2005年FNCA原子力広報プロジェクト・リーダー会合は、2005年9月12〜15日に日本の東京および八戸市で開催された。
日本の文部科学省(MEXT)がこの会合を主催し、(社)日本原子力産業会議(JAIF)が会合開催に協力した。
2005年9月12日、開会セッションは東京の芝パーク・ホテルにて、学習院大学名誉教授の田中靖政博士が歓迎の挨拶を述べた。会合は、文部科学省研究開発局原子力計画課の佐野多紀子国際原子力協力官によって公式に開催された。FNCA日本コーディネーター、原子力委員の町末男博士から「2004年度のFNCA活動」および「原子力広報プロジェクトのレビューと計画」の報告があった。9月12日晩のレセプションはJAIFによって開催された。
開会セッションに続いて、7カ国のカントリー・レポートが報告された。各国のFNCA原子力広報プロジェクト・リーダー(中国はチェン・ガン氏、日本は久保稔氏)が報告した。
4日間の会合には、中国代表、インドネシア、日本、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナムのプロジェクト・リーダーおよび久保稔氏の8名が参加した。また、FNCA日本コーディネーターおよび7名の日本人オブザーバーが参加した。オーストラリアおよび韓国のプロジェクト・リーダーが不参加であったのは残念であった。参加者リストおよびプログラムは、別添1および別添2として議事録に添付される。
カントリー・レポートのテーマおよび項目: |
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(1) |
原子力発電や放射線利用など最近の広報分野に関する話題 |
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(2) |
自国での原子力広報活動の現状と今後の予定 |
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(3) |
FNCA活動 |
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(4) |
地域スピーカーズ・ビューロー(RSB)の活用 |
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(5) |
原子力に関する情報を伝えるコミュニケーターの養成 |
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(6) |
マス・メディア担当者との効果的なコミュニケーション |
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(7) |
FNCAウエッブサイトの活用促進を含む、FNCA各国間の情報ネットワーク |
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(8) |
その他 |
9月12日と13日に行なわれた各セッションでは、カントリーレポートに記載されたテーマと2005年度からの3ヵ年の目標・活動計画について討議された。これらの議題は、 |
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(1) |
原子力広報の戦略と技術の明確化 |
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(2) |
各国でのRI・放射線利用分野を共通の広報テーマとした活動の推進 |
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(3) |
FNCAウエッブサイト・ニュースレターを用いた効果的な広報活動の検討 |
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(4) |
原子力情報を効果的に発信するマス・メディア担当者との情報交換 |
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(5) |
2005年〜2007年度計画および3ヵ年計画の策定 |
であった。 |
東京での閉会セッションは9月14日、田中靖政博士の挨拶で総括された。
9月15日に「アジア原子力協力フォーラム(FNCA)と原子力コミュニケーション」と題した総合講演・報告が、青森県の八戸工業大学で開催された日本原子力学会2005年秋の大会で行われた。日本のプロジェクト・リーダーである田中博士が座長を務めた。中国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの参加者と日本の代理である久保氏から、各国の原子力平和利用の最重要点項目に関するカントリーレポートが報告された。総合講演・報告は一般公開され、60名以上が参加した。
「財団法人環境科学技術研究所」および「日本原燃株式会社(JNFL)」へのテクニカル・ツアーも同日午後に行われた。
各セッションのハイライト
セッション2:原子力広報の方策と手法の明確化
田中靖政博士(日本)、ダン・チー・ホン氏(ベトナム)の共同議長
田中博士は最初にFNCA事務局によって準備した2つの文書を紹介した。 |
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FNCA原子力広報プロジェクトの3ヵ年活動計画 |
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FNCA原子力広報プロジェクトの目標と手法 |
共同議長の日本から紹介された文書について議論が行われ、以下の合意に達した。 |
(1) |
原子力広報の目標(方策)は、3項目にまとめられる。 |
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第1項目は、放射線と原子力発電の安全と持続的利用に関する広報は、一般市民に対すると同じように専門の共同体に対しても、双方向のコミュニケーションを行うべきである。
第2項目は、広報の手法は、人から人へ情報を伝達するコミュニケーション(例:地域スピーカーズ・ビューロー(RSB))から従来のマス・メディア(例:テレビ、ラジオ、新聞、ニュースレター)や新しいメディア(例:電子メール、電子レター、ウエッブサイト、ブローグ(ウエッブ上での情報交換システムの総称))まで、新旧の種々の方法を活用し、また、効果的なコミュニケーションのツールを開発し利用するべきである。
第3項目は、政府機関、マス・メディアおよび一般市民を広報の対象として、FNCAの活動について広報を行うべきである。 |
(2) |
提案された活動計画 |
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2005年度
