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中性子放射化分析 ワークショップ

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ワークショップ


FNCA 2011 中性子放射化分析ワークショップ

2011年FNCA 中性子放射化分析プロジェクトワークショップ
概要

2011年11月21日〜11月24日
オーストラリア シドニー



 2011年度の中性子放射化分析(NAA)ワークショップは、2011年11月21日より11月24日までの4日間、オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)および日本の文部科学省(MEXT)の主催により、オーストラリア・シドニーにおいて開催されました。

 オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ及びベトナムの11カ国が参加し、参加人数は事務局を含め計15名でした。

 本プロジェクトは、研究炉を用いる中性子放射化分析(NAA)技術をさまざまな分析対象物に適用し、研究面ばかりでなく、社会経済的に大きく貢献することを目指します。NAAは試料を破壊せずに内部に存在する複数の元素を一度に高感度分析できるという優れた特徴をもちます。本プロジェクトは今年度から第4フェーズに入りますが、前フェーズにひきつづき、「地球化学図作成と鉱物探査」、「食品汚染モニタリング」、「海洋環境のモニタリング」の3つのサブプロジェクトに対し、NAA技術の利用促進活動を行います。

 今回のワークショップは以下の6セッションから構成され、参加するサブプロジェクトについて各国の進捗状況が発表がされました。

 セッション 1: 地球化学的試料のNAAによる元素分布図の作成と鉱物探査
 セッション 2: NAA関連発表
 セッション 3: 食品試料のNAAによる汚染モニタリング
 セッション 4: 海洋堆積物のNAAによる環境モニタリング
 セッション 5: 2011ワークショップの討論とまとめ
 セッション 6: 議事録草稿作成

 最後に、近い将来NAAに関する我々の活動を拡大するため、研究炉で働くNAA関係研究者とエンドユーザー(炉施設の外のユーザー)の連携、さらにはアジア/オセアニアのNAAユーザーの連携についても討議しました。

「施設訪問」
 11月24日、全セッション終了後、オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)のOPAL多目的炉や、中性子ビーム線機器,加速器センター等の施設を見学しました。

   


2011年FNCA 中性子放射化分析プロジェクトワークショップ
会議報告

2011年11月21日〜11月24日
オーストラリア シドニー



参加者:
1. ジョン・W・ベネット氏 オーストラリア代表(サブプロジェクトリーダー)
2. カムルン・ナヘル氏 バングラデシュ代表
3. ニ・バンファ氏 中国代表
4. テレジア・リナ・ムリャニンシ氏 インドネシア代表
5. 海老原 充氏 日本 (プロジェクトリーダー)
6. 松尾 基之氏 日本(サブプロジェクトリーダー)
7. デニス・ベレゾフスキー氏 カザフスタン代表
8. ムン・ジョンファ氏 韓国代表(サブプロジェクトリーダー)
9. ウィー・ブーン・シオン氏 マレーシア代表
10. プレシオサ・コラゾン・パブロア氏 フィリピン代表
11. アルポーン・ブサモンコン氏 タイ代表
12. ブ・ドン・カオ氏 ベトナム代表

序文:
 中性子放射化分析(NAA)プロジェクトは、FNCA活動の研究炉関連プロジェクトのひとつである。過去のワークショップは、研究炉基盤技術(RRT)プロジェクトと合同で開催してきたが、2011年のFNCA中性子放射化分析(NAA)ワークショップは初めて別々に開催された。開会セッションで、プロジェクトリーダーである海老原氏(日本)が「2011年NAAワークショップの目的」として全体的な概要を述べ、参加者の自己紹介でこのセッションを終了した。

 ワークショップは以下の6セッションから構成された。
 セッション 1: 分布図の作成と鉱物探査に用いる地球化学的試料のNAA
 セッション 2: NAA関連発表
 セッション 3: 汚染モニタリングに用いる食品試料のNAA
 セッション 4: 環境モニタリングに用いる海洋堆積物のNAA
 セッション 5: 2011ワークショップの討論とまとめ
 セッション 6: 議事録草稿作成

