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アジア原子力協力フォーラム(FNCA)
第22回 コーディネーター会合

2022年6月28日
オンライン


CDMの参加者

 2022年6月28日(火)、内閣府・原子力委員会の主催、文部科学省の共催により、第22回FNCAコーディネーター会合が東京において開催されました。FNCA日本コーディネーターである和田智明氏が会合議長を務めました。会合には、FNCA参加12ヵ国(オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナム)の他、RCA地域オフィスから代表が出席しました。
  会合における9つのセッションの結果概要は以下の通りです。

セッション1:開会

 和田FNCA日本コーディネーターの開会宣言に続き、上坂充原子力委員会委員長が歓迎挨拶を行いました。上坂原子力委員長は、原子力科学・技術と原子力利用のためのインフラ整備の分野で展開するFNCAのプロジェクト活動が着実に成果を上げていることを高く評価し、COVID-19の感染状況及びワクチン接種状況を考慮の上、次回以降、対面形式で会合が開催されることを期待していると述べました。
 続いて参加者が自己紹介を行い、会合プログラムが修正なく承認されました。

上坂原子力委員会委員長および和田FNCA日本コーディネーター
(左)上坂原子力委員会委員長
(右)和田FNCA日本コーディネーター

セッション2:2021年度第22回大臣級会合の報告

事務局より、2021年12月にオンラインで開催された第21回大臣級会合(MLM)の概要が紹介されました。会合では、「研究炉、加速器とその関連技術の利用拡大」をテーマとして政策討論を行い、「今後促進すべきテーマ・活動」、「参加国間での放射線治療の促進」、及び「研究炉・加速器分野の利用拡大」等に言及した共同コミュニケが採択されたことが報告されました。

セッション3-1:放射線利用開発分野(産業・環境利用)におけるプロジェクト活動成果報告

  1. 放射線育種
     本プロジェクトは、「気候変動下における低投入の持続可能型農業に向けた主要作物の突然変異育種」をテーマとする活動を通じて、突然変異育種技術を利用しアジア各国における低投入の持続可能型農業に貢献する新たな作物品種を開発することを目的としています。参加国においては、特に高収量、早生、高品質、様々な生物・非生物ストレス耐性に着目した新品種の開発を目指しています。今次会合では、プロジェクトの活動について参加国の進捗状況が紹介され、参加国では新品種及び有望系統が順調に得られていることが報告されました。

  2. 放射線加工・高分子改質
     本プロジェクトは、農業・環境・医療分野における放射線加工の広範な利用により、新製品の開発・実用化を促進することを目的としています。今次会合では、現行フェーズの活動成果が総括された後、次期フェーズの計画として、「放射線分解したキトサンの動物飼料応用」、「ハイドロゲルの医療応用」、「環境修復」、「植物生長促進剤、超吸水材、及びバイオ肥料の相乗効果」、「植物生長促進剤及び超吸水材」、「ガンマ線照射によるバイオ肥料用微生物育種」、「放射線による滅菌及び浄化」、「リサイクルプラスチック」の8つの研究テーマに取り組むことが報告されました。

  3. 気候変動科学
     本プロジェクトは、3年間に亘るプロジェクト活動の後、優れた成果を残しながら、令和3年度で終了となりました。なお、都合により本会合での発表はなされませんでしたが、プロジェクト終了報告書が提出されました。

セッション3-2:放射線利用開発分野(健康利用)におけるプロジェクト活動成果報告

  1. 放射線治療
     本プロジェクトは、アジア地域で多く見られるがんの「子宮頸がん」「上咽頭がん」「乳がん」に対し、最適な治療法を確立して、同地域の放射線治療のレベルの向上を図ることを目指しており、各国参加者は多国間での臨床試験を実施し、放射線治療における品質保証/品質管理(QA/QC)の活動や教育活動を行っています。今次会合では、参加国における子宮頸がん、上咽頭がん、乳がんに関する治験の進捗状況の報告に加えて、新規の臨床試験である骨転移、脳転移に対する緩和的放射線治療のプロトコール案が紹介されました。

