FNCA2009原子力広報プロジェクトリーダー会合
議事録
2009年12月7日〜11日、フィリピン・マニラ
2009年度FNCA原子力広報プロジェクトリーダー会合(PLM)は、2009年12月7日〜11日、フィリピン原子力研究所(PNRI)、フィリピン科学技術省(DOST)及び日本の文部科学省の共催、財団法人原子力安全研究協会の協力の下、フィリピン・マニラのThe Crowne Galleria Plazaにて開催された。(「フィリピン原子力研究所37周年記念原子力週間」と同時開催。)
バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、タイ及びベトナムから各1名のプロジェクトリーダーが、また韓国から1名のオブザーバーが出席した。
原子力週間オープニングセレモニーへの参加
12月7日午前、参加者はPNRIにおいて開催された第37回原子力週間のオープニングセレモニーに出席した。DOST次官Fortunato T. DELA PENA教授およびPNRI上級スタッフにより、町コーディネーター及び原子力広報のプロジェクトリーダーのセレモニー参加に感謝の意が述べられた。
参加者は、原子力週間展示会開催のリボンカットセレモニーにも出席した。この展示会には、インドネシアのプロジェクトリーダーを通じ、インドネシア原子力庁(BATAN)より、原子力技術の応用に関する4つのポスターが提供された。原子力週間に行うクイズに参加する学生や職員に贈呈するために、BATANおよび日本原子力研究開発機構(JAEA)から様々なノベルティなどの広報素材・照射製品がPNRIに提供された。
7日朝9時〜10時、オープニングセレモニーへの参加に先立ち、PNRIのプロジェクトや原子力、FNCA活動について取り上げた、国営放送ネットワークのテレビ番組「モバイルアクションにおける国民政府(People’s Government in Mobile Action)」に、町コーディネーターとPNRIの上級スタッフのEulinia M. VALDEZCO氏が出演した。
セッション1 開会セッション
開会セッションは7日の午後、The Crowne Galleria Plazaにおいて開催され、PNRIの原子力規制・許認可・保障措置部長であるEulinia M. VALDEZCO氏が、PNRI所長Alumanda M. DELA ROSA氏に代わって歓迎の挨拶を述べ、原子力計画を開始しようとしている各国にとっては特に広報活動が重要であることが強調された。また文部科学省を代表して田所隆司氏が開会挨拶を行い、原子力技術に関する正しい知識と情報を一般の人々に提供することの重要性、また地球温暖化の影響削減とエネルギーセキュリティの確保において、原子力が持つ役割の重要性について述べた。
セッション2 FNCA成果報告
(議長: R. R. Leonin氏 久保稔氏)
開会セッションに続いて町コーディネーターから、2009年のFNCA活動計画と進捗状況について報告があり、2008年11月にフィリピン・マニラで開催された第9回大臣級会合、2009年3月に東京で開催された第10回FNCAコーディネーター会合、またFNCAプロジェクトの計画と成果について紹介が行われた。
セッション3 原子力広報活動の現状
(議長:D. T. Hong氏 A. S. Mollah氏)
日本プロジェクトリーダーの久保稔氏から、原子力広報活動の現状総括として、アジア原子力協力ネットワーク、メディアとのコミュニケーション、地域スピーカーズビューロー、原子力コミュニケーションの訓練、FNCA シンポジウム/公開セミナー等の成果およびFNCAネットワークとウェブサイトの活用に関して紹介があった。
セッション4 カントリーレポート
(議長:S. Boonpotipukdee氏 M Razali氏、Sun Yang氏 Syahril氏)
12月7日午後にバングラデシュと中国、8日午前にはインドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、タイ及びベトナムのプロジェクトリーダーよりカントリーレポートの発表があった。
カントリーレポートのトピックスは、以下の通りであった。
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原子力発電及び放射線利用の現状 |
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原子力に関する広報活動 |
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広報活動の将来計画 |
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FNCA活動の成果によって得られた利益 |
また、韓国の出席者から、韓国における原子力平和利用計画と原子力広報活動について報告が行われた。
セッション5 予備的世論調査の結果
(議長: Sun Yang氏 D. T. Hong氏、Syahril氏、A. S. Mollah氏)
12月8日午後には、各国プロジェクトリーダーから2009年度実施された予備的世論調査に関しそれぞれ結果報告があり、続いて質問票の妥当性と調査手法について議論を行った。
8日夕刻に、PNRI主催の歓迎夕食会がマニラ・イントラムロスのBarbara’s Restaurantにおいて開催された。
セッション6 原子力広報に関する公開セミナー
セミナー総括およびモデレーター:Angelo Palmones氏
(フィリピン科学ジャーナリスト協会会長)
12月9日午前、原子力広報に関する公開セミナーがPNRIにて開催された。PNRIの副所長であるCorazon C. BERNIDO氏から歓迎の挨拶があり、町コーディネーターから開会の挨拶が述べられた。両氏とも、一般公衆の原子力に対する理解を深めるには、広報活動が必要であることを強調した。
セミナーは、3つのパートから構成された。
パート1:テーマ「エネルギーセキュリティと気候変動緩和に向けた原子力の世界的動向」
講演タイトル及び講演者:
1. |