 以下に示すセッション1〜5の発表と討議のサマリーは、最終セッション(セッション6)で仕上げられたものである。全セッション終了後、OPAL研究炉、中性子ビーム線機器や加速器センターを含むANSTO施設のテクニカルビジットを行った。

サマリー:

セッション 1: 分布図の作成と鉱物探査に用いる地球化学的試料のNAA

オーストラリア
 地球化学試料の測定に関してANSTOで実施された数多くのプロジェクトについて説明された。エンドユーザーのグループは、大学研究者、標準物質生産者および鉱業界が含まれた。エンドユーザーは、広範囲なデータベース構築に使用されたNAA結果の一貫性およびさらに鉄鉱石中の塩素のような「難しい」元素を測定する能力を評価した。近い将来、国の地球化学マッピングプログラムにおけるNAA利用促進のために、オーストラリア地球科学機構(Geoscience Australia)と会議を開く予定である。

バングラデシュ
 バングラデシュはカルナプリ(Karnaphuli) 川岸から採取した25堆積物試料を分析した。試料分析により、調査されたカルナプリ川堆積物はAs、Cr、Coにひどく汚染されていることが明らかとなった。堆積物中のCr、Co、Rb の地球化学的関連性は、これらの金属元素が人為的発生源から堆積していることを示している。調査試料数は確固とした結論を引き出すのには十分ではなかった。最終的な結論を引き出すために、体系的な方法による集中的な研究が求められる。

中国
 U、Th、K測定のため3種類の手順がINAAを用いて研究された。700以上の地質試料を光ルミネッセンス年代測定法のために分析した。

インドネシア
 GISソフトウェアとK0- NAAにより、セラン(Serang)地区とチレゴン(Cilegon)市における、Ce, Co, Eu, Fe, La, Nd, Sc, Sm, Hfおよび Ybの地球化学図作成に成功した。そこには地殻存在量と比較してこれらの元素の濃縮がないことから、人為的発生源からの有意な寄与はないと結論することができる。

日本
 2011年は新しいデータが得られなかったので、過去数年間にNAAで得られた多数のデータを用いて統計計算を行い、いくつかの興味深い知見が得られた。これよりNAAは地球化学試料に対して強力で有利な分析手段であることが示された。

マレーシア
 研究所内で作成した地球化学標準物質をINAAで分析し、31の元素からなる初期データが報告された。将来的には、この標準物質に対して、より多くの元素データを得るためにINAAと他の分析技術が用いられるだろう。

討議サマリー - サブプロジェクト NAA-1: 地球化学試料NAA
 すべての参加国が、サブプロジェクトの意図する目的のために異なるアプローチを示した。オーストラリアの主なテーマは、標準物質の製造と品質保証の計測における鉱業界のニーズに応えるためにNAAを用いることにあった。バングラデシュは河口に沿った沈殿物の元素の汚染物質のレベルのマッピングする機会をもった。中国は、地質物質の熱ルミネッセンス年代測定を可能にするため、K, Th (NAAによる) およびU (DNAAによる)を測定するという大規模なプロジェクトについて述べた。インドネシアは、産業に起因する可能性のある汚染物質が高められたレベルの証拠を探すために、セラン−バンテン州(Serang-Banten province)の大規模な地域における様々な元素の地球化学図を作成した。日本では原子炉利用の中断により、前の地球化学図作成データを用いて,様々な元素間の相関が自然風化によるものか人間の活動の結果によるのかについて考察した。マレーシアは、鉱業活動からの多くの試料を測定し、鉱物加工による影響可能性評価のために信頼できるデータを政府当局に提供した。
 すべてのプロジェクトが,国家的に重要な産業と政府の規制機関を含めた参加国それぞれのエンドユーザーとつながりがあることがわかる。これは、サブプロジェクトの主要目標が達成されていることを示すものである。エンドユーザーの共同参画を増やすことでNAAの能力や強みが知られることになり、研究炉施設の大きな活用につながるはずである。すべての参加者が、この方向に動き続けるよう奨励される。
 次年度の活動について討議した。各国のニーズに応えての個々のプロジェクトに加え、日本の河川堆積物の標準物質JSd-1、JSd-2 、JSd-3の特性を再検討する統一タスクとすることに合意した。最初の熟練度試験で大変よい情報を得て、その結果は国際会議で発表され、科学誌に掲載された。各代表は、再度の測定がこれら照準物質の特徴づけを改善し、FNCAプロジェクトでの利用における標準物質としての有用性を高めるだろうと感じた。このタスクは参加国にそれぞれの実験操作が改善されることを確認する機会を提供し、FNCA内のNAA研究室の能力を向上させるというサブプロジェクトの別の目的をも満たすであろう。
 この測定と報告に関するプロトコルは、標準物質作成と熟練度試験分野の専門家と相談した後に、今回の共同分析ではより厳密に指定することで合意された。

