0名)、タイ(1名)、ベトナム(54名)。大野達也氏が70症例の臨床データの概要を発表した。

(11) その後、上咽頭がん(T3-4、N0-1)(NPC-II)の臨床データに関する自由討議が行われた。NPC IプロトコールのT3-4、N0-1サブグループと比較した場合、局所制御率が予想より低い理由に議論が集中した。放射線治療の技術上の差(2D対3D)、サブグループの維持化学療法(アジュバント化学療法)の有無または自然経過といった複数の仮説が提示された。

セッション4: 新加盟国からのカントリーレポート、FNCAとIAEA/RCAの協力

(12) カザフスタン代表のTasbolat Adylkhanov教授およびミャンマーのKhin Cho Win氏によりカントリーレポートが発表された。パキスタンのMasooma Riaz氏は乳がんおよび子宮頸がんの発生率および治療について発表した。スリランカのM. A. Yasantha Ariyaratne氏は、スリランカにおける上咽頭がんに対する治療の現状について発表した。

セッション5: 上咽頭がんに対する同時化学放射線療法(CCRT)の第I/II相試験(NPC-III)

(13) 若月優氏がプロトコールNPC-IIIを紹介した。上咽頭がんに対するCCRTの第II相試験(NPC-III)の臨床データが参加各国の代表によって発表され、以下の患者数が報告された。 バングラデシュ(1名)、中国(4名)、インドネシア(6名)、日本(0名)、韓国(0名)、マレーシア(9名)、フィリピン(7名)、タイ(0名)、ベトナム(10名)。NIRS重粒子医学センター病院治療課第三治療室室長の唐澤久美子氏が臨床データの概要およびFNCA NPC-IIIの臨床試験結果の評価を発表した。患者は、男性29名および女性12名であった。患者の100%は導入化学療法を受け、73%はCCRT(化学療法4サイクル以上)を受けた。17名(41%)がCCRTを中断し、毒性はNPC-Iに比べ軽度であった。

(14) 次いで、NPC-IIIに対するCCRTの第I/II相試験の臨床データに関する自由討議が行われた。これまでのところ、ほとんどの国では、プロトコールは忍容性があり、より多くの症例登録が期待できることが明らかになった。

セッション6: 新プロトコール

(15) 辻井博彦氏が本セッションの概要および目的を説明した。

(16) 加藤真吾氏がCERVIX-Vの試験計画に関する発表を行った。3つの臨床研究案が発表され、討議された。
A) 3D画像誘導小線源治療(IGBT)
目的、主評価項目、副評価項目および試験の概要が発表され、討議された。
B) 局所進行子宮頸部腺がんに対するCCRTの第II相試験
症例数が少ないため、現時点では行わず今後の会合で引き続き検討することが合意された。
C) 骨盤リンパ節転移を有する局所進行子宮頸部扁平上皮がん患者に対する予防的傍大動脈放射線療法の有無でCCRTを比較するランダム化臨床試験
ランダム化臨床試験の実現性が討議された。CERVIX-IV完了後に本プロトコールによる試験の開始を検討することで合意された。

(17) 唐澤久美子氏は、乳房温存術および乳房切除術後の患者に対して寡分割放射線療法を用いた乳がんのプロトコールを発表した。同氏は、従来の分割法と比較した本療法の安全性および有効性を確認し、利便性および費用対効果に優ることを確認することが目標である、と述べた。参加者は本臨床試験プロトコールに同意し、試験プロトコールに関する最終的な細目の検討を行った。本ワークショップ終了後に、症例登録を開始することに合意した。

(18) その後、乳がんのプロトコールに関する提案について自由討議が行われた。参加者からの提案を取り入れ、今回のワークショップ終了までにプロトコール改訂版を配布することとなった。

セッション7: 外部照射治療の品質保証/品質管理(QA/QC)

