FNCA2007原子力広報 プロジェクト・リーダー会合
議事録(仮訳)
2007年11月26日〜30日、マレーシア クアラルンプール
2007 FNCA 原子力広報プロジェクトリーダー会合(PLM:Project Leaders Meeting)は、2007年11月26日〜30日、マレーシアのクアラルンプールで開催された。 今回のPLMは、マレーシア政府による2007年国家革新会議及び展示会(NICE:the National Innovation, Conference and Exhibition 2007)に合わせて開催された。
マレーシアの科学技術革新省(MOSTI:the Ministry of Science, Technology and Innovation)、マレーシア原子力局(the Malaysian Nuclear Agency (Nuclear Malaysia))、日本の文部科学省(MEXT)により、日本の原子力安全研究協会(NSRA)と国際原子力機関(IAEA)の協力の下に開催された。
セッション1:オープニング
(議長:M.Rosli Muda)
本会議は、2007年11月26日、クアラルンプールのセリ・パシフィックホテルで開催され、オープニングセッションで、マレーシアのコーディネーターでありマレーシアの原子力局(Nuclear Malaysia)のシニアディレクターであるアドナン・ハリド氏が歓迎の挨拶をした。アドナン氏は、その挨拶の中で、マレーシアではエネルギーが必要であり、また、一般公衆が技術を受け入れること(パブリック・アクセプタンス)は、原子力の促進において重要であることをよく認識していると述べた。FNCA 日本コーディネーターである町末男博士(文部科学省参与)により公式にPLMが開催された。町氏は、原子力エネルギー (すなわち、原子力安全、放射性廃棄物管理、エネルギー供給およびエネルギーセキュリティ)に関する正確な情報は、原子力のパブリック・アクセプタンスを促進するために必要であることを強調した。
セッション2:カントリーレポート及びIAEAレポート
(議長M.Rosli Muda、副議長 久保稔)
オープニングセッションに続いて、FNCA原子力広報の各プロジェクトリーダー(バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、および韓国の代表)から各国のカントリーレポートが発表された。カントリーレポートでは、FNCA加盟国における広報関連の活動(展示会、セミナー、講演、会合、特別なイベントなど)および最新の情報等が紹介された。また、町氏からFNCAプロジェクトの業績と現在の活動状況、2006年11月にマレーシアのクワンタンで開催された第7回大臣級会合の内容について紹介があった。続いて、IAEAの 2人の代表、E. ドビー・サーサム、および金子氏からIAEA広報部の役割について説明があり、 IAEAの50回目の記念日のビデオの映写があった。その後、日本の広報プロジェクトのプロジェクトリーダーである久保稔氏が、FNCAの原子力広報活動に関する報告を行った。
5日間にわたる原子力広報のプロジェクトリーダー会合(PI PLM)には、9つの国の原子力広報プロジェクトリーダーおよび広報担当者15人が出席した。PI PLMの海外の関係者のリストと最終プログラムは、本議事録のAttachment1とAttachment2として添付する。
同日(11月26日)の午前8時15分に、マレーシアの"Hello on 2"というテレビ番組で、町氏のライブインタビューがあった。テーマは、エネルギーセキュリティおよび地球的気候変動に関する原子力の重要な貢献であった。
11月26日の晩にクアラルンプールのSaloma Bistroにおいて、ニュークリア・マレーシアの主催のレセプションが開催された。
セッション3:カントリーレポート及びIAEAレポート
11月27日〜28日に、原子力広報活動に関わる者のための課題と挑戦に関する公開ワークショップが、IAEAとMEXTによりクアラルンプールのセリ・パシフィックホテルで開催された。当ワークショップには、合計28人(原子力広報の各国のプロジェクトリーダー、PLM出席者、および地元からの出席者)が参加した。しかしながら、プロジェクトリーダーたちが出席し、広報に関する効果的なプレゼンテーションの実際的な訓練に参加したのは初日のセッションのみであった。講師と参加者の名前はAttachment3の通りである。
セッション4:FNCA広報プロジェクトのレビュー
(議長:R. レオニン, 副議長:G.シンピン)
11月28日に、FNCA事務局の佐藤氏から、FNCAの原子力広報プロジェクトに関する3年計画(2005年度〜2007年度)の説明があった。その内容は、次の通り。