- NAA-1の次年度計画
 オーストラリアは、オーストラリア地球科学機構(Geoscience Australia)との共同プロジェクトの機会を討議することでエンドユーザーグループを広げることを試みる。バングラデシュは、位置、深さ、粒径によって結果を特徴付けるために、コックス・バザール(Cox's Bazaar)からの砂を分析するプログラムを継続する。来年、中国は食品サブプロジェクトに焦点を当てるが、地球化学分析のエンドユーザーの要求には応えていく。インドネシアは、セラン・バンテン(Serang-Banten)州での地球化学図作成を行う 5カ年プログラムに取り組み続ける。カザフスタンは、本サブプロジェクトに参加し、鉱業界かららの鉱石の分析に関与する。マレーシアは、政府の規制を目的とする採鉱廃棄物の定期的な分析に従事し、NAAの機会を調査するために鉱物・地球科学局とコンタクトする。日本は、研究炉の可用性に応じて、河川堆積物を用いて地域的地球化学図作成作業を続ける。

セッション 2: NAA関連発表

カントリーレポート(カザフスタン)
 複合生態学研究センター(CERC)の一部であるNAAグループは、次の2つの活動に参加している;1)セミパラチンスク核実験場(STS)で最も影響のある地域を改善のための解決法を探るためSTS領内の元素分析を行うこと、2) 国際プロジェクト「NAVRUZ」のもと、V.Solodukhin博士によるカザフスタンの国境を越える河川の放射生態学検査とモニタリングの実施。研究室作業は、ISO 17025の下で行っている。NAAグループの将来の活動は、異なるタイプの鉱石中の希土類元素(REE)を定量するために日常的に用いるINAAを行う技術開発に焦点をあてる。IAEA TC KAZ/8/006 のもと、REE分析能力を強化するため、新しい圧輸送システムを購入したが、これを2012年に取付予定である。

IAEA協力研究計画 (オーストラリア)
 ジョン・ベネットがNAA施設の自動化について提案されたIAEA協力研究計画の情報を提供した。4カ年計画で期待される成果には、研究炉の収入と活用の増加に伴い毎年測定できる試料数の改善が含まれる。協力研究計画を始める文書は12月に出ると予想され、選ばれた参加者による最初の会合は2012年6月頃に催される予定である。

セッション 3: 汚染モニタリングに用いる食品試料のNAA

中国
 生物学標準物質10種類のうち29元素を相互比較のために熱及び熱外NAAを用いて測定した。閾値反応とサムピークからの干渉を検討した。これら生物学標準物質は食品の汚染モニタリングに使用される。

