参加者:
1. |
ジョン・W・ベネット氏 |
オーストラリア代表 |
2. |
シエド・モハメド・ホサイン氏 |
バングラデシュ代表 |
3. |
ニ・バンファ氏 |
中国代表 |
4. |
セトヨ・プルワント氏 |
インドネシア代表 |
5. |
海老原 充氏 |
日本 (プロジェクト・リーダー) |
6. |
松尾 基之氏 |
日本 |
7. |
田中 剛氏 |
日本 |
8. |
松江 秀明氏 |
日本 |
9. |
関本 俊氏 |
日本 (オブザーバー参加) |
10. |
ムン・ジョンファ氏 |
韓国代表 |
11. |
ウィー・ブーン・シオン氏 |
マレーシア代表 |
12. |
プレシオサ・コラゾン・パブロア氏 |
フィリピン代表 |
13. |
アルポーン・ブサモンコン氏 |
タイ代表 |
14. |
ブ・ドン・カオ氏 |
ベトナム代表 |
15. |
町 末男氏 |
FNCA日本コーディネーター |
平成22年度FNCA NAAプロジェクトのワークショップは、研究炉基盤技術(RRT)プロジェクトと合同で開催された。開会セッションでは、日本プロジェクト・リーダーである海老原充氏が「中性子放射化分析プロジェクトの平成22年度ワークショップの目的」の演題で講演した。開会セッションは、参加者自己紹介の後、終了した。
本ワークショップは下記のセッションから成り立つ。
I. |
個々のサブプロジェクトの進捗報告
a) 地球化学図作成および鉱物探査のための地球化学試料のNAA
b) 汚染モニタリングのための食品試料のNAA
c) 環境モニタリングのための海洋堆積物試料のNAA
それぞれのサブプロジェクトについて、参加国の発表を行ってから全体的討議を行った。
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II. |
3ヵ年プロジェクト第3フェーズの評価 |
III. |
次期計画について討議 |
I. 参加国による個々のサブプロジェクトの進捗報告
このセッションでは、サブプロジェクトごとに全参加国より進捗報告がなされた。これらの報告を聞いた後、それぞれのサブプロジェクトのリーダーを議長として、網羅的な討議(以下の報告で全体的討議として記述されている)がなされた。これらの討議では、目的、目標、協力の可能性、作業分担、ロードマップ作成について考察した。それぞれのケースで、潜在的エンドユーザーに焦点をあてた。
I-1 地球化学的モニタリングと鉱物探査
オーストラリア:ジョン・W・ベネット氏 (サブプロジェクトリーダー)
サブプロジェクトリーダーは研究室相互比較測定の全参加者に感謝することから始めた。測定は日本から2つ、ベトナムから1つを含む7カ国8研究室から回答を得た。名古屋大学の田中剛氏により、3つの河川堆積物が参加研究室に分配された。研究室は、それぞれの滞積物試料から4つのサブ試料を取り、NAAおよび元素組成を決定する他の分析方法を使用するよう要求された。プロジェクトリーダーはすべてのデータを照合し、オーストラリアの国立測定研究所(National Measurement Institute)の支援で、それぞれの研究室の性能の定量比較を示し配布した。科学雑誌で結果を発表するために、さらなる作業の解釈が行われる。
バングラデシュ:シエド・モハメド・ホサイン氏
サブプロジェクト(地球化学的分析)を実行するために、バングラデシュは以下の作業をした。3つの河川堆積物の分析の相互比較練習に参加した。また、鉱物探査のためコックスバーザールの21kmの海岸(ラボニビーチからイナニビーチまで)において、1km間隔で21ポイントから3つの深さについて63の堆積物試料を採取し、この分析が現在進行中である。
中国:ニ・バンファ氏
河川堆積物試料を研究室で開発されたk0-NAAハイブリットバージョンと比較NAAで分析した。2つのアプローチから得た結果はよく一致した。黄河デルタ沿岸湿地表土の希土類元素(REE)分配は、NAAを用いて決定された。表土濃度と、異なる植物で見られた濃度とで比較された。
インドネシア:セトヨ・プルワント氏
バンテン州パンジャン島の地球化学図作成のため、k0-INAA(機器中性子放射化分析)が実施された。試料はGPSで決定された正確な位置でパンジャン島から採取された。凍結乾燥法によって照射試料の準備を行った。試料は 乾燥重量をもとに準備された。いくつかの元素の分布図がNAA技術で求められたが、データの分析は進行中である。トリウム濃度は1-8.5mg/kgで異なった。Ce(セリウム)は2-105mg/kgの濃度であった。 鉄(Fe)は富んでいて、3パーセント以上の濃度であった。