1) |
FNCAのウェブサイトの内容をアップグレード/改良し、新しい情報を提供すること。 |
2) |
地域スピーカーズ・ビューロー(RSB: Regional Speakers Bureau)のシステムを利用し、専門家/講師を派遣することにより、FNCA加盟国の広報活動を支持すること |
3) |
有効な原子力公開情報活動のための手法に関する考察と実施(例えば、各国の必要性と対象者を考慮した公開情報活動計画の準備と実施) |
4) |
東京(日本)で開催予定のコーディネーター会合について |
5) |
原子力広報プロジェクトの評価について |
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カントリーレポート |
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アジアの原子力広報施設(展示館やビジターセンター)のウェブサイト上での紹介 |
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原子力情報に関連するDVD/ビデオや印刷物についての情報交換 |
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原子力広報に関するFNCAネットワークの継続 |
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マスメディアへの対応(マスメディアを通じた情報提供活動) |
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11月28日午後、セッション5の前に、ニュークリア・マレーシアのモハマド・ダウド長官が、原子力広報に携わる者は原子力技術を一般公衆に伝えるという重要な任務を持っているとして、原子力広報の各国PLを歓迎した。長官は、歓迎の挨拶の中で、マレーシア政府が原子力の推進に確信を持てるように、特に原子力エネルギーの分野においては原子力広報の戦略は共有されるべきであると述べた。
セッション5:FNCA加盟国のDVD/ビデオとポスター/パンフレットあるいは印刷物のレビュー
(議長:久保氏、副議長:K.Nukulkij)
FNCA加盟国のDVDや印刷物についての評価と情報共有化の試みがはじめて行われた。各国の広報プロジェクトリーダーは、紹介されたDVDや印刷物に対してコメントや提案を出し合った。各国のDVDや印刷物はそれぞれユニークであり特徴を持つものであるため、2006年のジャカルタで開催された原子力広報のPLMにおいて提案されたランキング付けは行わなかった。しかしながら、それは加盟国間での貴重な情報交換であるので、こうした広報素材に関する情報の共有化は続けられるべきであるとした。これに関連してマレーシアは、各プロジェクトリーダーに対して『原子物科学と技術』と題する本、および町氏のテレビ番組"Hello on 2"のインタビューのDVDを提供した。
11月28日に、すべての広報プロジェクトリーダーはマレーシア科学技術革新省の大臣により開催されたInnovation Gala Dinnerに招待された。町氏は、特別ゲスト(VVIP)として大臣によって招待された。
11月29日には、クアラルンプールのプトラ国際貿易センターのLabuan ルームにおいて、原子力エネルギーに関する一般公開フォーラムが開催された。ニュークリア・マレーシアの次長(研究技術部)兼マレーシア原子力学会(MNS)会長を務めるN.ケール氏がこのフォーラムの委員長として公式にフォーラムの開催を宣言した。このセミナーのトピックと講師は以下の通りである。
(1) |
アジアにおけるエネルギー需給 − 現状と将来展望:原子力エネルギーの果たす役割
町末男氏
FNCA日本コーディネータ、元原子力委員会委員 |
(2) |
IAEAの活動
金子氏(IAEA)
IAEA広報部広報専門官 |
(3) |
日本の原子力の現状と将来計画(PA問題に焦点を絞って)
久保稔(JAEA)
日本原子力研究開発機構広報部部長 |
(4) |
韓国の原子力の現状と将来計画(地方自治体によるPA活動に焦点を絞って)
Myung Ro Kim氏(KAERI)
韓国原子力研究所上級研究員 |
(5) |
中国における原子力エネルギーの平和利用とパブリック・アクセプタンス
Gu Xin (CAEA)
中国国家原子能機構副部長 |
このフォーラムには、政府関係者、民間企業からの代表、学会、NGO、およびメディアなど約102人が出席した。講演の後、講師と出席者との非常に有用な情報交換と質疑応答セッションがあった。示されたコメントや質問は次の通りである。