インドネシア
 k0-INAAによる食品試料の毒性及び必須元素を測定した。玄米、野菜、豆科植物、小麦粉、魚、肉の資料が用いられた。試料はマーケットバスケット方式で、インドネシアのバンテン(Banten)州セラン(Serang)市の市場で収集された。その結果、食品試料にはK、Mg、Na、Clがマクロレベルで、Fe、Mn、Zn、Cr、Br、Rb、Co、Cr、Laがミクロレベルで含まれることがわかった。一部の食品では毒性元素Hg、Asが発見された。玄米の必須元素の濃度は白米のものより大きかった。卵、金魚(金色の魚)、小麦粉に含まれる毒性元素Asは許容制限値を越えていることがわかった。

日本
 茶葉6試料をINAA及びPGA(即発ガンマ線分析)で分析し、計18元素を定量した。そのうち、H、B、Si、ClがPGAで測定された。INAA及びPGA結果の信頼性とともに非破壊性及び試料調整の容易さが、これらの分析手法が個体試料を分析する際に非常に有利であることを示した。

韓国
 玄米4種類及び豆3種類の分析結果が発表された。予想通り、As以外のほとんどの元素濃度は玄米より豆のほうが高かった。

マレーシア
 2タイプの魚試料が、微量元素(Cr、Hg、Se、Zn)についてINAAを用いて分析された。これによりHgの食事摂取量はEPA(米国環境保護庁)のガイドラインより高いことが判明した。

フィリピン
 フィリピンと日本の精米試料をINAAで分析した。その結果、玄米と比べてNa、Mg、Mn、Kは72〜91%、CaとZnは27%の減少が見られた。Asレベルは中国の最大許容限度より低かった。一種類のフィリピン米中の臭素の濃度が高く,同位体比質量分析法に分析したデータでも他のフィリピン米試料の範囲を外れるδ13C標識を示したが,これはこの試料が検疫中に殺虫剤臭化メチルに曝露された輸入米であることを示しているかもしれない。

タイ
 タイ、バンコクのローカル市場で購入した6種類の豆を比較法を用いたINAAで分析した。3つのマイナー元素(Ca、K、Mg)と8つの微量元素(Al、As、Br、Cl、Cu、Fe、Mn、Zn)の定量値をそれぞれの元素の精度、正確さ、検出限界とともにこの研究で測定した。

ベトナム
 ベトナム南部で収集した18種類の人気のある米について、13の栄養素及び毒性元素をNAAとAASで測定した。ほとんどの元素の1日摂取量は、AsとClをのぞき安全な範囲内にあることがわかった。

討議サマリー - サブプロジェクト NAA-2: 食品試料NAA
 前回のワークショップでは、食品試料の共通目標は決定されなかった。それでも本プロジェクトの8参加国は、玄米、緑茶、米、魚、豆等を含む多様な範囲の食品の分析結果を発表した。FNCAプロジェクトのこの新フェーズのために、討議のあと、参加国にとって有益で社会経済的影響のある共通試料をターゲットとすることが決定された。一般に、食品アイテムは穀物、野菜、肉、魚、果物などのいくつかのグループに分類することができる。真摯な討議の結果、魚を共通目標試料として選択された。しかし参加国間の海洋環境が異なることから魚の特定の種類をあげることは簡単ではなかった。そのため、各国で人気がある代表的な魚の種類を選択することで合意した。試料の取扱プロトコルは、韓国のMoon氏が用意し、提示される予定である。各国間の分析データを収集、比較するため、毒性及び必須元素Cr、As、Hg、Sb、Cd、Ca、Se、ZnをNAA及び他の技術で分析する。一方、各国は社会経済的影響をもつ研究を実施し、その成果及び有益さを次回のFNCAワークショップで発表する。
参加国:バングラデシュ、中国、インドネシア、韓国、日本、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム

セッション 4: 環境モニタリングに用いる海洋堆積物のNAA

バングラデシュ
 2010年北京開催のFNCAワークショップで合意されたように、第3フェーズの「環境モニタリングに用いる海洋堆積物のNAA」が採択された。ブリガンガ(Buriganga)川岸沿ハザリバグ(Hazaribag)水門エリアから27メートル(90フィート)にわたり9メーター(30フィート)間隔、6つの深さで、3箇所から18の堆積物試料を収集した。しかし、3MWのTRIGA Mark-II炉がアナログ制御装置からデジタルに交換するため2011年3月から停止している。2012年3月までに収集した試料を照射、分析することを望んでいる。

