議事録(仮訳)
FNCA原子力安全文化プロジェクト
2006年ワークショップの概要
2006年9月19日〜21日 マレーシア バンギ
本ワークショップは、マレーシア原子力庁(MINT)のカネサン・シナカルパン氏の歓迎の挨拶から始まった。
マレーシアの歓迎の挨拶に対し、オーストラリアのケイト・マロニー氏よりオーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)を代表して感謝の意が述べられるとともに、改めて本プロジェクトの目的が説明され、過去のワークショップのハイライトも説明された。
続いて、アレーシア原子力庁の副長官であるアドナン・カリド氏より開会宣言が成され、ワークショップの参加者に対し歓迎の意が述べられた。また 4 月にマレーシアで行われたピアレヴューに対してもお礼が述べられた。
最後にANSTOの安全部門のマネージャーであり、FNCAの原子力安全文化のプロジェクトリーダーであるサイモン・バスチン氏から、本ワークショップの諸準備に対しマレーシアへお礼が述べられた。
IAEAにおけるアジア原子力安全ネットワ−ク(ANSN)に関連した最近の原子力安全文化活動の動向について
原子力安全基盤機構(JNES)のDr.横山氏よりANSNにおける幾つかの活動事例が報告された。
- ANSNのメンバーは、研究炉の安全管理(安全文化を含む)を議論する新たなグループ(TGSM)の設立を決定した。また、それはオーストラリアと韓国が主導するであろう。
- ANSNは、研究炉を対象とするFNCAの原子力安全文化活動を承知しており、FNCAとの協力に関心を持っている。
マロニー女史は、彼女自身がANSNの議長であり、またDr.横山氏がそれの名誉議長であることから、今が協力のいいチャンスであると考えている。
カントリーレポート
参加した各国は、自国の原子力安全文化に関する最新の状況の報告を行った。ただし、中国は、原子力及び新エネルギーの開発研究機関における研究炉の概要について報告をおこなった。これらの報告により、各国において原子力安全文化活動が顕著に進展していることが明確になった。また参加した多くの国が、既に安全指標を導入したり、今後導入しようとしていることも明らかになった。
オーストラリアとフィリピンの両国は、オーストラリアのHIFAR炉とフィリピンのPRR−1炉についてその廃炉計画について述べた。また、前回のワークショップでも話題になったが、今後 20 年の間に多くの国で廃炉が実施されることが明らかになった。
同時に、ベトナムは研究炉と原子力発電についてその国家ビジョンを発表した。インドネシアは、規制分野の活動において原子力安全文化活動に力を入れ、安全管理システム等の向上に関し評価システムを導入していると報告した。
マレーシア TRIGA PUSPATI(RTP)炉のピアレビューについて
オーストラリアのバスチン氏より、ピアレビューの好事例や指摘事項を含めたRTP炉のピアレビューの実施概要が述べられた。
また、マレーシアのカネサン氏より、ピアレビューで指摘された課題及び指摘事項に対するMINTの短期及び長期対策計画が述べられた。
また、参加者全てが、マレーシアのピアレビューに対する積極的で迅速な対応に対し感謝の意を表した。
2006 年 3 月に東京で開催された第 7 回FNCAコーディネーターミーティングで発表された「ピアレビュー報告」について
日本の鴻坂氏より、第7回 コーディネーターミーティングにおいて発表された、ピアレビューの方法論やピアレビューでの好事例や指摘事項などが報告された。この報告は指摘事項の数値や改善された数値などが簡潔に述べられており大変有益であった。また、指摘事項の数は重要な指標ではなく、その内何パーセントが改善されたかが重要な指標であることが皆に認識された。
日本原子力技術協会(JANTI)の概要とそのピアレビューのやり方について
JANTIの浜田氏より、 2005 年 3 月に原子力産業に関連する会員(原子力産業に関連する 114 の企業及び 33 の原子力安全ネットワークに加盟している企業)により設立された日本原子力技術協会の概要が説明された。JANTIの従業員は約 70 名でありその財務基盤は会員の分担金で成り立っている。JANTIの特徴の一つはピアレビューのやり方であり、そのやり方はWANO及びINPOのものに似ているが、JANTIはピアレビューの結果を報道機関や一般に公開している。また、JANTIはレポートの作成方法等を含め全ての活動に特別なルールを持っている。
RTPへのテクニカルツアー
ワークショップの参加者はRTPへのテクニカルツアーを行い、現場を視察しその視察結果について議論を行った。
ピアレビューが実施されてから 5 ヶ月しか経ていないが、ピアレビューでの指摘事項に対する改善については目を見張るものがあった。
このツアーは、ピアレビューとして行ったものではなかったが、幾つかのマイナーな指摘が、非公式ではあったが、原子炉運転管理マネージャーのザリーナマソッド女史に伝えられた。
過去のピアレビューでの指摘事項に対する改善状況
インドネシアのジョニー・シティモラング氏より、カルティナ研究炉のピアレビューについて、実施から 15 ヶ月間になされた結果が報告された。指摘事項15項目の内、6項目が完了し2項目が進捗中である。また 1 項目が評価待ちであり、残りの項目は後日実施の予定である。
韓国のインチョル・リム氏より、ハナロ炉のピアレビューについて、実施後 2 年半の間に行われた改善結果等が報告された。 15 項目の指摘事項の内32の詳細点について、 26 点が完了し 5 点が進行中であり 1 点は今後検討するとのことであった。
