FNCA2010原子力広報プロジェクトリーダー会合
議事録
2011年2月21日〜25日、ベトナム・ハノイ
2010年度FNCA原子力広報プロジェクトリーダー会合(PLM)は、ベトナム原子力研究所(VAEI)及び日本の文部科学省による共催、原子力安全研究協会及び国際原子力機関(IAEA)による協力の下、2011年2月21日〜25日にベトナムのハノイにおいて開催された。
PLMには8ヵ国及びIAEAより計16名(中国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイよりプロジェクトリーダー各1名、ベトナムよりプロジェクトリーダーを含む2名、日本よりプロジェクトリーダーを含む4名、及び韓国よりオブザーバー3名、IAEAよりオブザーバー2名)が参加した(バングラデシュプロジェクトリーダーは不参加)。
セッション1: 開会セッション
(議長:久保稔氏、Ms. DANG Thi Hong)
2月21日午前、サイゴンホテル会場における開会セッションにおいて、VAEI副所長Mr. LE Van Hongが開会挨拶を行い、FNCAの枠組みの下、原子力に対するパブリックアクセプタンスを獲得するための協力は非常に重要であるため、長期的な取り組みが実施されるべきであると述べた。さらに、ベトナムへの原子力発電導入に向けて、パブリックアクセプタンスは成否を決める主な要因となり得るとも述べた。
続いてFNCA日本コーディネーターの町末男氏が、地球温暖化対策における原子力発電の必要性について、国民の理解及び信頼を得ることの重要性について述べた。またIAEAの前岡氏も同様に挨拶を行い、ステークホルダーの原子力に対する理解を得る上で、IAEAが果たし得る役割について言及した。
セッション2: FNCA活動報告
(議長: 久保稔氏、Ms. Rhodora LEONIN)
セッション2において、町コーディネーターにより、FNCAの11プロジェクト、「原子力発電のための基盤整備に向けた取組に関する検討パネル」、また2010年11月18日に中国・北京において開催された第11回大臣級会合の成果に関する報告が行われた。また町コーディネーターは、3プロジェクト(医療用PET・サイクロトロン、原子力広報、研究炉基盤技術)が2010年度を以て終了し、2プロジェクト(核セキュリティ・保障措置、研究炉ネットワーク)が2011年以降新設される予定である旨報告した。
セッション3: 原子力広報活動の現状
(議長: Ms. Rhodora LEONIN)
日本プロジェクトリーダーの久保稔氏より、プロジェクトリーダー間のネットワーク、メディアとのコミュニケーション、地域スピーカーズビューロー(RSB)、IAEAによる原子力コミュニケーター訓練、FNCA公開講座、FNCAニュースレター発行及びウェブサイト運営など、原子力広報プロジェクトの活動状況と成果について報告を行った。
セッション4: カントリーレポート
(議長: Ms. M. Razali、Mr. S. Boonpotipukdee)
2月21日午後、中国、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの各国プロジェクトリーダーより、以下のトピックスに関するカントリーレポートが発表された。
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原子力発電(導入計画)及び放射線利用活動の現状 |
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原子力広報活動の現状 |
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原子力広報活動の将来計画 |
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FNCA活動により得られた成果及び利益 |
またオブザーバーの韓国参加者も、所属する韓国原子力推進機構について紹介を行った。
セッション5: 原子力に関する世論調査結果報告
(議長: Ms. Rhodora LEONIN、Mr. Saharath BOONPOTIPUKDEE)
2月22日午前、2010年に参加各国で、高校生及び大学生を対象に実施された原子力に関する世論調査について、プロジェクトリーダーが個々に報告を行った。
セッション6: 世論調査結果分析
(議長: 久保稔氏、Ms. Rhodora LEONIN)
2月22日午後のセッション6において、世論調査結果の分析報告書のドラフト作成を行った。ドラフトはPLM終了後、加筆・修正のため参加者間で回覧され、最終版報告書としてまとめられる予定である。
セッション7: プロジェクト3年評価
(議長: Mr Totti Tjiptosumirat)
2008年から2010年までの3年間のプロジェクト活動について、3年評価が行われた。
