参加者:
1. |
ジョン・W・ベネット氏 |
オーストラリア代表 |
2. |
イムティアズ・カマル氏 |
バングラデシュ代表 |
3. |
ニ・バンファ氏 |
中国代表 |
4. |
セトヨ・プルワント氏 |
インドネシア代表 |
5. |
海老原 充氏 |
日本 (プロジェクト・リーダー) |
6. |
松尾 基之氏 |
日本 |
7. |
田中 剛氏 |
日本 |
8. |
福島 美智子氏 |
日本 |
9. |
松江 秀明氏 |
日本 |
10. |
関本 俊氏 |
日本 (オブザーバー参加) |
11. |
ムン・ジョンファ氏 |
韓国代表 |
12. |
ナザラトゥル・アシファ氏 |
マレーシア代表 |
13. |
プレシオサ・コラゾン・パブロア氏 |
フィリピン代表 |
14. |
アルポーン・ブサモンコン氏 |
タイ代表 |
15. |
ブ・ドン・カオ氏 |
ベトナム代表 |
16. |
町 末男氏 |
FNCA日本コーディネーター |
平成21年度FNCA NAAプロジェクトのワークショップは、研究炉基盤技術(RRT)プロジェクトと合同で開催された。開会セッションでは、日本プロジェクト・リーダーである海老原充氏が「中性子放射化分析プロジェクトの平成21年度ワークショップの目的」の演題で講演した。開会セッションは、参加者自己紹介の後、終了した。
NAAの冒頭のセッションでは、海老原氏が開会挨拶として本ワークショップで行う以下の活動を説明した。
1. |
研究炉を使ったNAA利用の現状に関する各国報告 |
2. |
個々のサブ・プロジェクト(下記a、b、c)の進捗について、参加各国からの報告
a) 地球化学図作成および鉱物探査のための地球化学試料のNAA
b) 汚染モニタリングのための食品試料のNAA
c) 環境モニタリングのための海洋堆積物試料のNAA
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それぞれのサブ・プロジェクト・セッションでは、冒頭に基調講演を行い、最後に包括的な議論を行う。 |
3. |
NAAプロジェクトの今後について、自由討論 |
I. 研究炉を利用したNAA利用の現状に関する各国報告
以下の各国報告が代表者から発表された。発表は、国名のアルファベット順で行われた。
オーストラリア: J・W・ベネット氏
20MWのOPAL研究炉のNAA設備は、この12ヶ月間で、稼動に関する大きな進捗があった。高い熱中性子束が数時間に渡り安定して出力されるという、NAAにとってほぼ理想的といえる状態が確立されたのである。一連の合成多元素標準試料(SMELS)の測定により、広範囲な元素に対して、測定の正確性および再現性の良さが示された。
バングラデシュ: I・カマル氏
NAAグループの活動は4分類に大別出来る。すなわち、研究開発業務、分析サービス、企画、学術的連携である。研究開発業務は2件あり、1つは0.0536evの微弱な熱エネルギーを利用しNAA技術により行った中性子捕獲断面積の測定、もう1つはベンガル湾から採取した堆積物試料6個のNAA分析である。後者の分析結果は、原子吸光分光法(AAS)による結果と比較検討された。
中国: B・F・ニ氏
中国は、次のNAAの操作および利用に関し、自国製のK0ソフトウェアを用いている。1. グラムサイズからミリグラムサイズに至る標準試料(RM)中の多元素について行ったサンプリング挙動の研究。2. 中国北部における、米、小麦、飲料、野菜および肉等の食品構造についての研究。3. 大気汚染源の同定と越境状況および今後の見通しの把握。4. 幾つかの準安定核についてのK0値測定。大きな進捗が達成された。
インドネシア: S・プルワント氏
2009年度、インドネシアのNAA研究グループは以下の3プロジェクトを行っている。「食料資源に関する有毒元素の分析」、「工業地帯における環境汚染モニタリング」、「プロ・パンジャン・バンテン地方の地球化学図作成」である。NAAの普及、そしてエンド・ユーザーとの連携を図る方策として、国内でNAAのセミナーとワークショップが開催された。
日本: 松江氏
日本原子力研究開発機構(JAEA)は、研究炉としてJRR-3とJRR-4を保有している。これらの研究炉は、主に中性子散乱技術、中性子ラジオグラフィー、即発ガンマ線分析(PGA)等の中性子線実験に用いられている。中性子放射化分析施設が幾つか作られたが、JAEAの利用者支援システムについては最適化の作業中である。
日本: 関本氏
