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アジア原子力協力フォーラム(FNCA)
第23回 コーディネーター会合

2023年6月21日
東京 三田共用会議所(オンライン併用)


CDMの参加者(対面)

CDMの参加者(オンライン)

 2023年6月21日(水)、内閣府・原子力委員会の主催、文部科学省の共催により、第23回FNCAコーディネーター会合が東京において開催されました。FNCA日本コーディネーターである玉田正男氏が会合議長を務めました。会合には、FNCA参加12ヵ国(オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナム)の他、RCA地域オフィスから代表が出席しました。
  会合における9つのセッションの結果概要は以下の通りです。

セッション1:コーディネーターの交代、開会

 前回の当該会合以降、日本、バングラデシュ及びマレーシアのコーディネーターが交代されたことから、日本の和田智明前コーディネーター及び玉田正男新コーディネーター、バングラデシュのベグム博士、マレーシアのジン博士より自己紹介がありました。
 玉田議長の開会宣言により開会し、本会合プログラムが修正なしで承認されました。

上坂原子力委員会委員長 玉田FNCA日本コーディネーター
(左)上坂原子力委員会委員長
(右)玉田FNCA日本コーディネータ

セッション2:2022年度第23回大臣級会合の報告

 事務局より、2022年10月にモンゴルにおいてハイブリッド形式で開催された第23回大臣級会合(MLM)の概要が紹介されました。円卓会議のトピック「アジア地域における放射線によるがん治療の強化」に基づき、基調講演では、IAEA のフア・リウ氏による「がん治療における格差について」、及びモンゴル国立がんセンターのウランチメグ・ツェグメド博士による「モンゴルにおける LINAC に基づく新技術の開発」の報告及び質疑応答が行われました。その後の円卓会議では、放射線治療プロジェクトより実施状況の報告と議論が行われました。

セッション3-1:放射線利用開発分野(産業・環境利用)におけるプロジェクト活動成果報告

  1. 放射線育種
     本プロジェクトは、「気候変動下における低投入の持続可能型農業に向けた主要作物の突然変異育種」をテーマとしています。参加国においては、特に高収量、早生、高品質、様々な生物・非生物ストレス耐性に着目した新品種の開発を目指しています。今次会合では、プロジェクトの活動について参加国の進捗状況が紹介され、新たにコメ10品種及びダイズ5品種が発表されたことや、新品種が経済効果や持続可能な農業に貢献することを期待していることなどが報告されました。

  2. 放射線加工・高分子改質
     本プロジェクトは、農業・環境・医療分野における放射線加工の広範な利用により、新製品の開発・実用化を促進することを目的としています。今次会合では、「放射線分解したキトサンの動物飼料応用」、「ハイドロゲルの医療応用」、「環境修復」、「植物生長促進剤、超吸水材、及びバイオ肥料の相乗効果」、「植物生長促進剤及び超吸水材」、「ガンマ線照射によるバイオ肥料用微生物育種」、「放射線による滅菌及び浄化」、「リサイクルプラスチック」の8つの研究テーマに関する活動内容が報告されました。

  3. 食品産地偽装防止
     本プロジェクトは、食品産地偽装におけるトレーサビリティの課題を軽減するため、FNCA 加盟国間における情報共有、知見の移転及び科学的能力の向上、fingerprint データベースや技術プラットフォームの構築を目的にしています。準備期間2年目である令和5年度は、協力者等の選択、分析する食品アイテムの選択及び分析体系の確立を目指すことが報告されました。

セッション3-2:放射線利用開発分野(健康利用)におけるプロジェクト活動成果報告

  1. 放射線治療
     本プロジェクトは、アジア地域で多く見られるがんの「子宮頸がん」「上咽頭がん」「乳がん」に対し、最適な治療法を確立して、同地域の放射線治療のレベルの向上を図ることを目指しており、各国参加者は多国間での臨床試験を実施し、放射線治療における品質保証/品質管理(QA/QC)の活動や教育活動を行っています。今次会合では、FNCA 参加国においてこの3つのがんに関する標準治療プロトコルが確立されたことや、子宮頸がん治療における線量のQA/QC監査が行われた結果、参加国における放射線治療の質の向上が認められたこと、3次元画像誘導小線源治療(3D-IGBT)に関するオープンレクチャーや実地研修が行われたことなどが紹介されました。

