FNCA2016研究炉ネットワークおよび中性子放射化分析プロジェクト
合同ワークショップ 会議報告
2016年12月7日〜12月9日
オーストラリア・シドニー
(仮訳)
序文
2016年のワークショップは、研究炉ネットワーク(RRN)プロジェクトと中性子放射化分析(NAA)プロジェクトの合同で開催された。本ワークショップは3日間構成で、初日(12月7日)はオープンセミナーとテクニカルビジットが実施された。2日目(12月8日)はRRNグループとNAAグループの共同セッションが行われ、はじめに、日本のプロジェクトリーダー達が現行のNAAプロジェクトとRRNプロジェクトの概要および本ワークショップに関するいくつかの主要課題を挙げた。セッション1に続くセッション2では、各参加国により研究/試験炉の現状と各国の利用について紹介された。セッション3はNAAのトピックにあてられ、研究炉のNAA利用の促進に関する2本のリードスピーチが行われた。3日目(12月9日)は個別セッションが行われた。
共同セッション
研究/試験炉及びその利用の現状
会議では、以下の事項を確認した。
- オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)は、多目的研究炉OPALの安全で生産的な運転を10年間達成した。現在の用途は、RI製造、シリコンドーピング、中性子ビーム、中性子放射化分析及び照射である。Mo-99の生産量は増加する予定で、現在のビームホールには新しい中性子散乱装置が設置される予定である。
- バングラデシュ原子力委員会(BAEC)は、バングラデシュの原子力研究開発分野における将来の需要並びに放射性同位元素生産を満たすために、新しい研究炉(10〜30MW)を建設する計画を持っている。研究炉TRIGA Mark IIの現在の用途は、RI製造、中性子散乱、中性子放射化分析及び中性子ラジオグラフィである。
- 中国のプロジェクトリーダーに中国改良型研究炉(CARR)とその用途に係る現状を報告するよう要請することが提案された。
- インドネシア原子力庁(BATAN)は、多目的研究炉RSG-GASの2020年からの次期運用サイクルのライセンスを取得しているところである。 2017年からは、RI生産量を増やすためにRSG-GASの出力を20MWに増強する計画がある。
- 日本原子力研究開発機構(JAEA)は、中長期計画において材料試験炉JMTRの廃止を検討中である。 JAEAは、2016年度末までに決定を下す予定である。
- 韓国原子力研究所(KAERI)は、2015年2月にHANARO原子炉建屋の補強工事を開始し、2016年12月に完成する予定である。原子炉の運転は補強が完了した直後に再開される予定である。
- マレーシア原子力庁は、TRIGA Mark II型プスパティ研究炉(RTP)のアナログコンソールを新しいデジタルコンソール(REDICS)にアップグレードした。
- タイ原子力技術研究所(TINT)は、研究炉TRR-1 / M1の計測制御システム入替計画を策定中である。設置作業は2017年1月に開始される予定である。
- ベトナム原子力研究所(VINATOM)は、ダラト研究炉(DNRR)の出力を1MW〜2MWまで増加させることを検討している。また、VINATOMは、15MWの多目的研究炉を建設する計画を持っている。このプロジェクトは2018年に始まり、建設は2025年に完了する予定である。
NAAの研究炉利用促進
本セッションでは海老原氏と大槻氏によるリードスピーチが行われた。海老原氏は、NAAの研究炉利用促進について個人的見解を述べ、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)および誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)に代表される競合手法と比較しながらNAA の分析ツールとしての有効性に焦点を置いて、その重要性を強調した。同氏はさらに、エンドユーザーとの連携をより密接かつ強固なものにする効果的システムを構築することの重要性に言及した。大槻氏は、京都大学原子炉実験所(KURR)の設備でKUR(京都大学研究用原子炉)と呼ばれる研究炉の運転の様子を紹介した。また、同実験所では KUCA(臨界集合体実実験装置)などの原子力/放射化学科学関連設備を保有している。共同利用システムの下、大学の研究者らに上記施設を解放しており、このシステムは研究炉を含むこれら施設のエンドユーザーとの連携を確立し強化している。