京大原子炉(KUR)は、平成22年初頭に再稼動する予定である。KURの運転は平成28年まで継続されることが確実になっている。再稼動後には、出力が1MWまで下げられ、圧気輸送管(Pn)1-3系統における照射時間が4-5時間にまで延長される予定である。ただ、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を行う場合には、5MWでの運転が行われることになるだろう。新規KUR利用プログラムとして、PGAシステムと短半減期核測定システムが導入される。
韓国: J・H・ムン氏
研究炉HANAROでは多様な試料のNAAが行われてきた。最近では、コンプトン抑制システムの実施によって、より高感度な分析が出来るようになった。遅発中性子放射化分析(DNAA)と冷中性子即発ガンマ線放射化分析(PGAA)が、環境試料に含まれるウラン測定と、鉄鋼製品の主要成分分析に、それぞれ用いられている。
マレーシア: N・アシファ氏
マレーシアでは、幾つかの研究プロジェクトやサービス業務でNAA技術が非常に良く利用されている。幾つかの研究プロジェクトは、地方省庁との緊密な連携の下に行われている。分析サービスは、組織内外の顧客に提供されている。FNCAの活動として行われている研究プロジェクトは2つあり、それはマレーシア湾の海洋堆積物試料中の汚染元素判定と国内地方市場における様々な米粒に含まれる元素の定量である。
フィリピン: P・パブロア氏
フィリピンにおけるNAA活動は、高い反応断面積を持つ元素の分析のための中性子線源利用と、即発ガンマ線中性子放射化分析(PGNAA)施設の設置だけに限定されてきた。本プロジェクトにおいてフィリピン原子力研究所(PNRI)が関与できる可能性としては、主に、PNRI自身がエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDXRF)を用いて環境試料を分析することと、他のFNCA参加国の研究炉を利用し海洋堆積物試料のNAA分析を行うことに絞られる。これまでの諸活動は、国内での連携構築(特に環境管理局との連携)の面で成功を収めている。
タイ: A・ブサモンコン氏
タイ原子力技術研究所(TINT)の原子力活動は、研究炉TRIGA Mark IIIの利用を通し実施されている。主な利用としては、工業および医療用の同位元素製造、中性子散乱実験、宝石への照射、そして様々な分野における中性子放射化分析が挙げられる。使われているNAA技術は、機器中性子放射化分析(INAA)、PGAAおよび予備濃縮中性子放射化分析(PNAA)、放射化学的中性子放射化分析(RNAA)である。NAAを用いた元素分析は、大気汚染、土壌および堆積物に含まれる重金属、タイシルク製品、労働者の爪の試料、そしてタイの食品中の無機毒素・無機栄養素の定量に利用されている。
ベトナム: C・D・ブ氏
ダラト原子力研究所(NRI)における、中性子放射化分析(NAA)の利用と関連設備が発表された。NRIのNAAセクションでは、機器中性子放射化分析(INAA)と放射化学的中性子放射化分析(RNAA)も実施している。また、NRIには即発ガンマ線中性子放射化分析(PGNAA)のシステムがあり、こちらは核物理・核電子部門が運営、活用している。
II. サブ・プロジェクトについて、参加国からの進捗報告
それぞれのサブ・プロジェクトごとに基調発表があり、そこではプロジェクトの概観が示され、到達可能なゴールが提案された。この後、それぞれのサブ・グループへの参加を事前に表明していた各国から進捗発表があった。
II-1 地球化学図作成と鉱物探査
J・W・ベネット氏(オーストラリア) - 基調発表
鉱物探査、環境モニタリングおよび農業分野において、地球化学図の作成が持つ、潜在的な用途が強調された。成功の鍵は、到達可能で意義深いゴールを設定すること、利害関係者とすべての段階での最終ユーザーを包含すること、強力なプロジェクト運営体制を構築すること、参加者間の協力、そして、成功を公にすることであろう。各国は、その国の優先度や技術力そして利用可能な資源に応じて、参加の度合いを選べる。
田中氏(日本)
サブ・プロジェクト「地球化学地図作成」に関し、日本が実施した3つの領域における進捗が報告された。1番目は、都市部における「金」汚染の発見である。もう一つは、自然地殻岩石中のOs(オスミウム)とIr(イリジウム)の高精度測定についてである。平成21年5月16日から21日に開催された「日本地球惑星科学連合大会」における地球化学図作成セッションの成功が、3番目である。