セッション4:研究炉利用開発分野におけるプロジェクト活動成果報告

  1. 研究炉利用
     本プロジェクトでは、参加国が保有する研究炉の特徴や利用状況等の情報を共有し、参加国の研究者及び技術者の研究基盤や技術レベルの向上を図っています。研究炉利用グループでは、各国へのアンケート調査により新しい放射性同位元素を含む放射性同位元素製造及び新規研究炉等のテーマに取り組んでいることが報告されました。また、中性子放射化分析グループでは、現行フェーズにおいて環境モニタリングに焦点を当て、浮遊粒子状物質(SPM)のような一般的な環境試料だけでなく、土壌や食品などを含む広範囲の試料も対象として分析を行うことが紹介されました。

セッション5:原子力安全強化分野におけるプロジェクト活動成果報告

  1. 放射性廃棄物管理
     本プロジェクトは、情報と経験から得られた知見を交換・共有することにより、参加国の原子力/放射線関連施設における放射線の安全性の向上、及び放射性廃棄物管理活動の充実を図っています。現行フェーズの活動は、自然起源放射性物質及び人為的に濃度が高められた自然起源放射性物質(NORM/TENORM)に関する各国の状況を理解、要約し、それを各国の関連活動の中で活用することを目的としています。今次会合では、ワークショップにおいてNORM/TENORMに関する議論を続け、2023年度末までにNORM/TENORMに関する統合化報告書を完成する計画が紹介されました。

セッション6:原子力基盤強化分野におけるプロジェクト活動成果報告

  1. 核セキュリティ・保障措置
     本プロジェクトでは、原子力平和利用の推進において不可欠な核セキュリティ・保障措置について、知識・情報の共有、並びに人材育成協力等による強化を図っています。今次会合では、現行フェーズの活動として、核セキュリティ体制強化を目的とした核セキュリティステークホルダーマトリックスの作成と利用、及び追加議定書(AP)実施にあたっての良好事例集をIAEA文書として活用を目指すことが紹介されました。

セッション7:IAEA/RCAとの協力

RCAは、アジア・太平洋地域の加盟国を対象とした原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定に基づき、加盟国間の技術支援協力を行うIAEAの事業であり、FNCA参加国より11ヵ国及び非FNCA参加11ヵ国(インド、パキスタン、スリランカ等)の22ヵ国が参加しています。今次会合では、パク・ピルファンRCA地域事務所長が出席し、RCA活動及びFNCAとの協力について紹介がありました。今後も放射線育種、放射線治療の分野において、RCAとFNCAが情報共有及び会合の相互参加を中心に協力が継続されます。

セッション8: FNCAプロジェクトの今後の活動について

  1. 新規プロジェクトに関する提案(オーストラリア)
    オーストラリアより新規プロジェクトとして提案された食品産地調査プロジェクトは、サプライチェーンにおける食品偽装を減少させるため、FNCA参加国が利用可能な範囲にある原子力科学手法を用いて、地域フィンガープリントデータベースを開発し、食品由来調査のための技術プラットフォームを構築することを目的としています。ANSTOのデバシシュ・マズムデール氏は、食品不正と戦うための産地特定に関する知識を提供する原子力技術及び専門知識に関連して、ANSTOの専門技術と能力を紹介し、本プロジェクトの活動計画について説明しました。
  2. 継続、新規提案プロジェクトに対する評価サマリー
    和田FNCA日本コーディネーターより、活動フェーズの最終年を迎えた既存の2プロジェクト(放射線加工・高分子改質、気候変動科学)、及び中間評価の対象である1プロジェクト(放射線育種)に関する活動成果、並びに各国コーディネーターからの評価が総括された後、放射線加工・高分子改質プロジェクトの新規フェーズ活動計画、及び新規に提案された食品産地調査プロジェクトが承認されたことが報告されました。続いて、既存の4プロジェクトに対するコメントと2022年度の活動計画が提示され、意見交換の後、全ての参加者により合意されました。