「持続可能な発展に向けた日本の原子力計画と世界的動向」
町末男:FNCA日本コーディネーター、前日本原子力委員会委員
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2. |
「フィリピンにおける原子力政策と計画」
Lilian FERNANDEZ氏:フィリピンエネルギー省次官
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3. |
「中国における原子力の急速な成長」
SUN Yang氏:中国国家原子能機構(CAEA)ニュースセンター副主任
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パート2:テーマ「原子力に対する理解促進のための広報活動」
講演タイトル及び講演者:
1. |
「日本における原子力のパブリックアクセプタンスと広報プログラム」
横手光洋氏:日本原子力文化振興財団専務理事・事務局長(JAERO)
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2. |
「マレーシアにおける原子力エネルギーとその利用に関する広報プログラム」
Myra Liyana RAZALI氏
マレーシア原子力庁コミュニケーション・広報部、出版部員
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3. |
「フィリピンにおける原子力に対する理解促進の重要性」
Lyn RESURRECCION氏:ビジネスミラー紙、科学編集員
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セミナーには、プロジェクトリーダーをはじめ、フィリピンのメディア、学会・政府関係者、NGO及びフィリピンの原子力関連組織やグループのメンバーなど約100名が参加した。
パート3:円卓討議(質疑応答)
参加者より、バターン原子力発電所など、フィリピンの原子力政策に関する質問や意見が寄せられた。NGOを含む数名の参加者より、環境防護・環境維持やエネルギーセキュリティなどの地域問題に、原子力技術をうまく適用させるために、NGOが関与できるような仕組みをFNCAの活動において作ってもらいたいとの意見があった。これらの質問や意見に対しては、Eulinia VALDEZCO氏、Lilian FERNANDEZ氏及び町コーディネーターが答えた。
セッション7 原子力広報活動向上に向けた方針と戦略
議長:R. R. Leonin氏
12月9日午後、久保氏による「人々のための人々の中の科学―広報活動の重要性」と題した講演が行われた。講演で言及されたトピックスは以下の通りである。
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日本原子力研究開発機構における原子力広報活動の概要 |
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メディアとの効果的なコミュニケーションの手段と方法 |
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地域の人々とのコミュニケーション |
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地域の産業とのコミュニケーション |
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科学者およびエンジニアによる奉仕活動 |
韓国のJohn Keuk Chung氏から「原子力広報プログラムに関する考察」と題し、次の内容に関する講演があった。
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反対派による原子力に関する議論 |
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原子力反対派のメッセージ |
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原子力界のメッセージ |
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広報がターゲットとするグループ |
このセッションには、FNCAのプロジェクトリーダーおよびフィリピンの原子力関連機関コアグループの広報相談チーム(the Public Information and Consultation Team of the Philippine Inter-Agency Core Group on Nuclear Energy)の9名が出席した。このチームのメンバーは、フィリピンエネルギー省、科学技術情報機構、電力会社およびPNRIのスタッフで構成される。
その後行われた円卓討議のモデレーターは、町コーディネーターが務めた。プロジェクトリーダーにより行われた議論の中でも重要な項目は以下の通りである。
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各国において、最も影響力があり、かつ信頼できるターゲット |
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これら影響力の大きいグループに対応する上での戦略 |
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原子力関連情報の提供における透明性 |
セッション8 本格的世論調査の実施について
議長:久保稔氏 Sun Yang氏
12月10日、横手氏から「本格的世論調査をどのように実施すべきか」と題するリードスピーチが発表された後、調査対象、調査人数、実施方法、実施時期、予算などについて、プロジェクトリーダーにより、議論が行われ、以下の項目が決定した。
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調査対象:高校生および大学生 |