S・プルワント氏(インドネシア)
2009年度に、教育省予算による「プロ・パンジャン・バンテン地方の地球化学図作成」が行われた。結果について、来年のFNCA会合で報告されることが期待されている。
II-2 食品汚染モニタリング
J・H・ムン氏(韓国) - 基調発表
数種の調理米および朝鮮人参等の食品試料が、INAAによって分析された。As(砒素)、Cd(カドミウム)、Hg(水銀)等の有毒金属が試料内から検出されることは、ほとんどなかった。朝鮮人参の分析では、「多くの元素が人参の先端部に濃集する」という興味深い傾向が見出された。
B・F・ニ氏(中国)
試料として、4種類の米(河北省産、四川省産、湖南省産、遼寧省産)、小麦、人参、セロリ、玉葱、豚レバー、海老、そして緑茶が市場から選抜された。約30の元素がK0法により測定された。毒物、栄養素、そして通常元素に分類された。結果は、元素の濃度について大きな異なりが見られた。しかし、レバーと海老には他の食材と比べてSe(セレン)、Zn(亜鉛)、As(砒素)の高い濃集があった。そしてお茶には、他の食材の10倍に達するMn(マンガン)の高い濃集があった。
S・プルワント氏(インドネシア)
2008-2009年度において、食材に含まれる有毒元素、微量栄養素と主要栄養素の測定が中性子放射化分析を使って行われた。試料の種類は、野菜類、豆、メース(香辛料)および香味料である。試料は、セルポン・バンテン地方の市場から収集された。魚と米における砒素の濃度、そして魚と赤唐辛子における水銀の濃度は、政府が許可している数値を超えるものであった。
福島氏(日本)
6種の食用海草がNAAで分析され、12の元素についての総含有量が得られた。また、海草から抽出した食物繊維の分析では、人体に吸収され得ない微量の元素が検出された。
N・アシファ氏(マレーシア)
いわゆる水稲と陸稲の2グループの米が元素特性解析のために収集された。検出された元素は、必須主要栄養素、微量栄養素、その他に分類された。インドネシア産ブラック・グラチノス米からは多量のK(カリウム)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Znが検出された。ハスク・オープン米とブラウン米からは、高いAs成分が検出された。平均して米内のFeとMnの数値が高いが、これは花崗岩土壌という地質的な背景に起因していると考えられる。
A・ブサモンコン氏(タイ)
高い栄養価、高カロリー、低コスト、そして日持ちの良さから、米はタイの大部分の人にとっての主食になっている。タイのバンコクにある3つの主要な地方市場において、選抜された6種類の米が購入された。これらの米試料の元素組成が、INAA技術により分析された。検出された元素は、Al(アルミニウム)、As、Br(臭素)、Cl(塩素)、K、Mg、Mn、Znである。KとMgはすべての試料で高い数値を示した。有毒元素であるAsとCdが検出されたが、タイ厚生省が推奨する基準を超えるものではなかった。
C・D・ブ氏(ベトナム)
マーケット・バスケット方式で、ホーチミン市、ニンチュアン地方およびラムドン地方の数地点から収集された食材試料内の微量元素濃度が、INAA、RNAAおよび AAS手法によって求められた。これらの地域の成人における日々の元素摂取量が見積もられ、基準との比較が行われた。その結果、日々の元素摂取量はベトナム標準指針における許容値を下回っていることが分った。
II-3 環境汚染モニタリング
松尾氏(日本) - 基調発表
プロジェクトの概観と最近の進捗についての基調講演が、松尾氏から発表された。環境試料の特長が要約され、これらの試料分析におけるNAA手法の有益性が強調された。プロジェクトの4つの目的が示された。国際的な協力を実施すること、共通した採取方法と取扱方法で実施することが提案された。コア試料による採取が、共通採取方法として推奨された。松尾氏の研究グループが実施した2つの事例研究が紹介された。
I・カマル氏(バングラデシュ)
本セッションでは、バングラデュで実施された以下の研究活動が発表された。i)バングラデシュ東部地方地下水の砒素汚染。ii)ベンガル湾内の堆積物とバングラデシュの農地土壌の分析結果比較。iii)座礁船に起因する環境汚染モニタリング。iv)コックス・バザール地域における地球化学図作成と鉱物探査。
S・プルワント氏(インドネシア)
