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ワークショップ


FNCA 2007 研究炉利用ワークショップ
概要  会議報告 NAARRT  プログラム   参加者リスト(英文)

2007年FNCA研究炉利用ワークショップ
概要

2007年10月29日〜11月2日
インドネシア、スルポン


【開会式】

 2007年度のFNCA研究炉利用ワークショップ(WS)は2007年10月29日から11月2日にかけて、インドネシアのスルポンにおいて開催されました。本WSは文部科学省とインドネシア原子力庁(BATAN)との共催により、BATANと(独)日本原子力研究開発機構(JAEA)が実施しました。
開会式では、Hanafiahインドネシアコーディネーター、桜井文雄・日本原子力研究開発機構原子力科学研究所副所長、Hastowoインドネシア原子力庁長官より開会挨拶が行われました。

【招待レクチャー】

 続いてSusilawati氏(インドネシア原子力庁)から「RSG-GAS炉の利用の経験」、海老原充教授(首都大学東京)から「太陽系の元素存在度」と題した招待レクチャーが行われました。午後から中性子放射化分析グループ(NAA)と研究炉基盤技術グループ(RRT)に分かれてWSが開始され、バングラデシュ、中国、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、日本から計34名が参加しました。

【セッション】

(研究炉基盤技術グループ(RRT))
 今年は現在のプロジェクトの最後の年です。3年間の活動を通して、メンバー国間における炉心管理のための共通核計算技術の確立は、参加国における研究炉の有効利用だけでなく、安全かつ安定した運用を促進させることでしょう。ここでは以下の4つの活動について議論しました。(1) SRAC又はMVPを使った自国炉心の炉心燃焼計算結果の検討およびSRACまたはMVPの炉心管理・利用への適用、(2)本プロジェクトの最終報告についての討議、(3)本プロジェクトの評価についての議論、(4)次期プロジェクトの具体的な活動計画の決定

(中性子放射化分析グループ(NAA))
 参加者の自己紹介とFNCA活動の経験や係わりから始まり、以下の活動について発表および議論が行われました。(1)カントリーレポート1「過去1年間の環境試料分析の進捗状況および環境当局への反映状況」、(2)カントリーレポート2「第2期(2005-2007)のまとめ:試料分析および環境行政への反映状況」、(3)3カ年評価に対する報告・討議、(4) 全参加国から継続の必要性が示されている第3期についての討議、(5)サブプロジェクト

 

【テクニカルツアー】

 スルポンの研究施設:多目的研究炉(RSG-GAS炉)、NAA実験室、燃料加工施設、放射性廃棄物管理施設のテクニカルツアーが行われました。

RSG-GAS炉 燃料加工施設
RSG-GAS炉 燃料加工施設

【円卓討議】

 RRTとNAAグループのサマリーレポートが参加者によって発表されました。

(RRT)
 最終報告書および現プロジェクト評価の発表と討議を通して、全参加国が炉心管理と研究炉利用のための核計算技術を高めることができたということが明らかになりました。さらに、「研究炉のRIA(反応度事故)安全解析およびLOFA(流量喪失事故)安全解析」が次期プロジェクトとして確定されました。

(NAA)
 本フェーズの発表と議論の後に、中性子放射化分析グループ(NAA)次期フェーズ継続の提案が、全参加国によって承諾されました。そして次回のテーマとして3つの共通ターゲットが決められました。また参加国のほとんどがk0-INAA を広く使用しているため、参加者は技術検証を次期フェーズに実施するもうひとつの課題とすることになりました。



2007年FNCA研究炉利用ワークショップ
中性子放射化分析グループ
会議報告

2007年10月29日〜11月2日
インドネシア、スルポン

参加者:
1. Dr. Syed Mohammod Hossain バングラデシュ
2. Prof. Bangfa Ni 中国
3. Mr. Sutisna インドネシア
4. Ms. Muhayatun インドネシア
5. Ms. Sri Wardani インドネシア
6. Ms. Th. Rina Mulyaningsih インドネシア
7. Prof. Mitsuru Ebihara 日本
8. Dr.Yasuji Oura 日本
9. Mr. Jong-Hwa Moon 韓国
10. Mr Md Suhami Bin Elias マレーシア
11. Ms Preciosa Corazon Pabroa フィリピン
12. Dr. Sirinart Laoharojanaphand タイ
13. Dr. Nguyen Ngoc Tuan ベトナム

 会議は参加者紹介から始まり、それぞれのFNCA活動における経験及び関与について紹介があった。

 最初に首都大学東京の海老原教授による「2007年度FNCAワークショップ<中性子放射化分析>の展望」の発表があり、本ワークショップ中に実施すべき活動について提案を行った。提案は下記の通りである。

  1. カントリレポート1:「過去1年間の環境試料分析の進捗状況及び環境当局への反映状況」
  2. カントリレポート2:「第2期(2005-2007)のまとめ:試料分析及び環境行政への反映状況」
  3. 3ヵ年評価に対する報告・討議
  4. 全参加国から継続の必要性が示されている第3期についての討議
  5. サブプロジェクト
  1. ラウンドロビン実験
  2. その他

 引き続き、各参加者によるカントリレポート1「過去1年間の環境試料分析の進捗状況及び環境当局への反映状況」の発表が国名アルファベット順に行われた。

カントリーレポート1

バングラデシュ:Dr. Syed Mohammod Hossainによる研究成果報告
 2007年の活動計画に則って、INAA技術を用いバングラデシュのFaridpur、NarayanganjそしてMunshiganji地区から50箇所の掘り抜き井戸水とその井戸水の使用者60名及び30個の土壌試料を対象にヒ素汚染度を評価した。その結果、調査を行ったほとんどの掘り抜き井戸とその使用者は、高度に汚染されていることが判明した。幾つかの土壌も国際基準値に比べてヒ素汚染度が高かった。

中国:Prof. Bangfa Niによる研究成果報告
 2007年はLiangxianサイトで月2回の浮遊粒子状物質試料採取を行った。2004年から2006年の浮遊粒子物質の多元素データについて、主としてEPA PMFと統計ソフトウェアのStatgraphic Plusを使って解析し、5つの発生源ファクターを見いだした。これは環境管理を担う現地EPAの判断にとって重要なサポートになり得る。k0‐INAAと相対法を用いて12個の生物標準物質から12〜33個の元素を特定した。
 これらの結果は認証値を決める上で非常に有効となる。

インドネシア:Mr. Sutisnaによる研究成果報告
 ジャカルタ湾及びBanten省北沿岸での海洋環境試料の成分分布の分析結果を報告した。ジャカルタ首都特別州の環境管理局との共同作業のもと、海洋環境汚染モニタリングがk0‐INAAを使って行われてきた。これにより得られた成分分布の情報は、現地・地域の汚染状況や汚染量の有益情報になり得る。

日本:大浦 泰嗣氏による研究成果報告
 PM2.5微粒子の採取は、東京都環境保護研究所の協力を得て、東京郊外の八王子市と都内江東区で2006年より開始した。PM2.5の粒子濃度レベルは八王子と江東区どちらも同程度であり、約30個の元素濃度がk0‐INAAまたは比較NAA法によって定量された。江東区でのほとんどの元素濃度の平均値は、八王子よりも平均で約2倍高く、元素の相関関係は、八王子市と江東区では著しく異なった。

韓国: Mr. Jong-Hwa Moonによる研究成果報告
 60個の浮遊粒子物質(PM25)試料をChungnam国立大学の第3技術棟の屋上から採取し、INAAを使って28個の元素を分析した。PM2.5の質量濃度の偏差は5.6〜64.5μg/m3で平均値は30.9μg/m3であった。分析結果によると、A1, K, FeやNaなどの要素が高濃度であり、Dy, Sc, HfやCsなどが低濃度であった。

マレーシア:Mr Md Suhami Bin Eliasによる研究成果報告
 海洋環境試料の微量有毒元素の分析にk0‐INAA法を用いた。マレーシア半島東海岸の30箇所から採取された海洋堆積物の中から約29の微量有毒元素を特定した。これら微量有毒元素の主な発生源は、農業、産業、乗り物や鉄鉱業などの人為的なものである。