個別セッション(RRN)
医療/産業用アイソトープ(RI)製造の現状についてカントリーレポート (RRN-1)
会議では、以下の事項を確認した。
- オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)は、Mo-99、Tc-99mジェネレータ、I-131、Sm-153、Cr-51及びLu-177を製造している。サイクロトロンで製造される同位体は、輸入される。現行のMo-99製造量は、2,000 6dayCi /週である。 1週間に3,500 6day Ciの製造容量を持つ新しいANSTO核医学(ANSTO Nuclear Medicine)施設は2017年に稼動する予定である。オーストラリアの国内需要は、1週間あたり200 6dayCiである。
- バングラデシュ原子力委員会(BAEC)は、Tc-99mとI-131の国内需要に合致した製造設備を有している。 Lu-177製造施設が現在開発中である。 Mo-99の現在の国内需要は、1週間に10 6dayCiであり、1-131は1週間に2 Ciである。
- インドネシア原子力庁(BATAN)は、INUKI(インドネシアのRI製造者)と多目的研究炉RSG-GASを使用して放射性同位体を生産することに合意している。 多目的研究炉RSG-GASは、インドネシアの任意のユーザーに対するターゲット照射の要求をサポートする能力を有する。 BATANは、特に医療診断及び治療用製品としてMo-99や非破壊検査用Ir-192などの製造を開始した。 Mo-99については、インドネシアは国内および国際的ニーズに対し供給を始めた。インドネシアのMo-99に対する需要は、年間250 6dayCiである。
- 日本原子力研究開発機構(JAEA)は、Mo-98の中性子放射化法によりMo-99を生成する技術を開発している。 Tc-99mは、溶媒抽出法とカラム法で抽出する。生産量は、1週間に230 6dayCiとなる予定である。 Mo-99の現在の日本の国内需要は、1週間に1,000 6dayCiである。
- マレーシア原子力庁は、Mo-98の中性子放射化法によってMo-99を製造する技術を開発する計画を持っている。適正製造基準(GMP)認証のためのI-131施設と文書が構築された。 Mo-99の現在の国内需要は1週間あたり15〜20 6day Ciである。 Sm-153とLu-177の製造も計画されている。
- モンゴル原子力委員会は、放射性同位元素製造用の研究炉の建設を計画している。 Mo-99の現在の国内需要は、年間20 6day Ciである。
- タイ原子力技術研究所(TINT)は、計測制御システムのアップグレードのため原子炉が停止しているので、タイの国内需要を満たすために100%の放射性同位元素を輸入している。 TINTは、国内で使用するF-18、I-123、Ga-67、及びTl-201の製造のため30MeVサイクロトロンを設置する予定である。タイのMo-99に対する国内需要は年間500 6day Ciである。
- ベトナム原子力研究所(VINATOM)は、I-131、P-32、及びMo-99(中性子放射化法による)を製造する。VINATOMは、ベトナム市場の約50%を供給しています。新しい研究炉の計画が2018年に着手し、2025年までに完成する予定である。現在のMo-99の国内需要は1週間に約50 6day Ciである。 Tc-99mの需要は、1週間にジェネレータ100個である。ベトナムでは、PETアプリケーション用に6つのサイクロトロンがある。
プロジェクト3年延長可能性を含むRRNプロジェクトの将来計画(RRN-2)
- この会議では、研究炉ネットワークプロジェクトの将来について話し合った。
- 議論の後、日本がプロジェクトの新しい形態を提案した。この新しい形態は、研究炉ネットワークプロジェクトと中性子放射化分析プロジェクトが、研究用原子炉利用と呼ばれる新しいプロジェクトに統合されるものである。この新しいプロジェクトでは、次のトピックを考慮する。
a. 中性子放射化分析(NAA)
b. 新しい放射性同位元素を含む放射性同位元素製造
c. 中性子散乱
d. 原子力科学
e. ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)、中性子ラジオグラフィ(NR)
f. 材料研究
g. 新しい研究炉
h. 人材育成
- この提案は参加者間で議論され、FNCAコーディネーター会議の優先オプションとしてこの提案を推奨することに決定した。