インドネシアのバンテン地方の工業地域(PLTU Labuhan)では、環境汚染モニタリングが実施されてきた。土壌および植物試料中の汚染物質と重金属を測定するため、K0法による中性子放射化分析が行われてきた。河口の堆積物から、Na(ナトリウム)、K、Ca(カルシウム)、Sc(スカンジウム)、As、Br、La(ランタン)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロピウム)、Cr、Fe、Co、Zn、Rb(ルビジウム)、Sb(アンチモン)、Cs(セシウム)、Nd(ニオディユーム)、Tb(テルビウム)、Lu(ルテチウム)、Hf(ハフニウム)、Ta(タンタル)、Th(トリウム)の各元素が測定された。
N・アシファ氏(マレーシア)
サラワク海岸地域の堆積物試料が、11箇所の採取基地から収集された。合計29に及ぶ元素の分析結果が、NAA手法により得られた。すべての採取地において高いAsの集積が見られたが、幾つかの場所では10倍以上の濃縮係数(EF値)*が示された。本プロジェクトでは、サラワク海岸地域の環境汚染の現状に関する情報を提供してきた。本研究により得られたデータは、マレーシア海洋汚染データベースに盛り込まれる予定である。
*濃縮係数(EF値): 地殻の元素濃度に対して、どれだけ濃縮されているかを示す指標。数値が10を超えると自然起源ではなく、人為起源と見做される。
P・パブロア氏(フィリピン)
海水中の微量有害元素を測定し210Pb(鉛)年代測定に基づく時系列データと相関するために、2つの採取場所(マニラ湾とソウソゴン湾)の海洋堆積物試料が収集されてきており、今後も継続される予定である。これらの研究は、主に湾へ汚染物質が混入した歴史を調べ、生態系への影響(一例を挙げれば有害な青粉(あおこ:藻の一種)との関係)を評価するため実施されたものである。
C・D・ブ氏(ベトナム)
バ・リア・ブン・タオ沿岸の海洋試料を分析するために、INAA、AAS等の核関連の分析手法が用いられた。調査によれば、海面採取試料中の元素濃度は、As (0.16-0.24 ppm), Cd (0.23-0.74 ppm), Cu (銅、0.78-1.33 ppm), Hg (0.039-0.062 ppm), Pb (0.45-1.59 ppm)と、ベトナムの標準指針に記載されている制限値に比べはるかに低いものであった。
III. 方針、ゴールとその実施についての議論
すべての進捗報告の発表の後、各サブ・プロジェクトリーダーと海老原リーダーを議長として、個々のサブ・プロジェクトについての包括的な議論が行われた。これらの議論では、方針、ゴール、協力面の潜在的可能性、作業分担および今後の道筋が検討された。いずれの場合でも、潜在的な最終ユーザーに焦点が当てられた。
III-1 地球化学図作成および鉱物探査
たびたび強調されたのは、資源および鉱物開発を所管している省庁との打ち合わせが極めて重要ということである。初期の方針は、地球化学的分析におけるNAA利用の能力と便益性について情報発信すること、そして、潜在的最終ユーザーのニーズを理解するということになるだろう。最終ゴールは、国家レベルの長期プロジェクトに繋がるような強固な連携を構築することである。
地学分野でのNAAの利用と協力を促進するため、FNCAで高品質のパンフレットを作成する提案があった。このパンフレットでは、地球化学図作成と鉱物探査における利用をイラストで示すことが出来るだろう。「NAAは、広く利用されているXRFやICP-MS等による分析を補間するものである」と示すべきであり、品質管理面における潜在的役割も強調すべきである。このパンフレットは、最終ユーザーとの初期の打合せにおいて有益なものになるだろう。
「3種類の異なる堆積物による研究所間比較調査」実施の提案が受け入れられた。本プロジェクトがもたらす成果として以下の諸点が考えられる。
a) |
参加する研究所の手腕を示すことが出来ること、およびすべての差異に対する理由を理解出来ること。 |
b) |
標準法(Ko法および関連手法)以外のNAA利用手法から求められた結果や、Ko法以外のソフト・プログラムから求められた結果、XRF等、異なる技術を利用し求められた結果との比較が出来ること。 |
c) |
地球化学図作成に使用する3つの関連物質の特性分析データが提供されること。 |
d) |
FNCA参加国間における共同実施能力を促進。 |
本活動について、専門誌への投稿が期待される。