日本
 共通サンプリング手法として推奨されたコアサンプリング手法のプロトコルが発表された。東京湾の水深を深くするため掘削されたエリアで収集したコア試料をINAAで分析した。過去30年にわたり低酸素状況が減少していることが堆積物のTh/U及びCe/U比のふるまいにより証明された。多重即発ガンマ線分析(MPGA)の熱水塚近くの海洋堆積物への適用も発表された。

マレーシア
 海洋堆積物試料はINAAで分析されている。毒性元素(As、Cr、Sb、 Zn)は潜在的生体リスク指数(PERI)で評価されている。海洋堆積物のPERIの値は、人間および水生生態系への低リスクを示した。

フィリピン
 マニラ湾のコア試料の(EDXRFで分析した)Cu、Fe、Zn、Pbの相関元素の増加レベルのおおよその始まりは、210Pb法によって求められた沈降速度データに基づき1991年ピナツボ火山の噴火に関連づけられる。INAAは、マニラ湾対ソルソゴン(Sorsogon)湾の場合のように、海洋堆積物試料の特性評価で元素レベルでの区別をするにあたって非常に強力なツールである。マニラ湾のコア試料上部7cmでNa、Mg、Al、Mn、Ti、Cl、Vは、ソルソゴン湾のそれより高濃度を示した。カルシウムは両方のサイトで同等のレベルで、Alレベルはソルソゴン湾でより高かった。

ベトナム
 ガンハオ(Ganhhao)河口で収集した46の堆積物試料に対して29元素がNAAで特定された。その結果、沖合の試料には汚染の証拠がないことが示された。海岸近くの表面試料では、低・中レベルの汚染がみられた。

討議サマリー - サブプロジェクト NAA-3: 海洋堆積物試料NAA
 松尾氏とNaher氏が議長となり、まとめの討議が行われた。
 まず、各参加国の成果が討議された。前回のワークショップでは、コアサンプリングは汚染の歴史的情報を与えるとして、その可能性及び必要性が討議された。一方、表面堆積物の分析により広範囲のサンプリングエリアをカバーできる。この場合、コアサンプリングに固執する必要はない。本ワークショップでは、バングラデシュ、日本、フィリピン、ベトナムの四カ国がコア試料の分析結果を発表した。マレーシアはマレーシアの海岸線をすべてから採取された表面試料の結果を発表した。第3フェーズの2年目は、できれば推奨されたコアサンプリング手法を利用して、各国がそれぞれの興味に応じて堆積物試料の分析を続けることで合意した。
 第二に、コア試料への210Pb年代測定法の応用について討議した。2カ国で、210Pb年代測定法が沈降速度を測定するために利用されていた。この手法をFNCA参加国で共通プロトコルとすることが望まれる。従来のGe検知器を用いての低エネルギーガンマ線測定は困難であるが、年代測定法の国際的共同作業が役立つ可能性がある。
 第三に、品質管理の標準試料としての河川堆積物JSd-1、2、3の利用可能性について討議した。これらの参照物質はサブプロジェクト1で研究室間比較測定に用いられ、再計測を計画している。サブプロジェクト3でこれらの充分吟味された標準試料を利用することは地球化学と海洋堆積物サブプロジェクト間の連携がもたらす具体的な利益を示すことになる。
 第四に、様々な汚染指標について討議した。例えば、ベトナムはその試料に濃縮係数と土壌蓄積性指数を適用した。マレーシアは潜在的生態リスク指数を適用した。これらの指数を、試みに自分の試料の評価に適用することで合意した。多様な海洋堆積物に同じ指標を適用することで、海洋環境の汚染レベルの国際的比較ができる。
 バングラデシュ、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、ベトナムの6カ国が、サブプロジェクト3の作業に関心を示した。その中でインドネシアは、サブプロジェクトに参加するが、国の要請に従い環境モニタリングのために河川堆積物及び表面土壌に焦点をあてる。