セッション4:研究炉利用開発分野におけるプロジェクト活動成果報告

  1. 研究炉利用
     本プロジェクトでは、参加国が保有する研究炉の特徴や利用状況等の情報を共有し、参加国の研究者及び技術者の研究基盤や技術レベルの向上を図っています。研究炉利用グループでは、各国へのアンケート調査により新しい放射性同位元素を含む放射性同位元素製造及び新規研究炉等のテーマに取り組んでいることが報告されました。また、中性子放射化分析グループでは、現行フェーズにおいて環境モニタリングに焦点を当て、浮遊粒子状物質(SPM)のような一般的な環境試料だけでなく、土壌や食品などを含む広範囲の試料も対象として分析を行うことが紹介されました。なお、研究炉が稼働していない一部の参加国においては、サンプルの分析方法として、NAA グループにおいてデータの比較と検証を行えるように、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)等の方法が推奨されることが示されました。

セッション5:原子力安全強化分野におけるプロジェクト活動成果報告

  1. 放射性廃棄物管理
     本プロジェクトは、情報と経験から得られた知見を交換・共有することにより、参加国の原子力/放射線関連施設における放射線の安全性の向上、及び放射性廃棄物管理活動の充実を図っています。現行フェーズの活動は、自然起源放射性物質及び人為的に濃度が高められた自然起源放射性物質(NORM/TENORM)に関する各国の状況を理解、要約し、それを各国の関連活動の中で活用することを目的としています。今次会合では、ワークショップにおいてNORM/TENORMに関する統合化報告書(NORMの特性評価、法律及び規制面での考察、処分場、及びステークホルダーとの対話等)について話し合いが行われたことが紹介されました。

セッション6:原子力基盤強化分野におけるプロジェクト活動成果報告

  1. 核セキュリティ・保障措置
     本プロジェクトでは、原子力平和利用の推進において不可欠な核セキュリティ・保障措置について、知識・情報の共有、並びに人材育成協力等による強化を図っています。今次会合では、ワークショップにおいて、IAEA及びEC/JRCが核鑑識に関する地域協力の発表があったことや、核セキュリティに関するステークホルダーマトリックスについて現時点で7つの参加国が作成し、課題及び良好な実践状況を共有したとの報告があったことが紹介されました。

セッション7:IAEA/RCAとの協力

RCAは、アジア・太平洋地域の加盟国を対象とした原子力科学技術に関する研究、開発及び訓練のための地域協力協定に基づき、加盟国間の技術支援協力を行うIAEAの事業であり、FNCA参加国より11ヵ国及びFNCA非参加の11ヵ国(インド、パキスタン、スリランカ等)の22ヵ国が参加しています。今次会合では、パク・ピルファンRCA地域事務所長が出席し、RCA活動及びFNCAとの協力について紹介がありました。

セッション8: FNCAプロジェクトの今後の活動について

  1. 新規プロジェクトに関する提案(日本・韓国)
    @日本より新規プロジェクトとして提案された気候変動に関するプロジェクトは、気候変動について、森林土壌からのCO2排出に関し、参加国と共同でデータベースの構築を目指すもので、以前、オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)の気候変動科学プロジェクトにおいて行われた日本原子力研究開発機構(JAEA)の研究を、アジア地域に展開させるものです。データベースは、アジア地域での土壌有機炭素(SOC)の特性及び土壌CO2排出モデルの開発や、地球温暖化に関する気候モデル及び他の施策での利用に繋がることを目指すものです。
    A韓国より研究炉に関するプロジェクトが新規プロジェクトとして提案されました。背景には、炉型や目的が様々である研究炉における老朽化対策プログラム(AMP)は、情報やデータベースが発電炉に比べ少ないこと、また、体系的かつ包括的にできないことがあります。
    これら新規プロジェクトについては、評価ガイドラインに基づき、全コーディネーターが妥当性、効果性、効率性、影響力及び持続性の観点から評価した結果、@については令和5年度にプロジェクトを開始することとし、Aについては、研究炉利用プロジェクトにおいて、次回ワークショップで議論することが推奨されました。
  2. 継続プロジェクトに対する評価
    令和4 年度は、ほとんどのワークショップがハイブリッド形式で行われ、オンライン開催では実施困難であった諸活動(テクニカルビジットや実地研修など)が行われたこと、また、令和5 年度は、コロナウイルス感染防止対策を実施した上で、実地体験も可能なハイブリッド形式でワークショップを行うことが推奨されました。