以下の国が、本研究所間比較調査への参加を表明した。オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本(およそ5施設の参加を含む)、マレーシア(可能ならICP-MSも利用)、フィリピン(XRFを使用)。
NAA利用による地球化学図作成が、国家の発展に対し非常に大きな貢献を行う可能性があることを、全参加者が合意した。とはいえ、NAA技術が提供する極めて優秀な能力を地質関係の省庁が理解し、NAAを日常的な一連の手法の中に取り入れるようになるには数年かかるかもしれないという点もまた、理解された。
III-2 食品汚染モニタリング
中国、韓国、インドネシア、マレーシア、タイおよびベトナムという食品分析のサブ・プロジェクトに参加している6カ国の代表者が、様々な食品試料の分析結果を発表した。初めに、共通の分析対象試料に決められた、米試料における元素濃度レベルが議論された。米試料内のAs濃度は、各国の法的基準値を超えるものではないと見積もられた。他の有毒金属に関しては、標準的なNAAでは検出されなかった。しかし、As以外のCu、Cd、Sb、Se等の有毒金属の検出には放射化学的NAAが有効であることを、ベトナムが明らかにした。更に、各国の目的に応じ選択された米以外の食品試料の分析結果が議論され、健康上、栄養があるかあるいは有害であるかを比較された。
最後には、次年度のワークショップのための議論があり、共通対象試料として お茶 が選ばれた。なぜならば、お茶は参加各国で一般的な食品であり、また、他の植物試料より元素の含有量が多いからである。
III-3 環境汚染モニタリング
サブ・プロジェクト3の実施計画が議論された。議論では、下記の3つの目的が再確認された。
a) 海洋堆積物のコア試料を用いて、環境の変動を検出すること。
b) 堆積物試料に含まれる、有毒または有害元素レベルを識別すること。(例:As、Sb、Cr、Cd等)
c) 堆積物試料に含まれる汚染源を特定すること。(自然起源か、または人為起源か?)
上記目的を達成するために、コア採取法なら表層部と同様に過去の環境部分を検出出来、汚染物質の空間的な変動を調べることができると、皆の意見が一致した。一部の国では、堆積率を知るために210Pb年代測定法が使われていた。願わくは、この手法がFNCA各国で標準的な手順になることが期待される。
次の6カ国がサブ・プロジェクト3の最近の進捗を発表した。バングラデシュ、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピンおよびベトナムである。この内、バングラデシュ、インドネシア、日本およびフィリピンは、堆積物試料の採取ではコア採取法を用いることに合意した。一方、事情により、マレーシアとベトナムは、表層部採取を表明した。過去から現在に至るアジア各国の海洋環境汚染を評価するため、すべてのデータが次のワークショップまで蓄積されるべきとの提案があった。最後に、容易にお互いの連絡が取れるよう、メーリングリストを構築することが提案された。
IV. NAAプロジェクトの未来に関し自由討論
今回のワークショップはNAAプロジェクト第3フェイズ3年計画の2年目に当たり、期間的には折り返し地点での開催となるため、海老原リーダーを議長として、将来計画についての議論を行った。議論の冒頭で、海老原氏が、FNCAワークショップに対する各国のスタンス(態度)について、各国の参加者に説明を求めた。各国はこの依頼の下で非常に前向きな意見を述べ、FNCAワークショップが個々の参加者およびその組織にとってとても重要であるという点で、皆の意見が一致した。こうして、次のコーディネーター会合で、FNCA枠組の下、NAAプロジェクトの継続を強く意思表示することが満場一致で合意された。次に、プロジェクトの内容に絞った議論が行われた。広範囲に及ぶ議論の末、次の結論に達した。
a) |
我々は、NAAが適用出来る、様々な共通対象物質を選択していく。 |
b) |
対象物質の候補には、犯罪の科学捜査に関連した試料、ハーブの葉とその関連物質の試料が含まれている。これら新規候補とは別に、地球化学的試料と食品および海洋堆積物もまた、対象の試料として推薦された。 |
c) |
対象とする試料についての議論は、今後もwebと電子メールを用いて全参加国によって継続される。 |
リーダーである海老原氏が、参加者による貴重な貢献と、達成された非常に前向きな成果について感謝を述べ、ワークショップは公式に閉会した。
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