個別セッション (NAA)
NAAプロジェクトでは、各参加国よりここ1年間の進捗について報告がなされた。さらに、エンドユーザーとの連携を円滑にするためのあらゆる取組みについて紹介された。ワークショップ終了時には、ワークショップの議事録を作成した。
カントリーレポート:2サブプロジェクト(大気汚染、鉱物資源)の進捗状況 (NAA-1)
2015年に開始された新たなフェーズ(第5フェーズ)では、大気汚染プロジェクトおよび鉱物資源プロジェクトとよばれる2つのサブプロジェクトが設けられた。大気汚染プロジェクトでは、各参加国から浮遊粒子状物質(SPM)試料、特にいわゆるPM2.5が採取され、NAA によりこれらのSPM試料について分析され、各サイトの大気汚染レベルがモニタリングされる。鉱物資源プロジェクトでは、各種希土類元素(REEs)およびウラン(U)といった有用な元素を含む鉱物がNAAで分析され、鉱物資源の質の評価におけるNAAの有効性と有用性が示される。カントリーレポート作成に際し、日本のプロジェクトリーダーは参加者に対し、プレゼンテーションに以下の事項を含めるように求めた。
- 1) 直近12カ月間の進捗を当初の計画と比較しての評価
- 2) 懸案事項およびそれを克服するために講じた措置
- 3) プロジェクトの取組みに関する成果
- 4) エンドユーザーとの連携強化およびエンドユーザーと立ち上げたプロジェクトのための取組み
オーストラリア
ANSTOのNAA研究室は、鉱物試料分析に大きく関与している。これには、鉱業会社からの探鉱試料と鉱石試料の分析、およびANSTO 鉱物事業部門からのREE加工物質の分析、そして、探鉱法として植物の葉のREE含有量を用いる手法を調査している大学の研究者との協働も含まれる。NAAプロジェクトを通して調整し、新たにREE試料の研究室相互比較を行うことを検討している。SPM 試料測定については、直近12ヵ月間での活動はなかったが、近い将来FNCA参加国のうち2ヵ国についてSPMフィルター紙の測定を行うことで合意があった。
バングラデシュ
重元素や希土類元素の層的分布を明らかにするため、バングラデシュのコックスバザール内6拠点から30の砂試料を採取した。汚染源測定のため重鉱物5種(チタン鉄鉱、モナザイト、ジルコン、ルチル)について分析した。30の砂試料から19種の元素(ナトリウム(Na)、カリウム(K)、スカンジウム(Sc)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ヒ素(As)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム (Tb)、イッテルビウム(Yb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、トリウム(Th)およびU)を機器中性子放射化分析(INAA)で測定した。いくつかの重金属とREEの濃縮はいつくかの重鉱物(例:モナザイト、磁鉄鉱、チタン鉄鉱)の存在によるものであるのに対し、CrとZnの濃縮は人的原因によるものである。平均Th/U比(6.50±2.87、n=30)および軽希土類元素(ここではLa、Ce、Sm)に対するThの比との有意な正相関により、各種REE、ThおよびU の存在量は実質、U含有量の多いジルコンではなくTh含有量の多いモナザイトにより決まることを示している。
インドネシア
2016年のFNCAプログラムに関連する2つの取り組みとして、大気粉塵(APM)分析およびREE分析の相互比較が実施された。APM研究はバンドンの試料採取サイトにおいて実施されている。ワークショップでは原子力分析技術(NAT)を用いた元素分析、およびいくつかの分析結果を発表した。REE分析における核分裂生成物の補正係数はまだ適用されていないが、これはRSG-GASでのウラン照射に必要とされるU基準および安全解析書(SAR)に係る課題があったためである。現在、SARを作成中で、原子炉部門の評価を受ける段階に至っていない。
日本
2011年に発生した地震とその後の津波以降、NAAに用いる研究炉がいずれも運転されていないことから、2つのサブプロジェクトでのNAAの使用は進展不可能な状態にある。NAAの代わりに、競合分析手法であるICP-MSが鉱物資源プロジェクトで使用された。オーストラリアのプロジェクトサブリーダーにより配布された3つの試験試料からREE14種類、ThおよびUの含有量を測定した。U含有量の多い鉱物中のNAAでは、235U核分裂による干渉が非常に大きくなったため適切に修正する必要があり、ICP-MS のデータは修正がどの程度適切に行われたかを評価する上で有用である。