(19) 10治療施設15設備の42ビーム(4-18 MV)で行われたガラス線量計を用いた相互比較測定の概要に関する報告が、NIRS重粒子医科学センター物理工学部重粒子設備室長の福田茂一氏より発表された。今年度は、ベトナムの国立がん病院で測定が行われた。今後は、カザフスタンおよびオブザーバー参加のミャンマーなどの新参加国を含めてさらにQAを行うことになる。

(20) Chumpot Kakanaporn助教授が、放射線療法の先進技術に関するQAについて講演を行い、その中でQA/QCの必要性、技術、方法および外照射治療で頻発する放射線療法の過誤の類型について述べた。

セッション8: マヒドール大学シリラート病院のテクニカルビジット

(21) 参加者はマヒドール大学シリラート病院のテクニカルビジットを行った。Chokechai Maetheetrirat教授が参加者を迎え、病院の沿革および業績を紹介した。参加者は大きな感銘を受けた。その後、院内の放射線療法設備の見学を行った。Suvanit Theerasakvichaya准教授が病院でのがん登録について紹介した。

セッション9: シリラートピヤマハラートガルン病院のテクニカルビジット

(22) 参加者はシリラートピヤマハラートガルン病院(SIPH)のテクニカルビジットを行った。午後には、タイ伝統医学科を訪問し、Tawee Laohapond准教授からタイ伝統医学について説明を受けた。

セッション10: 将来計画、その他の活動

(23) 次回のワークショップのスケジュール、その他の活動に関して、以下の事項について協議の上、合意された。

1. 次回ワークショップを、2013年11月25〜30日(第一候補)または2013年11月18〜23日(第二候補)に韓国で開催することに同意した。
2. 辻井博彦氏は、メンバー国に対して、今後の学会での発表にFNCAプロトコールの試験結果を使用するように確認した。
3. 同氏は、IAEAメンバー国の参加継続の重要性も強調した。
4. 本プロジェクトの継続性および成功を保証するために、今後の会合では、FNCAおよびIAEAの代表は当該国から任命された同一人物であるべきことが合意された。

セッション11: ワークショップの議事録草稿

(24) 書記によって示された議事録の草稿について、協議の上、修正が行われた。議事録はワークショップ参加者によって満場一致で採択された。

閉会

(25) 辻井博彦氏が閉会の辞を述べ、その中でタイおよび参加者の貢献に対する感謝と本プロジェクトに対する将来の期待を表明し、公式にワークショップを閉会した。

セッション12: 一般公開講座

(26) ワークショップの一環として、Jasmine Executive Suiteで一般公開講座が開催された。開会式では、タイ放射線腫瘍学会会長のPrasert Lertsanguansinchai准教授が歓迎挨拶を述べた。聖ルークス医療センター/ホセ・レイエス記念医療センター 科長のMiriam Joy. C. Calaguas氏およびサラワク総合病院放射線・放射線がん治療・緩和ケア部上級顧問臨床腫瘍医のBeena Devi氏が本セッションの司会を行った。

(27) 最初の講演として、NIRSの唐澤久美子氏がFNCA放射線治療プロジェクトを紹介する講演を行った。

(28) 画像誘導適応小線源治療(IGAB)のテーマで、埼玉医科大学国際医療センター放射線腫瘍科教授の加藤真吾氏が講演を行った。

(29) 体幹部定位放射線治療(SBRT)のテーマで、弘前大学医学部放射線科学講座教授の高井良尋氏が講演を行った。

(30) 群馬大学重粒子線医学研究センター教授の大野達也氏が粒子線治療について講演を行った。

(31) 最後の講演として、韓国原子力医学院(KIRAMS)、韓国がんセンター病院(KCCH)の院長であるChul Koo Cho氏がサイバーナイフ治療のテーマで講演を行った。