日本:田中 剛氏
地球化学図サブプロジェクトにおいて以下の様な進展があった:
1) |
試料採取は、苦鉄質岩が露出している研究領域の東へ拡大し、苦鉄質岩に関連した地球化学的データを得た。 |
2) |
この結果を2010年地質調査総合センター発行「海と陸の地球化学図」と比較した。彼らはICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)とICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光)を使用しているが、その地図におけるHf (ハフニウム)と Yb(イッテルビウム)とLu (ルテチウム)などの重REEの存在度は、INAAによる私たちの値の1/3〜1/5の値を示している。おそらくその低い値は不完全な酸分解法のためである。 |
3) |
地球化学図作成の公開講座が日本地球化学会会合で開催され、多くの参加があった。研究室相互比較のための3つの河川堆積物試料は、名古屋大学の田中氏と首都大学東京の海老原氏の研究室で分析された。 |
マレーシア:ウィー・ブーン・シオン氏
マレーシア原子力庁と鉱物・地球科学局で連携が確立し、NAA、他の解析サービス、研究、NAAや他の分析方法のトレーニング、コンサルタントの提供に関して可能な共同作業について意見交換を行った。このアプローチは、鉱物・地球科学局への訪問、地球化学研究に関するNAA利用ワークショップの開催および業務契約確立を含む。
全体的討議
サブプロジェクトの活動で大きな利益が達成されたことが明らかになった。河川堆積物分析の相互比較は、多くの研究室における測定の質の向上につながった。 データ共有により、参加者は割り当てられた値との食い違いや変動の原因について調査が可能となった。
具体的な成果としていくつかの論文の公表が挙げられる。これによって、研究コミュニティにFNCAを知らしめ、参加研究室の熟達についてのデモとなり、また専門家の知見に貢献するなどの多くの利益をもたらす。
そのほかの成果として、参加者により3つの河川堆積物試料が非常によく特徴づけられたので、私たちの研究室間で参考材料として用いることができることである。追加材料は日本地質調査所から購入できる。
インドネシアのサブプロジェクト参加は、土地の利用を変える前に様々な元素のベースライン値を確立するため、島の地球化学図作成を開始した。成功すれば、国内の他のエリアへのアプローチ拡大につながるだろう。
マレーシアは、国の鉱物・地球科学局とのコミュニケーション確立につながっていったかという点について説明した。これにより、国内でNAAを知らしめ、NAAが地球化学分析で示すことができる利点について主要な意思決定者に知らせることができるであろう。マレーシアのエンドユーザーとの連携確立経験は、他の国におけるイニシアチブのテンプレートとして機能するかもしれないと考えられる。ただし資金利用ができるかどうかにより、このモデルはプロジェクトの拡大または縮小が決まる。
オーストラリアでは、プロジェクトへの参加が国立測定研究所との非常に生産的な関係につながった。地球化学分析に関連するプロジェクトが2大学と1採掘会社との間で立ち上がった。
日本では、地球化学図作成サブプロジェクトは教育分野で主要な取り組みにつながった。 何年間もにわたり多くの学生が試料収集と分析に参加し、NAAの利用と利益を直接体験する専門家集団を生み出した。大学環境でそのようなプロジェクトを行う利益は、それほど外部資金に依存していないこと点にある。かなりの研究室資金が相互比較測定に参加するのに必要でも、ポジティブな成果がえられれば投資したことは正当化されるとの意見が他の国から出された。
地球化学図作成サブプロジェクトは、エンドユーザーと関わり、NAAの潜在的利用と利益についてエンドユーザーに知らせ、適切な共同プロジェクトを特定するために共同で働くNAA専門家のニーズを補強するという明確な意識があった。これらの連携が多くの参加国で形成されているという非常に明るい兆候が既にある。このアプローチはエンドユーザーの需要を本当に満たす需要主導のプロジェクトにつながるだろう。
I-2 食品汚染モニタリング
中国:ニ・バンファ氏