(1) |
私たちはどのように原子力を一般公衆に説明していけばよいか |
(2) |
これまでにどのような調査が行われ、それはどのような結果だったか(もし行われた場合) |
(3) |
マレーシアに原子力は必要か |
(4) |
原子力は、本当に二酸化炭素排出を抑えることができるか。原子力発電の必要性を人々に納得させる議論として二酸化炭素の排出/地球温暖化は良い議論ではないのではないか |
(5) |
原子力発電所は、政府が所有すべきかそれとも民間か |
(6) |
原子力発電所を建築する最初のASEAN国はどこか |
(7) |
日本の原子力エネルギーの今後の方向は |
11月29日の午後に、原子力広報のプロジェクトリーダー会合の参加者は、ニュークリア・マレーシアの施設である電子加速器センター(Alutron)、ポリマー工場および様々な製品の多目的の照射が実施されているSINAGAMAへのテクニカルツアーに参加した。
11月30日の午前(11:30)に、すべての原子力広報のプロジェクトリーダーPI PL(町氏を含む)は、マレーシアのRight総理大臣によるNICE2007の閉会式に招待された。
今後の予定
- 中国が来年の原子力広報のPLMのホスト国になることについて、2008年3月のFNCA コーディネーター会合において、中国政府の了承を得ることとする。中国は、国家原子能機構(CAEA:China Atomic Energy Agency)がホスト組織になり原子力広報のPLMを開催する国としての優先国である。
- 次回の原子力広報のPLMは、原子力発電のパブリック・アクセプタンスを中心テーマとする。議論のための考えられるテーマは、次のようである:原子力発電所が建設される予定の地方社会へのアプローチの戦略、メディアへのアプローチと意見交換、一般公衆の信頼の獲得。
- 2008年には世論調査を実施したい。特に原子力発電の導入を考えている国で実施されるとよい。FNCA参加国の世論調査の結果は、来年、原子力広報プロジェクトで共有されるとよい。
- 通常の刊行物や情報材料の共有は、このアジアの原子力協力ネットワークを通じ、継続的に実施する。重要な情報は、英語に翻訳することにより各国に普及することが可能となる。
- 原子力エネルギーの広報の戦略に関する国際会議/セミナー/シンポジウムをIAEAが開催するよう、FNCAからIAEAに依頼することが提案された。しかしながら、IAEA広報部に要望書を提出する前に、まずは、IAEAが公開情報に関する会議やシンポジウムを開催する計画があるかどうかを確認することとする。IAEAが広報に関するセミナー開催することについては、2007年12月に開催される大臣級会合において提案できる。
- FNCAは、IAEAに対する要求として、IAEAのウェブサイト(www.iaea.org)に教師と学生のための教育資料と共に原子力科学と技術に関する基礎的な事項やを掲載するよう要求することが提案された。しかしながら、そのような要求をする前に、先ずはIAEAウェブサイトにそのような教育的内容が掲載されていないことを確認することとする。
その他
- 地域スピーカーズ・ビューロー(RSB: Regional Speakers Bureau)を通じた講師派遣の要求は、予定する会議の少なくとも2か月前にFNCA事務局に提出することとする。日本以外の国の専門家も、広報セミナーに招くことができる。
- 中国、日本、および韓国のような原子力発電の経験を持つ国の情報は、FNCAウェブサイトを通じて他のFNCA国と共有できるとよい。町氏の原子力発電に関するプレゼンテーションは、FNCA事務局を通じてFNCAウェブサイトに掲載することができる。
- 公開情報のトレーニングコースは、継続されるとよい。 JAEAは、ANTEPプログラムの下において、原子力広報に携わる者のための前記のトレーニングコースを実施することをMEXTに提案することができる。ANTEPの下の広報トレーニングコースについて、訓練分野の特別な提案は、訓練を受ける者の名前を添えて要望国のFNCA人材養成プロジェクトのリーダーに提出しFNCAコーディネーターにより了承されることとするとよい。
最後に町氏が、この会合が成功裡に開催されたことについて、2007年の原子力広報のプロジェクトリーダー会合の参加者のために、マレーシアの科学技術革新省(MOSTI)、マレーシア原子力局(ニュークリア・マレーシア)、日本の文部科学省(MEXT)、原子力安全研究協会(NSRA)および国際原子力機関(IAEA)に対してお礼を述べた。
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