セッション 5: 2011ワークショップの討論とまとめ

OPAL多目的炉NAA施設の特性
 新OPAL炉のスタートアップで、NAAの標準化k0法の導入を見た。そのためにはf(熱−熱外中性子束比)とα(エピサーマルスペクトル補正係数)がきちんと求まるように照射位置の中性子スペクトルが必要となった。関心のあるすべての照射位置は、これら数値を正確に測定をすることは結果として難しいことにはなったものの、非常に高い熱−熱外中性子束比を有することがわかった。

総合討議
 ワークショップ終了に際し、本セッションで2つの問題について論じた。つまり、研究炉で働くNAA関係者とエンドユーザー(炉施設の外のユーザー)の連携と、アジア/オセアニアのNAAユーザーの連携についてである。本討議の目的は、近い将来NAAの我々の活動を拡大することである。討議の概要は、以下のようにまとめられる。

(1) 炉施設のNAA関係者とそれら施設外のNAAユーザーとの連携
 討議の冒頭で、NAAの全参加者が、NAAの内部/外部ユーザー間の連携の観点から、彼らを取り巻くそれぞれの現状について説明した。予想通り、状況は国によって異なっていた。ベネット氏はANSTOとオーストラリアの様々なエンドユーザーとの成功したネットワークの例について発表した。ベレゾフスキー氏は、NAA利用の可能性を見いだすため鉱山会社をよく訪れたというカザフスタンの事例を紹介した。他の国では、研究炉のNAA関係者と研究炉のエンドユーザーとのかなり強く安定した関係が確立されているが、普及活動は上記で言及した二カ国に比べて活発ではないようにみえる。NAA活動を広げるには、研究炉で働くNAA関係者が機能的、効率的連携を産業、政府、大学分野の外部ユーザーと確立するために普及活動の努力が強く望まれる。

(2) アジア/オセアニアのNAAユーザーの協力
 我々の地域社会におけるNAA活動を強化するもうひとつの方法は、FNCA参加国間の連携を確立することである。この件を討議する前に、各参加者から各国のNAAの重い/軽いユーザー数の点でNAAの現在の活動についての発表を聞き、ワークショップ参加国間でこのような活動を示す数値が大きく異なることを認めた。日本と韓国はJAAA(日本放射化分析研究会)とKAAA(韓国放射化分析研究会)という名の放射化分析に関わる協会を有している。中国ではこのような組織がなくても、NAAに関する会合が隔年に催されている。インドネシアでは、BATANの支援によりNAAセミナーが毎年開催されている。近い将来、中核メンバーとしてFNCA/NAAワークショップの参加者が中心になってNAAの連携を確立できるかもしれない。この討議については、次回のワークショップでも継続される。


2011年FNCA 中性子放射化分析プロジェクトワークショップ
プログラム

2011年11月21日〜11月24日
オーストラリア シドニー



共 催: オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)
日本文部科学省(MEXT)
実施機関: 公益財団法人原子力安全研究協会
開催日程: 2011年11月21日〜24日
開催地: オーストラリア・シドニー、オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)

11月21日(月)
09:50 受付
10:00 - 10:10 開会セッション
開会挨拶
 オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)
10:10 - 10:30 自己紹介
アジェンダ確認
集合写真撮影
 
 
10:30 - 11:00
11:00 - 11:30
11:30 - 12:00
NAA-1: 分布図の作成と鉱物探査に用いる地球化学的試料のNAA
議長:インドネシア
 オーストラリア
 バングラデシュ
 中国
12:00 - 13:00 昼食
 
 
13:00 - 13:30
13:30 - 14:00
14:00 - 14:30
NAA-1: (続き)
議長:マレーシア
 インドネシア
 日本
 マレーシア
14:30 - 15:00 休憩
15:00 - 17:00 まとめ、議論:オーストラリア、日本
 