フィリピン: Ms. Preciosa Corazon Pabroaによる研究成果報告
 報告はADMU、POVDEA、NAMRIAなどの試料サイトと比べて鉛(Pb)レベルの高いValenzuelaを主な焦点とした。
 鉛の発生源ファクターは、PM10-2.5とPM2.5の両方に姿を見せている。CPF分析では、鉛の汚染源は、ほぼ全方向から来ていることを示している。Valenzuela市での分析結果は、鉛の発生源を特定するためにその地域に対する更なる総合評価を行い、環境濃度を下げるための対策を講じる必要性を示している。2006年の環境濃度の平均は、フィリピンNAAQ長期基準値とアメリカEPA長期基準値を超えている。

タイ:Dr. Sirinart Laoharojanaphandによる研究成果報告
 2007年2月にTalaenoi保護地区の6試料サイトからコア堆積物を採取し、計188個の試料を比較INAA方式によって分析した。Mn、 AlそしてFeは深度変動と位置依存性を示した。さらに、幾つかの試料はタイの土壌最大許容量基準値に比べ高いMnを含有している。全試料のヒ素値は基準値より高くなっている。これらのデータは本プロジェクトのエンドユーザーである資源・環境省環境推進局で使用される。

ベトナム:Dr. Nguyen Ngoc Tuanによる研究成果報告
 2007年は、Nha Trang, Phan Thiet そしてPhan Thietの3つの沿岸地域を試料サイトとして選択した。分析方法はk0‐INAA、RNAA 及びAASである。上記3サイトから採取された海洋環境試料(堆積物、海水、生物相)から20以上の元素を定量した。30種類の試料の中から700個のターゲットが本ワークショップで報告された。

カントリレポート2

 第2期(2005-2007)のまとめ:「試料分析及び環境行政への反映状況」の発表が国名アルファベット順に行われた。

バングラデシュ:
 バングラデシュはFNCA研究炉利用<中性子放射化分析>グループには2006年からの参加であるため、本ワークショップにおける第2期サマリーレポートの発表はない。「NAA技術を用いた工業廃水の排出による環境汚染分析」の研究について発表があった。INAA技術によって分析したダッカ輸出加工区の繊維工業から排出された廃水からは、物理化学パラメーター、塩分と重金属汚染を確認した。ガイドラインには、周囲の環境へ廃棄する前の廃水処理に対する費用効率の良い試験工場をどの様に整備するかを載せている。さらに、既存のHazaribag 皮革産業地と予定地であるTetuljhora 皮革工業地域の土壌からCr毒性が確認された。Hazaribag地域ではCr汚染度が高いが、Tetuljhoraの土壌は国際基準値と比べて通常レベルである。

中国:Prof Bangfa Niによる第2期の総括報告
 北京のLianxiang地域では、2004年以来GENTサンプラー(試料採取器)と専用フィルターを用い、400以上採集し、k0‐INAAによる分析によって約40元素を定量した。データ解析は主に統計ソフトウェアを使って、主に土壌、石灰岩、酸化物、交通、粉塵などの5汚染源を確認した。これらの情報は、地域行政の裁決を支援している。幾つかの小さな炭鉱や石灰窯が地域行政によって閉鎖され、幾つかのセメント工場は移転させられた。石灰燃焼は、天然ガスまたは液化ガスに代替された。その結果から、Liangxiang地域の大気環境は改善されたことが示された。また、NAAや大気汚染研究における若手科学者たちの技術及び知識は極めて向上している。なお、INAAと統計ソフトウェアを使った大気汚染研究の有効性に対するエンドユーザーの支持と理解は高まった。

インドネシア:Mr. Sutisnaによる第2期の総括報告
 ジャカルタ首都特別州の環境管理局(BPLHD)は、海洋環境モニタリングにおいて核分析技術を使う事に力を入れている。2005年末に開始された環境管理局との連携は現在も続いている。ジャカルタ湾の試料サイト30箇所及びBanten省北沿岸の試料サイト10箇所から採取した堆積物試料の成分分布を評価した結果、Sc, Cr, Rb, Sr, Ag, Sb, Cs, La, Ce, Nd, Eu, Yb, Th, U, Fe, Zn, Pb, Cu, Cd そしてBrの元素が報告された。本プロジェクトの分析結果は、非常に有用であると評価された。

日本:海老原充教授による第2期総括報告
 2005年〜2007年における日本NAAグループの実施活動をまとめ、第2期当初に掲げた目標との比較評価を発表した。SPM試料採取を八王子(郊外)、坂田(地方)、江東区(都市)の3箇所で実施し、INAAによる分析を行った。また、試料採取は産業と人的影響から遠く離れた辺戸岬(沖縄)でも行った。結論として、掲げた3ヵ年目標は、ほぼ達成したと評価される。

韓国:Mr. Jong-Hwa Moonによる第2期の総括報告
 環状デニューダ型サンプラーとINAAを使ってDaejeon市内の大気環境をモニタリングするために、質量濃度とPM2.5の28の元素濃度を特定した。
 ここで得られたデータは、国内外の専門誌に研究論文として発表した後、環境省指揮下の環境当局に提供される。

マレーシア:Mr. Md Suhami Bin Eliasによる第2期の総括報告
 国内外で開催された研究活動への参加を含め、様々な協力機関を通して研究開発活動に取り組んできた。マレーシア原子力庁は、UTM, UiTM, UPM, UKM, UMT, AELBそしてマレーシア水産協会など大学及び政府機関との連携をとっている。同時に国際レベルでは、マレーシア原子力庁は、IAEA及びFNCAプログラムと緊密に協力している。国外のみならず国内機関とマレーシア原子力庁間の連携目的は、核分析技術に係る研究活動を促進することである。海洋堆積物試料は、マレーシア半島東海岸から採取し、INAA技術によって分析した。この研究で得られたデータは、国の適切な管理を行うために、環境局にとって重要なものとなるであろう。

フィリピン:Ms. Preciosa Corazon Pabroaによる第2期の総括報告
 2004年〜2006年の間にValenzuela試料サイトではPM10とPM2.5の平均値が上昇しており、2006年のPM10においてはフィリピンNAAQ長期基準値を超えている。2005年のValenzuelaにおけるPM10Pbレベルは、粗粒と細粒片分の両方の鉛源要素を示しているPMFランに反映されるPM10-2.5とPM2.5のレベルが上昇していることを示している。条件付確率関数(CPF)分析では、この汚染物質はほぼ全方向から来ていることを示している。環境管理局、Palawan地方自治体及びMakati環境保護審議会との連携体制を発足させた。POVEDAとUST試料サイトから採集した計40個のエアフィルターは、EDXRFシステム(PNRI)とINAA(TMU)の両方で分析された。特に鉛に関しては、INAAでは鉛の分析は出来ないためEDXRFのほうが有用である。

タイ:Dr. Sirinart Laoharojanaphandによる第2期の総括報告
 FNCA活動としての研究炉利用は、2つのサブプロジェクト「Saraburi省における大気環境調査」と「Thalaenoi保護地区における汚染調査」として実施した。浮遊粒子データは資源・環境省汚染管理局によって活用された。Thalaenoiプロジェクトの結果は、資源・環境省環境推進局環境研究研修センター水中研究開発部での活用のために、その他情報と組み合わせて利用される。この成果は、Thalaenoiの持続的利用に対する国民意識を高めるために、環境推進局とPattalung省委員会主催による技術会議にて発表される。

ベトナム:Dr. Nguyen Ngoc Tuanによる第2期の総括報告
 Nha Trang, Phan ThietそしてGanh Rai 湾で採取された海洋環境試料から18-25の元素を特定した。対象は、Al, As, Br, Ca, Cd, Ce, Co, Cr, Cs, Cu, Eu, Fe, Hg, K, La, Mn, Na, Pb, Rb, Sb, Sc, Se, Sm, Sr, Th, U, V そしてZnである。採取された海洋環境試料は海水(18元素)、生物相(22元素)及び堆積物(25元素) である。成分分析に用いた技術は、INAA、 RNAAそしてAASである。3箇所の湾岸地域から60以上の試料が採取され、得られた分析結果は、今後の海洋環境状況の研究と観察のためのデータベースとなるであろう。

