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ワークショップ


FNCA 2001 研究炉利用ワークショップ
概要  報告

2001年11月、中国で研究炉利用ワークショップ開催


プロジェクト・リーダーからのメッセージ:
 
  竹下 功
日本原子力研究所(JAERI)
東海研究所 副所長
  「アジアの研究炉に貢献する」
   私の所属する日本原子力研究所東海研究所は、 昭和32年に我が国で初めて臨界に達した研究用原子炉JRR-1を始めとして、これまで多くの研究炉を建設・ 運転してきた。これらの研究炉は、基礎研究、燃料・材料の照射、ラジオアイソトープ製造、医療照射、 原子力技術者の養成等で多くの成果を上げてきた。また、アジア諸国から多くの研究者や技術者を受け入れており、 それらの国々からも信頼を得ている。
FNCA参加の全ての国は、研究炉を建設・運転しており、これが共通技術基盤の一つとなっている。これをベースに、研究用原子炉を利用して、アジア諸国それぞれの国のニーズに応え、社会的、経済的インパクトのある成果を生み出すことを 目的とした研究協力プロジェクトを立ち上げること、これが昨年11月に中国で開催したワークショップのねらいであった。 この目的に添った3つのテーマ、すなわち、医療用RI(Tc-99m)製造技術に関するもの、環境汚染の調査に研究炉での放射化分析を用いる技術、天然ゴムを原料とし中性子散乱技術を利用した新高分子材料開発に関するもの、について参加した8ヶ国からの 研究者、技術者70名が熱心に討論を行った。
3つのテーマそれぞれの日本のリーダーである源河次雄博士(原産会議)、海老原充教授(都立大)、濱口由和博士(原研研究嘱託)が、 各国の役割分担、スケジュール、情報交換の方法等、研究協力計画のとりまとめに尽力され、向こう3〜5年間の具体的な計画について 参加各国の合意を得ることができ、これからの成果が楽しみである。
14基の研究炉を有し、新しい研究炉の建設も開始した中国での初めてのワークショップであったが、成功裡に終わることが できたのは、ホスト国として中国原子能科学研究院の袁教授をリーダーとするスタッフの献身的なご支援もあったことを併せて報告する。
     
  アイソトープ製造・中性子散乱等で幅広く利用されている原研東海研究所JRR-3M   原研東海研究所での海外研修生
(放射化分析実習)
 
ワークショップ概要
 
1) 開催日 2001年11月5日〜9日
2) 場所 中国北京市、民族飯店及び中国原子能科学研究院
3) 主催 文部科学省(MEXT)/中国国家原子能機構(CAEA)
  実施機関 日本原子力研究所(JAERI)/中国原子能科学研究院(CIAE)
4) 参加総数 70名
      (内 訳:中国39名、インドネシア3名、日本14名、韓国2名、マレーシア3名、フィリピン 3名、タイ3名、ベトナム3名)
5) ワークショップ主要テーマ:
 
「テクネチウム99m (Tc-99m)ジェネレータ製造技術の確立と普及」(新規案件)
「環境対策利用の中性子放射化分析」(計画変更案件)
「天然ゴムを利用する熱可塑性弾性体の評価技術の確立」(計画変更案件)
報告・討議内容
 
1) 「Tc-99mジェネレーター製造技術の確立と普及」
目的:各国での核医学診断の普及とTc-99mの国産化による外貨節約
   核医学診断に不可欠なTc-99mは、アジアの多くの国がカナダから輸入している。現代の製造の主流は、高濃縮ウランの(n,f)反応を用いる方法だが、高レベル放射性廃棄物を発生させるなどの問題がある。これに対して日本原子力研究所と(株)化研は、(n,γ)反応により天然モリブデン(98Mo)を99Moに変え、その99Moを高分子ジルコニウム化合物(PZC)に吸着させて、溶離液を流して目的とするTc-99mを高効率で抽出する方法を開発した。
本プロジェクトは、この新技術の有用性を実証し、参加国間の共同研究により製造技術の標準化を達成することを目的としている。本プロジェクトが成功すれば、各国での核医学診断の普及という社会的効果とTc-99mの国産化による外貨節約という経済効果が見込まれる。
テクネチウム ジェネレーターとは
 