(32) FNCAプロジェクトリーダーであるNIRSの辻井博彦氏の挨拶をもって公開講座は閉会した。


2012年度 FNCA 放射線治療プロジェクトワークショップ
プログラム

2013年1月15日〜1月18日
タイ バンコク



1日目 1月15日(火) Jasmine Executive Suites
08:30 - 09:00 レジストレーション
09:00 - 10:00

09:00 - 09:15



09:10 - 09:15

09:15 - 09:40


09:40 - 09:50
09:50 - 09:55
09:55 - 10:00
オープニングセレモニー
司会: Yaowalak Chansilpa氏 (タイ)
開会・歓迎挨拶
  Vutisiri Veerasarn氏
  マヒドール大学 シリラート病院 医学部
  放射線腫瘍科 科長 (タイ)
挨拶
  辻井 博彦氏 (日本プロジェクトリーダー)
特別講演:“乳がん”
  Nantakan Apivarodom氏
  Kullathorn Thephamongkhol氏(タイ)
メンバー紹介
アジェンダ採択
集合写真
10:00 - 10:20 休憩
10:20 - 12:00 セッション 1: 局所進行子宮頸がんに対する拡大照射野による化学放射線療法の第II相研究 (CERVIX-IV)
共同議長: Nana Supriana氏 (インドネシア)、Rey H. de los Reyes氏 (フィリピン)
1) プロトコール紹介
    加藤 真吾氏 (日本)
2) 各国からの臨床データの発表
    バングラデシュ
    中国
    インドネシア
    日本
    韓国
    マレーシア
    モンゴル
    フィリピン
    タイ
    ベトナム
3) 臨床データのまとめ
    若月 優氏 (日本)
4) ディスカッション
12:00 - 13:00 昼食
13:00 - 13:30 セッション 2: (NPC-I)
共同議長: Parvin Banu氏 (バングラデシュ)、Xu Xiaoting氏 (中国)
1) プロトコールと追跡データのまとめ
    大野 達也氏 (日本)
2) 治療成績の評価
3) 論文化に関する報告
4) ディスカッション
13:30 - 15:40 セッション 3: 上咽頭がんに対する化学放射線療法の第II相研究 (NPC-II)
共同議長: Kullathorn Thephamongkhol氏 (タイ)、Dang Huy Quoc Thinh氏 (ベトナム)
1) プロトコール紹介
    若月 優氏 (日本)
2) 各国からの臨床データの発表
    バングラデシュ
    中国
    インドネシア
    日本
    韓国
    マレーシア
    モンゴル
    フィリピン
    タイ
    ベトナム
3) 臨床データのまとめ
    大野 達也氏 (日本)
4) ディスカッション
15:40 - 16:00 休憩
16:00 - 18:00 セッション 4: 新メンバー国からのカントリーレポート、FNCAとIAEA/RCAの協力
共同議長: Cao Jianping氏 (中国)、To Anh Dung氏 (ベトナム)
1) カザフスタンにおける放射線治療の現状
    Tasbolat Adylkhanov氏 (カザフスタン)
2) パキスタンにおける乳がん及び子宮頸がんの罹患率について
    Masooma Riaz氏 (パキスタン)
3) スリランカにおける放射線治療の現状
    Merenchi Arachchige Yasantha Ariyaratne氏 (スリランカ)
4) ミャンマーにおける放射線治療の現状
    Khin Cho Win氏 (ミャンマー)
5) ディスカッション
 
2日目 1月16日(水) Jasmine Executive Suites
09:00 - 11:00 セッション 5: 上咽頭がんに対する化学放射線療法第II相研究 (NPC-III)
共同議長: Parvin Banu氏 (バングラデシュ)、Xu Xiaoting氏 (中国)
1) プロトコールのレビューと紹介
    若月 優氏 (日本)
2) 各国からの臨床データの発表
    バングラデシュ
    中国
    インドネシア
    日本
    韓国
    マレーシア
    モンゴル
    フィリピン
    タイ
    ベトナム
3) 臨床データのまとめ
    唐澤 久美子氏 (日本)
4) ディスカッション
11:00 - 11:20 休憩
11:20 - 12:00 セッション 6: 新プロトコール
共同議長: 辻井 博彦氏 (日本)、唐澤 久美子氏 (日本)
1) セッションの概要紹介 (新プロトコールの提案について)
12:00 - 13:00 昼食
13:00 - 16:00