セッション9:閉会

 玉田FNCA日本コーディネーターより今次会合の「結論と提言」案が提示され、議論を経て確認が行われ、本会合後に参加国により承認されました。


結論と提言(仮訳)

1. コーディネーター会合(以下「会合」)は、FNCA第 23 回大臣級会合(MLM)の共同コミュニケに基づき、 農業発展、食物安全、環境保護、健康利用、核セキュリティ及び人材育成に関するFNCA活動を更に加速することに合意した。また、FNCAプロジェクト活動と通常の会合を、コロナウイルス感染症の現状下、各速やかに正常化するために最大限の努力をすることに合意した。これら活動は、各国の保健政策に従うことになる。
2. 今回の会合では、プロジェクトの中間評価や、最終評価の対象はない。第24回コーディネーター会合(CDM)において、以下の5プロジェクトについて最終評価が行われる:放射線育種、放射線治療、研究炉利用、放射線安全・放射性廃棄物管理、及び核セキュリティ・保障措置。過去3年間、会合はコロナウイルス感染症の影響によりスケジュールを変更した。次回の会合はパンデミック前のスケジュールに戻される予定であり、2024年の2月または3月に開催予定である。
3.

第17回MLMで承認されたプロジェクト提案の評価手順(改訂)に沿って、日本及び韓国からの2つの新規プロジェクト提案について、妥当性、有効性、効率及び継続性の観点から、全FNCAコーディネーターが事前評価を行った。
(1)「Radiocarbon-based approach to evaluating the CO2 emission from forest soils in Asia」(日本)
(2)「Performance Management Program (PMP) of Research Reactors for Continued Operation (韓国)
これらのプロジェクトに関する主なコメントを以下項目4及び5に述べる。

4. 新規提案プロジェクトに関する主なコメント
(1)

「Radiocarbon-based approach to evaluating the CO2 emission from forest soils in Asia」

-

気候変動プロジェクトは、FNCA 第23回MLMの共同コミュニケに記載された国や地域の開発政策に大いに関連している。

-

このプロジェクトでは、14C分析に基づくアプローチを用いた森林土壌 CO2排出量のデータベースの構築に有効である。

-

このようなデータベースは、気候変動における土壌CO2排出量の理解を深め、気候モデリングや政策立案に活用されると考えられる。

-

全ての加盟国がこのプロジェクトへの参加に興味を示した。

(2)

「Performance Management Program (PMP) of Research Reactors for Continued Operation」

-

このプロジェクトは、研究用原子炉の体系的かつ包括的な老朽化管理プログラムの開発と、それに伴う国家開発政策、及び安全な原子力管理に貢献する。

-

研究炉に関するPMP では、その運用により、持続的な同位体生産及びその他の用途に貢献できる。

-

新たなプロジェクトを開始する前に、PMP を確立するための詳細な仕様や手法は、参加に関心のある国ごとに原子炉の種類や目的が異なるため、調整が必要である。

-

提案国が本事業の予算を確保していないため、事業実施に対する財政支援を検討する必要がある。

5. 新規提案プロジェクトに関する最終評価
(1)

「Radiocarbon-based approach to evaluating the CO2 emission from forest soils in Asia」(日本)

 