3ヵ年評価(2005-2007)に対する報告及び討議

 各国がそれぞれの自己評価を発表した。
 添付1‐各国評価シート

第3期への提案についての討議

 FNCA研究炉利用<中性子放射化分析プロジェクト>の次期フェーズ(第3期)継続の提案は、新しく本プロジェクト活動への参加に興味を示しているオーストラリアを含む全参加国によって承諾された。第3期の3つの共通ターゲットは、地球化学試料(6ヶ国)、食料試料(7ヶ国)そして環境試料(6ヶ国)である。2008年初期に開催される次のFNCAコーディネーター会合に於いて、第3期に向けたこれらの案が承認されれば、各国が本プロジェクトの全体目標や年度目標を設定するのに電子メールでのコミュニケーションを図ることになる。決定は、2008年度FNCA研究炉利用<中性子放射化分析プロジェクト>会議で下される。これまでの経験から、参加国のほとんどが自国のプロジェクトにおいてk0‐INAAを広く使用しているため、参加者は技術検証を第3期に実施するもう一つの課題とすることに同意した。タイは、自国でのk0‐INAAの実演開始に向けて支援要請の意を示した。第3期の成果として、幾つかの技術論文を国内外の専門誌に発表することが期待される。

第3期(2008-2010)の研究対象試料

国名 研究予定対象試料
オーストラリア 地球化学試料
バングラデシュ 地球化学試料、バイオマトリクス、食料品、ヒ素関連物質
中国 環境試料、食料品、地球化学試料
インドネシア 環境試料(土壌、海水)、食料品
日本 地球化学試料、SPM
韓国 食料品
マレーシア 地球化学試料、 食料品、SPM、飲料水
フィリピン 地球化学試料、SPM、食料品、玩具、化粧品
タイ 食料品、(化学)肥料(農業試料)
ベトナム 土壌、堆積物、生物相、海水

2007年FNCA研究炉利用ワークショップ
研究炉基盤技術グループ
会議報告

2007年10月29日〜11月2日
インドネシア、スルポン

1. 目的

 研究炉基盤技術(RRT)プロジェクトの目的は、「研究炉の利用と炉心管理のための核計算技術の共有化」である。第3回ワークショップの主要目的は、(1)各国へ配布した共通コード(標準核計算コード(SRAC))を用いた自国炉心の炉心燃焼計算結果の討議及び共通コードの炉心管理又は利用への適用(2)本プロジェクトの最終報告についての討議、(3)本プロジェクトの評価についての討議、そして(4)次期プロジェクトの具体的な活動計画の決定である。

2. 開会式・会議日程の確認

 ワークショップの初めに、佐川氏からRRTプロジェクトへの積極的な協力に対し感謝の意が述べられ、さらにRRTプロジェクトの目的と全体スケジュールの再確認が行われた(表1参照)。今年度は現プロジェクトの最終年である。3年間の活動を通して、メンバー国間における炉心管理のための共通核計算技術の確立は、参加国における研究炉の有効利用だけでなく、安全かつ安定した運用を促進させるであろう。
  佐川氏から、2006年8月にフィリピンで開催された第2回ワークショップにて合意された第3回ワークショップに向けての活動(表2参照)について概説が行われた。また第3回ワークショップの会議日程(表3参照)が提案され、議論すべき4件の活動 (1) SRAC又はMVPを使った自国炉心の炉心燃焼計算結果の検討及びSRAC又はMVPの炉心管理・利用への適用、(2)本プロジェクトの最終報告についての討議、(3)本プロジェクトの評価についての討議、そして(4)次期プロジェクトの具体的な活動計画の決定について言及があった。
  全参加者は、提案された会議日程に合意した。

表1 研究炉基盤技術プロジェクトスケジュール

表1 研究炉基盤技術プロジェクトスケジュール

表2 第2回WSにて合意された第3回WSに向けてのプロジェクト活動計画

  準備作業 2007年度 第3回ワークショップ
指導国 - SRACによる自国炉心燃焼計算のコンサルティング - 自国炉心燃焼計算結果の報告(keff変化)
- 自国炉心の燃料管理、高度利用、改造へのSRACコードの適用についての報告
- 各国からの最終報告書の提出及び次期プロジェクトへの提案
メンバー国 - SRACによる自国炉心燃焼計算について
- 共通コードの炉心管理・利用への適用について
-RRTプロジェクト最終報告書の準備

表3 第3回ワークショップ活動スケジュール

-期日- -活動内容-
10月29日(月) - カントリーレポート「SRACによる自国炉心の炉心燃焼計算及び炉心管理・利用への適用について」
10月30日(火) - カントリーレポート「SRACによる自国炉心の炉心燃焼計算及び炉心管理・利用への適用について」(続き)
- 本プロジェクトの最終報告についての討議
10月31日(水) - 本プロジェクトの最終報告についての討議(続き)
- 本プロジェクトの評価についての報告及び討議
11月1日(木) - 次期プロジェクトについての討議
- サマリーレポートについての討議(議事録)
- テクニカルツアー(MPR-30炉)

3. 参加者

 中国、インドネシア、韓国、日本、マレーシア、タイ、ベトナムから計9名、さらにオブザーバーとしてインドネシアから研究者4名が参加した。参加者リストを添付Aに示す。

4. カントリーレポート「共通コードよる炉心管理・利用のための自国炉心燃焼計算について」

 ほとんどの参加者がSRAC及び/又はMVPコードによる自国炉心の燃焼計算を実行したとの報告があった。原子炉の運転時間経過に伴う実効増倍率の変動結果が各参加者から発表された。
 SRAC及び/又はMVPコードによる燃焼計算の結果は、実験データや他のコードシステムによる計算結果と良い一致を示した。しかし、数ヶ国においては、自国炉心の燃焼計算を終了させるにはもう少し時間が必要である。
 幾つかの国においては、MVPコードはNTD、I-131製造や新しい研究炉の設計における核計算と利用のための研究に適用された。
 各国カントリーレポートの概要は以下の通りである。

(1) 中国(Prof. Luzheng Yuan)
 CARR(China Advanced Research Reactor)の燃焼計算・核計算を実施するためにSRAC コードを使用している。結果は、自国のコードシステムを使った場合の結果と比べて幾分異なる。これまで中国は、細部にわたった炉心燃料管理と研究炉への利用を行ってこなかったが、SRACコードがこれらの分野に対応する上で便利かつ有効なものであることは確かである。中国では、SRACコードを馴染みのあるWindowsシステム上ではなくLINUXシステム上で動作させているため、現在、その使用状態は初期段階である。従って、計算結果の実測値との不一致に関しては、まだ十分な説明がなされていないが、今後解決されるであろう。

(2) インドネシア(Mr. Surian Pinem)
 RSG-GAS炉心計算は、BOCとEOCにおける実効倍増率(keff)とSRAC-COREBNを使った燃料燃焼分布について計算を実施している。SRAC-COREBNによる計算でのkeff値と測定結果のkeff値を比較した。初期炉心と平衡炉心のkeff及び燃焼計算をIAFUELコードによる計算結果と比較した。SRAC-COREBNによる平衡炉心の燃料燃焼分布計算値は、IAFUELコードと比べて良い一致を示した。