市場の中国茶葉15ブランドから34の微量元素(Ag、Al、As、Au、Ba、Br、Ca、Ce、Cl、Co、Cr、Cs、Cu、Eu、Fe、Hf、K、La、Lu、Mg、Mn、Na、Rb、Sb、Sc、Sm、Sr、Ta、Tb、Th、V、W、Yb、およびZn)がNAA技術で測定された。3種類の発酵温度の異なる煎じた茶葉から濾過した微量元素が測定された。結果は、以下のとおり。i) 茶葉は微量元素を豊富に含む。濃度は起源と採取時期で異なる、ii)溶解率は元素による、 iii)お茶は他の植物に比べMnが豊かである、iv)お茶を飲むことはいくつかの必須微量元素を補足するが、人体が必要とする総量よりはるかに少ない。
インドネシア:セトヨ・プルワント氏
NAA法で茶葉中の毒性および必須元素を測定する汚染モニタリングを行った。5種類のお茶製品(緑茶、紅茶、rossella茶、vanila茶、ジャスミン茶)をバンテン州の市場から集めた。試料分析により、主要栄養素としてK(10-25mg/kg)、Ca(7-21mg/kg)、Mg(2-4mg/kg)、微量栄養素がMn(0.2-0.8mg/kg)、Fe(0.17-0.7mg/kg)の値が乾燥茶試料で得られた。乾燥茶試料でCrは約1.8-3μg/kg見つかった。浸出茶試料の元素濃度のすべてが減少していた。
韓国:ムン・ジョンファ氏
緑茶、紅茶、麦茶と3種類の茶試料を市場で購入し、NAAのための準備がなされた。加えて、煎じた茶試料も茶試料内の元素の抽出レベルを評価するために準備された。緑茶と麦茶の試料から15元素と、紅茶の試料から22元素が、それぞれINAAによって測定された。Kは測定された元素の中で最も高い含有量を示し、Clが90%という最も高い抽出率を示した。As、Cd、Hgのような有害金属は、分析された試料からは検出されなかった。
日本:海老原 充氏
6種類の国産緑茶葉試料を市場で購入して収集し、ムン氏提案のプロトコルに従って処理された。そのままのもの、煎じたもの、両方の試料を即発ガンマ線分析(PGA)で分析した。B、Cl、K、Mnは、確実に両方の試料から測定できた。4つの元素の含有量は、生産地域、処理法、値段に関係なく、2倍の開き以内にあることがわかった。ClとKのおよそ90、75%がそれぞれ6分煎じた後に浸出した。
マレーシア:ウィー・ブーン・シオン氏
キャメロンハイランドとサバの地元の茶葉会社による10の茶試料を分析した。 NAAを用い19元素を測定し、標準参照物質を使用して検証確認した。Kを除いて茶葉中の微量元素は煎じる前後で有意な差は見られなかった。 マレーシア茶葉はアフリカとアジアからのものと同程度の濃度範囲を示した。Ba、Ca、Cs、Mgはマレーシア茶においてアジアやアフリカのものと比べてその濃度がやや高い。将来、他の地元の茶試料を収集し、その微量元素の内容を比較し続ける予定である。
タイ:アルポーン・ブサモンコン氏
タイで市販されている10種類のお茶(バンコクのスーパーマーケットから、リプトン茶、サフラワー茶、マルベリー茶、緑茶、ジンゴ茶、ウーロン茶、キク入りサフラワー緑茶、紅花・ガシナ入りマルベリー緑茶、ジャスミン入りマルベリー緑茶、タイ茶)を購入した。乾燥および浸出の茶についてAl、Ba、Br、Ca、Ce、Cl、Cr、Fe、K、La、Mg、Mn、Na、Rb、Sb、Sc、Znの無機物分析がINAAで行われた。結果は、最も良い平均抽出率がCl(87%)で、Kの抽出率はすべての浸出茶において79%以上であった。
ベトナム:ブ・ドン・カオ氏
ラムドンの3大茶葉産地(カウダット、ディリン、バオロック)で収集された54茶葉試料中、栄養元素(Ca、Fe、Mg、Mn、Se、Zn)と有毒重金属元素 (As、Hg、Cd、Pb(鉛)) の含有量がダラト研究所でAAS(原子吸光分析法)、RNAA(放射化学的中性子放射化分析)、INAAによって分析された。結果は、これらの濃度の大部分が公表データの範囲にあった。有毒重金属の量は、Pb以外、制限基準値より低かった。
全体的討議
本サブプロジェクトに参加している7ヶ国(中国、インドネシア、韓国、日本、マレーシア、タイ、ベトナム)の代表は、食品試料の解析結果を発表した。韓国のムン氏提案のプロトコルに従って、大部分の参加国が部分はそのままのもの、煎じた後の茶試料を準備した。 まず、共通目標材料として選定された茶試料のAs 、Cd、Cr、Hgなどの有毒物質の濃度レベルについて議論した。さらに、各元素の抽出率を評価し、KとClが他のものより高い抽出率であることが明らかにされた。第二に、私たちの茶試料の解析結果をまとめて、科学雑誌に発表することについて意見交換した。2011年米国で開催されるMTAA13で、私たちの仕事について発表することが同意された。そのため、変更追加を施した最終データをムン氏に送る締切を11月末とした。ムン氏は全データを収集し、科学雑誌JRNCに発表するフルペーパーを作成する。