11月22日(火)
 
 
09:00 - 09:30
09:30 - 10:00
NAA-2: NAA関連発表
議長:韓国
 カントリーレポート(研究炉を用いたNAAの現状):カザフスタン
 IAEA-CRP(NAA施設の自動化):オーストラリア
10:00 - 10:30 休憩
 
 
10:30 - 11:00
11:00 - 11:30
11:30 - 12:00
NAA-3: 汚染モニタリングに用いる食品試料のNAA
議長:ベトナム
 中国
 インドネシア
 日本
12:00 - 13:00 昼食
 
 
13:00 - 13:30
13:30 - 14:00
14:00 - 14:30
NAA-3: (続き)
議長:中国
 韓国
 マレーシア
 フィリピン
14:30 - 15:00 休憩

15:00 - 15:30
15:30 - 16:00
議長:フィリピン
 タイ
 ベトナム
16:00 - 17:00 まとめ、議論:韓国、タイ
 
11月23日(水)
 
 
09:00 - 09:30
09:30 - 10:00
NAA-4: 環境モニタリングに用いる海洋堆積物のNAA
議長:タイ
 バングラデシュ
 日本
10:00 - 10:30 休憩

10:30 - 11:00
11:00 - 11:30
11:30 - 12:00
議長:バングラデシュ
 マレーシア
 フィリピン
 ベトナム
12:00 - 13:00 昼食
 
13:00 - 15:00
NAA-4: (続き)
まとめ、議論:日本、バングラデシュ
15:00 - 15:30 休憩
 
 
15:30 - 16:00
16:00 - 17:00
NAA-5: 2011ワークショップの討論とまとめ
議長:日本
OPAL多目的炉NAA施設の特性(オーストラリア)
自由討論
 
11月24日(木)
09:00 - 11:00 NAA-6: 議事録草稿
議長:日本
11:00 - 11:30 休憩
11:30 - 12:00 NAA議事録の報告
議論
閉会挨拶
12:00 - 13:00 昼食
14:00 - 16:30 施設訪問

2011年FNCA 中性子放射化分析プロジェクトワークショップ
参加者リスト

2011年11月21日〜11月24日
オーストラリア シドニー


オーストラリア

Dr. John William Bennett
オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)
中性子放射化グループリーダー

Mr. Attila Stopic
オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)
中性子放射化グループ中性子放射化科学者

Ms. Kaitlyn Toole
オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)

バングラデシュ

Dr. Kamrun Naher
バングラデシュ原子力委員会(BAEC)
原子力研究所(シャバール)(AERE)
原子力科学技術研究所(INST)
上席研究員

中国

Prof. Ni Bangfa
中国原子能科学研究院(CIAE)
核物理部教授

インドネシア

Ms. Theresia Rina Mulyaningsih
インドネシア原子力庁(BATAN)
原子力産業材料技術センター研究員

日本

Prof. 海老原 充
首都大学東京(TMU) 大学院理工学研究科
教授

Prof. 松尾 基之
東京大学大学院総合文化研究科
教授

Ms. 猪越 千明
(公財)原子力安全研究協会(NSRA)
国際研究部

カザフスタン

Mr. Denis Berezovskiy
カザフスタン国立原子力センター(NNC)核物理研究所
NAAユニット長

韓国

Mr. Jong-Hwa Moon
韓国原子力研究所(KAERI)主任研究員

マレーシア

Dr. Wee Boon Siong
マレーシア原子力庁(Nuclear Malaysia)
研究員

フィリピン

Ms. Preciosa Corazon B. Pabroa
フィリピン原子力研究所(PNRI)
上級科学研究専門家

タイ

Ms. Arporn Busamongkol
タイ原子力技術研究所(TINT)
上級原子力研究員

ベトナム

Mr. Cao Dong Vu
ベトナム原子力研究所(VAEI)
ダラト原子力研究所(NRI) 分析技術センター副センター長



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