第8回 コーディネーター会合
2007年2月7日〜9日、東京 三田共用会議所
第 8 回 FNCA コーディネーター会合( CM : Coordinators Meeting )が 2007 年 2 月 7 日から 9 日まで、内閣府・原子力委員会の主催により都内で開催された。この会合には、 9 カ国のコーディネーターや代表者、専門家、政府関係者が参加した。またオブザーバー参加として IAEA が本会合に参加した。
主な出席者は以下の通りである。 豪州: キャメロン 豪州原子力科学技術機構 専務理事
中国: ヤン 中国国家原子能機構 国際合作司 司長
インドネシア: ハナフィア インドネシア原子力庁 次官
(研究開発成果利用・原子力科学技術広報担当)
韓国: ジ 韓国科学技術部(MOST) 原子力局 原子力協力室 室長補佐
マレーシア: ダウド マレーシア原子力庁 長官
フィリピン: デラローサ フィリピン原子力研究所 所長
タイ: ソンポーン タイ原子力技術研究所 所長
ベトナム: チュアン ベトナム原子力委員会 副委員長
オブザーバー参加
IAEA: ディアス 国際原子力機関 上級プログラム管理官・RCAフォーカルパーソン
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各国参加者 |
開会セッション
原子力委員会の近藤駿介委員長が開会挨拶を述べた。全参加者に暖かい歓迎の意を表明し、会合での有意義な議論と成功を祈念した。
主な検討事項 町 FNCA 日本コーディネーターが以下のとおり、議題の重要ポイントを説明した。
- 進行中の 12 件のプロジェクトとパネルの成果と作業計画
- 「 Tc-99m ジェネレータ」および「バイオ肥料」プロジェクトの終了または延長
- ANTEP (アジア原子力教育訓練プログラム)および試験プロジェクトの実施
- 「アジアの原子力エネルギー分野における協力検討」パネルの設置
- プロジェクトの実施改善
- FNCA と RCA の協力
1:第7回FNCA大臣級会合の報告
町コーディネーターが 2006 年 11 月 27 日にマレーシア・クアンタンで開催された第 7 回 FNCA 大臣級会合( MM )の概要を説明した。特に、第 7 回 FNCA MM では、グループ全体で、原子力発電を京都議定書におけるクリーン開発メカニズム( CDM )に含めるよう、国連気候変動枠組条約( UNFCCC )締約国会議( COP )にアピールすることを検討することとした。事務局は、早期にアピールの草案を用意し、各国内の省庁との調整のため FNCA 参加国に配布することが要請された。草案は、第 8 回 MM で討議される。
2:アジアの発展と原子力エネルギー
会合では、町コーディネーターが「アジアの持続的発展における原子力エネルギーの役割」パネルの成果に関する報告を行った。さらに、第 7 回 FNCA MM で合意された新しいアジアの原子力エネルギー分野における協力検討パネルでの将来の協力計画についても報告した。検討パネルが取り組むべき分野の優先順位が討議された。パネル会合の優先分野として、人材養成とパブリック・アクセプタンスに対して全面的な支持が得られた。 CDM を含む経済・財政的側面、廃棄物管理、原子力安全、セキュリティ、および不拡散の問題など、その他の重要な分野も検討すべきである。
3:FNCAプロジェクトの活動報告、評価、計画
FNCA プロジェクトリーダーにより、進行中のプロジェクトの活動および今後の計画が報告された。会合では、進行中のプロジェクトの進捗状況が説明された。
- 原子力広報(PI)
プロジェクトリーダーの久保稔氏が、 6 つの活動の具体的な成果を発表した。すなわち、( a )アジア原子力協力ネットワーク、( b )マスメディアとのコミュニケーション、( c )地域スピーカーズ・ビューロー、( d )原子力コミュニケーターの養成、( e )年次プロジェクト・リーダー会合、( f )一般公開セミナーである。会合では、一般および専門家向けの公開セミナーを強化することが提案された。特に、故障や事故が起きた場合には、マスメディアに情報を提供する時の迅速な行動と透明性が、一般市民の信頼を得る上で不可欠である。原子力発電に関連する展示資料を FNCA 各国間で共有することについても合意された。 ANTEP には、広報に従事する人員の訓練も含めるべきである。
農業利用
- 放射線育種(MB)