FNCAの広報プロジェクトはすべての参加国に、広報活動の向上という面で、多大な利益を与えてきたということは、PLMで頻繁に言及されてきた。加えて、プロジェクトリーダーによる3年評価には、広報プロジェクトによってもたらされた利益が明確に述べられている。多くの国が原子力発電計画に着手している現在、広報プログラムの重要性は歴然としている。そのため、広報プロジェクトリーダーは、原子力発電導入計画、また国民の安全保障、核兵器不拡散、廃棄物管理等、原子力に関する懸念事項に対応するため、FNCA原子力広報プロジェクトを継続的に実施することを強く提言した。広報プロジェクトはまた、参加国間のネットワーク維持、原子力政策及び情報公開・教育・コミュニケーション計画策定等にも必須である。広報プロジェクトの継続により、2009年PLM(マニラ)で提案された以下の活動を実施する機会が得られるであろう。
(1) |
高校・大学における原子力に関する世論調査の継続実施 |
(2) |
高校における物理等科学のカリキュラム及び教科書の再検討(各国の教科書の内容を比較し、後に掲載するべき新しい内容を検討する。この活動案は、コーディネーター会合において「高校教科書の国際的比較」として提案されるべきである) |
(3) |
Facebook, Twitter、ブログ等を含むSNS(ソーシャルネットワークシステム)による、効果的な情報普及戦略の検討 |
セッション 7: 公開セミナー
(司会: 町コーディネーター)
2月23日午前、原子力に関する公開セミナーがVAEIの原子力訓練センターにおいて開催された。VAEI副所長Dr. LE Van Hong及び町コーディネーターが開会挨拶を行った。
講演タイトル及び講演者は以下の通りである。
(1) |
「原子力の世界的傾向及びIAEAの役割」
Ms. Brenda Pagannone IAEAジュニアプロフェッサー
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(2) |
「ベトナムにおける原子力発電導入計画」
Ms. Nguyen Thi Van Ly
ベトナム電力公社(EVN)原子力・再生可能エネルギープロジェクト先行投資委員会
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(3) |
「持続的発展・繁栄のための原子力」
町末男FNCAコーディネーター
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(4) |
「ベトナムにおける持続的発展・繁栄のための放射線利用」
Dr. Cao Dinh Thanh VAEI研究開発管理・企画部長
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(5) |
「ベトナムにおける放射性同位体及び放射線の健康利用」
Dr. Phan Sy An ベトナム医療物理学会理事兼放射線・ベトナム核医学協会副理事
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公開セミナーにはFNCA原子力広報プロジェクトリーダーを始め、大学関係者、VAEI及びVARANS(ベトナム放射線・原子力安全局)職員、新聞・テレビ局等マスコミ関係者を含め、約100名が参加した。
セッション 8: 原子力広報活動の有効性に関するIAEA/FNCA 合同ワークショップ
初めにIAEAのMs. Brenda Pagannoneが「原子力に対するより良い理解を得るための広報戦略」と題したプレゼンテーションを行った。次にIAEAの前岡氏が「ステークホルダーとの関係における戦略」について、また久保稔氏が「過去10年のFNCA広報プロジェクトの経験及び効果的な広報活動」について、それぞれプレゼンテーションを行った。さらに横手光洋氏が、「高校生及び大学生を対象とした世論調査(2010年)ハイライト及び広報戦略」と題したプレゼンテーションを発表した。それに続き、パブリックアクセプタンス獲得及び広報活動向上のために、以下のトピックスについて円卓討議が行われた。
1. |
原子力発電所建設に対する懸念の原因 |
2. |
コミュニケーションの稚拙さの問題 |
3. |
学校教育(特に高校)における原子力(発電)に関するカリキュラムの欠如 |
4. |
公衆との意思疎通におけるマスメディアの重要性(メディアの使い方) |
5. |
原子力に関する懸念事項(安全保障、廃棄物管理、使用済燃料管理、核兵器不拡散等)への適切な対処 |
6. |
気候変動緩和とエネルギーセキュリティにおける原子力発電の重要な役割に対する理解促進 |
セッション8にはPLM参加者及びVAEI、VARANSの職員が参加した。
セッション 9: テクニカルツアー
2月24日、PLM参加者は以下の施設へのテクニカルツアーに参加した。
(1) |