13:00 - 14:30


14:30 - 16:00
セッション 6: 新プロトコール (続き)
共同議長: 辻井 博彦氏 (日本)、唐澤 久美子氏 (日本)
2) プレゼンテーション (Cervix-V)
    加藤 真吾氏 (日本)
3) ディスカッション (Cervix-V)
4) プレゼンテーション (乳がん)
    唐澤 久美子氏 (日本)
5) ディスカッション (乳がん)
16:00 - 16:20 休憩
17:00 - 18:00 セッション 7: 外照射治療のQA/QC
共同議長: Kum Bae Kim氏 (韓国)、Navchaa Gombodorj氏 (モンゴル)
- 外照射治療のQA/QC、現地訪問調査報告
    福田 茂一氏 (日本)
- タイにおける外照射治療のQA/QC
    Chumpot Kakanaporn氏 (タイ)
ディスカッション
 
3日目 1月17日(木) シリラート病院 & シリラート ピヤマハラカルン病院
09:00 - 12:30 シリラート病院へ移動
セッション 8: テクニカルビジット (マヒドール大学 シリラート病院)
12:30 - 14:30 昼食・シリラート ピヤマハラカルン病院へ移動
14:30 - 17:30 セッション 9: テクニカルビジット (シリラート ピヤマハラートガルン病院)
 
4日目 1月18日(金) Jasmine Executive Suites
09:00 - 09:30 セッション 10: 将来計画、その他の活動について
共同議長: Miriam Joy C. Calaguas氏 (フィリピン)、Beena Devi氏 (マレーシア)、Tang Tieng Swee氏 (マレーシア)
09:30 - 09:45 休憩
09:45 - 11:45 セッション 11: ワークショップ議事録の草稿
共同議長: Miriam Joy C. Calaguas氏 (フィリピン)、Beena Devi氏 (マレーシア)、Tang Tieng Swee氏 (マレーシア)
1) ディスカッション
2) 議事録の採択
11:45 - 12:00 閉会セッション
閉会の挨拶
    辻井 博彦氏 (日本)
12:00 - 13:00 昼食
13:00 - 15:30

13:00 - 13:10
13:10 - 13:30


13:30 - 13:50

13:50 - 14:10

14:10 - 14:30

14:30 - 14:50

14:50 - 15:10
セッション 12: 一般公開講座
司会: Miriam Joy C. Calaguas氏 (フィリピン)、Beena Devi氏 (マレーシア)
レジストレーション
オープニングセレモニー
歓迎の挨拶
  Prasert Lertsanguansinchai氏 (タイ) (タイ放射線腫瘍学会 会長)
1) FNCA放射線治療プロジェクトの活動紹介
  唐澤 久美子氏 (日本)
2) 画像誘導小線源治療 (IGABT)
  加藤 真吾氏 (日本)
3) 肺の体幹部定位照射治療(SBRT)
  高井 良尋氏 (日本)
4) 粒子線治療
  大野 達也氏 (日本)
5) サイバーナイフ
  Chul-Koo Cho氏 (韓国)
15:10 - 15:30 閉会セッション
閉会の挨拶
    辻井 博彦氏 (日本)


2012年度 FNCA 放射線治療プロジェクトワークショップ
参加者リスト

2013年1月15日〜1月18日
タイ バンコク


バングラデシュ

Dr. Parvin Akhter BANU
Senior Consultant
Delta Medical College & Hospital

中国

Prof. CAO Jianping (プロジェクトリーダー)
Deputy Director of Medical College
School of Radiation Medicine & Protection
Soochow University

Dr. XU Xiaoting
Chief Physician (Radiation Oncologist)
The First Affiliated Hospital of Soochow University

インドネシア

Dr. SUPRIANA Nana (プロジェクトリーダー)
Medical Staff, Faculty of Medicine Radiotherapy Department,
Cipto Mangunkusumo Hospital,
University of Indonesia