I-3. 環境モニタリングのための海洋堆積物試料
バングラデシュ:シエド・モハメド・ホサイン氏
NAA技術を用いてチッタゴン、シタクンダの20kmにわたる沿岸地帯で船舶解体活動による環境汚染の評価を実行した。 5つの船舶解体ヤードから採取された15個の土壌試料の分析から、調査された船舶解体ヤードがAs、Sb、Crで非常に汚染されていることが明らかとなった。まだ予備段階の観測であり、最終的結論を得るには、系統立てた集中的な研究が必要である。
インドネシア:セトヨ・プルワント氏
バンテン州スリャラヤ工業地域とラブアン電力蒸気プラントの汚染図作成がなされた。バンテン州PLTU スリャラヤおよびラブアンの領域から試料(土壌、水、植物)を得た。それぞれ5km〜20kmの距離をおいてリング1〜リング4について16採取地点から試料を収集した。全部で、土壌サンプルは32 、植物試料は16であった。凍結乾燥法が使用された。試料は乾燥重量を用いて準備された。 NAA技術による分析の後、スリャラヤ電力蒸気地域からSbのような毒性元素が0.5-0.8mg/kg の濃度で得られた。ラブアン沿岸では、Crが9.3-56.5mg/kgの濃度で得られた。
日本:松尾 基之氏
環境試料の特徴がまとめられ、これら試料へのNAA法の有用性が強調された。 一般的な採取法として推薦されたコア・サンプリング法が、過去の環境の変化をはっきりさせるために採用された。このセッションでは以下の遂行された研究作業について発表がなされた: i) 低酸素下での堆積物を用いて沿岸海底の環境の復元、 ii) 多重即発ガンマ線分析(MPGA)を使用して環境試料への応用。
フィリピン:プレシオサ・コラゾン・パブロア氏
2ヶ所の採取地点(マニラ湾とソルソゴン湾)から海洋堆積物コア試料を収集した。これら2つの水域で微量元素、毒性元素流入を測定し、210Pb年代測定法により、これらの流入と時間を関連させる。これらの採取地点の研究は、主に湾への汚染物質流入の歴史について測定し、生態系(一部、有害な富栄養化との関係)でのその影響を評価するために行われてきた。収集されたすべての試料はペレット化されており、波長分散蛍光X線分析(EDXRF)による分析のために準備した。しかし、校正曲線の分析条件/設定の最適化はまだ継続している。 いくつかのサンプルは以前のプロトコルで分析されたが、計算は終わっていない。210Pb年代測定との関連で得られた元素データを用いて、相関プロットと起源物質の帰属に関する研究を試みる予定である。
マレーシア:ウィー・ブーン・シオン氏
海洋環境における毒性元素汚染レベルの理解には、海洋堆積物を使用する環境モニタリングは不可欠である。2003年以来、マレーシア沿岸で海洋堆積物試料を収集し、このプロジェクトは政府によって支援されている。今年は、タラン・サタン国立公園とバコ国立公園から収集した海洋堆積物の結果を報告する。この研究目的は、濃縮係数 (EF値) *と環境累積インデックス(Igeo)を使用してこれら国立公園の堆積物の汚染レベルを評価することである。 結果は、バコ国立公園のAsのEF値とIgeo がタラン・サタン国立公園のものより高いことを示した。 高いAsは、おそらく本土から川への排出による人為的発生源によるものであろう。CrとSbに関しては、両方の国立公園で、それらのEFとIgeoによって示されるように、重要な汚染は見られなかった。
ベトナム:ブ・ドン・カオ氏
ベトナムの西南部で最も大きい港であるディンハンで収集された堆積物試料の元素濃度を分析するためにINAA法が適用された。 結果は、ナトラン、ビントフアン、ヴンタウで収集された試料と比べて、 Fe 、Co、Cr、Feの含有量が1.5〜10倍高いことを示している。これは、このエリアにおける輸送活動からの汚染による可能性がある。
全体的討議
各参加国の達成状況について検討し、以下の点が意見交換を通じて出された。
i) |
効果的な結論を引き出すにはさらに継続する必要があるが、本サブプロジェクトの遂行にあたり各国は大きな貢献をしている。 |
ii) |
汚染の歴史的情報を与えるコア採取の可能性と必要性について討議された。海洋環境がひどく汚染されていない国もあるが、その場合はコア採取分析をする必要はない。その場合、表層堆積物の分析を行う事によって大規模なエリアでの試料採取がカバーできる。 |
iii) |