(3) 日本(Mr. Tomoaki Kato)
 SRACはJRR-3の炉心燃焼計算に使われている。SRACのPIJ、PIJBURN、ANISN、CITATIONは、炉心燃焼計算の準備として群定数を作るために使われる。SRACのCOREBNとHISTは、炉心燃焼計算のために使われる。SRACによる炉心燃焼計算では、可燃性毒物であるカドミウムワイヤーの燃焼によって起こる過剰反応の増加と、ウランの燃焼によって起こる過剰反応の減少を同時に計算することができる。炉心燃焼計算の結果から、可燃性毒物のカドミウムワイヤーの燃焼が、SRACで正確に計算されていない事が判明した。そこで、この問題を解決するために、燃焼ステップ数を15から60へ、核データライブラリーをJENDL-3.2からJENDL-3.3へ変更した。計算結果は依然として不正確さが残るが、現行手法による結果と比べて修正後の手法による結果は改善されることを確認した。
 NTD (Neutron Transmutation Doping) シリコンの計算はMVPコードを使って行われる。シリコン・インゴット中に31P核種を均一に分布させることは、NTDシリコンを作るために非常に重要なことである。そこで、31Pが30Si(n,γ)31Siの核反応とその後の31Siの壊変により生成されることから、シリコン・インゴット中の中性子束、捕獲反応及び中性子スペクトルの計算が行われる。これらの計算結果から、JRR-3で照射されたNTDシリコンの性能は十分であることが確認された。

(4) 韓国(Mr. Hak-Sung Kim)
 AHR炉心設計のための核特性に関する研究が実施されている。中性子束と出力分布、反応度係数、制御棒価値などの核設計パラメーター関連の主要な解析が実施されてきた。解析には、MCNP、MVPそしてHELIOSコードが使われた。MCNPとMVPによる結果は十分に一致し、下記のようにまとめられる。
 初期の非摂動炉心状態において、炉心領域での高速中性子束(En≥1.0MeV)は1.47×1014 n/cm2sに、最大熱中性子束(En≤0.625eV)は4.45×1014 n/cm2sに達する。反射体領域では、最大熱中性子束は4.06×1014 n/cm2sであると予測される。
 平衡サイクル炉心の解析として、反射体領域の照射施設が対象となった。計算モデルは、反射体領域に4本の接線ビーム管と計18個の異なる径の垂直照射孔を持っている。運転サイクルは38日間であり、BOCでの過剰反応度は103.4mk、EOCでは最小で24.6mkとなった。燃料要素平均燃焼度は、54.6%(U-235量)であった。最大ピーキング係数(Fq)は2.56と計算され、出力密度は106.2kW/mであった。1次停止システム(制御棒挿入)、2次停止システム(重水排出)による停止余裕は、それぞれ27.4mkと46.3mkと予測された。温度係数と出力係数はともに負であったため、AHR炉心は本質的に安全であるとみなされる。

(5) マレーシア(Ms. Zarina Binti Masood)
 第11回RTP炉心構成がMVPコードを使って計算された。核データライブラリーは、JENDL3.3が用いられ、連続エネルギー法に基づいている。物理量は、計算の際、衝突率による評価法と粒子の飛行距離による評価法を使用した集計処理によって見積もられた。RTP炉心のための実効増倍率、核分裂密度と中性子束分布は得られている。しかし、今後はSRACとMVPを使った燃焼計算を行うことが計画されている。

(6) タイ(Mr. Narin Klaysubun)
 タイ研究炉(TRR-1/M1)はオープンプール型TRIGA炉(TRIGA)-MarkIIIである。この炉は、水素化ウラン・ジルコニウム(UZrH)燃料を使用する。TRR-1/M1燃料の第一炉心構成では、ともに20%濃縮で総重量当たり8.5wt%と20wt%ウランを用いている。炉の定格熱出力は2MWである。
 SRACによるTRR-1/M1のモデリングは、2つの大きなステップで構成され、断面積作成と炉心計算に分けて行われる。群断面積作成は、2次元衝突確率法を利用するSRACのPIJモジュールによって行われる。TRR-1/M1は、2つの主要モデルである燃料格子タイプと非燃料格子タイプに分類される。SRACのCOREBNモジュールは、断面積作成段階で作成された断面積データを使って炉心計算を行う。COREBNを用いた計算モデルでは、軸方向80領域分割とし、そのうち燃料領域は60領域である。SRACによって計算される炉心過剰反応度は、通常、運転データと比べると過大評価となる。しかし、CORE1における過剰反応度は、SRACとMVPの両方で計算された。これは、SRAC計算の炉心モデリングがMVPと一致していることを示している。一方で、SRACによるBOCとEOC炉心の過剰反応度の差は運転データと大きく異なった。これらの相違の解決にはSRACによる燃焼計算のためのモデリングに関係してさらなる改善が必要である。
 TRR-1/M1のCORE1は、4つのフォロワ燃料付制御棒、1つのフォロワ燃料無制御棒、3つの中性子検出器と円筒六角格子状の円筒形フレーム付中央照射筒チャンネルを含む100の燃料要素をMVPコードのためのモデルとしている。 燃焼計算は、全ての核種に対してENDF/B-VI ポイントワイズ断面積ライブラリーを使い、MVPとMVP-BURNコードを用いて行われた。燃焼計算は、標準チェーンモデル(u4cm6fp50bp16T)を使った各炉心サイクルの全炉心計算とした3次元計算で行われる。TINTは、燃料装荷とその利用のためにTRR-1/M1の炉心管理システムとしてMVPコードを適用している。各炉心サイクルに対しては、MVPは最適な炉心の模擬実験と研究のために利用されている。炉心過剰反応度、制御棒価値、中性子束分布、ピーキングファクタは、計算され、SRACでの結果と比較される。MVPコードは、炉内ジェムストーン(宝石原石照射)施設の新しいプロジェクトの設計と利用のための研究にも使われるだろう。

(7) ベトナム(Mr. Nguyen Kien Cuong)
 SRACコードは、ダラット研究用原子炉の核計算及び燃焼計算に使われた。燃料集合体と非燃料物質のためのマクロ断面積は、PIJ、ANISN、CITATIONコードを用いて準備された。燃焼計算では、燃料集合体の軸方向は12の領域に分かれており、各層は5cmである。HISTとCOREBNコードは燃焼計算に適用され、各燃焼ステップの後、過剰反応の結果を補正するためにベリリウム毒作用が計算された。この補正後の過剰反応の計算結果と実験データは、良い一致示した。燃焼分布の結果は走査法(Cs134/Cs137比率)の結果と比較され、幾つかの外周部の燃料集合体で大きな不一致がある以外は、十分な一致(10%未満)が得られた。
 MVP/GMVPコードは、ダラット研究用原子炉(DNRR)のセル計算及びセル燃焼計算、炉心燃焼(MVP-Burn)を含む全炉心計算にも適用された。炉心管理の目的とは外れるが、MVPコードはダラット研究用原子炉(DNRR)での中性子捕獲における放射性同位体I-131製造のための計算に適用された。

5. 最終報告書

 プロジェクトテーマである「研究炉の利用と炉心管理のための核計算技術の共有化」は、2007年ワークショップで終了となる。前回の2006年ワークショップでは、過去3年間の活動の集約資料として、2005年〜2007年の3ヵ年最終報告書を作成するべきとの合意がなされた。
 セッションでは、各国参加者が最終報告の状況を発表し、その報告についての議論が行われた。各参加者は、最終報告書を作成し2007年11月末までにそれを提出することで合意した。各国の最終報告概要は以下の通りある。

(1) China (Prof. Luzheng Yuan)
 中国では、核及び燃焼解析に対して幾つかの異なるコードシステムが異なるユーザーによって使用されている。WIMSとCITATIONコードは、CARR設計の炉心セル計算に使われている。一方、ORIGEN2とMCNPコードは、幾つかの特定のディプレッション ポイントにおける全計算結果を検証するために使われている。
 燃料、炉心セル、反射体及び照射チャネルのモデリングに関する少数群定数と燃焼に伴う群定数のセットにより中性子束、増倍率及び各種の個数密度を得ることができる。
 SRACでは、被覆、燃料ミート、両側板及び減速材は、燃料板と両側板部位に対する詳細群実効断面積を得るためにPIJにより均質化され、それから他のギャップ領域や他のアルミの領域とともに均質化される。これにより燃料領域の少数群実効断面積が得られる。n同様の方法は制御棒領域、照射管領域、反射体領域などでも行われる。CITATIONコードと結び付けて考えると、炉心計算はSRACコードを用いることによって完成させることができる。
 keff や核種個数密度など幾つかの結果では、2つのシステム間で多少の不一致を示している。その一つの理由は、初期の方法である国内コードシステムよりSRACモデリングの方がかなり簡素化されていることによると思われる。従って、これらの矛盾点を解明するために、更なる作業が行われるべきである。