日本

辻井 博彦 氏 (プロジェクトリーダー)
(独)放射線医学総合研究所(NIRS)
フェロー

唐澤 久美子 氏
(独)放射線医学総合研究所(NIRS)
重粒子医科学センター病院
治療課 第三治療室
室長

加藤 真吾 氏
埼玉医科大学
国際医療センター 放射線腫瘍科
教授

高井 良尋 氏
弘前大学
大学院医学研究科 放射線科学講座
教授

大野 達也 氏
群馬大学
重粒子線医学推進機構重粒子線医学センター
教授

若月 優 氏
(独)放射線医学総合研究所(NIRS)
重粒子医科学センター病院
放射腫瘍医

福田 茂一 氏
(独)放射線医学総合研究所(NIRS)
重粒子医科学センター病院
重粒子設備室
室長

山田 愛 (事務局)
(公財)原子力安全研究協会
国際研究部

カザフスタン

Prof. Tasbolat Adylkhanov
Prorector on Scientific and Clinical Work
Semey State Medical University,
Semey city, the Republic of Kazakhstan

韓国

Dr. Chul Koo CHO (プロジェクトリーダー)
Director General
Korea Institute of Radiological & Medical Sciences (KIRAMS)
Korea Cancer Center Hospital (KCCH)

Dr. Kum Bae KIM
Principal Researcher, Medical Physicist
Korea Institute of Radiological & Medical Sciences (KIRAMS)
Korea Cancer Center Hospital (KCCH)

マレーシア

Dr. TANG Tieng Swee (プロジェクトリーダー)
Medical Physicist,
Department of Radiotherapy & Oncology, Sarawak General Hospital

Dr. C.R. Beena Devi
Senior Consultant Clinical Oncologist
Department of Radiotherapy, Oncology & Palliative Care
Sarawak General Hospital

モンゴル

Dr. Gombodorj Navchaa
Deputy Director in Charge of Medical Services
Consultant of Radiotherapy Department
National Cancer Center of Mongolia

フィリピン

Dr. Miriam Joy C. Calaguas (プロジェクトリーダー)
Chairperson, Department of Radiation Oncology
St. Luke's Medical Center
(old: Dr. Jose R. Reyes Memorial Medical Center)

Dr. Rey H. De los Reyes
Associate Professor and Chairman, Department of Obstetrics and Gynecology,
Far Eastern University-Dr. Nicanor Reyes Medical Foundation (FEU-NRMF)
Medical Specialist II I(Gynecologic Oncologist),
Dept. of Obstetrics and Gynecology,
Jose R. Reyes Memorial Medical Center (JRRMMC)

タイ

Dr. Yaowalak CHANSILPA
Associate Professor, Division of Radiation Oncology,
Faculty of Medicine Siriraj Hospital
Mahidol University

Dr. Kullathorn Thephamongkhol
Lecturer
Faculty of Medicine Siriraj Hospital
Mahidol University

ベトナム

Dr. To Anh Dung
Vice-Head of Department, Breast and Gynecology
Radiotherapy Department
National Cancer Institute (K Hospital)

Dr. Dang Huy Quoc Thinh
Vice Director
Ho Chi Minh City Oncology Hospital

ミャンマー (IAEA/RCA)

Dr. Khin Cho Win (オブザーバー)
Consultant Radiation Oncologist
Radiotherapy Department
Mandalay General Hospital

パキスタン (IAEA/RCA)

Ms. Masooma Riaz (オブザーバー)
Deputy Chief Scientist
Institute of Nuclear Medicine and Oncology, Lahore (INMOL)
Pakistan Atomic Energy Commission (PAEC)

スリランカ (IAEA/RCA)

Dr. Merenchi Arachchige Yasantha Ariyaratne (オブザーバー)
Consultant Oncologist
National Cancer Institute




Forum for Nuclear Cooperation in Asia