FNCA放射線育種バナナ耐病性専門家会合 議事録
2006年7月25日〜28日
フィリピン ケソン市およびラグーナ
2005 年 12 月 5 日から 9 日にマレーシア クアラルンプール市で開催されたアジア原子力協力フォーラム(FNCA)放射線育種ワークショップの合意に基づき、 FNCA 放射線育種バナナ耐病性専門家会合 が次の通り開催された。
日 程 : |
2006年7月25日(火)〜28日(金) |
場 所 : |
フィリピン ケソン市 フィリピン原子力研究所(PNRI)
フィリピン ラグーナ フィリピン大学ロスバニョス校(UPLB)
|
主 催 : |
日本 文部科学省(MEXT)
フィリピン原子力研究所(PNRI)
フィリピン大学ロスバニョス校(UPLB)育種研究所 作物科学研究領域群(CSC-IPB)
|
事務局 : |
日本原子力産業会議 (JAIF)
|
参加者 : |
インドネシア、マレーシア、ベトナムから各1名、日本から3名、フィリピンから4名、合計5カ国から10名が参加。
|
開会セッション
まず、 PNRI 原子力部長の Ms. Virginia S. Calix が歓迎の挨拶を述べ、次いで日本のプロジェクトリーダーである中川仁博士が挨拶を行った。続いて、フィリピンのプロジェクトリーダーである Ms. Avelina G. Lapade が参加者の紹介を行い、その後、 PNRI 理事長の Dr. Alumanda M. Dela Rosa が基調演説を行った。
セッション 1 :バナナ耐病性に関する進捗状況報告
インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナムよりバナナ耐病性に関する進捗状況の発表が行われた。概要は添付資料3の通り。
セッション 2 :中間報告
各国より中間報告の発表が行われ、添付資料4の通りまとめられた。 セッション 3 :特別講演
CSC-IPB の所長である Dr. Jose E. Hernandez が歓迎挨拶を行った。
続いて、日本とフィリピンから 4 件の特別講演が行われた。講演の概要は以下の通り。
- 夏秋啓子博士は「 抵抗性バナナ育種のためのバナナウイルスの検出と同定 」と題する講演を行い、供試植物の予期しない感染とその感染植物の存在が耐病性バナナ育種に影響を与えるかもしれないことを指摘した。そのためバナナのウイルスに関してより多くの情報を得ることと適切な診断技術が必要である。また、一つの方法ではなく、多様なウイルス感染個体検出技術の利用が抵抗性個体の選抜過程における正確な評価に役立つことを強調した。
- 中川仁博士は「突然変異育種による新品種の育成:ガンマ線−遺伝子−突然変異」と題した講演で、放射線育種場における研究活動と成果の紹介と、 FNCA 突然変異育種プロジェクトの活動を要約した。
- Ms. Conception E. Soguilon は「バナナにおけるフザリウム萎凋病の同定と抵抗性の評価」と題した講演で、 Davao City のバナナ栽培が拡大傾向にある地域でフザリウム萎凋病を引き起こすフザリウム種を単離し、 vegetative compatibility grouping (VCG) 法によってこの病原菌レースを同定し、レース1,2,および4が存在することを明らかにした結果を紹介した。この病気に対するいくつかの地元品種と導入品種の抵抗性評価に用いたスクリーニング技術は INIBAP (International Network for the Improvement of Banana and Plantain) protocol を用いて行い、フザリウム病に対して感受性の品種と抵抗性の品種を明らかにした。また、ホットスポットにおいて、 IMTP (International Musa Testing Program)によるフザリウム萎凋病抵抗性の評価を BPI-DNCRDC (Bureau of Plant Industry-Davao National Crop Research and Development Center)に導入した。
- Dr. Haydee F. Galvez は「突然変異解析のための遺伝子特定マーカー」と題した講演で、異なる分子マーカーと突然変異育種に利用する際のそれぞれのマーカーの特性について議論した。そして、 RGA マーカーを用いて、トマトのバクテリア萎凋病に対する抵抗性遺伝子を同定した結果や圃場において行われた表現形質と分子マーカーを用いたバクテリア萎凋病に対する抵抗性の評価について報告した。さらに、放射線照射後に培養したアボカドに対して SSR マーカーを用いたゲノム全体にわたる突然変異の解析を行った結果を報告した。
セッション 4 :手法および技術の実演
バナナバンチートップウイルス(BBTV)に対する温室でのスクリーニングに用いるためのアブラムシの人工接種技術を参加者に示し、実習を行った。さらに、ニンジンの輪切り切片を用いた線虫 ( Radopholus similis ) の培養について観察実習を行い、温室内でのバナナ組織培養植物の線虫抵抗性について議論した。
また、参加各国で用いられているフザリウム萎凋病と BBTV 抵抗性の評価技術について詳細に議論し、基本となる標準技術を決定した(添付資料4参照)。 セッション 5 :研究計画の再検討および議論
2005 年に策定した 2008 年までの研究計画について改めて協議し、添付資料5の通り一部変更を加えた。
ラボラトリー・ビジット
参加者は IPB の分子遺伝学研究室ならびに組織培養研究室を訪問視察し、各々の研究室で現在進行中の研究活動についての説明を受けた。 フィールド・ビジット
参加者は種々のバナナ地方品種と導入品種の展示圃場を視察し、これら品種の形態等の説明を受けた。この品種展示圃場は INIBAP と農業省農業研究局の予算によって行われているものである。
また、参加者は Cavite province に所在する2ヶ所のバナナ生産農家を視察した。最初の農家は、約 0.7ha の畑を所有する、いわゆる裏庭型(backyard-type)の小規模農家であり、この地域で栽培されている品種は「 Cuarenta Dias 」であった。この地域ではいくつかの作物の混作体系が取られており、バナナ以外にコーヒー、サトイモ(taro)、ヤマノイモ (yam) なども栽培されている。このバナナ畑では、 BBTV と Sigatoka 病が発生していた。この農家ではこれらの病気を防除するための殺菌剤施用を行っていないが、定期的に雑草刈りを行い、年3回の硫安(ammonium sulfate)施肥を行っていた。この視察農家ではバナナ以外の収入源としてコーヒー栽培を行っていた。次に訪れた農家は、約 0.5ha を所有し、ココナツ畑の下で cv. 「 Lakatan 」 の培養苗を栽培していた。この農家は、施肥、 Sigatoka 病の蔓延を防ぐための病葉の除去、雑草刈り、果実の袋掛け等、指導されたとおりの栽培管理を行っている。また、畑には排水路(Drainage canals)も施されていた。この農家は PCARRD, UPLB, Cavite State University (CaSU) の援助を受けて、 Cavite 地域における「 Lakatan 」バナナ産業を救うために設置された、農民に対する展示圃場となっている。その後、参加者は、例えば 「 Cuarenta Dias 」、「 Lakatan 」、「 Latundan 」などの種々のバナナ品種が売られている市場を訪問した。
以上、この議事録はすべての会合参加者によって議論、合意された。これは 2006 年 9 月 11 日から 15 日に群馬県高崎市で開催される 2006 年度 FNCA 放射線育種ワークショップで報告される予定である。
添付書類:
- プログラム
- 参加者リスト(英文)
- 国研究進捗状況報告の概要
- 中間報告
- 研究計画
|