(2) インドネシア(Mr. Surian Pinem)
 RSG GAS炉心燃焼計算は、IAFUELコードを使って行われる。IAFUELコードは、2次元中性子拡散法コードである。利用としては、放射性同位体分析など、中性子パラメーターがBatan-EQUIL-2Dコードによって解析される。
 SRACはRSG GASの炉心計算に使用されてきている。SRACのPIJ、ANISN及びCITATIONは、炉心計算の準備として群定数を作るために使われる。炉心計算結果は、過剰反応度、制御棒価値、それから熱中性子束の測定値と一致している。SRACは、RSG GASの炉心燃焼計算に使用されてきており、COREBNとASMBURNが炉心燃焼計算に用いられている。計算により最適な運転サイクル周期が決定されてきた。SRACはRSG GAS炉の炉内燃料管理とラジオアイソトープ・ターゲットを最適化するために使われるであろう。
 モンテカルロコードMVPを使ったRSG GAS初期炉心計算が行われた。結果は実験値と一致している。RSG GAS炉心燃焼計算は、MVP-BURNを使って行われるであろう。MVPコードは、モリブデン製造のためのHEUやLEUターゲットなどのようなラジオアイソトープ・ターゲットの解析に使われるであろう。

(3) 日本(Mr.Tomoaki KATO)
 日本に関する最終報告の草案が紹介された。
 日本は、核計算の対象としてJRR-3を採用した。
 SRACによる炉心計算に関しては、PIJ、ANISN、そしてCITATIONが炉心計算の準備として実効断面積データを作成するのに使われる。SRACのCITATIONが炉心計算に使われ、炉心計算結果は、過剰反応度、制御棒価値、熱中性子束などの測定値と一致している。
 SRACによる炉心燃焼計算に関しては、PIJ、PIJBURN、ANISN、そしてCITATIONが炉心燃焼計算の準備として実効断面積データを作成するのに使われる。COREBNとHISTが炉心燃焼計算に使われ、炉心燃焼計算結果はカドミウムワイヤーの燃焼によって起こる過剰反応の増加とウラニウム燃焼によって起こる過剰反応の減少を同時に計算することができる。
 SRACは20年以上前から炉心管理のために使われている。過剰反応度、燃料燃焼率など幾つかの項目は、炉の安全運転のために必要な項目であるため、炉心管理作業としてSRACにより計算されている。
 MVPによる炉心計算に関しては、JRR-3の計算モデルは正確なもので、臨界状態でのkeff計算結果は、測定値と良い一致を示している。
 MVP-BURNによる炉心燃焼計算に関して、JRR-3の計算モデルが作られた。入力データにおいて、燃焼領域が垂直方向配列に沿って分割されているわけではない。keff変化の計算結果は、運転データとは一致していない。この相違に関する研究は、今後の課題となる。
NTD(Neutron Transmutation Doping)シリコンの計算は、MVPコードによって行われる。シリコン・インゴットに31P核種を均一に分布させるのは、NTDシリコンを作るために非常に重要なことである。それから、31Pは30Si(n,γ)31Siの反応とその後の31Siの壊変によって生成されるため、中性子捕獲反応速度とシリコン・インゴット中の中性子スペクトル計算が行われる。これらの計算結果から、JRR-3におけるNTDシリコンの性能は十分であることが確認された。

(4) 韓国(Mr. Hak-Sung, Kim)
 HANAROでの経験を基にした新しい研究炉に対する今後のニーズを考慮し、KAERIは最近、AHR(Advanced HANARO reactor)の設計プロジェクトに着手した。AHR設計のための基本的な核計算コードシステムは、HANAROの建設と運転を通じて検証されたHANAFMS(HANARO Nuclear Analyses and Fuel Management System)である。現在、AHRの設計段階では主にMCNP/HELIOSコードが炉心設計のために使われている。HANAFMSの結果と比較するために、AHRの核特性を分析するSRACシステムの導入を予定している。
 SRACコードシステムのインストールは成功し、JRR-3の計算例とのkeff値比較によって裏付けされた。それから、SRACを使ってAHR炉心の臨界計算を行った。SRACコードの結果はMCNPの結果とやや異なっていた。従って、CITATIONのモデリングは再考されるべきである。SRACの更なる研究のために、CITATION のためにより詳細な炉心モデルを導入し、そしてAHRにおける SRACコードの利用を完成させるために燃焼計算の研究をすべきである。
 また、MVPを使ってAHR炉心の基本的な核特性と燃焼を計算した。MCNPとMVPは、中性子束において統計的計算誤差範囲内で十分一致しており、MCNP/HELIOSとMVPの燃焼計算結果もまた一致していた。もしもそのコード(MVP)が全炉心燃焼計算を実施する能力を備えているものであれば、複雑な照射装置や実験装置の設計にMVPコードを採用することを計画している。

(5) マレーシア(Ms. Zarina Binti Masood)
 当初は、PUSPATI TRIGA 炉の炉心管理にはTRIGAM, TRIGLAV そしてWIMSD/4が使われていた。TRIGAMは、1次元2群そしてTRIGLAVは2次元4群拡散コードである。しかし、TRIGAMは水ギャップに近い燃料要素の燃焼、照射チャネル、制御棒の予測において正確でないことが判明した。
 JENDL3.2を用いたSRACコードは、PUSPATI TRIGA 炉の炉心計算に使われている。炉心計算結果は、実効倍増率、過剰反応度、制御棒価値の測定値と一致している。熱中性子束と出力密度も得られた。SRACのCOREBNを使った燃焼計算は現在進行中であり、結果はまだまとまっていない。PUSPATI TRIGA 炉の炉内燃料管理にSRACを使う計画も出ている。
 MVPコードはPUSPATI TRIGA 炉の第11次炉心構成の核計算をするのに使われている。実効増倍率、核分裂密度及び中性子束分布が得られた。今後はMVP-BURNによる燃焼計算とMVPによる炉心管理を行う計画がある。