このプロジェクトの評価平均は89 点で、全ての加盟国が興味を示した。したがって、このプロジェクトは反対意見なしで採用される。会合は、このプロジェクトを2023年度から立ち上げることで合意した。

(2)

「Performance Management Program (PMP) of Research Reactors for Continued Operation」(韓国)

 

このプロジェクトは、評価平均は83点と高かったものの、2か国から低い評価が寄せられた。原則として、このプロジェクトは考慮されない。しかし、会合では、仕様の詳細な調整、PMP を確立するための手法、プロジェクト実施のための財政支援についてさらに議論することが提案された。これらの懸案事項については、進行中の研究炉利用プロジェクトのワークショップ(2023年10月17〜19日)において議論されることが奨励された。

6. 会合では、継続中の7つのプロジェクトについて議論を行った。プロジェクトは以下の通りである:「放射線育種」、「放射線加工・高分子改質」、「食品産地偽装防止」、「放射線治療」、「研究炉利用」、「放射線安全・廃棄物管理」、「核セキュリティ・保障措置」。
各プロジェクトが加盟国の効果的な協力により成功裏に実施されたことが確認された。
会合では、加盟国の協力により、プロジェクトが首尾よく実施されたことを確認した。
2022 年は、ほぼ全てのプロジェクトにおいてハイブリッド形式でワークショップを行い、情報共有及び能力開発の更なる促進のために、ウェブ会合では実施困難だった、テクニカルビジット、実地研修、机上演習など、直接的な活動が実施された。
各プロジェクトに関するコメントは以下の通りである。
a) 放射線育種
  今フェーズにおいてコメ10品種及びダイズ5品種が発表された。更なる新品種は、経済効果や、持続可能な農業に貢献することが期待される。
b) 放射線加工・高分子改質
  放射線分解したキトサンは家畜用飼料として応用され、天然ポリマーより止血剤ハイドロゲルが作られた。このプロジェクトでは、ユーザーのニーズを満たす特定の高分子改質を継続する必要がある。それにより、農業、環境及び医療分野への応用、その後エンドユーザーへの技術転用が促進される可能性がある。
c) 食品産地偽装防止
  federated fingerprintデータベース及び技術プラットフォームに関する研究は、バイオセキュリティ問題に関するトレーサビリティの課題を軽減すると期待される。
d) 放射線治療
  このプロジェクトでは、放射線治療の安全性及び有効性を向上させるため、アジアにおける主要な3種類のがんに関するプロトコルの最適化が継続されるべきである。放射線治療に関する研究を効果的に実施するために、IAEA/RCA との更なる連携が求められる。
e) 研究炉利用
  放射性同位元素(RI)の実用化への継続的な要請に応えるため、新規のRIを含むRI 製造は継続されるべきである。同様の観点から、大気中の粒子状物質、地質サンプル、土壌、食品サンプルなどの環境に関連したサンプルも、中性子放射化分析の対象とされるべきである。
f) 放射線安全・廃棄物管理
  NORM/TENORMリポジトリに関する情報交換の継続や、法律及び規制面の考察、処分方法、ステークホルダーとの関係の観点から統合された報告書を作成することが推奨される。
g) 核セキュリティ・保障措置
  このプロジェクトは、能力構築として、核セキュリティと保障措置に対する認識を高めることが重要である。核鑑識に関する机上演習、及び核セキュリティに関するセミナーは極めて重要な活動である。
7. 会合では、FNCAが IAEA/RCAとの協力を促進することで、FNCA とRCA が相乗効果を発揮し、より幅広い経験を共有できることを期待することで合意した。
8. 会合では、2023年度のプロジェクト・ワークショップは、以下のように各加盟国政府が開催することで合意された。2023年度のワークショップは、対面参加者が実体験するハイブリッド形式で行われることが奨励される。コロナウイルス感染症の世界的流行は収束傾向にある一方で、健康への脅威は過小評価できない。開催地は、ワークショップ開催中、コロナウイルス感染予防の対策を講じることが推奨される。対面参加者は、開催時の自らの健康状態に留意し、必要に応じて、マスク着用などの感染防止対策を講じることが望ましい。