ベトナムのファン・バン・ラム氏より、ダラト研究炉のピアレビューについて、 2003 年以降に行われた改善点等の報告がされた。16の指摘事項の内ただ
2 項目だけが残っておりそれも 2007 年中には改善されるとのことだった。
参加者から、ベトナム、韓国、インドネシアの改善を今後も続けていくというコメントに対し、感謝の意が述べられた。
ベトナムと韓国の未実施の分については、今後はカントリーレポートの中で報告されるということになった。その報告事項は前回のワークショップ以降に採られた対策だけでよいこととなった。
トピックス−ANSTOにおける放射性医薬品製造プラントにおける安全活動
オーストラリアのバスチン氏より、以下に焦点をあてた、最近のANSTOにおける 放射性医薬品製造プラントの安全文化活動の紹介があった。
- 過去に類似事例があったにもかかわらず失敗した例
- 過去の失敗を無視した例
- 日常点検の怠り
- 運転指示の無視
- 運転・操作方法が旧式で最新のものにフォロ−されていない例
活動指標
- 原子力発電所における安全文化評価指標
中部電力の倉田氏よりNISAにより考案された 10 の主要安全文化指標とそれらの指標に基づく活動指針が発表された。
- 経営層の関与
- 上層部の明確な指導と行動
- QMSの導入と改善
- 報告の習慣
- 学習する組織
- 内部、外部とのコミュニケーション
- 誤った判断による決定の防止
- ルール遵守
- 説明責任と透明性
- 自己評価あるいは第三者評価
これらの各項目は、総合的にまた具体的な例を持って発表された。またそれらの幾つかの項目や具体例はASCOTガイドラインに沿ったものであることが認識された。
- 敦賀原子力発電所2号機におけるNISAの安全文化指標の実践例
日本原子力発電の伊東氏より、日本原電における上記 10 項目の安全指標の具体的実践例が報告された。また、これらの活動指標は10年ごとに見直されている。
- ANSTOにおける安全活動指標の実践例
ANSTOのバスチン氏より、前回のワークショップ以降に採用されたANSTOにおける安全活動指標の実践例が発表された。
- 安全に対する対策は1つではなく安全指標も1つではない。その1つの指標に集中すると安全に対するプライオリティーを誤ることになり、指標に対するデータを誤魔化すことにも繋がる。
- 指標を広範囲にすると、多くの安全項目をカバーできるという利点がある。しかし、データを収集する努力を怠ってはいけない。
- ASCOTと最近のNISAは指標の範囲を拡大する方向にある。
- 数ある指標の中で、どれが重要であるかを決めることは大切である。また、それを決める際は、誰にとって重要なのか、またその指標にどんな役割を持たせるかを考えることが重要である。
- 重要安全指標に対する一般的な論議
倉田氏から、安全対策は常日頃の改善が重要で停滞は後退と見なされるであろうという指摘があった。また、韓国のリム氏から、ハナロ炉の安全管理にはバランス・スコアー・カードと重要安全指標を用いているとの報告があった。
原子力安全文化プロジェクトの今後の活動について
- ワークショップの参加者は、FNCAの今後の活動を検討し、 2007 年の前半にピアレビューを実施し、 2007 年の後半か 2008 年の早期にワークショップを開催することとした。
- 次回のワークショップとピアレビューは、研究炉を運転している国で未だピアレビューを受けていない国とした。その対象国はアルファベット順でオーストラリア、中国、日本、タイである。
- 各国は、自国での重要安全指標の活用例を調査し、次回ワークショップで議論することとした。また、その準備にあたってはIAEAのGS−R−3及び倉田氏によって発表されたNISAの項目を考慮に入れることとした。
- 将来、特にウエブサイトにおける情報の共有化という点で、FNCAとANSAとの間で関係強化が図られるであろう。
- 原子力安全文化活動における適当なコミュニケーション方法( e-mail 等による)の確立を引き続き検討する。
- 韓国のリム氏から次回のワークショップに向けてカントリーレポートの新フォーマットの提案があった。その詳細は引き続き韓国によって考えられるが、新フォーマットは遅くとも次回のピアレビュー後2ヶ月以内にメンバー国によって決定される。
- ピアレビューとそのフォローアップができるワークショップを6ヶ月の間隔をおいて開催することは大変有効であり今後もそれを続けていく。ただし、ピアレビューには全ての国が参加できないという難点があるため、バスチン氏がピアレビューの方法について案を考えることとなった。
結論
- 本ワーキンググループはマレーシアの各種準備、プログラムの設定、ピアレビューの指摘事項への早期対応などに対し感謝の意を表した。
- 原子力安全文化プロジェクトは、各国における安全文化活動に大きく寄与し、また各国ともワークショップ及びピアレビューを通じお互いに多くを学ぶことができた。
- 次回のワークショップ及びピアレビューの候補国の決め方をコーディネーター会合で発表することとした。また、次回ワークショップとピアレビューの実施国は今後オーストラリアのバスチン氏と各候補国とのコーディネーター間で決定されることとなった。
- 最後に大変残念なことであるが、数人のプロジェクトリーダーが変わることになった。マレーシアのイブラヒム氏は間もなく退任し、韓国のリム氏も追って韓国の新たな参加者に代わられることとなった。本グループとして彼らの長年の功績に感謝し、また今後のご活躍を期待したい。
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