各国PLは、新しい活動項目を含む3ヵ年の活動計画について、日本の事務局が作成したアンケート形式によるフォーマットに従い、9月末までに事務局に提出することで合意した。これらの新しい活動計画に追加する項目には、パンフレット、ニュースレター、ウエッブサイト、地域スピーカーズ・ビューローおよびPL会合など、すでにFNCAの枠組みの中で運用している項目などがあるかもしれない。各国それぞれが自国の社会文化や伝統を基盤として原子力広報の目標を設定することも併せて推奨された。FNCA事務局(日本原子力産業会議アジア協力センター)は、情報センターとして機能するべきである。 |
(3) |
活動計画についてのさまざまな討議の中で、下記に示す新しい提案はPLによって作成され満場一致で合意された。
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(a) |
FNCA参加国のホームページは、施設や組織の名称・概要、現状のニュース、重要なイベントのスケジュールおよびリンクなどのレイアウトや内容に関して、標準化された形式にする。 |
(b) |
施設や組織の名称・概要には、主に各国における原子力や放射線に関係した施設・組織名称、所在地、連絡先電話やFAX番号、電子メールアドレス、ウエッブサイトのURLの他に、可能であれば組織の沿革や背景が含まれるべきである。これらの情報は、各国が提供し、FNCA事務局(原産会議)に送付する。 |
(c) |
インドネシアのPLは、日本の文部科学省が運用している「ATOMICA」が、原子力エネルギーと放射線利用に関して、非常に役立つ情報源であることを述べた。英語を話す全てのユーザーに対して、「ATOMICA」が利用できるように、英語への翻訳の提案があった。 |
(d) |
いつでも自由に書込むことができるようなFNCAのブローグが、多方向で共時的な電子コミュニケーションの便利なツールとしての役割を果たすとの提案がなされた。新しいブローグによる方法を使うと、非常時におけるメッセージの発信や迅速な質疑応答の情報共有が可能である。
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2006年度
タイ・バンコクで開催された2004年度FNCA原子力広報プロジェクト・リーダー会合において、PL会合はインドネシアで2006年度に開催されることが決まった。
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2007年度
2004年度および2005年度のPL会合において、2006年度のPL会合はオーストラリアが主催すべきであるとの提案がなされた。オーストラリアが2007年度のPL会合の開催を受け入れるかどうかについて、FNCA事務局が早急に確認することになった。
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最終的に、次期3ヵ年活動計画について討議したセッションにおいて、タイPL会合前に満場一致で合意された「エネルギーと環境」合同アンケート調査の実施提案に関しての質問があった。日本のPLは、「残念ながら、提案された次期3ヵ年計画における合同アンケート調査の実施は、文部科学省の優先順位が低い」と回答した。しかしながら日本のPLは、前回実施した合同アンケート調査の結果が、2005年の春に東京で開催された第6回FNCAコーディネーター会合で各国の関心が非常に高かったことを述べた。
セッション3:各国でのRI・放射線利用分野を共通の広報テーマとした活動の推進
モハマッド・ロスリ・ムダ(マレーシア)、ダン・チー・ホン氏(ベトナム)の共同議長
ラジオアイソトープおよび放射線利用は、私たちの日常生活の中で重要な技術にもかかわらず、多くの点で誤解されている。この状況は、私たちの原子力広報プログラムにおいて、より多くの専門的な活動への挑戦である。この点で以下に記述するPI活動は会合参加者から推奨された。
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(1) |
高校や大学における上映会プログラム/ 原子力を知るセミナー。これらの活動は、放射線、放射線安全、放射線利用の講演、実際に計測器を用いた放射線測定の仕方のデモンストレーションを含むミニ展示会の企画である。フィードバックのメカニズム(アンケート調査の利用を通じて)も、また、プログラムの1つである。 |
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(2) |
ラジオアイソトープおよび放射線利用を促進するための広告企業を雇い入れることで、タイの原子力広報活動はかなり機能アップを果たした。 |
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(3) |
移動展示会もまた、放射線利用を促進する効果的な方法である。 |
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(4) |
出版物メディアやラジオを通じての原子力科学クイズ大会の開催は、放射線利用の興味を引き付けさせる。 |
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(5) |
原子力広報の推進活動を支援するために専門のグループが組織された。例えば日本では、「スイートポテト、シュガー アンド アップル」とよばれる構成員10名の女性グループが、高校生などに日本での放射線技術と原子力エネルギー開発についての教育を手伝う。マレーシアでは、3つの専門家グループがメンバー間における情報交換のために組織化された。これらのグループは原子炉の営利団体(RIG)、花の営利団体(FIG)と生体機能材料の営利団体(BIG)である。 |
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(6) |
実際の製品もしくはサンプルの提供は、放射線技術によって提供された例で、インドネシアでは、放射線で品種改良された米の新種のサンプルを農家に提供したり、腎臓診断のためのレノグラフの使用を一般市民に示すことは、放射線技術の受容を促進するのに大いに役立つ。地元のアーティスト達による伝統的芸能もまた、一般市民への放射線技術の有益性についての説明に役に立つ。 |
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(7) |
校内ニュースの内容を含んだ学生のためのセミナー開催は、原子力情報を若者に広めるよい習慣となっている。 |
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(8) |
「学生プログラム」の採用は、社会の中に原子力技術の関心を引き起こす効果的なテクニックであることを証明する。例えば、マレーシアは過去の数年間に、原子力科学の活動や生活の場を生徒に提供するようなプログラムを実施していた。 |