セッション8:閉会

 和田FNCA日本コーディネーターより今次会合の「結論と提言」案が提示され、2週間内のレビュー・アンド・コメントが要請されて閉会しました。


結論と提言(仮訳)

1. コーディネーター会合(以下「会合」)は、FNCA第 22 回大臣級会合(MLM)の共同コミュニケに基づき、農業発展、食物安全、環境保護、健康利用、核セキュリティ及び人材育成に関するFNCA活動を更に加速することに合意した。また、COVID-19の流行による活動制約下、プロジェクトの研究者と参加者の安全を大前提として、FNCAプロジェクト活動と7つの定例ワークショップ会合を速やかに正常化するために最大限の努力をすることに合意した。これら活動は、各国の保健政策に従うことになる。
2. 会合では、突然変異育種プロジェクトの中間評価と、2022年3月末に終了した2つのプロジェクト、「放射線加工と高分子改質プロジェクト」、「核・同位体技術を用いた気候変動研究プロジェクト」のプロジェクト終了時評価を実施した。これらのプロジェクトに対する評価結果及びコメントは以下の通り。
a) 放射線育種

会合では、このプロジェクトをさらに 2 年間延長することに合意し、さまざまな分野の関係者のさらなる参画を求める。気候変動下における低投入の持続可能型農業に適応し、病虫害に強く、熱さ・寒さ・洪水・塩害に耐性を持つ主要作物の突然変異系統や品種の開発に成功している。多くの突然変異系統品種を、広く農家へ普及させるために公式に登録され、多くの関連研究論文が発表されており、各国での新品種の普及に役立っている。

b) 放射線加工と高分子改質

農業分野では、植物生長促進剤(PGP)、超吸水材、バイオ肥料などが開発・利用されている。またPGPの研究開発の進展により、魚の養殖や養鶏の成長促進効果も確認されている。環境分野では、電子線照射による廃水処理が大規模な実用化の段階に入っている。また医療分野では、三次元細胞培養基材が開発され、創傷被膜剤や止血材の実用化が進められている。

c) 放射性核種・同位体法を用いた気候変動に関する研究

このプロジェクトは、過去の気候変動に関する研究を支援する放射性核種・同位体実験や分析を行い、新しい知識を解釈するための専門知識を共有することで、過去の気候変動のメカニズムやプロセスをより深く理解するために実施されたものである。土壌のサンプリング、処理、炭素循環の炭素同位体分析に関する実践的なガイドなど、いくつかの科学論文が発表された。プロジェクトは終了したが、会合では、放射性核種・同位体技術を用いた気候変動研究は、プロジェクトで構築された研究協力ネットワークを活用し、参加国で継続されるべきであると提言された。

3. 第17回MLMで承認されたプロジェクト提案の改訂評価手順に沿って、全FNCAコーディネーターが、プロジェクトリーダーからの2つのプロジェクト提案について、関連性、有効性、効率、インパクト、持続可能性を考慮しながら事前評価を行った。その結果、「農業、環境、医療分野における放射線加工と高分子改質」の3年間のプロジェクトの新フェーズ、及び「食品偽装対策に用いる核技術」の4年間のプロジェクトを2022年度から新たに開始することが合意された。コメントは項目4に示すとおりである。
4. a) 農業、環境、医療分野における放射線加工と高分子改質
-

本プロジェクトで期待される成果は、社会・経済の発展や環境保全の改善につながる実用的なものとなるべきである。

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高分子材料の放射線加工に焦点を当て、利用可能な生物資源を出発材料として使用することに重点を置くべきである。

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持続可能なプラスチック経済を実現するためには、放射線を利用したプラスチックのリサイクルやアップサイクルがより重要になることが予想される。

