FNCA2007 原子力安全文化ワークショップ
報告
2008年3月26日-27日
中国、北京
2007年度原子力安全文化プロジェクトのワークショップが、中国の北京で、2008年3月26、27日の2日間開催され、オーストラリア、中国、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの9カ国から15名の専門家が参加しました。
今回のワークショップは、プロジェクトを主催するオーストラリアが、これまでの経緯を知る者に出席を求め、原子力安全文化プロジェクトを継続するか、あるいは変更するかを議論することを主な目的として開催されたものです。
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ワークショップの様子 |
ワークショップ概要
ワークショップの開催にあたり、孫玉良教授(清華大学)から歓迎の挨拶とワークショップの概要についての説明があった。これに応えてオーストラリアのS.バスチン氏(ANSTO)がANSTOを代表して参加者に対して歓迎の挨拶をするとともにホスト国へのお礼を述べた。また、これに応えて横山日本PL(JNES)からホスト国と参加者へのお礼を述べた。
【プロジェクトのハイライト】
バスチン氏から、このプロジェクトの元々の目的、達成した成果等について説明があり、各国参加者から、このプロジェクトのハイライトについてのプレゼンテーションがあった。
【過去のピアレビューで指摘された事項に関する進捗状況に関する各国レポート】
ベトナムのファム氏 (DNRR)、韓国のリム氏 (KAERI)、インドネシアのシツモラン氏 (BATAN)およびマレーシアのワハブ氏 (Nuclear Malaysia)から、それぞれが受けたピアレビューでの指摘事項に関する対応の進捗状況の説明があった。ファム氏は、DNRRに対する2003年ピアレビューで16の指摘事項を受けたが、2007年の新管理システムの導入以来、すべての事項への対応を完了したとの説明をした。
韓国のリム氏は、ハナロ炉に対する2004年ピアレビューで15の指摘事項、32項目を受け、31項目への対応を完了したと説明した。
インドネシアのシツモラン氏は、カルチーニ炉に対する2005年ピアレビューで14の指摘事項を受け、8項目が完了したと説明した。
マレーシアのワハブ氏は、プスパティ炉に対する2006年ピアレビューでの指摘事項を受け、○項目(不明確のため帰国後に確認するとした)を完了したと説明した。
なお、ベトナムのファム氏から、FNCA安全文化プロジェクトのピアレビューにより受けた指摘事項(原子炉管理システムの交換)を解決するために、IAEAのTCファンド及びベトナムの国の予算から資金を獲得することに成功したことが紹介され、当プロジェクトにおける成果として特筆事項であるとされた。
【性能指標(Performance Indicators)】
横山氏から、前回ワークショップにおける倉田聡氏(中部電力)のプレゼンテーションをフォローアップするために、日本における規制の検査に用いる自己評価とモニタリングの枠組みとなる、安全文化に関する14の主要要素(14 key elements)、「トップマネジメントのコミットメント」、「上級管理職者の明確な政策と行動」、「間違った決定を回避するためのシステム」等について、これらの一つ一つが、全体的な観点、質問の例および性能指標の例とともに示された。これらの内のいくつかは、良い安全文化の性能指標の基礎となるASCOTガイドラインを作成するために参考とされた要素や質問の例である。
【今後の進め方、将来オプションについて】
ワークショップ開催に先立ち、各参加者は、このプロジェクトに関するそれぞれの国や組織での主なハイライトおよび次期プロジェクトの提案についてのアンケート調査を求められており、提案を示した参加者からそれぞれの提案に関する説明が行われた。
鴻坂氏が2つのオプションを示した。(1) 既存のプロジェクトとピアレビューの基本的に継続すること、(2) 対象範囲の再設定(Re-scoping)、すなわち、研究炉の安全運転とメンテナンスに関する特定事項に焦点を絞ること。
