議事録(仮訳)
2005年6月6-10日 インドネシア、ジョグジャカルタ
本ワークショップは、インドネシア原子力庁(BATAN)原子力安全技術開発センターのアルファハリ・マルディ・センター長による歓迎の挨拶により開始された。
続いて、オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)を代表して安全・放射線科学部のケイト・マロニー部長により歓迎の挨拶行われた。また、本プロジェクトの目的、中国がワークショップに参加できなかったこと、さらに次回のワークショップではすべての国が参加することを希望していることが述べられた。
BATANのスジャルトモ・スントノ長官の代理としてインドネシア原子力規制庁(BAPETEN)のスカルマン・アミンジョヨ長官より、開会が宣言された。
続いて、ANSTOのピーター・マーシャル上級安全・信頼性指導官より、オーストラリアのプロジェクトリーダー(PL)の代理としてワークショップを主催したインドネシアに対し感謝の意が表わされた。
<原子力安全文化プロジェクトの概要およびオーストラリアと日本との二国間会議の報告>
ケイト・マロニー部長 より、 2005 年 3 月に石川迪夫教授を団長とした日本の派遣団が FNCA 安全文化プロジェクトの評価について協議するために
ANSTO を訪問したことが報告された。会議では両国により、現在のプロジェクトの目標に対して継続的に支持していくことが決意された。日本は、特別拠出金事業(
EBP ) を通じた基金にもとづく IAEA のアジア原子力安全ネットワーク( ANSN )の組織とウェブサイトによる情報の共有について述べた。また、オーストラリアが近くソウルで行われる
ANSN の運営委員会に出席し、 FNCA 原子力安全文化プロジェクトの活動について報告することが合意された。
続いて同部長より、2005年5月に開催されたANSN運営委員会の出席報告が行われた。ANSNにとって安全文化は、非常に重要な問題であり、ANSNに参加しているアジア諸国は、FNCA安全文化プロジェクトの参加国と同じであることが指摘された。また、ANSNとFNCA安全文化プロジェクトとの間で緊密な協力を行なう機会が訪れ、また、この問題については、後ほど本ワークショップにおいて横山勉PLより報告が行われると述べられた。
<コミュニケーション向上の方策>
小寺充俊調査役より、安全文化プロジェクト内のコミュニケーションの向上と関係者向けのプロジェクト活動報告書の発行の二つの提案が行われた。ワークショップでは、プロジェクト内のコミュニケーションを改善していく必要があることが合意された。また、プロジェクト内のコミュニケーションの向上を効率的に図る方法として、
ANSN との協力が提案された。
アクション : |
小寺充俊調査役が検討用としてコミュニケーション向上のためのパンフレットを作成し、電子メールにより各国に送付する。 |
<カントリーレポート>
ワークショップに参加したすべての国より、最新のカントリーレポートが報告された。各国において良好な安全文化が著しく促進されていることが明らかにされた。多くの国では、一般職員や管理職のあらゆる階層を対象とした訓練と安全文化の意識向上プログロムが実施されている。
<安全文化とインドネシア文化>
ガジャマダ大学のジャマルディン・アンチョク教授より、インドネシアの国民文化による安全文化への影響に関する興味深い報告が行われた。安全文化についての考察が行なわれた後、最近ホフステードが行なった研究について論じられた。これは、社会における力の不公平な配分の受容性の基準として「パワー・ディスタンス:Power
Distance」という概念を紹介したものである。ホフステードの理論では、「ハイ・パワー・ディスタンス:High Power Distance(すなわち指導者の権威が労働者によって疑われない社会)」は、安全文化に対し負の影響を与えるものとしている。
<韓国の緊急時対策>
韓国のグァンユ・リ氏より、韓国の新緊急時対策法に対する韓国原子力研究所 ( KAERI )の対応について報告が行われた。 KAERI では、緊急時対策計画が見直され、特に緊急時の教育と訓練が強化された。
<研究炉の廃止措置段階における安全文化>
ケイト・マロニー部長より、研究炉が運転から廃止措置へ移行する段階における安全文化への特別な取り組みに関する考察について報告が行われた。ワークショップ参加者より廃止措置時の経験について報告が行われ、さらに、フィリピンのヴァンジェリン・パラミ課長より、まもなく同国の研究炉の廃止について発表があるであろうとのコメントが出された。この問題は、今後ワークショップで重要な議題になるであろう。
<安全についての主要パフォーマンス指標>
ピーター・マーシャル指導官より、ANSTOが行なっている安全についての指標に関する研究ついて報告が行われた。これは、事故の発生を防止するための活動を評価する指標(Lead
Indicators)と事故と記録を報告する指標(Lag Indicators)に関するものである。この安全に関する研究は、安全文化について報告するために適用されるが、資源の確保が必要であると考えられる。
アクション : |
ワークショップ参加者は、次回のワークショップで安全パフォーマンス指標の適用状況について報告することで合意した。
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<安全文化の醸成に対するBABETENの役割>
BAPEENのアス・ナシオ・ラスマン次官より、インドネシアの安全文化の醸成に対するBAPETENの役割について報告が行われた。安全文化を促進するための要件は、BAPETENの設立法により規定されており、BAPETENの任務を規定している条文では、安全文化の推進について記載されている。次に原子力利用者による良好な安全文化の醸成を促進するためにBAPETENが実施している活動について報告が行われ、インドネシアが原子力エネルギーの利用を開始すれば、良好な原子力安全文化が必要となると述べられた。
<原子力安全文化に係る事例報告>
日本の伊東宏泰課長より、昨年、発生した美浜発電所3号機2次系配管の事故についての事例報告が行われた。この事故は、原子力によるものではなく、放射能は含まれていなかったが、5名が亡くなり、6名が負傷した。また、世界中の報道機関から注目された。事故調査により、配管検査の不備が明らかにされた。配管検査は、請負業者によって行われていたが、請負業者に対する監督責任が不明確であったことが内在する要因としてあげられている。再び同様の事象が起きないように他の日本の組織により、事故調査が行なわれている。
<IAEA アジア原子力安全ネットワーク(ANSN)>