-

高分子ケーブルの絶縁体の改質について、プロジェクトで議論することが提案される。

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参加国の経済的利益に貢献するため、技術移転を効率的に行う必要がある。

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このプロジェクトは幅広い研究テーマを扱っているので、いくつかのテーマに絞って毎年開催されるワークショップ会議で提案された分野を議論することが望ましい。

b)

食品偽装対策に用いる核技術

-

このプロジェクトは、食品サプライチェーンにおける偽装を減少させることにより、FNCA諸国の農業全体に対して、財政的、環境的、社会的に大きな利益をもたらす能力を有する。

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分析方法と対象食品の選定が必要である。携帯型蛍光X線分析が食品偽装を特定するための基準方法として採用されれば、利害関係者に大きな影響を与えることができる。近赤外分光法などの追加技術は、問題や分析対象物質に応じて検討することができる。

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プロジェクトを成功させるために、現段階では、最も輸出されている食品を限定して決定することが妥当であると思われる。

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このプロジェクトが、食品/ジュースの不純物混入や、有機食品、野生食品、ハラール食品の認証など、食品偽装の他の側面を対象とするかどうかは不明である。プロジェクトはその対象領域を明確に示す必要があるだろう。

5. 会合では、現在進行中の4つのプロジェクトの進捗状況について議論された。「放射線治療」、「研究炉利用」、「放射線安全及び放射性廃棄物管理」、「核セキュリティ及び保障措置」の4つのプロジェクトの進捗状況について議論し、各プロジェクトが加盟国の効果的な協力により成功裏に実施されたことが確認された。各プロジェクトに関するコメントは以下の通り。

 

a)

放射線治療(Radiation Oncology)

 

治療施設における放射線治療の物理的品質保証(QA)及び品質管理(QC)が重要であるため、各国でのCOVID-19の流行が収まった後に再開することが望まれる。また、放射線腫瘍医や医学物理士を養成するワークショップで3D-IGBTのハンズオントレーニングコースの実施が再開されるべきであろう。緩和的放射線治療の研究については、RCAで奨励されているように、IAEA/RCAとの連携を進めるべきであろう。

b)

研究炉の利用

 

SMRを含む新しい研究炉に関する議論を継続する必要がある。NAAサブグループでは、各メンバー国の環境モニタリングに貢献するため、NAAを含む複数の測定技術の適用について議論する必要がある。

c)

放射線安全及び放射性廃棄物管理

 

各国のNORM/TENORMの発生源、量、位置、管理体制、規制、処分・長期保管計画等を最終報告書としてまとめることが重要である。

d)

核セキュリティ及び保障措置

 

核セキュリティ・保障措置を強化するため、核鑑識に関する実地訓練や机上訓練(TTX)を物理的会合の中で実施することが推奨される。各国の核セキュリティ能力を強化するため、利害関係者のマトリックスについて積極的に議論することが必要である。

6. 会合では、FNCAがIAEA/RCAとの間で、突然変異育種、放射線治療、放射線加工と高分子改質、食品の出所を特定するプロジェクトについて協力を促進し、相乗効果を図るとともに、FNCAのRCA非加盟国との経験共有に努めるべきとの意見が出された。
7. 会合では、2022年度に各加盟国政府が主催するプロジェクト・ワークショップを別紙のように開催することに合意した。すべてのワークショップは、2022年9月から2023年3月の間に開催されることが望ましい。プロジェクトリーダーは、各ワークショップに直接参加するか、ビデオ会議システムを用いて参加する。直接参加する場合、参加者全員がワークショップ前にCOVID-19の予防接種を受けることが推奨される。COVID-19の流行は2022年のFNCAプロジェクト活動にも影響を与え続けるため、会合では、各プロジェクトが通常のプロジェクト会議に加え、必要に応じて特定のトピックについてビデオ会議システムを使用することが提案された。