リム氏が、原子力施設におけるナレッジマネジメントの提案について説明した。ナレッジマネジメントの安全面に焦点を絞ること、及びシステムよりも人および手法に重きを置くべきであることが同意された。退職した人々へのインタビューは、レビュープロセスを向上させるための一つの選択肢であることが示された。
ワハブ氏が、研究炉の安全運転についての提案について説明した。このプロジェクトは、原子力発電所のためのIAEAのOSARTミッションと類似の内容であるが、研究炉に特定されるものである。そこで、INSARRとの関連はどうなるかと疑問に思っている。
タイのソムジェ氏が、研究炉の経年管理の提案について説明した。経年プラントに要求される追加的なメンテナンスの扱い、経年プラントで増加が予想される故障(様々なモードでの故障)の安全面への影響、及びプラントの重要な経年事項のプラント運転の限界についての問題、の3つを考えている。FNCAプロジェクトは、その事項の専門家を必要とするようなこうした問題を扱うためにはベストの方法であった。ピアレビューミッションは、国際機関/専門家のサポートを要求することが必要であることを確認し、促すこととなり、またはそのきっかけ(trigger)となった。
インドネシアのシツモラン氏は、SCARTガイドラインを基礎とする安全文化レビューについて説明した。この提案は、基本的に同じものであるが、IAEAのSCARTミッションの提供する文書の修正ドラフトとIAEAのGS-G-3.1に基づく修正した安全文化の範囲を扱うこととしている。
バスチン氏が、研究炉のための安全管理システムについての提案を説明した。
これらの提案に関する賛否について議論し、次の表にとりまとめた。
提案されたトピック |
賛成意見(Pros) |
反対意見(Cons) |
新しい範囲を設定し、新しい文書を念頭において安全文化プロジェクトを継続する |
過去のプロジェクトの成功に基礎を置く最小限の変化と継続性があること;
すでにレビューされた施設の再評価
まだピアレビューをしていない国の招待 |
すでに長期間実施しているプロジェクトであること; 新しいアイデアが必要か?
正当化が必要
新しいゴール設定が必要 |
研究炉のナレッジマネジメント |
多くの組織(特にデコミッショニング期間中の組織など)が重要問題に直面している
経験の共有と管理戦略
新しい技術の採用の促進につながる |
ITツールではなく安全の効果に焦点を当てる必要がある
範囲が狭すぎるかもしれない
IAEAのCRPは終了すると考えられるが、IAEAの継続プログラムがあるだろうと思われる |
研究炉の経年管理 |
この地域の多くの研究炉において重要な問題である
類似の炉(特にTRIGA)の経験を共有できる
必要な専門家の参加は無理かも知れないが、ピアレビューは特別専門家ミッションを要求できるかも知れない |
安全面に焦点を当てる必要がある
特別な専門家を見つけ出す必要がある
FNCAでの範囲を超えるような迅速な行動が必要となるかも知れない |
研究炉の安全運転 |
現行のプロジェクトとの継続性があること安全面を広範囲にカバーする |
IAEAのINSARRミッションと重複する可能性がある
対象範囲が広すぎるかも知れない(ただし、スコープを狭く設定することは可能)
研究炉を運転していない国もある |
安全管理システム |
レビュー活動を含む現行のプロジェクトとの継続性がある
ナレッジマネジメントの安全面を含むことが可能
良く設定されているガイダンス(例えばIAEA)に、ピアレビューの基礎として使用可能なNSCPの自己評価フォームを追加できる
1年の実行可能性調査(既存のもとでも新プロジェクトでも)が可能である |
IAEAのANSN活動等との重複がある(ただし、調整することは可能である)
安全管理問題に関し(現行のプロジェクトを超える)特別の成果を決定する必要がある
(自己評価フォームは一つの成果である) |
他のオプションは、これらのトピックに組み込むこととし、安全管理に関するワークショップは、招待専門家が必要となる(経年管理のような)特定のトピックを持つようにする。これらすべてのオプションについて、ホスト国/組織は、ピアレビューを受け入れる準備をすることとする。
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