中川仁プロジェクトリーダーが、( a )ソルガムと大豆の耐旱性、( b )ランの耐虫性、( c )バナナの耐病性、という 3 つのサブプロジェクトの成果を報告した。ソルガムおよび大豆の耐旱性に関するサブプロジェクトは、耐旱性にすぐれたソルガムと大豆の突然変異品種の開発、参加国間での遺伝資源の交換を達成して本年度で終了する。
2007 年度から 2011 年度にかけて、「コメの成分改変または品質改良」に関する新規サブプロジェクトが提案された。プロジェクトの目的は、突然変異育種によりアミロース含有量の低い米の新品種を開発することである。会合では、この提案を支持し、 FNCA 参加国の農業省と密接に協力することで合意した。
- バイオ肥料(BF)
横山正プロジェクトリーダーが( a )効果的な微生物の選択、( b )接種材の改良、( c )土壌微生物活性の改良、( d )圃場試験、( e )経済性分析、( f )キャリアの放射線減菌、の 6 つの課題について、プロジェクトの実績を報告した。その他の活動には、バイオ肥料マニュアルとバイオ肥料ニュースレターの発行がある。会合では、これまでのプロジェクトの達成状況が説明された。
会合では、 2007 年度から 2011 年度にかけて、「持続可能な農業に向けた多機能バイオ肥料の開発」と題する新プロジェクトを原則として承認した。ただし、プロジェクトが各参加国の固有のニーズを満たし、農業部門との協力を強化するために、慎重な評価を行うことが提言された。
医学利用
- 医療におけるサイクロトロン・PET
マレーシアの Adnan Khalid コーディネーターと遠藤啓吾プロジェクトリーダーがプロジェクトの現状を発表した。会合では、マレーシアで開かれた第 1 回ワークショップの進捗状況が説明された。将来的に、 PET-CT 使用の費用便益比を調査し、主要なサイクロトロン施設での FDG 製造の代替システムを検討していくことが提案された。会合において、マレーシアは、マレーシアで開かれる第 2 回ワークショップに向けてさらに多くの専門家を支援し、プロジェクトの 3 つの分野への参加を確実にすることを通知した。 RCA と同様の活動においては、 RCA との相乗効果を得る必要がある。会合では、人材育成の重要性について合意が得られた。 IAEA 上級プログラム管理官・RCAフォーカルパーソンの Prinath Dias 氏は、核医学技術者向けの RCA 遠隔学習資料に PET-CT の学習単位が含まれ拡大されることを報告した。
- 放射線治療(RO)
辻井博彦プロジェクトリーダーが、進行性子宮頸がんおよび上咽頭がんの治療に関する新たなプロトコール(手順)を確立するために実施されたプロジェクトの進捗状況について説明した。
プロジェクトの主な活動は、 (a) 進行性子宮頸がんに対する化学放射線併用療法の第U相試験 ( 有効性の実証研究 ) である通称 :CERVIX-III 、 (b) 上咽頭がんに対する化学放射線併用療法の前期第U相試験、 (c) 小線源治療に対する QA/QC( 品質保証および品質管理 ) である。
会合では、子宮頸がんの臨床試験における生存率が、これまでのところ、他の臨床試験に匹敵するか、それ以上の好成績を挙げていることが言及された。プロジェクトの活動の成果は、 IAEA/RCA の放射線療法に関する地域研修コースでも発表されている。
会合では、将来的に PET-CT を使用した診断ツールを放射線治療プロジェクトに応用することも提案された。
工業利用
- 電子加速器利用(EB)
久米民和プロジェクトリーダーが、天然高分子の放射線処理を対象とした本プロジェクトの状況について紹介し、 2008 年度までのプロジェクト延長を要望した。各国が選定した製品の商業化を達成するために本プロジェクトを延長することが総合的に支持された。また、本会合は、 FNCA と RCA とがこの分野において緊密に作業すべきであるということに合意した。
- 原子力安全文化(NSC)
オーストラリアの Ron Cameron コーディネーターがプロジェクトの現状を要約し、今後のプロジェクトの活動計画を発表した。横山勉プロジェクトリーダーがマレーシアの PUSPATI 研究炉で実施されたピアレビューの結果と、同じくマレーシアで開かれたワークショップの結果を報告した。
本会合は、 FNCA 参加国において、それぞれの研究炉の自己評価と4回のピアレビューが、研究炉の運転分野において原子力安全を強化していることを確認した。