(6) タイ(Mr. Narin Klaysubun)
 タイ研究炉(TRR-1/M1)はオープンプール型TRIGA原子炉(TRIGA-MarkV)である。この炉は、水素化ウラン・ジルコニウム(UZrH)燃料を使う。TRR-1/M1燃料の第一炉心構成は、ともに20%濃縮で総重量当たり8.5wt%と20wt%ウランを用いている。炉の定格熱出力は2MWである。
 TRR-1/M1は炉心計算にTRIGAPというコンピューターコードを使用している。このコードは拡散理論を基にしたTRIGA炉のために設計された。このコンピュータープログラムは、燃焼機能としてライブラリーに保管されているユニットセル(燃料及び非燃料)の全タイプの実効2群断面積を使ったリング状に均質化された2群拡散定数を用いてkeffを予測するために設計されている。燃料要素は識別番号によって登録されおり、時間経過とともに燃焼計算が実施される。全てのユニットセルが等体積だと仮定すると、断面積は18群輸送近似のWIMS-S輸送コードで計算される。燃料要素のヒストリーを含むTRIGAPコードのライブラリーは、TRIGAPプログラムのためのデータベースである。
 TRR-1/M1炉心計算と燃焼計算は、SRACコードシステムにより行われる。SRACによるTRR-1/M1のモデリングは、2つの大きなステップで構成され、断面積作成と炉心計算、に分けて行われる。群断面積作成は、2次元衝突確率法を利用するSRACのPIJモジュールによって行われる。SRACのCOREBNモジュールは、断面積作成段階で作成された断面積データを使って炉心計算を行う。SRACによる炉心過剰反応度は、通常、運転データと比べると過大評価となる。しかし、CORE1における過剰反応度は、SRACとMVPの両方で計算された。これは、SRAC計算の炉心モデリングがMVPと一致していることを示している。一方で、SRACによるBOCとEOC炉心の過剰反応度の差は運転データと大きく異なった。これらの相違の解決にはSRACの燃焼モデリングに関係してさらなる改善が必要である。
 自国炉心の核計算はMVPコードによって行われた。燃焼計算は、全ての核種に対してENDF/B-VIポイントワイズ断面積ライブラリーを使いMVPとMVP-BURNコードを用いて行われた。燃焼計算は、標準チェーンモデル(u4cm6fp50bp16T)を使った各炉心サイクルの全炉心計算とした3次元計算で行われる。MVPは最適な炉心の模擬実験と研究に利用されている。炉心過剰反応度、制御棒価値、中性子束分布、線出力密度が計算され、SRACでの結果と比較される。MVPコードは、炉内ジェムストーン施設の設計と利用の研究にも使われるであろう。
 このプロジェクトを通して、SRACとMVPコードは燃料管理手段としてTRIGAP(自国コード)に取って代わるものとして導入されてきた。計算結果としては、MVPは実験結果と比較して十分な計算結果を出している。一方で、SRAC計算結果はSRACモデリング(特に燃焼モデリング部分)の更なる改善が必要なように、まだ実験結果と十分には一致していない。従って、MVPは炉心内燃料配置を最適化するために使うには実用的ではない。 TRR-1/M1燃料管理の方法論案は、MVPを参照コードとして使う一方で、SRACを予備計算のための計算コードとして使うことである。この案では、最適炉心装荷パターンはSRACによって解析され、SRACにより導き出された最適炉心装荷パターンは、MVP計算によって詳細にモデル化されるであろう。

(7) ベトナム(Mr. Nguyen Kien Cuong)
 3年間のSRACとMVPコードの利用により、DNRRの炉物理パラメーターはほぼ計算された。コードから得られた結果は、実験データまたはMCNPによる計算結果と十分一致している。両コードは現在DNRRの炉心及び燃料管理に使われている。SRACコードでは、燃料や他の物質のマクロ断面積が準備され、107の中性子エネルギー群から7群まで縮約された。燃料集合体の断面積や炉内の全成分はPIJによって計算された。燃料集合体の最上部と最下部はPIJとANISNによって行われた。6本の制御棒(B4C 物質−4本の粗調整棒と2本の安全棒(緊急停止用))は、境界における7つの中性子エネルギー群での中性子束と中性子流の比率を決定することによって完全吸収体と見なされた。JENDL3.3とENDF/B6.8ライブラリーは全計算において使われた。PIJBURNはU-235燃焼率0%〜90%までの24ステップの燃料集合体における燃焼計算に使われた。全体炉心燃焼計算のために、各燃料集合体は12ノード(5cm/1ノード)に分割された。燃焼計算の結果は実験データとの比較によって裏付けされた。MVPコードは臨界、中性子束、そして初期炉心の出力密度を計算するのに使われた。燃焼計算はMVPとMVP-BURNコードによって行われた。取得結果も実験データと一致していた。I-131製造についてDNRRの中性子トラップにおける2つの異なるキャプセル配置に関する解析がMVPコードで実施された。その結果、3つのキャプセルを同位置に配置するよりも、軸方向に配置した方が良いことが分かった。

6. 現プロジェクトの評価

 各国が現プロジェクトの評価について発表を行った。3年間の活動を経て、全ての参加国には少なくとも1人はSRACとMVPの精通者がいる。SRACを炉心管理のために適用しようと試みているメンバー国もある。またSRACまたはMVPを研究炉利用の増進、例えば、RI製造、宝石用原石の照射などに利用している国もある。さらに、SRACを新しい研究炉の設計に使っているメンバー国もある。次期プロジェクトへの提案としては、多くの参加国が反応度事故(RIA) 及び流量喪失事故(LOFA)に対する 安全解析と熱水力解析を希望している。各国評価のまとめを添付Bに示す。
 佐川氏から参加者に対し、この評価について自国のプロジェクトリーダーと再度討議を行うこと、また評価の最終版を早急にFNCA事務局、山下氏、佐川氏あてに郵送するよう依頼があり、全参加者はこれに同意した。

7. 次期プロジェクト

 佐川氏から現プロジェクト後の新しいプロジェクト(次期プロジェクト)の提案が述べられた。新プロジェクトの目的は、多くの参加国が反応度添加解析及び流量喪失解析を望んでいるため、「研究炉の安全運転のための安全解析技術の共有化」である。新プロジェクトタイトルは「研究炉のRIA(反応度事故)安全解析及びLOFA(流量喪失事故)安全解析」となった。佐川氏からは、COOLODとEUREKAコードがプロジェクトにおいて有用であろうとの提案があった。さらに、新プロジェクト3年間の具体的なスケジュールが提案された(表4表6参照)。
 全参加者は、提案された計算コード及びスケジュールに合意した。

表4 新プロジェクト初年度スケジュール

  2008年度(1年目)
準備作業 第1回ワークショップ
指導国 - コンピューター性能に関する最低必要情報の配布
- COOLOD及びEUREKAのマニュアルとソースプログラムの配布
- COOLODのサンプル・プログラムの提出
- 入力データの説明を含めたCOOLODデモンストレーション
- サンプル問題の説明
メンバー国 - 安全解析の現状についての情報準備
- COOLOD及びEUREKAのインストール
- COOLODのサンプル問題の計算
- 安全解析の現状をカントリーレポートとして発表
- インストール状況及びサンプル問題計算結果の発表

表5 新プロジェクト2年目スケジュール

  2009年度(2年目)
準備作業 第1回ワークショップ
指導国 - EUREKAのサンプル問題の提出 - 入力データの説明を含めたEUREKAデモンストレーション
  ・反応度添加事象
・外部電源損失
- サンプル問題の説明
メンバー国 - COOLODを使った自国炉の計算
- EUREKAのサンプル問題の計算
- COOLODによる計算結果の発表
- インストール状況及びEUREKAによるサンプル問題計算結果の発表

表6 新プロジェクト3年目スケジュール

  2010年度(3年目)
準備作業 第1回ワークショップ
指導国 - 最終報告書の編集
- EUREKAを使った反応度添加事象及び外部電源損失時の自国炉計算
- EUREKAによる計算結果の発表
- 最終報告書の発表
- プロジェクト評価
- 次期プロジェクトについての提案及び討議
メンバー国 - EUREKAを使った反応度添加事象及び外部電源損失時の自国炉計算
- 最終報告書の準備

8. 議論及び要旨

 第3回ワークショップでは、共通コードによる燃焼計算結果と利用への適用についてのカントリーレポート、最終報告、現プロジェクトの評価そして次期プロジェクトについての報告及び討議が行われた。
 SRAC又は/及びMVPコードからの燃焼計算結果は、実験データや他のコードシステムによる計算結果とよく一致していることを示した。MVPコードは、NTD、I-131製造または新しい研究炉の設計など、幾つかの国では核計算と利用の研究のために応用された。最終報告書及び現プロジェクト評価の発表と討議を通して、全参加国が炉心管理と研究炉利用のための核計算技術を高めることができたという事が明らかとなった。さらに、「研究炉のRIA(反応度事故)安全解析及びLOFA(流量喪失事故)安全解析」が次期プロジェクトとして確定された。
 最後に、今年は現プロジェクトの最終年ではあるが、全参加者が研究炉の核計算技術の更なる向上のためにも各国間の良好な関係と情報交換を今後も続けていくことを希望している。

添付
A. 参加者リスト
B. FNCAプロジェクト活動の評価と再考(草案


2007年FNCA研究炉利用ワークショップ
プログラム

2007年10月29日〜11月2日、インドネシア、スルポン

開催日 2007年10月29日〜11月2日
開催地 インドネシア、スルポン
主催 インドネシア原子力庁 (BATAN)
文部科学省 (MEXT)
実施機関 インドネシア原子力庁 (BATAN)
日本原子力研究開発機構 (JAEA)
参加国 バングラデシュ、中国、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、日本

