ワークショップの概要及び成果
(1) 会議概要
ワークショップ第 1 日目( 8 月 28 日)にはマニラ、パシグ市にあるリンデンスイートホテルの会議室に参加者が一同に介して開会式が行われ、フィリピン原子力研究所 (PNRI) の Dr. Alumanda M. Dela Rosa(FNCA コーディネーター ) からの歓迎の挨拶の後、横溝英明 原子力機構原子力科学研究所長(研究炉利用分野主査)から開会の挨拶、科学技術省長官 Hon. Estrella ALABASTERO 、および自然環境資源庁環境運営局次官 Hon. Francisco BRAVO からのメッセージが代読された。
同日午後には、中性子放射化分析セッションでは「環境試料分析の進歩状況の報告と環境行政への反映」、 Tc ジェネレータ・セッションでは「ジェネレータ製造とその供給計画」、及び研究炉基盤技術セッションでは「計算コードの各国における共有化状況の確認」について、各国プロジェクトリーダーから報告が行われた。
第 2 日目( 8 月 29 日)には、中性子放射化分析セッションでは前日に引き続き「環境試料分析の進歩状況と環境行政への反映」に関する報告が行われるとともに、環境試料分析結果の討論が行われた。
Tc ジェネレータ・セッションでは、午前中、前日に引き続き「ジェネレータ製造とその供給計画」に関する報告が行われるとともに、 Tc-99m を基盤とした PZC 、放射性医薬品の臨床試験についての討議が行われた。その後 Dr. Abdul Mutalib により「ジェネレータの品質保証・管理システムの確立」についての報告が行われた。
研究炉基盤技術セッションでは、「研究炉の炉心計算結果の報告」が行われ、その後各国の炉心計算結果についての討論及び評価が行われた。
第3日目 (30 日 ) には、中性子放射化分析セッションでは前日に引き続き「環境試料分析の進歩状況と環境行政への反映」に関する報告が行われ、その後中性子放射化分析グループのプロジェクト、 2007 年度の計画についての討議が行われた。
Tc ジェネレータ・セッションでは定常製造標準マニュアルの作成、 IAEA との連携、などについて討議された。
研究炉技術セッションでは、「計算コードを用いた炉心燃焼計算方法の説明が行われた。
第 4 日目( 31 日)には、中性子放射化分析セッションでは 2007 年度の計画について討議が行われ、最終報告書のとりまとめが行われた。
Tc ジェネレータ・セッションではプロジェクトの見直しと評価、そして残り 6 ヶ月間の作業計画について検討された。
研究炉技術セッションでは将来計画に関する討議が行われた。
15 : 30 からフィリピン原子力研究所へのテクニカルツアーを実施した。
第 5 日目( 9 月 1 日)には 9 : 00 から円卓会議を開始し、ワークショップのサマリーの報告と討論が行われた。
閉会式では、文部科学省藤田健一氏、横溝英明原子力機構原子力科学研究所長および Alumanda. M. Dela Rosa フィリピンコーディネーターより閉会の挨拶が行われて成功裡に閉会した。
ワークショップにおける討議の結果は、概略以下のとおりである。
- 中性子放射化分析セッション
NAA プロジェクトは第 2 段階に入っている。第 1 段階では浮遊粒子状物質の分析について論じられた。それには目的として、浮遊粒子状物質分析の為の NAA-Ko の導入があった。現段階では、参加者が NAA によって分析する環境サンプルを選択した。第 2 の目的は、 環境分析のために NAA の利点を全国の環境当局へ示し、環境政策を案出して、その使用を促進することである。
参加者は環境サンプル分析の現状と、 INAA の結果の反映状況を環境当局へ結果報告した。又、参加者はそれぞれの 2007 年の研究プランを発表した。さらに会議では NAA プロジェクトの次段階で扱われると予想される問題について議論した。
ワークショップの議題は以下のとおりである。
- NAA による環境試料分析の現状
- 環境当局への INAA データの反映
- 2007 年度の研究計画
- Tc-99m ジェネレータ・セッション
ワークショップでは、各国におけるジェネレータ関連の市場統計、 PZC 型 Tc99m を使用した放射性医薬品の臨床試験の結果、 PZC 型 Tc-99m 製品の定常生産・量産化の計画と戦略、 PZC 技術を実施するにあたって各国が直面している障害について紹介され討議が行われた。ベトナムとフィリピンから 2006 〜 2008 年の PZC 型ジェネレータ定常生産に関する実施計画が示された。昨年度に編纂された PZC 技術情報の刊行物(第 1 版)が配布された。第 2 版は、遅くとも 2007 年 3 月までには刊行される予定であり、その内容について検討し、寄稿者の執筆分担について合意を得た。
これまでのプロジェクト活動を通じて、 PZC 技術が Mo-99/Tc-99m ジェネレータ製造のための実行可能かつ有望な技術であるという結論に達した。
- 研究炉基盤技術セッション
プロジェクトの目的と全体スケジュールについての再確認が行われた後、 2005 年 8 月にマレーシアで開催された第 1 回 WS 活動を再確認し、それらの活動計画のほとんどが参加国により順調に実行されたことを確認した。
MVP コードのマニュアルは昨年( 2005 年)、 SRAC コードマニュアルのうち、燃焼計算( COREBN )に関する部分は第 2 回 WS の最初に参加国にそれぞれ配付された。
以下はワークショップにおける議題である。
- 計算コード( SRAC または MVP )を使用した各国研究炉の国内炉心計算結果の報告
参加者は、共通コード( SRAC または MVP )を使用した自国の研究炉の炉心計算の現状、更に SRAC を用いることによる核特性評価の著しい進歩について報告した。一般的に、 SRAC を用いることにより、計算の不確実さが軽減されることが判る。
- SRAC コードによる炉心燃焼計算法の説明
SRAC コードによる実効断面積データを作成する方法や、 COREBN コードによって炉心燃焼計算を実行する方法のデモ、実習が行われた。
- 計算コードの活用について
研究炉の有効利用を強化するために、計算コード( SRAC と MVP )の利用について議論が行われた。 SRAC は炉心管理のために全参加国において使用されるようになるだろう。
中国は CARR の起動試験の計算に SRAC を使う計画がある。韓国は比較コードとして AHR の設計のために SRAC を使う計画がある。バングラディシュ、マレーシア、タイは、実験データの分析を通して炉心物理学を研究する計画がある。バングラディシュ、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムは、炉心燃焼計算のために SRAC を使う計画がある。
- 最終報告書
計算コード SRAC と MVP 、導入による核計算技術の改善点などを含む最終報告書を 2007 年度内に日本側で JAEA-report として公刊する。
- 将来計画についての議論が行われ、 2007 年度プロジェクト活動について参加者の同意が得られた。全ての参加者は、炉心管理のための核計算技術の共有化が研究炉の安全で安定した稼動の強化及び研究炉の高度利用に有効であることを確認した。
- 全体討議
- ワークショップのまとめ
フィリピンの FNCA コーディネータ Alumanda. M. Dela Rosa 氏と研究炉利用分野の代表である横溝氏の共同議長のもと、 NAA,TCG, RRT についてそれぞれ、海老原氏、源河氏、山下氏からまとめの報告がなされた。
全参加者がサマリー報告に同意し、文部科学省藤田氏、横溝氏、 A. M. Dela Rosa 氏の挨拶により成功裡にワークショップが終了した。
- 円卓会議での付言
フィリピンにおける 2006 年度 FNCA 研究炉利用ワークショップの全参加者の一致した意見として、各プロジェクトリーダーより、サマリーレポートを第 8 回 FNCA コーディネーター会合に報告することが合意された。