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(9) |
JNC(核燃料サイクル開発機構)、JAERI(日本原子力研究所)や原子力発電所への施設訪問は、原子力技術の有益な利用について、社会科学系の大学生のようなさまざまなグループへの効果的な教育方法の1つである。また、展示会もまた学生と一緒に来る親達への教育の機会を提供する。 |
ビデオドキュメンタリーの作製は、原子力技術に関する一般市民の知識を向上させるためにかなり役立っている。例として、ウラニウムの採鉱に関するビデオ・ドキュメント。
セッション4:FNCAウエッブサイト・ニュースレターを用いた効果的な広報活動の検討
アディワルドヨ(インドネシア)、ビジャヤ・ラジャタティボディ氏(タイ)の共同議長
FNCAウエッブサイトとニュースレターによる広報は、できるだけ多くの人に情報が伝わる非常に役に立つ有効なツールであることが証明された。FNCAのウエッブサイトとニュースレターの主な有効性と継続のために、本PL会合は参加国と事務局によって検討されるべき提案を強調した:
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(1) |
FNCAウエッブサイトとニュースレターの利用のための運用の継続 |
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(2) |
タイムリーな情報の更新 |
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(3) |
理解しやすく興味のある情報の提供 |
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(4) |
参加各国によるウエッブサイト管理スタッフの選任 |
ウエッブサイトのために考えられる特定項目は以下のとおり: |
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(1) |
FNCA参加国の原子力や放射線に関する施設・組織の概要のウエッブサイト上の紹介 |
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(2) |
FNCAウエッブサイトの内容 |
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a) |
メインメニュー:施設の紹介と概要 |
b) |
特定メニュー:ニュース、公開情報、他施設のリンクと追加項目 |
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FNCAニュースレターの発刊 |
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(1) |
FNCAに関する便利な情報の提供。FNCAニュースレターは、FNCA参加国と提携してFNCA事務局によって準備され、参加各国に配付される。 |
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(2) |
FNCA事務局は、ウエッブサイト中にPDFフォーマット形式でFNCAニュースレターの掲載を継続する |
セッション5:原子力情報を効果的に発信するコミュニケート方策の検討
チェン・ガン(中国)、ロドラ・レオーニン氏(フィリピン)の共同議長
FNCA各国の参加者からは、マスメディアとのコミュニケーションにおける経験を共有した。以下のコメントと提案がプロジェクト・リーダーによってあげられた。
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(1) |
「公正」、「正直」および「親善」の原則を尊重して、マス・メディアとのコミュニケーションは、よく準備された資料と良好な対応により、好意的に誠実な方法で行われるべきである。 |
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(2) |
実務者レベルと上級メディア職員の双方とのよい個人的関係を維持することは、メディアとの関係を促進させる。よい第一印象は、メディアとの良好な関係を築くことができる。これは最初に、マス・メディア職員との最初のコンタクトに対処するためにとくに重要である。携帯電話への直接のアクセスは、メディアとのコミュニケーションにおいて、よい方法である。プレスクラブ、酒場、ニュースルーム、あるいは何らかの形式で、メディアとの定期的で常習的な集まりや会合は、メディアとの相互リンクを促進する。メディアとのよい関係を最大限に生かし、促進するよう努力すべき。いかなる場合でも、メディアの職員を敵にしてはいけない。 |
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(3) |
メディアによるニュースおよび報告の締め切りから考慮して、賞賛もしくは事故のニュースであるか、タイムリーなニュースなのかを適宜判断して対応する。ニュースの原稿あるいは記事の草稿を見直すこと、メディアからの原稿のフィードバックを実施することによって、メディアによる報告の公正さおよび正直さについて改善を施すことができる。 |
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(4) |
積極的でタイムリーなマス・メディアへの応答や問合せ、あるいは電話連絡は、マス・メディアとの効果的な接触のために重要である。マス・メディアによる重要案件の発刊あるいは報道を確認するためには、メディアの幹部レベルとの接触が必要である。マス・メディアと共に働く広報関連の新しいスタッフは、そのための訓練あるいは教育が必要である。 |
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(5) |
原子力施設の事故のニュースが流れると、うわさは国境を越えて一方的に流れる。事故に関する更新情報や関連情報のマス・メディアへの連絡は、一般市民のうわさや心配を取り払う効果的な方法である。事故あるいは非常事態の場合、1つの情報が1人の報道者によって、情報が解釈され強調される。 |
最後に、2005年FNCAプロジェクト・リーダー会合のすべての参加者は、日本の文部科学省(MEXT)および日本原子力産業会議(JAIF)に対し、この会合の開催のために行った協力と援助に謝意を表わした。
この議事録は会合の参加者全員の合意を得たものであり、2006年3月に日本・東京で開催される第7回FNCAコーディネーター会合に報告される。
以上
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