本サブプロジェクトが延長される場合、バングラデシュ、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、ベトナムの6ヶ国が継続の意向を示した。この中でバングラデシュ、日本、マレーシア、フィリピン、ベトナムは海洋堆積物に関心を表明し、一方、インドネシアは国内事情により河川堆積物と表層土壌への関心を表明した。 |
II. 3ヵ年プロジェクト第3フェーズの評価
各国がワークショップ開催前に評価シートを提出した。ワークショップでは、各国が評価シートの内容を説明した。概して、3つのサブプロジェクトは十分に行われている。2010年度が半年残ってはいるが、中性子放射化分析プロジェクトの成果が目に見える形で履行されたとまとめることができる。
III. 次期計画について討議
基本的に、第3フェーズとして採用した3つのサブプロジェクトを2011-2013年の3年間も継続することで合意した。以下に、第4フェーズの個々のプロジェクトについての議論をまとめる。
III-1. 地球化学図作成および鉱物探査のための地球化学試料のNAA
本サブプロジェクトの第4フェーズは、第3フェーズで達成された成功の第一段階の成果を得るために必要であるとされた。最も重要なのは、エンドユーザーとの対話の勢いを加速することである。これらのネットワークを通じて、NAAの強みを最大限に活用するプロジェクトが策定、実行される予定である。
本サブプロジェクトのスコープは、環境などの分野において地球化学図作成手法の利用を含めて拡大することであるとの合意を得た。海洋システムは他のサブプロジェクトへ残し、陸上システムのみを含むこととする。タイトルは「地球科学図作成」と短縮することも考慮する。
新フェーズの重要な目的の一つは、広範なエンドユーザーにサブプロジェクトの成功を伝えることである。FNCA の下で、パンフレット作成により個々の研究室を宣伝しNAAの強みを分析化学者に知らしめ、またケーススタディの小冊子作成し、印刷媒体で記者による「グッドニュース」ストーリーが書かれる機会を模索する。
すべての既参加6ヶ国(オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、マレーシア)は地球化学図作成サブプロジェクトの新フェーズに参加する意向を表明し、フィリピンも参加を検討している。
オーストラリア代表は、次フェーズが承認されたらサブプロジェクトリーダーの役割を継続することに合意した。
III-2. 汚染モニタリングのための食品試料のNAA
第4フェーズでサブプロジェクトとして食品分析を継続することについて討議された。中性子放射化分析による食品分析は重要な課題であり、このサブプロジェクトは続ける必要があると合意された。続いて、意義ある研究対象であると同時に、公衆の関心に対してインパクトある共通のターゲット試料を選ぶこととした。食品サブプロジェクト参加国の多くの代表は、第3フェーズで実施されている茶葉または米の分析を延長することを望んでいる。しかし、議論の時間的な制限や態度を慎重にしたことで最終決定には達しなかったので、ターゲット試料の最終決定は電子メールによる意見交換を介して行われることとした。NAAプロジェクトの継続が公式に決定される本年度末のコーディネーター会合において、ターゲット材料についてなんらかの意見、提案が聞けることが期待される。
III-3. 環境モニタリングのための海洋堆積物試料のNAA
最初のセクションにおける本サブプロジェクトの一般的議論で説明したように、本サブプロジェクト参加国は継続が承認されたら次の3年間も本サブプロジェクト活動を継続することに合意した。本サブプロジェクト継続の主な理由は、2008-2010年は、海洋堆積物へのNAA応用の現状評価と環境汚染レベルモニタリングの有効な実験手順についての討議が主な目的であった。参加国全会一致で、プロジェクトで実を挙げるためには本サブプロジェクトを少なくともあと3年間は実行する必要があると合意した。特にコア採取は海洋環境汚染レベルの時系列変化情報を取得するのに非常に効果的であるため実施されるべきである。海洋環境汚染が現在のところ深刻でない国は、代わりにかなり大規模な表層エリアでの採取を実行することができる。現時点で、延長される場合、バングラデシュ、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、ベトナム6ヶ国が本サブプロジェクトに関心を示している。本サブプロジェクトがこの先少なくとも3年間継続するなら、日本代表はサブプロジェクトリーダーを喜んで引き受ける。
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