カザフスタン
直近12ヵ月の間、研究炉WWR-Kは低濃縮ウラン(LEU)燃料への転換のため停止しており、それに伴い一部のエンドユーザーとの連携が部分的に失われた。転換中、蛍光X線分析(XRF)ベースの内部標準法を用いたINAAの可能性を拡げるための方法論的作業が実施された。2016年9月のWWR-K稼働後、地質学試料と産業廃棄物中の金 (Au)とREEに関するINAA実施に向けて、2組のエンドユーザーとの間に連携が再確立された。
韓国
韓国では2015年、百済地域の石造文化財保存を目指した大気汚染プロジェクトにおいてINAAが使用された。PM2.5試料採取が長期に渡り実施されている。HANAROが停止されているため、運転再開を待って採取した試料のNAAを実施する。NAAデータが得られるのは来年になる可能性が高い。
マレーシア
環境汚染の多くは今や人間の健康に負の影響を及ぼすと考えられているため、FNCA サブプロジェクトの一つである「大気汚染」の存在を意識することは非常に重要である。NAAの技術は、他の非核分野の技術(ICP-MSなど)を補うものであり、多元素分析に対応する高感度かつ高精度なものであるため、APMの特徴を明らかにするための情報提供において有用である。マレーシアでは、NAAは規制機関による施行活動(地球化学試料や放射性鉱物に関連するあらゆる物質の中でも特にUやThの測定)の支援において重要な役割を果たしている。上記の技術を定期的に使用し、様々なタイプの環境試料のモニタリングおよび研究活動を目的とした多元素含有量の測定を実施している。
モンゴル
モンゴルでは、REEの6つの大きな鉱床が記録されているため、最適な測定条件を選択してXRFおよびNAAで主要元素および微量元素を分析した。Lugiin golとMushgia hudagから各種REE含有鉱物試料を採取した。ドルノド県のウラン・ポリメメタル鉱床の測定にはNAA分析とXRF分析を使用し、各種主要元素(Zn、鉛(Pb)、Au、As、Feおよび銅(Cu))の結果を、承認された研究室の結果と比較した。19種の元素の濃度測定にはXRFを使用し、17種の元素の濃度測定にはNAAを使用した。
フィリピン
環境大気試料の採取が進められており、NAA分析に利用可能な浮遊粒子状物質試料が得られている。新たな研究炉の建設計画・政策があるが、運転可能な原子炉がないため採取済みSPM試料のNAA分析の前には大きな壁がある。原子炉にアクセスできる他の施設との連携がNAA分析結果を得るための最良の選択肢と考えられた。2016年末〜2017年初めまでに、新たなSPMフィルター紙を使用したより詳細な多元素分析に対応可能な新XRFシステムの導入を計画している。環境問題に権限を持つ機関および非政府組織との強力な連携が確立され、汚染源割合に関する承認済み・資金提供を受けたプロジェクトが立ち上がっている。
タイ
チュムポーン県とスラートターニー県の複数地域で採取した地質試料を鉱物資源局(DMR)から入手し、希土類元素、主要元素および微量元素についてNAAで分析した。チュムポーン県ラマエで採取した全試料ともに、希土類元素(Ce、La、Yb およびEu)、UおよびThの濃度はNAAによる値の方が誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)による値よりも高かった。NAAによる主要酸化物(酸化アルミニウム(Al2O3)および酸化鉄(Fe2O3))の分析値は波長分散型蛍光X線分析装置(WD-XRF)による値と合致した。微量元素(ルビジウム(Rb)、As、Cs、マンガン(Mn)、バナジウム(V)およびバリウム(Ba))はNAAにより検出可能であった。DMRから入手した情報に基づき、NAAによる分析値とICP-MS/XRFによる分析値との間には強い線形関係が認められた(Ce、La、Yb、Eu、U、Th、アルミニウム(Al)、Fe、Rb、As、Cs、Mn、VおよびBaに
ついて、R2=0.822〜0.994)。
ベトナム
ハノイで20のAPM試料を採取し、Dalat研究炉によりk0-NAAで分析した。その結果は粒子線励起X線分析(PIXE)やXRF 技術による結果を補完するものである。2016年にk0-NAAで分析した96のAPM試料に関する結果を処理して、ホーチミン市の大気汚染の汚染源割合を特定する予定である。審査のあるジャーナルへ投稿するため、各種REE試料について、ウラン核分裂干渉における補正係数が決定され、評価中である。