中央軍病院(サイバーナイフセンター、PET・サイクロトロンセンター) |
(2) |
ベトナム原子力研究所原子力科学技術研究所 (環境放射線防護センター、加速器センター) |
セッション 10: 広報用DVD、ポスター、パンフレットに関する情報交換
(議長 Mr. S. BOONPOTIPUKDEE)
2月25日、各国プロジェクトリーダーにより、原子力広報・教育素材として作成されているDVD、パンフレット、ポスター等を紹介するプレゼンテーションを行った。このような情報交換の取り組みは、参加各国における情報普及活動の参考として、極めて有効であるので、今後も継続するべきである。
その他: マスコミ報道
町コーディネーターは複数のマスメディア(VTV-1、INFO-TV、VOV(以上テレビ局)、その他新聞各社)よりインタビューを受けた。
町コーディネーターによるコメント
PLM最終日、町コーディネーターが以下の通り、FNCA参加国の将来的な広報活動の方向性に関するコメント及び提案を発表した。
1. |
FNCA参加国において原子力広報は、最も重要であり、原子力発電導入に対するパブリックアクセプタンスを得るためには、効果的な戦略・行動計画を策定することが必須である。 |
2. |
FNCA原子力広報プロジェクトが過去10年において取り組んできた、効果的な広報活動に関する経験・情報の交換は、参加国にとり有益であった。 |
3. |
各国が広報活動の企画及び実行において、交換された経験及び情報を利用している例は、必ずしも顕著ではない。 |
4. |
各国はコミュニケーション/広報戦略を策定する際、自国の国家原子力政策、特定のニーズ、文化及び教育システム等をよく考慮し、合致させなければならない。 |
5. |
パブリックアクセプタンス獲得のための国家的なコミュニケーション戦略は、ステークホルダー、関連省庁(エネルギー省、科学技術・教育関係省)の協力及び完全な参加の下、確立されなければならない。 |
6. |
原子力広報プロジェクトリーダーは、FNCA活動によって共有された経験・情報を有効利用し、上級管理者の協力を得た上で、国家的なコミュニケーション戦略を策定するチームを先導しなくてはならない。 |
7. |
原子力に関する世論調査によると、高校生・大学生は地球温暖化を最も懸念しており、太陽光発電がコスト及びCO2排出ゼロの観点から地球温暖化対策に最も有効であると認識している。そのため原子力がコスト及び実行可能性の点から、地球温暖化対策に最も有効な発電方法であることを、広報活動によって強調しなければならない。 |
8. |
テレビ・新聞は一般公衆にとって最もアクセスしやすいメディアであるため、メディアへの働き掛けが最も重要であり、さらに強化されなければならない。各国でメディアへの働き掛けに関する適切な戦略の策定が求められる。 |
9. |
一般公衆との対話の促進は、よりよいコミュニケーションに有効である。一般公衆と原子力の専門家/行政官との対話のテレビ番組等が制作されるべきである。 |
10. |
一般公衆の原子力に関する懸念事項は、主に安全、核拡散及び使用済燃料/廃棄物処理である。これらに関する質問が出た際に、適切に回答出来るよう入念に準備しなくてはならない。 |
11. |
より良いコミュニケーションのために、情報の透明性は必須条件である。 |
12. |
一般公衆による原子力業界への信頼は欠くことのできないものである。信頼関係は、情報の透明性、技術的・科学的根拠を示すことによって築かれる。 |
閉会セッション
PLMは町コーディネーターによって正式に閉会された。閉会挨拶において町コーディネーターはFNCAを代表し、VAEIの素晴らしい貢献によりPLMが成功裏に終了したことに対し、謝辞を述べた。またFNCA各国が、これまでの20年FNCA活動によって共有された経験・情報を最大限に生かして、自国の原子力広報活動計画を策定することを希望する旨述べた。またステークホルダーとのコミュニケーションを向上させるためにIAEAが行っているEPPUNE (Expanded Programme of Pubic Understanding on Nuclear Energy)活動、及び原子力発電を導入する国においてIAEAと協力し、広報活動推進の支援を行う韓国のKONEPAの活動について認識し、エネルギーセキュリティ及びCO2排出削減・気候変動対策における原子力の重要性について強調した。さらにすべての参加国が今後もコミュニケーションを取り情報・経験の交換を継続し、数年の内に共通の目標を達成することを望む旨述べた。またMs. Dang Thi Hong、Mr. Bui Dang Hanh、Ms. Nguyen Thi Yen Ninh、Mr. Le Van Hong、Mr. Vu Dang Ninh及びすべてのスタッフによる会合のアレンジと歓待に謝意を表した。
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