高分子ジルコニウム化合物
 
中央の容器に放射性物質である99Moが入っている。これに、左の生理食塩水を流して99mTcを取りだし、右の容器に移す。この99mTcを他の薬品と混合し注射器で体内に取り込み、がん等を診断する。
 
討議結果:
  a. テクネチウムジェネレータに関する各国の利用状況、開発状況の報告が行われ、活動分担、活動計画が作成された。
  b. ワークショップに先がけて、インドネシア原子力庁(BATAN)ラジオアイソトープ・放射性医薬品開発センター内のホットセルに、半自動Mo-99吸着装置を備えたTc-99mジェネレーター製造プラントを設置する。
  c. 2002年度から高分子ジルコニウム吸着材(PZC)を用いたテクネチウムジェネレータ技術に関するサブワークショップを開催することが合意された。
  d. 三種の形式によるジェネレーター(アルミナ、ゲル、PZC系ジェネレーター)の性能の比較を行う。
  e. 標識実験により、PZCジェネレーターから得られたTc-99m溶液の品質を確認する。
 
2) 「環境対策のための中性子放射化分析」
目的:空中の浮遊塵に対する環境対策に取り組む
   空気中の浮遊塵は、肺への取り込みによる人体への健康影響の問題などから、環境汚染の面で特に重点的な取り組みが必要になる。この浮遊塵の分析には、サンプリングステーションから集めた試料を原子炉に入れて中性子照射を行い、照射後の試料から放出されるガンマ線を測定することで多元素分析ができる「中性子放射化分析法」がコスト的にも手間からも最適な方法である。
本プロジェクトでは、参加国間で試料解析データの比較を行い、地域としての解析手法の標準化を進めることと、各国の環境政策に資することを目的とする。
中性子放射化分析法の測定精度の向上には、ko法を手順化したソフトウェア(以下、koソフトウェア)の利用が重要なので、このプロジェクトでは、この地域での標準的なkoソフトウェアの開発や、その習熟も活動に含む。
  放射化分析とは
 物質に中性子を照射すると、その物質に固有の放射線が放出される。 放射化分析では、これらの放射線を測定して、物質の構成元素や物質中に取り込まれた極く微量の不純物元素などを調べることができる。
討議結果:
  a. 各国において都市部及び田園地帯の大気浮遊塵サンプリングを2002年1月から開始する。
  b. 環境試料分析に関しては、大気中の浮遊塵を対象として測定、分析を開始することが合意された。
  c. 中国が25年にわたって開発してきたko法のソフトウェアをベースとして整備を進めることで合意された。
  d. 回収したサンプルの分析結果を2002年ワークショップで報告する。
  e. 市販標準試料の本プロジェクトへの適応性についての調査を併せ行う。
3) 「天然ゴムを利用する熱可塑性弾性体の評価技術の確立」
目的:新材料の開発と産業育成を目指して
   新材料の研究開発では、材料の特性と構造の解明に中性子小角散乱(SANS)が有効である。本プロジェクトでは、東南アジアに豊富な天然ゴムを原材料とする熱可塑性弾性体の構造解明等に有効な評価技術を確立し、新弾性体の開発に資することが目的であるが、地域の研究機関との連携及び新しい産業育成への貢献も併せて目的としている。
中性子散乱実験とは
 中性子が物質に当たった時の散乱のされ方を調べることによって、 その物質を構成する原子の配列、分子に作用する力と運動の状態などを観測することができる。冷中性子を用いると、 合成繊維やプラスチックなどの高分子物質についても観測できるようになり、新素材の開発、 生命現象の解明、中性子そのものの研究など、新しい分野の研究を行うことができる。
討議結果:
  a. プロジェクトを2002年4月から開始する。
  b. 各国のニーズ、参加機関の役割分担などについて調査を行う。
  c. 各国の専門家の活動を連携調整するための相互情報交換システムを確立する。
  d. 2003年に専門家会合をインドネシア又は日本で開催し、得られたデータの解析と検討を行う。
  4) その他(円卓会議)
目的:新材料の開発と産業育成を目指して
   今後のワークショップにおいて、上記テーマに直接属さないような本来の研究炉の利用の仕方に関する各国の状況報告が含まれるべきであることが日本、中国、韓国から示され、各国プロジェクト・リーダーの賛同を得た。
2002年度ワークショップは、インドネシアがホストすることを表明した。
中国での研究炉ワークショップ参加者


概要  報告

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