総合討論
大気汚染(SPM)サブプロジェクト
全般的に首尾よく進行したが、若干の改善点が示された。参加者は、1〜2年以内に共同のジャーナルペーパー(過去10年ほどのアジアにおける大気汚染悪化を実証するデータを含む)の投稿を目指すこととした。大気サンプラーのサイト選定および試料採取のための共通プロトコルの必要性を確認した。フィリピンのプロジェクトリーダーは、試料採取サイトの選定、採取頻度および採取時間を網羅するプロトコルを開発し配布することに同意した。なお、使用するサンプラーのタイプはさほど重要ではないが、報告内容には質量/体積を記載すべきである。
鉱物資源−希土類元素(REE) サブプロジェクト
1つの研究室相互比較が完了し、既に結果が提示されているが、さらなる価値と教訓が得られるという見解に合意した。サブプロジェクトリーダーは最初の研究室相互比較に関する報告書を作成し、全参加者へ配布することに合意した。また、特徴を一層考慮したREE物質を採用し、明示的に他の測定技術を導入した2回目の研究室相互比較の実施が提案された。より生産性の高いアプローチを用いた方が、各参加国がREE参照物質の認証に関わるのではないかと提案があり、この提案内容に概ね合意が得られた。
NAAの促進
エンドユーザーへのアプローチの成功のさせ方や課題点について討論した。NAAによる具体的利点により利益を享受できる産業(例:鉱業やシリコーン分析)、または強力な大学の研究コミュニティがある場合は、エンドユーザーとの議論も円滑に進む。潜在的エンドユーザーとの関係を築くには、貿易展示会を利用するのが最善の方法であることが判明している。より迅速かつ利便性がよいと考えられる他の分析技術と競争するのは困難になってきているとのコメントが出された。スタッフ数が少なく、効率的にエンドユーザーと連携するのが困難と判明したNAAグループもあった。
結論
- 各参加国ともに1つまたは2つのNAAサブプロジェクトにおいて合理的な結果が得られている。2015年は12ヵ国中7ヵ国で研究炉が定常運転していたが、他の5ヵ国ではNAAにはいくつかの困難があった。韓国とカザフスタンでは原子炉が停止されたのは短期間であったが、日本では比較的長期間停止状態にあり、1基はデコミッショニング中、モンゴルでは1基も稼働していない。しかし、これらの5ヵ国では、利用可能な条件に応じてNAAプロジェクトが実施された。これらのうち、フィリピン、モンゴルおよび日本ではXRFやICP-MSといった代替的な分析方法を使用し、その結果を他の参加国について得たNAA結果と比較した。研究炉が使用できないという不都合は十分に補うことができた。
- エンドユーザーとの連携は、現行フェーズのみならずNAAプロジェクト全体にとっても主要目標の一つである。ここ2年間で、エンドユーザーとの連携をこれまで以上に強化するとともに新たなエンドユーザーとの連携を確立することに特に重点を置き、最善を尽くしてきた。2013年のワークショップでは、この様な努力が満足のいくものであるという結論に至り、2014年のワークショップでも同様の結論に至った。オーストラリアで開催された2015年のワークショップでも、エンドユーザーとの連携強化のための取り組みを最大限実行することが求められた。各国のカントリーレポートの報告を受けて、各国ともに既存プロジェクトを実施するだけに留まらず、新規NAA プロジェクトを立ち上げ、引き続きエンドユーザーとの強力な連携を築く努力をし続ける、という結論に達した。
- 現行フェーズでは2つのサブプロジェクト(大気汚染および鉱物資源)が進行中である。各国ともに国の情勢に応じて1つまたは両方のサブプロジェクトを選択している。個々の選択も環境の変化により変わり得る。各参加国の現時点での選択は以下のようにまとめられる。
国 |
大気汚染(SPM) |
鉱物資源−希土類元素(REE) |
オーストラリア |
x |
x |
バングラデシュ |
|
x |
中国 |
x |
x |
インドネシア |
x |
x |
日本 |
x |
x |
カザフスタン |
|
x |
韓国 |
x |
|
マレーシア |
x |
x |
モンゴル |
x |
x |
フィリピン |
x |
(x) |
タイ |
(x) |
(x) |
ベトナム |
x |
x |
x – 参加 (x)– 国内認可を経てから参加
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