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調査人数:(少なくとも)高校生300名及び大学生300名 |
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調査方法:ランダムサンプリング |
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調査時期:実施時期は各国の事情による。ただし、調査結果は次回2010年のPLMに提出する |
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予算:FNCAは、参加各国内で本格的調査を実施することを奨励する。しかしながら、FNCAはそれらの活動をサポートする可能性を探ることとする |
セッション9 原子力広報プロジェクトの将来計画(3年計画)
議長: D. T. Hong氏
本格的世論調査の議論の後、原安協の佐藤氏からFNCA原子力広報プロジェクトの将来計画(付録3)が紹介され、それに対し以下の提案が出された。
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高校生および大学生に対する本格的調査(調査対象・人数:高校生300人以上、大学生300人以上)を実施する |
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高校の物理カリキュラム及び教科書の記述を調査し、内容比較調査結果を、FNCAコーディネーター会合に提出する |
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原子力に関する情報を、インターネットのソーシャルネットワーク(フェイスブックやブログなど)を通じて普及させるなど、広報活動に関するさらに創造的な戦略を発展させる |
12月10日午後、プロジェクトリーダーは聖路加メディカルセンターを訪問し、核医学、放射線治療、PETサイクロトロンなどの施設を見学した。
セッション10 DVD/ビデオ及びポスター/パンフレットのレビュー
議長: D. T. Hong氏
12月11日、各国のプロジェクトリーダーはDVD/ビデオ及びポスター/パンフレットなどの広報素材、教材の紹介を行った。これらの材料を通じ、参加国の原子力情報の促進と普及のための非常に貴重なツールについて、情報交換を行うことが出来た。こうした活動は今後のPLMにおいても継続することとした。
セッション11 次回PLM開催国
議長: A. S. Mollah氏
2010年のPLMは、ベトナムが主催国となって開催することが提案された。その後の2011年はタイにおいて、2012年はバングラデシュにおいて開催することが提案された。
提言
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地域スピーカーズビューローの制度はこれまでに成功してきたことを確認しており、FNCA参加国間の広報活動に関する重要性を鑑みて継続することを提言する |
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公開セミナーは、IAEAとの調整の下、PLMの開催の度毎にアレンジされるべきである |
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参加国は、広報活動を向上させるため、DVDや広報素材についての意見交換を行う |
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コーディネーター会合などFNCA会合の場において、参加国の広報活動を紹介する |
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FNCA参加国は、変化し続ける社会状況に対応しつつ情報を普及させていくには、新しい方法を用いる必要性のあることを強く感じている |
その他
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2009年12月8日、「第37回原子力週間において、フィリピンがFNCA会合を主催(”RP Hosts Forum for Nuclear Cooperation In Asia on its 37th Atomic Energy Week Celebration”)」と題する写真が、DOSTのウェブサイト(www.dost.gov.ph)に掲載された。 |
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2009年12月8日付ビジネスミラー紙に、PNRI展示会における町コーディネーターおよび数名のプロジェクトリーダーの写真が掲載された。 |
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12月9日、ビジネスミラー紙科学技術編集員Lyn Resurreccion氏により町コーディネーターに、アジア地域における原子力事情についてインタビューが行われた。インタビュー内容は、ビジネスミラー紙の科学面に、“Five Asean Countries Going Nuclear”と題し、2010年1月17日号に掲載された。 |
閉会セッション
2009年PLMの参加者を代表し、日本プロジェクトリーダーであり、日本原子力研究開発機構(JAEA)執行役・広報部長の久保稔氏から、PNRI、DOST文部科学省及び原子力安全研究協会の協力を通じ、会合が成功裏に開催できたことに対して感謝の意が表された。また参加者は、フィリピンの素晴らしい会合アレンジと暖かい好意に感謝を述べた。
PNRI所長Alumanda M. DELA ROSA氏に代わってフィリピンのプロジェクトリーダーであるR. R. LEONIN氏が閉会の挨拶を述べ、プロジェクトリーダー会合は閉会となった。
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