10月29日(月)
9:00-9:30 参加者登録
9:30-9:40 歓迎挨拶
Dr. Aang Hanafiah Wangssatmaja
インドネシア原子力庁(BATAN)次官、FNCAインドネシアコーディネーター
9:40-9:50 開催挨拶
桜井文雄
日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所副所長
研究炉利用分野の代表
9:50-10:00 開催挨拶
Dr. Hudi Hastowo
インドネシア原子力庁(BATAN)長官
10:00-10:10 集合写真撮影
10:10-10:40 コーヒー・ブレイク
招待レクチャー <議長:Dr. Ir. Anhar R Antariksawan>
10:40-11:20 「RSG-GAS炉利用の経験」
Ms. Endang Susilawati
インドネシア原子力庁(BATAN)
11:20-12:00 「太陽系の元素存在度」
海老原充
首都大学東京
12:00-13:30 昼 食
中性子放射化分析(NAA)セッション
<議長:Nguyen Ngoc Tuan>
13:30-13:45 「NAAの展望」
海老原 充
首都大学東京
13:45-14:45 カントリーレポート「昨年度のプロジェクト進捗状況」(1)
Syed Mohammod Hossain:バングラデシュ
Sustina:インドネシア
14:45-15:15 コーヒー・ブレイク
<議長: Nguyen Ngoc Tuan>
15:15-16:45 Jong-Hwa Moon:韓国
Md Suhaimi Bin Elias:マレーシア
Preciosa Pabroa:フィリピン
研究炉基盤技術(RRT)セッション
<議長:Setiyanto>
13:30-13:50 「RRTプロジェクト活動のまとめと検討課題の確認」
佐川尚司:日本
13:50-14:30 カントリーレポート「自国炉心の燃焼度結果(Keffの変化)と自国炉心の先進的利用、燃料管理、改造等のためのSRAC/MVPの適用について」(1)
Haksung Kim:韓国
14:30-15:00 コーヒー・ブレイク
<議長: Nguyen Kien Cuong>
15:00-16:20 Surian Pinem:インドネシア
加藤友章:日本

 

10月30日(火)
中性子放射化分析(NAA)セッション
<議長: Preciosa Pabroa>
9:00-10:00 カントリーレポート「昨年度のプロジェクト進捗状況」(1)
大浦泰嗣:日本
Sirinart Laoharojanaphand:タイ
10:00-10:30 コーヒー・ブレイク
<議長: Md Suhaimi Bin Elias>
10:30-12:00 Nguyen Ngoc Tuan:ベトナム
Syed Mohammod Hossain:バングラデシュ
カントリーレポートについての討議
12:00-13:30 昼 食
<議長:大浦泰嗣>
13:30-15:00 カントリーレポート「フェーズ2(2005-2007)のサマリー」(2)
Sustina:インドネシア
Jong-Hwa Moon:韓国
Md Suhaimi Bin Elias:マレーシア
15:00-15:30 コーヒー・ブレイク
<議長: Sutisna>
15:30-17:00 海老原充:日本
Sirinart Laoharojanaphand:タイ
Nguyen Ngoc Tuan:ベトナム
研究炉基盤技術(RRT)セッション
<議長: Narin Klaysubun>
9:00-10:20 カントリーレポート「自国炉心の燃焼度結果(Keffの変化)と自国炉心の先進的利用、燃料管理、改造等のためのSRAC/MVPの適用について」(2)
Zarina Binti Masood:マレーシア
Narin Klaysubun:タイ
10:20-10:50 コーヒー・ブレイク
<議長: Zarina Binti Masood>
10:50-12:00 Nguyen Kien Coung:ベトナム
カントリーレポートについての討議
12:00-13:30 昼 食
<議長:加藤友章>
13:30-14:15 「3カ年最終報告の討議」
Haksung Kim:韓国
14:15-14:45 コーヒー・ブレイク
<議長:代谷誠治>
14:45-16:15 Surian Pinem:インドネシア
加藤友章:日本

 

10月31日(水)
中性子放射化分析(NAA)セッション
<議長:Jong-Hwa Moon>
9:00-10:00 カントリーレポート「フェーズ2(2005-2007)のサマリー」(2)
Preciosa Pabroa:フィリピン
Ni Bangfa:中国
10:00-10:30 コーヒー・ブレイク
10:30-11:00 Ni Bangfa:中国
<議長:海老原充>
11:00-17:00 「3カ年最終報告の討議」
Syed Mohammod Hossain:バングラデシュ
Ni Bangfa:中国
11:40-13:30 昼食
13:30-15:00 Sustina:インドネシア
Jong-Hwa Moon:韓国
Md Suhaimi Bin Elias:マレーシア
Preciosa Pabroa:フィリピン
Sirinart Laoharojanaphand:タイ
Nugyen Ngoc Tuan:ベトナム
15:00-15:30 コーヒー・ブレイク
15:30-17:00 海老原充:日本
3カ年最終報告の討議
研究炉基盤技術(RRT)セッション
<議長: Haksung Kim>
9:00-10:20 「3カ年最終報告の討議」
Zarina Binti Masood:マレーシア
Narin Klaysubun:タイ
10:20-10:50 コーヒー・ブレイク
<議長: Surian Pinem>
10:50-12:00 Nguyen Kien Coung:ベトナム
討議
12:00-13:30 昼食
<議長: 佐川尚司>
13:30-15:30 Yuan Luzheng:中国
3カ年最終報告の発表
15:30-15:50 コーヒー・ブレイク
15:50-17:00 3カ年最終報告についての討議

 

11月1日(木)
中性子放射化分析(NAA)セッション
<議長:海老原充>
9:00-10:30 サマリーレポートのまとめ
10:30-11:00 コーヒー・ブレイク
11:00-12:00 次期プロジェクトについて討議
12:00-13:30 昼食
13:30-16:30 テクニカルツアー
研究炉基盤技術(RRT)セッション
<議長:佐川尚司>
9:00-10:30 次期プロジェクトについて討議
10:30-11:00 コーヒー・ブレイク
11:00-12:00 次期プロジェクトについてまとめ
12:00-13:30 昼食
13:30-16:30 テクニカルツアー

 

11月2日(金)
9:00-10:30 NAAとRRT毎にサマリーレポートのまとめおよび討議
10:30-11:00 コーヒー・ブレイク
11:00-11:50 円卓討議
11:50-12:00 閉会挨拶
桜井文雄
日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所副所長
研究炉利用分野の代表
Dr. Seteyantoインドネシア原子力庁(BATAN)
研究炉利用インドネシアPL
12:00-13:30 昼食