ANSN運営委員会の議長である横山勉PLより、ANSNの目的と活動について報告が行われた。特にANSNのウェブサイトは、いくつかの段階でパスワードにより保護されているため、情報はごく一部の利用者だけにしか提供されていないことが述べられた。ワークショップの参加者からは、FNCAの情報をANSNのウェブサイトに載せることができるか、検討すべきであるとの意見が出された。
アクション : |
ケイト・マロニー部長と横山勉PLは、ANSNとFNCAとの協力について引き続き調査を行い、次回のワークショップで報告を行なう。(ワークショップより前の場合は、電子メールにより報告を行なう。) |
<放射線安全の取り扱いに関するフィリピンからの提案>
ヴァンジェリン・パラミ課長より、原子力安全文化プロジェクトの活動範囲を拡大し、放射線源の安全とセキュリティの報告とピアレビューを行なうという前回のワークショップで提案された内容が説明された。討議の結果、この問題は非常に重要であることが確認されたが、本プロジェクトの活動範囲を拡大することにより、その効果が減少する懸念があるとの意見が出された。また、放射線源の安全とセキュリティについては、いくつかの国際的な取り組み(IAEAのRaSSIA(放射線安全と放射線源のセキュリティに係る基盤評価)のミッション、オーストラリアのRSRSプロジェクト、フィリピンから提案され、現在、2005年の第1回会合の開催準備が行われているFNCAのパネル)が存在することが明らかにされた。今回、FNCA安全文化プロジェクトでは、その活動範囲は拡大しないが、安全文化の促進に関するものであれば、これまでと同様にすべて扱っていくことになった。
<過去のピアレビューの勧告に対する進捗状況報告>
1.ベトナム
ベトナムのファム・ヴァン・ラム副所長より、2002年に本プロジェクトで実施されたダラト研究炉のピアレビューでの勧告に対する進捗状況について報告が行われた。いくつかの項目は、まだ完了していないが、ダラト原子力研究所ではピアレビューの勧告への対応が継続して行なわれ、著しい改善が見られていることが明らかにされた。同研究所では、QAシステムに関して韓国から援助を得る計画である。
2.韓国
KAERIのインチョル・リム課長より、2003年に実施されたHANARO研究炉のピアレビューでの勧告に対するKAERIの実施状況について報告が行われた。勧告の半分以上は、既に完了しており、さらに多くが近く完了する予定である。
ベトナムと韓国による報告とこれまでに実施された改善および両研究所の勧告に対する継続的な取り組みへの決意は、ワークショップ参加者によって高く評価された。
<安全文化プロジェクトの今後の活動> |
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ワークショップ参加者は、 FNCA 活動計画を検討し、 2006 年(暦年)の早期にピアレビューチームを派遣し、続いて 2006 年の後半にワークショップを開催することで合意した。 |
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次回のピアレビューと 2006 年のワークショップをそれぞれマレーシア原子力庁( MINT )の主催によりマレーシアで開催する。プロジェクト活動を効率的に行なうためにピアレビューをワークショップの数ヶ月前に実施するようにスケジュールを検討する。 |
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自国における安全パフォーマンス指標の適用状況について調査し、次回のワークショップにおいて報告することで合意した。 |
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近い将来、特に情報のウェブサイトへの掲載について、 FNCA 安全文化プロジェクトと ANSN との連携を強化していくこととする。 |
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FNCA の原子力安全文化活動におけるコミュニケーションの適切な方法について(電子メールにより)検討していくことで合意した。 |
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2003 年のワークショップにおいて、新しい自己評価報告書にもとづくベースライン報告書を作成、提出し、カントリーレポートとして 2003 年以降に変更した項目を報告することで合意した。
2004 年のワークショップでは、いくつかの国は、この方法に従ったが、従わなかった国もあった。インチョル・リム課長により、この方法は多くの研究炉がある国にとって適切ではないことが指摘された。ワークショップでは、インチョル・リム課長が次回のワークショップにおけるカントリーレポートのフォーマットについて電子メールにより検討、調整を行なうことで合意された。 |
アクション : |
インチョル・リム課長とピーター・マーシャル指導官は、電子メールにより、安全文化を促進するうえで適切なカントリーレポートについて検討を行なう。 |
カルティニ研究炉のピアレビュー
カルティニ研究炉のピアレビューの結果については、添付の付属書 - 1に記載されている。
成果 |
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FNCA 原子力安全文化ワークショップの参加者は、 BATAN と BAPETEN による準備、プログラムおよび安全文化に対する明確な決意に対して感謝の意を表わした。 |
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ワークショップ参加者は、 FNCA 諸国において原子力安全文化を向上していくには、強い決意が必要であること、また、ワークショップとピアレビューは、参加者に対してお互いに学ぶための絶好の機会となることを確認した。 |
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ワークショップ参加者は、次回のワークショップとピアレビューをマレーシアで開催することを FNCA コーディネーター会合に推奨することで合意した。さらに開催時期については、
PL のサイモン・バースティン課長とムハマッド・ユソフ・イブラヒム課長との間で調整することで合意した。 |
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小寺充俊調査役は、まもなくアジア協力センターでの担当が変わり、原子力安全文化の業務から離れることになった。ワークショップ参加者は、小寺充俊調査役の過去数年にわたるサポート対し感謝の意を表わし、今後の成功を祈った。また、同調査役の業務を引き継ぐことになった福田真一調査役を迎え入れた。 |
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