本会合は、ピアレビューとワークショップからなる今後の活動計画を支持することを合意し、プロジェクトのタイトルを原子力安全管理に変更する提案についても支持することとした。
- 放射性廃棄物管理(RWM)
小佐古敏荘プロジェクトリーダーが、プロジェクトの活動と進捗状況について発表した。これらの報告は、中国・北京で開かれた RWM ワークショップの成功、サブミーティングにおける浅地中処分施設の概念設計、廃棄物処分のための処理およびコンディショニング、医療廃棄物の管理に関する発表、廃止措置とクリアランス・タスクグループの活動とオーストラリアおよびマレーシアの現地視察の実施を含んでいる。
本会合は、安全で信頼できる放射性廃棄物管理は公衆の関心事項であり、すべての FNCA 参加国における原子力利用に密接に関連する重要な活動であることを合意した。
また、一部の国が将来的に研究炉を廃止措置し、解体することについても確認した。さらに、医療廃棄物についても管理しなければならないことを確認した。そのため、 RWM プロジェクト活動は、これらのニーズを如何に満たすかを検討していく必要がある。
- 人材養成(HRD)
松鶴秀夫プロジェクトリーダーが HRD プロジェクトの活動をレビューし、中国・深?(しんせん)で開催された 2006 年度 HRD ワークショップの結果を報告した。ワークショップでは、 HRD のニーズと、 49 の合致(マッチング)事例につながったプログラムの分析が行われた。これは、 FNCA 参加国が多国間または二国間の取決によりフェロー(研修生)を派遣する際の非常に有効な基準となる。
町コーディネーターは、 ANTEP のパイロット試行を提案した。マレーシアは、自国の資金を使用して、二国間取決によってこれを実施することを会合で通知して積極的な姿勢を見せた。町コーディネーターは、参加国に自助努力をするなどの協力が必須であると強調した。
会合では、非原子力国にも原子力発電の訓練に関する共通ニーズがあることを確認した。原子力発電国は、この分野で FNCA 研修生の受け入れについて検討するよう求められた。
会合では、 FNCA 参加国の研修ニーズに応えるにあたり、日本の文部科学省( MEXT )のプログラムが重要な仕組みとなっていると述べられた。 FNCA 参加国の要件を満たすため、他の仕組みも活用することができる。
研究炉利用
研究炉プロジェクトの概要
研究炉利用運営グループの横溝英明主査が、 Tc-99m ジェネレータ、中性子放射化分析、および研究炉基盤技術の各プロジェクトの概要について発表した。各プロジェクトの成果および活動計画は、フィリピン国マニラ市で開催されたワークショップにて紹介されたものである。
- Tc-99mジェネレータ(TCG)
源河次雄プロジェクトリーダーが、プロジェクトの成果について報告した。本プロジェクトの目的は PZC 型 Tc-99m ジェネレータの実用化を促進することにある。 PZC 技術は今や Tc-99m ジェネレータの定常製造技術として FNCA 参加国に移転することが可能となっている。 PZC 技術の開発は FNCA プロジェクトの中でも最も目に見える成果を挙げたもののひとつである。本コーディネーター会合は、ベトナム、マレーシア、フィリピン、インドネシア、および日本の数カ国が、本技術の商業化に向けて歩みを進めていることに留意する。
- 中性子放射化分析(NAA)
海老原充プロジェクトリーダーが、プロジェクトの進捗状況と達成状況について発表した。同プロジェクトリーダーは、 NAA を用いた環境汚染モニタリングについて、プログラムの現状を中心に、参加各国の活動を要約した。本コーディネーター会合は、 RCA プロジェクト「核技術を利用した大気汚染モニタリング」との協力を強化すること推奨した。フェーズ III に向けて本プロジェクトを継続することを了解すると共に、将来的には、例えば NAA 法とともに ICP-MS 法のような他の相補的な分析技術を用いた食品安全分析等、これまでと異なる分野を考慮していくべきであると推奨した。
- 研究炉基盤技術(RRT)
山下清信プロジェクトリーダーが、 FNCA 参加国における研究炉の炉心管理の改善および利用の高度化のため、核計算技術 (SRAC および MVP) を参加国で共有することを目指す本プロジェクトについて、その進捗状況と達成状況について報告した。炉心の燃焼度計算への SRAC コードの適用や、参加各国の研究炉の利用の高度化を図るための SRAC コードと MVP コードの適用が進捗していることが確認された。 RRT プロジェクトにおける次期のテーマとして研究炉の安全解析が提案された。