2007年FNCA研究炉利用ワークショップ
参加者リスト

2007年10月29日〜11月2日、インドネシア、スルポン

Name Country Field Organization & Position
Dr. Syed Mohammod Hossain Bangladesh NAA Principal Scientific Officer
Reactor & Neutron Physics Division,
Institute of Nuclear Science & Technology, Atomic Energy Research Establishment,
Bangladesh Atomic Energy Commission (BAEC)
Prof. Bangfa Ni China NAA Professor,
Department of Nuclear Physics
China Institute of Atomic Energy
Prof. Luzheng Yuan China RRT General Designer of CARR Project
Commissioning Team of CARR
CARR Project
China Institute of Atomic Energy
Mr. Sutisna Indonesia NAA Group Leader of Neutron Activation,
Characterization and Nuclear Analysis Section,
Technology Center for Nuclear Industrial Materials,
National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Dr. Muhayatun Indonesia NAA Researcher, Center for Nuclear Technology, Material and Radiometry
Dr. Agus Taftazani Indonesia NAA Researcher, Center for Accelerator Technology and Material Process. BATAN Yogyakarta
Mrs. Sri Wardani Indonesia NAA Researcher,
Department of Industrial Materials,
R and D Center for Materials Science and Technology (P31B)
National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Mrs. Th. Rina Mulyaningsih Indonesia NAA Researcher,
Department of Industrial Materials,
R and D Center for Materials Science and Technology (P31B)
National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Mr. Surian Pinem Indonesia RRT Group Leader,
Reactor Physics/Reactor Physics and Technology Division,
National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Mr. Tagor M SEMBIRING Indonesia RRT Researcher,
Center for Development of Division Reactor
Technology and Physics, PTRKN
National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Mr. Tukiran Indonesia RRT Researcher,
Center for Development of Division Reactor
Technology and Physics, PTRKN
National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Mr. Jati SUSILO Indonesia RRT Researcher,
Center for Development of Division Reactor
Technology and Physics, PTRKN
National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Mr. Rokhmadi Indonesia RRT Researcher,
Center for Development of Division Reactor
Technology and Physics, PTRKN
National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Prof. Dr. Aang Hanafiah R.W Indonesia Management Deputy Chairman. National Nuclear
Energy Agency (BATAN)
FNCA Coordinator of Indonesia
Dr. Setiyanto Indonesia Management Head,
Center for Development of Division Reactor
Technology and Physics, PTRKN
National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Dr. I. Anhar R Antariksawan Indonesia Management Director. Center for Reactor Technology and Nuclear Safety
National Nuclear Energy Agency (BATAN)
Mr. Jong-Hwa Moon Korea NAA Senior Researcher,
HANARO Applications Research/HANARO Utilization Technology Development Center Korea Atomic Energy Research Institute (KAERI)
Mr. Hak-Sung Kim Korea RRT Senior Researcher
Advanced Research Reactor Development Lab.
Korea Atomic Energy Research Institute (KAERI)
Mr. Md Suhaimi Bin Elias Malaysia NAA Research Officer,
Waste and Environmental Technology Division
Malaysian Nuclear Agency (Nuclear Malaysia)
Ms. Zarina Binti Masood Malaysia RRT Reactor Manager,
Technical Support Division
Malaysian Nuclear Agency
Ms. Preciosa Corazon Bascug Pabroa Philippines NAA Science Research Specialist,
Analytical Measurements Research/ Atomic Research Division
Philippine Nuclear Research Institute (PNRI)
Dr. Sirinart Laoharojanaphand Thailand NAA Director,
Research and Development
Thailand Institute of Nuclear Technology (TINT)
Mr. Narin Klaysubun Thailand RRT Nuclear Engineer,
Reactor Management/ Nuclear Technology and Reactor Operation
Thailand Institute of Nuclear Technology (TINT)
Dr. Nguyen Ngoc Tuan Vietnam NAA Deputy Director
Nuclear Research Institute, Vietnam Atomic Energy Commission (VAEC)
Mr. Nguyen Kien Cuong Vietnam RRT Researcher and Engineer
Reactor Center
Nuclear Research Institute, Vietnam Atomic Energy Commission (VAEC)
Prof. Mitsuru Ebihara Japan NAA-PL Professor,
Graduate School of Science and Engineering
Tokyo Metropolitan University (TMU)
Dr. Yasuji Oura Japan NAA Associate Professor,
Graduate School of Science and Engineering
Tokyo Metropolitan University (TMU)
Prof. Seiji Shiroya Japan RRT Director, Professor,
Research Reactor Institute
Kyoto University
Mr. Hisashi Sagawa Japan RRT General Manager,
Reactor Technology Section,
Department of Research Reactor and Tandem Accelerator Research
Japan Atomic Energy Agency (JAEA)
Mr. Tomoaki Kato Japan RRT Sub Section Chief,
JRR-3 Operation Section,
Department of Research Reactor and Tandem Accelerator,
Japan Atomic Energy Agency (JAEA)
Dr. Fumio Sakurai Japan Management Deputy Director General
Nuclear Science Research Institute, Tokai Research and Development Center,
Japan Atomic Energy Agency (JAEA)
Mr. Nobuyoshi Arai Japan Management Assistant Principal Engineer
International Training and Cooperation Group,
Nuclear Technology and Education Center (NuTEC),
Japan Atomic Energy Agency (JAEA)
Mr. Akitoshi Ohtomo Japan Management Senior Staff
International Nuclear Technology Cooperation Center
Radiation Application Development Association
Ms. Chiaki Inokoshi Japan Management Senior Member,
International Affairs and Research Department,
Nuclear Safety Research Association (NSRA)

FNCAプロジェクト活動の評価と再考(草案


1. プロジェクトの達成度の再考

1-1) SRACコード訓練:SRACコードを使える原子炉専門家は何人いるか?
(任意:MVPコードを使える原子炉専門家は何人いるか?)

 第1回ワークショップの準備作業として、日本はSRACのマニュアルとソースプログラムを配布した。第1回ワークショップでは、日本がSRACのインストール方法と実行方法を紹介した。さらに、SRACの基本について説明し、例としてJRR-3での炉心計算手順について紹介した。
 第2回ワークショップの準備作業として、メンバー国は自国原子炉のSRACによる炉心計算を試みた。日本が彼らのコンサルタントを務めた。第2回ワークショップでは、メンバー国による自国原子炉のSRACによる炉心計算結果が報告された。さらに、日本が例としてJRR-3の炉心燃焼計算の手順を紹介した。
 第3回ワークショップの準備作業として、メンバー国は炉心燃焼計算、炉心管理のための計算、それから自国原子炉の高度利用を試みた。第3回ワークショップでは、日本とメンバー国による結果報告が行われた。
 全メンバー国にはSRACを使える者が少なくとも1人はいる。この専門家が、自国の他の専門家に対しSRACの利用を広げてくれることを期待する。
 MVPコードに関しては、全メンバー国に随意的な共通コードとしてのMVPコードを使える者が少なくとも1人はいる。

1-2) 自国研究炉へのSRACコードの利用例
(任意:自国研究炉へのMVPコードの利用例)

 全メンバー国が核計算技術の強化のためにSRACを有効的に使えるようになった。
 炉心管理のためにSRACを応用しようと試みているメンバー国もある。近い将来、彼らは確実にこれを成功させるであろう。
 幾つかのメンバー国は研究炉の高度利用のためにSRACまたはMVPを使っている。例えば、インドネシアはMVPを使ってRI製造に関する計算をしている。タイは、ジェムストーン照射施設の設計をMVPによって計算しており、ベトナムは照射TeO2からのI-131製造に関してMVPコードを使って計算している。
 新しい研究炉の設計にSRACを使用しているメンバー国もある。SRACによる計算結果は、自国コードの信頼性を確認するために自国コードの結果と比較される。

2. 次期フェーズ3年間へのコメント及び提案

2-1) 暫定的に合意の得られた2008年〜2010年にかけてのプロジェクト計画に対して、自国研究炉の安全性強化に向けた具体的な活動案

 多くのメンバー国が反応度事故(RIA) 及び流量喪失事故(LOFA)に対する 安全解析と熱水力解析を希望している。
 日本は、「研究炉のRIA(反応度事故)安全解析及びLOFA(流量喪失事故)安全解析」を新しいプロジェクトとして提案する。
 例えば、制御棒引抜事故や照射装置の落下事故による反応度添加事象に伴う原子炉出力や燃料温度の変化がこのプロジェクトで判断できる。このプロジェクトに使われる計算コードは、「COOLOD」及び「EUREKA」である。これらのコードはJAEAによって開発された。このプロジェクトは、確実にメンバー国の安全解析技術の向上に貢献するであろう。メンバー国は、「研究炉のRIA(反応度事故)安全解析及びLOFA(流量喪失事故)安全解析」を新プロジェクトとすることに合意した。

2-2) プロジェクト推進の改善方法についてのコメント

メンバー国からの各参加者は、自国研究炉の安全解析を担当している者であるべきだという提言。
参加者に対して計算方法、サンプルインプット 、計算パラメーター、報告書様式など、出来るだけ詳細なガイドラインの提供。
プロジェクト・ウェブサイトの作成やフォーラム開催のように参加者間の連絡と情報交換の継続。

概要  会議報告 NAARRT  プログラム   参加者リスト(英文)
Forum for Nuclear Cooperation in Asia