特別講演と質疑
IAEA の Prinath Dias 氏(上級プログラム管理官・ RCA フォーカルパーソン)が、「アジア太平洋地域における地域協力協定( RCA )」について、その達成状況、将来的な方向性、および RCA と FNCA の協力について発表を行った。
FNCA と RCA の将来的な協力に議論が集中した。町コーディネーターは、 2006 年にバンコクで開催された前回の RCA 各国代表者会合で、 FNCA に参加していない国に対し、 FNCA の放射線治療および放射線処理技術プロジェクトへの参加を提案し、この提案が 2006 年に RCA 総会において受け入れられたことを説明した。 Dias 氏は、協力を上記のプロジェクトだけに限定せず、 PZC を用いた Tc-99m ジェネレータなどの過去の活動も含めることを提案した。
マレーシア原子力庁の Daud 長官は、まずは 1 件または 2 件のプロジェクトから協力を開始するべきであるとコメントした。互いに共同/補完活動の実施経験を得ながら、協力を徐々に拡大することができる。
オーストラリアの Cameron コーディネーターは、専門家が重複する分野、相補的な分野、および協力可能な分野を特定できるよう、 RCA と FNCA がマトリックスを作成することを提案した。
中国の Yang コーディネーターは、一部の FNCA 参加国のコーディネーターが RCA の各国代表でもあるため、コーディネーションによって FNCA と RCA の相乗効果が望めるとコメントした。
町コーディネーターは、 FNCA の技術プロジェクトが研究開発と人材育成を意図したものであるのに対し、 RCA は専門家ミッション派遣と地域研修コース実施を通じ、技術移転を図ることに重点を置いていると説明した。そのため、 FNCA と RCA は相補的であり、相乗効果を得られる。
4:今後の活動計画
- Tc-99m プロジェクト:
会合では、マレーシア、ベトナム、フィリピンのような国に専門家ミッション派遣を実施することで合意した。インドネシアは、 FNCA 参加国に Mo-99 を供給することを表明した。しかし、会合では、 Mo-99 の安定供給を確保するために、インドネシアとは別に、韓国、中国、日本からの代替的な Mo-99 予備供給を検討する必要性が指摘された。
- バイオ肥料プロジェクト:
農業省などの最終利用者との密接な協力と連携により、プロジェクトを次の段階に進めるべきである。会合では、プロジェクトの目的を達成するには、適任のプロジェクトリーダーを選出することが重要であると提言された。
- プロジェクト実施の改善:
会合では、年次ワークショップ開催で十分であることで合意した。ただし、研究者は、情報技術を使用して常にネットワーク化することが求められる。さらに、知識形成だけでなく、富の創造と社会福祉のためにも、公衆と関係者にプロジェクトの結果を周知させるには、公開セミナーが有効である。
- FNCA と RCA の協力:
FNCA と RCA が協力することで原則的に合意し、放射線処理技術と放射線治療という 2 つの分野が提案された。ただし、日本のプロジェクトリーダーとプロジェクト主導国のコーディネーターが協力の詳細について話し合うことが提案された。 FNCA と RCA の協力について、シドニーで開催される次の RCA 代表者会議で話し合い、コメントや支持が得られるよう、その結果を町コーディネーターから FNCA 参加国に通知することが提案さ れた。
総括セッション
総括セッションでは、各国代表により、第 8 回 CM 議事録原案の討議と確認が行われた。
閉会セッション
閉会セッションでは、各国代表により、第 8 回 CM 議事録が採択された。
町コーディネーターが閉会の挨拶を述べ、各国代表団の FNCA への協力に謝意を表した。同コーディネーターは、 FNCA の各プロジェクトにおいて具体的な成果が得られた結果、各国の FNCA コーディネーターが活動を進めることにより、さらに多くのメンバー諸国がこの成果から恩恵を受けるはずであると述べた。
各国代表団に代わり、マレーシアの Daud 長官が日本政府と原産に対し会議が成功裏に行われたことへの謝辞を述べるとともに、各国代表団の FNCA への協力に謝意を表した。
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